~ 神話 ~ 皇帝陛下は白銀髪にキスをする

ERICA

文字の大きさ
4 / 11
序章 ~ 神話 ~

02, 海青

しおりを挟む


先も見えない一面の青色。
初めて見る景色に、楊 紅雪よう こうせつは感慨深げに魅入っていた。


「………海はこんなに青いのね…」
(紅雪がいつもの百倍可愛い…)


紅雪の背後では、皇帝専用の大船に船軍員がせっせと荷物を運んでいる。
うっとりと海を見つめる紅雪を見惚れるように眺めていた皇帝陛下本人であるちょう 紫攸しゆうの隣に、陛下付きの文官であり幼馴染の関 寡雲かん かうんが立つ。


「船軍医は四人常駐させたし、腕の立つ武官二十人を甲板かんぱんに配置しておいたよ。紅雪様には紅淡がくっ付いてるから何も心配いらないと思うけど…まさか、詩音までくっ付いて来るとは思わなかったな~…」


指示されていた仕事を終わらせた寡雲は、報告しながら紅雪の隣にいる妹を苦笑しながら見ていた。

紅雪の背後で警護している関 紅淡かん こうたんは、紅雪の実兄であり寡雲の実妹の関 詩音かん しおんと婚姻を結び、関家の婿養子となっていた。
その夫が二月ふたつき、外交と視察に向かうと知った詩音は、兄に隠れて紅雪に相談してたらしい。
大切な家族と旅行に行ける事を素直に喜ぶ紅雪に、紫攸は反対する事は出来ず即白旗を挙げたのだった。
結局、当日まで知らなかったのは寡雲だけだったらしいが、寡雲も断固反対する理由はない。


(敢えて言うなら、家で爺様が泣いているだろうけど…)


家で詩音と一緒に帰りを待とうと思っていた二人の祖父である関 宰相かん さいしょうが泣いているだろう姿を想像して苦笑を浮かべた。


「出航出来ます」


船軍長が、紫攸の前に立つと頭を下げて準備が完了した事を告げる。
聞いた寡雲は紫攸の傍から離れて自室となる船室に行き、紫攸は未だ詩音と海を見てはしゃいでいる紅雪に視線を向けた。


「紅雪、こっちに来い」
「紫攸様っ!!あの先には何があるのですか?」


最愛の寵妃を呼ぶと、詩音と話していた紅雪がくるっと振り返って走り寄って来た。
指を指した先に紫攸が視線を向けると海でその先は地平線しか無い。
まあ、小さな島はちょこちょことあるかもしれないが行って楽しい物があるかは分からない。


「…海が続いてるだけだ。それより出航するから俺らの部屋に行こうぜ」
「お部屋は一緒なのですか…?」


海よりもそろそろ自分を見て欲しい紫攸は、紅雪の背中に触れて促そうとした。
甲板では船軍長と船軍員が出航の準備に取り掛かり、掛け声が甲板に響いている。
俺ら、の部分に反応した紅雪が少し頬を紅潮して不安げな視線を向けてきた。


「…年がら年中盛ってる訳じゃねえから…」


ぶっちゃけ嘘だが、触れられていないので気付かれない。
上目遣いになった蒼珠の瞳に見つめられるだけで、紫攸は紅雪の全てが欲しくなるのだが必死に耐えながら連れ立って準備された船室に向かうのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...