~ 神話 ~ 皇帝陛下は白銀髪にキスをする

ERICA

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一章

05, 祖父

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普通ならばもう寝ている時間。
しかし、大船で朝まで待てば紅雪の髪色を隠す事は難しい。
時間的に皇宮に行く事も出来ない一行は、一か八かの賭けに出ることにしたのだった。
調べ済みの屋敷の門に紅淡と詩音が立ち、紫攸たちは少し離れた場所で二人の動向を見守る。


「うっせええええ!!!」
「すまない…私は楊紅淡、祖父に取り次いで欲しい」


ドンドンドン!!と深夜に関わらず大きな音を立てて門を叩く紅淡、屋敷に住む下男が直ぐに門を開けて二人に怒鳴りつけた。


「だ、だ、だ、旦那さまーーーーーっ!!!」


『祖父』と言った紅淡に視線を向けた下男は、暗闇でも映える赤髪に気付くと慌てたように叫びながら奥へ引っ込んでしまう。
そんな下男の叫び声に驚いた屋敷の住人がぞろぞろと門前に集まって来て、紅淡は詩音を守るように彼女を背中に隠した。



「あの馬鹿…目立つような事をするなとあれ程…」
「おじい様はどんな方なのでしょうね…」


それを遠目から見守っていた紫攸が呆れた声で洩らす。
見目を気にせず会うことが出来る紅淡を少し羨ましそうに見つめながら紅雪が呟いた。


「あ、入りましたね…っ」


気を逸らそうと八歌が紅雪に声を掛けると、門がギギギィと音を立てて閉まった。



*****



「紅淡、久しぶりじゃな…」
「じい様…お久し振りで御座います」
「そなたは紅淡の嫁じゃのう」


屋敷の奥に通された紅淡と詩音、目の前に座る祖父である楊 馬匠よう ばしょうに頭を下げる。
詩音の存在に気付いた馬匠が目尻を下げて笑みを浮かべた。


「紅淡さまの妻の関詩音と申します。宜しくお願い致します」
「おお、可愛い嫁を捕まえたではないかっ。今、寝所の準備をさせておる…もう少し待っておれ」


大らかな笑みを浮かべた馬匠が詩音を見つめてうんうんと何度も頷く。
夜間に現れて理由の大半は、泊まる場所の確保だと気付いていた馬匠が笑顔で言葉を紡いだ。


「じい様、今日は私たち以外も一緒に来ております…その者の寝所も準備して頂けますか?」
「ほお…そなたが連れて来た者なら身元も確かだろうのう…構わんぞ」
「ありがとう御座います」


紅淡を信用しているらしい馬匠は断ることも無く許可を与えてくれた。
深々とお辞儀をしてお礼を伝えると座敷を離れて門に向かう。
門前に立つ下男に開けて貰うと、外で見守っていた一行に手を振って合図を送った。


「合図だ…」
「……っ」


見守っていた紫攸が紅淡の合図に気付いて紅雪を立たせる。
紅雪は初めて会う家族にドキドキしてしまい緊張で足が動かなかった。


「お前を嫌いになる奴なんていねえよ…大丈夫」
「紫攸様…」

それに気付いた紫攸は、紅雪を姫抱きして紅淡が待つ屋敷に向かう。
フードが落ちない様に手で押さえながら紅雪は紫攸の言葉を心の中で反復させて気持ちを落ち着けたのだった。
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