~ 神話 ~ 皇帝陛下は白銀髪にキスをする

ERICA

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序章 ~ 神話 ~

01, 神託

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***


「あれが来る」


白を基調とした衣服に身を包んだ年配の風貌の女性が、驚怖を顔に滲ませながら低音で紡ぐ。
女性の目の前には神棚、一段ずつの階段端に蝋燭が一本ずつ、そして中央に大きな壺。
壺からは大きな炎があがっていた。


「…神女しんにょ…あれとは何だ…」


若い男の目には、ただ炎があがっているだけしか見えない。
炎を見つめ続ける神女に向かって、若い男が問い掛けた。


「善神とも邪神とも呼べるモノ……」


炎が強すぎて黒煙が空洞に流れ込む。
神女は男の質問に答えると何かを念じて始めた。
突然、風も無いのに炎が揺れ、そして、火花が飛び散る。


「……どうした!!」


動揺する男と違い、神女は炎を見つめて続けている。
何も言わない神女に、どんどん苛々してくる男が叫んだ。


「来るのは、邪神に魅入られつつあるモノ。邪神になる前に討たねば、豊かなこの国は近い内に厄災に襲われるでしょう」


神女から神託の御告げが伝えられる。
男は驚愕に目を見張り、そして、戸惑いの表情を神女に向けた。
振り返った神女からの熱意の入ってた視線を向けられた男は、ふう、と深呼吸をしてから告げられた神託の内容を思い返す。


「………邪神とは、あの邪神か?」
「左様で御座います」


邪神、この国で邪神と言えば一人だけ。
そして、善神もこの国では一人だけ。
善神も邪神も基を正せば一対の存在だった。

千年前、この国に突如、神が現れた。
邪神になった神は、この国を砂漠に変え、貧窮の国に変えてしまう。
貧窮だったこの国は五百年前、善神となった神が現れ、この国を豊かな国に変え、砂漠だった地を草原に変えたのだ。

それ以降、一対の存在でもある神は現れていなかった。
今年が神が現れる五百年目だったのか。

男の眉間には皺が寄り、そして思案したまま神女を眺めた。


「…そやつは、誰だ?」


未だに炎に何かを唱えて、心眼で炎を見つめている神女に男は問い掛ける。
唱えていた言葉が止み、振り返った神女は男を真っ直ぐに見つめた。


「名前は分かりませぬ。ですが、まだこの国には来ておりません…」
「名前が分からぬと捜しようが無いではないか!!」


深々と頭を下げた神女の言葉に、男は激昂し声を張り上げた。
そんな男に怯える様子も見せない神女は、黒煙を吐き出す炎に視線を戻す。


「…神話に現れる神は白銀髪をしている女人。白銀髪を捜せば自然と見つかります」


炎が話し掛けている様にゆらりゆらりと揺れ動き、神女は、魅入られるように炎を見つめたまま告げた。


「白銀髪の女人か…」


白銀髪で女人など、男は生まれてから今まで見たことも聞いたこともなかった。
この国の神話伝承も、些か膨張された伝承のような気がしなくもない。
だが、この国で一番の力を持つ神女が間違う筈もない。


「白銀髪の女人を捕らえれば良いのだな」
「間もなく現れます。お急ぎ下さい…」


男は神女を信じる事に決め再度問い掛けると、神女は深々と頭を下げる。
その姿を見て決断したのか、男は急いで神殿を出て行った。


「間もなくわれの元に…我が主が求めるモノが現れる」


轟々と高く舞い上がる炎を見つめながら神女が囁き、そしてアハハハハッと笑った。
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