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一 章 ・ 女 中
捌.甘味屋さん
平助くんと一さんが私の隣を歩き、新八さんは一歩先を歩いた。
本当に警護してくれているようで、隊長クラスじゃなきゃ近付けない程の威圧感が大きな背中から漂っている。
私をすっぽり隠せる程の大きな背中、男性特有のがっちりとした体格、見上げる程の身長、普通なら恐怖の対象でしかないのに、新八さんたちは逆に安心出来た。
自分から触れられるのは総司さんと平助くんだけだけど、刀を持つ事になったら柔術を学ぶ機会もある。
皆と触れられるようにならなきゃいけないと思うと一気に不安になる。
それでも、私を信じて傍にいてくれる人がいるだけで成長出来るかもしれない。
そんな僅かな期待を胸に宿しながら、三人と一緒に屯所の門を抜けたのだった。
「何処の甘味に行くつもりだ?」
「そういや、聞いてなかったな~」
「左之さんの行き付けのお店だよ」
一さんがおもむろに口を開くと、同調するように新八さんも聞いてくる。
平成じゃないから店名なんてない。
着物とかのお店は店名…苗字が店名になってるんだけど…。
私が行くお店を告げると、隣にいた平助くんの顔色がいきなり曇った。
「あー…おまささんの処かー…」
含みのあるような行きたくなさそうな雰囲気になる平助くんの様子に、
「お前、相変わらずおまさが苦手だな~!」
「新八、桜に余計な事吹き込くなよーっ!」
私が聞く前に、平助くんの後ろにいた新八さんが愉しそうにからかいながら肩に腕を回した。
何で苦手なのか理由を聞きたかったけど、二人が言い合う、いや平助くんがワンコのようにキャンキャン言ってるだけで新八さんは愉しんでて、私は聞くのを諦める。
「ああなると中々終わらぬ。あやつらは場所も解るみたいだ、先に行き二人を待とう」
「そうだねー…楽しんでるの邪魔するの悪いし、先行きますか」
未だに絡み言い合う(平助くんだけ)二人を一瞥して一さんの提案に乗る事にする。
歩き出すと自然と一定の距離を保ちながら歩調を合わせてくれる一さんに視線を向けると微笑んだ。
― 永倉side ―
桜と一が行ったのを確認して平助に顔を戻した。
「…記憶ねぇみてーだな…」
俺が言った言葉に、平助は慌てたように先程まで桜がいた場所に視線を向ける。
やっと桜が居なくなった事に気付いて平助は青ざめると辺りを見回していた。
「お前・・・行ったのに本気で気付かなかったのかよ~…どんだけ鈍いんだ~?」
「うるせー。それより桜は?」
「おまさのとこ。それより俺の言葉聞いてたか~?」
呆れながらも慌てている平助が動き出さないように腕を掴んで制す。
俺の言葉にやっと落ち着いたのか顔を俺に戻す姿を眺めながら聞いてみた。
「んーーー…?」
「馬鹿。桜、記憶ねぇみて~だって言ったんだ!ちゃんと聞いとけ!」
「いでっ!!ああッ!確かに、…そっかー…記憶消したのかな…?」
思い出そうとしてるのはわかるが、思い出せないらしくてヘラッと笑う平助にイラッときた。
ベシッと頭を叩きながら先程の言葉をもう一度言う。
叩かれた頭を押さえるがやっと思い出したのか、戸惑うような平助の視線。
「さあな~。ただ、桜は今の平助に癒されてっと思うからよ…お前はそのままでいろ」
「・・俺は、桜の傍にいるだけで良いのかよ」
「桜が自分から話してくれるのを待つのも優しさだと思う。土方さんは、わかってたんだな~」
そう答えても、平助は不満そうにブツブツ言っていた。
俺は土方さんが意外と桜の事を気にかけているのに気付いて見直していた。
ブツブツ言い続ける平助の頭を先程より強く叩くと、
「行かなきゃ、一に桜の隣取られちまうぜ~?」
と言いながら二人が待つ甘味屋に向かった。
― 永倉side end ―
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