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一章
03, 手紙
しおりを挟む紫峰国は、草原や牧場で埋めつかされる程の自然豊かな国家。
海岸沿いには砂浜もあり、日向ぼっこやお出掛けにとても最適な場所で、岩場では釣りが出来る為か子供たちの遊び場ともなっている。
同盟国ともなっている紫峰国と蒼鳴国は、海を挟んだ場所に首都があり、商団船が多く行き来していた。
蒼鳴国の首都から陸地で紫峰国に向かえば、早くて二月掛かるのだが、航海だと休む事無く突き進めば二日で到着する程近いので、商団は陸地を使う事はあまりない。
しかし海には海賊船もいる為、軍事国家の蒼鳴国で鍛えられている護衛官が護衛船に乗り近隣国の商団の警護を受け持ったりしていた。
**
航海二日目の朝、夜には紫峰国に着くぐらいの速度で進んでいた大船。
紫攸の隣で寝ていた紅雪が何かに気付いたらしく目を覚ました。
身じろいだ事で、抱き締めて寝ていた紫攸も同じように目を覚ます。
「……何か聞こえませんか?」
風以外の音ならば甲板で船員たちが仕事しているからその声ではないだろうか。
そう思いつつ、部屋の小窓から外を眺めた紫攸は何かに気付くと上着を羽織って前を紐で止めながら甲板に出る。
紅雪は着替えが終わっていない為に、突然出て行ってしまった紫攸を見送るしか出来なかった。
「…間諜は何か情報を送って来たのか?」
「ああ。すっごい悪い情報だけど…」
甲板に紫攸が着くと、寡雲が小さな紙を広げて苦悩の表情を浮かべていた。
船員に肉を船の柵に止まる鷹にあげるように指示をして、寡雲の傍に寄ると問い掛ける。
紙を見つめていた寡雲の視線が紫攸に向けられると苦笑を浮かべながら白い紙を差し出された。
「……これ本気か?」
「ああ、信用筋からの情報らしい。このまま連れて行ったら最悪な事が起きるかもしれないね…」
紙に書かれた内容、読んだ紫攸の手が怒りで震えている。
少し怒声を含んだ声に、寡雲は怯える事もなく答えると遠くを見つめて呟いた。
「…あいつ等をここに来させろ」
「紅雪様も?」
「……ああ」
あいつ等、とは紅雪の秘密を知る人物達の事。
寡雲もそれを知っているので敢えて誰とは言わない。
紅雪の名前を出されて紫攸は一瞬悩んだが、彼女の行動力を前回で身を持って知ってしまった今となっては隠すことは出来ない。
連れて来るように頼むと、「了解」と答えた寡雲が船室にいる仲間たちを呼びに戻っている間、紫攸は間もなく現れるだろう紫峰国を見つめていた。
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