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第2章 猫の餌付け? あるいは比較的平和な釣りと採取の日々

第27話 優雅な日々の後に

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 前回の搬送依頼と今回の魔魚討伐、この2件でかなり儲かった。
 おかげで当分は仕事をする必要はない。
 このまま冒険者ギルドに向かわず、舌平目拾いや釣りでもやってのんびり過ごしたいところだ。

 勿論勉強はやる。C級にはなっておいた方がいいだろうから。
 しかしそれ以外の仕事関係は後回し。
 まだやっていない釣りがあるから、そっちを試しておきたい。

 そんな訳で午前中は速読魔法を使って教本を読んで、必要なところだけざっとメモをする形で勉強。

 午後は干潮時に釣り餌用のゴカイや小蟹、貝を捕ったり、それを利用して釣りをしたり。
 
 ゴカイとは表面がギザギザしているミミズのような虫だ。
 海釣りでは最上の餌の一つと前世で読んだ本に書いてあった。
 前世では釣具屋で餌として売っていたようだが、ドーソンには釣具屋なんてものはない。
 だから餌として使うには採取するしかない訳だ。

 採取方法は前世で読んだ本によるとこんな感じ。
  ① 水深1cmぐらいの泥っぽい海岸を探して、
  ② 餌の肉片を撒いて
  ③ 出てきたゴカイが肉片に噛みついたところを捕まえて
  ④ 捕まえたのと反対の手で砂を掘って捉える

 俺の場合は魔法収納アイテムボックスが使える。
 そしてカンディルー用の撒き餌で余った肉片がまだまだ大量に残っている。

 だから、やり方は少し変わって、こんな感じとなる。
  ① 以前にマテ貝掘りをした時の場所に行って
  ② カンディルー用の撒き餌をまいて
  ③ 出てきたゴカイを周囲の土ごと魔法収納アイテムボックスで確保

 こうすれば割と簡単に捕れる。

 そしてゴカイはウキ釣りにも投げ釣りにも有用な餌だ。

 ウキ釣りにも本来は色々ある。
 ウキや重りによって餌の動きや、ついばんだ際の違和感等で、釣れない事があるような敏感な魚もいる。
 そういう場合用に水と同じ重さのウキなんてのもあるくらいだ。
 少なくとも前の世界では。

 しかし此処の魚は釣りなんてのに慣れていないようだ。
 そこまで敏感な仕掛けを使う必要はない。
 だからウキは波があっても問題無くわかりやすい物でいい。
 仕掛けもウキが立つくらいの重りと、餌を刺した釣針がある、という程度のものでいい。

 そんな仕掛けを河口部の流心を狙って投げる。
 潮の満ち引きとともに浮かんで揺られつつ、餌の臭いで魚を誘う訳だ。

 この仕掛けで黒鯛やスズキの小さいのが釣れた。
 まあ30分に1匹程度のペースだけれど、のんびりウキを見るのも楽しいものだ。

 また風魔法を使える今の俺ならば、投げ釣りでとんでもなく遠方を狙う事だって可能だ。
 仕掛けはL字形の左下部分に重りがついた、通称天秤重りの先に糸と釣針が着いているというだけのもの。
 これで底にいる魚を狙うわけだ。

 ただし遠くに投げれば魚がいるという訳ではない。
 早朝なら歩けるくらいの場所に舌平目がいる、なんてのは確認済みだし。
 そうやって砂浜で投げ釣りをした場合の獲物は、舌平目の他にキスとかメゴチとか。
 1回だけ大きいヒラメがかかったけれど。

 こんな感じで午前中勉強をして、午後は暗くなるまで釣りをして。
 そして釣った魚をさばいて夕食に使うと、必ず食べる直前にミーニャさんが出現する。
 黒鯛とヒラメの刺身を、白御飯&茶漬けで食べようした時も。
 キスの天ぷらと塩焼きがいい感じに仕上がった時も。
 
 肉料理や舌平目の時はやってこない。
 それ以外の魚介類だと必ずやってくる。
 そして俺の倍食べて、そして帰って行く。

「こう毎回ごちそうになるのは申し訳無いとは思っているのニャ。でもさかニャの誘惑には耐えられないのニャ」

 一応ミーニャさんも、申し訳無いとは思っているらしい。
 なので昨日は野菜だの調味料だのを買い込んでやってきた。

「毎回いただいているばかりで申し訳ないニャ。なので少しだけれど気持ちなのニャ」

 持って来たのはトマト、大根、葱、タマネギ、ホースラデッシュ、ショウガ、ディル、フェネル、オリーブ油、バター、白ワイン。

 魚料理にちょうどいい野菜やハーブが多い気がするのは、気のせいだろうか。

 ◇◇◇

 そんな感じで、前世から見たら間違いなく、のんびりとしていて優雅な一週間を過ごした結果。
 貸与してもらっていた教本全てを速読で読破して、中身もほぼ覚えたと確信出来た。

 なので今日もやってきたミーニャさんに、スズキのカルパッチョ&バターソテー、小鯖や鰯のフライなんて夕食を食べながら聞いてみる。

「ひととおり貸与してもらった教本の内容を覚えました。ですのでC級試験を受けようと思っているのですけれど、いつ行っても受験できるのでしょうか」

「学科の方はいつ行っても大丈夫ニャ。ただし試験時間が3時間かかるから、午前なら9時前に、午後なら1時までに行った方がいいニャ。そうすれば1日で学科試験が終わるし認定もして貰えるニャ」

 流石ギルド職員だ。あっさりと答えてくれる。

「明日行って学科試験を受ければC級になれるでしょうか。実技の方は以前認定してもらっています」

「それなら学科試験だけでC級になれるニャ。ただしエイダンくらい順調に行くと、実績が足りないと言われてしまうのニャ。だからC級に昇任すると同時に、何か実績確保と実務能力の証明という事で、難しめの依頼を受けさせられてしまう可能性が高いニャ」

 そう言えば前にミーニャさんから聞いた気がする。

「C級の確認で魔狼の群れを全滅させた、って聞きましたね」

「全滅させたのじゃニャいニャ。全滅するまで戦わされたのニャ!」

 戦ったのと戦わされた・・・・・のは違うと言いたいようだ。

「そう言えばまだ事務所にアレがいるニャ。だからどんな凶悪な依頼を受ける事になるか、わかったものじゃないのニャ。何なら骨は拾ってやるのニャ」 

 骨は拾ってやるか。何というか……
 よほどの目に遭ったのは確かなようだ。
 しかし俺はそこまでC級試験の後にあるという依頼を不安に思っていない。

「なんやかんや言ってクリスタさんも、達成できない依頼は出してないんですよね。なら大丈夫ですよ」

「それはそうなのニャ。ただ私以外にもぎりぎりな目に遭っている被害者は多いニャ。というかヘルミナ西部のC級以上の冒険者はほぼ全員被害者なのニャ。だから無理はしない方がいいのニャ」

 えっ! ほぼ全員?
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