15歳から始まる悪女人生計画。

🐾🐾

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そして、舞台は始まった。

大丈夫、大丈夫。

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拙い文章ではございますが、多くの方にブックマークして頂けてとても嬉しいです。ありがとうございます。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
とある妹の願い。


小さいころの話だよ。私がまだ9歳で、お姉ちゃんが10歳の頃。
こわいこわい夢を見たの、私の中にいる悪魔が耳元でずっと囁くんだ。
お前のなかには力がある、それを使えばいい。
何も怖いことなんてない、だから解放しろって。

小さいころの私にもわかったんだ。
それはとても恐ろしくて、やっちゃいけないことなんだって。
お母さんも私と約束した、それはやってはダメだって。
でもね、知らなかったんだ。
”どうやって抑えるのか。”が。





暗い瞳で私を覗き込む私とうり二つの悪魔。
夢の中、世界は水面に蓮華が咲く世界。
何よりも死を連想させる、その中心で。
ただ夢が覚めるのを体を丸めて待っていた。

「―――――」

悪魔が何か言っている。
私は強く耳をふさいで目を閉じた。
聴こえない、見えない。
夢なら覚めて、夢だから覚めて。
なんどもなんども、そう願って。
いつの間にか涙がこぼれていた。
もしかして夢は冷めないんじゃないか?
ふとそんな不安がよぎったとき。

「きゃはははははは」

私の手を強引につかんだ悪魔がいた。
私はとっさに目を開けてそいつをみる。
不安と恐怖が、押し込めて気づかないふりをしていた狂気が顔を出した。

「ひどぉいカオだねぇ、みっともないみっともない」

げらげらとワタシが笑っている。
私とうり二つのそいつが。
意味がないとわかっていて、逃げようと腕を振り回す。
ワタシもすんなりと手を放した。
けれど次の瞬間。
口から何かこぼれ出た。
手で拭うとそれは黒い液体だった。

「なに、これ」

気持ち悪い気持ち悪い、気持ち悪い。
嫌悪感と吐き気が襲ってくる。
相変わらずワタシは笑って見下すような瞳で見てくる。

「解放、すればカンタン、だからしよ?」

解放、それがどんなことかは知らない。
けれどお母様が言っていた。
私たちの声の力はとても恐ろしいものだから、自制、
えー・・・とつまりは、がまん?しないといけないんだって。

「嫌だ嫌だ嫌だ!我慢するのお母様との約束なの!!」

半場狂乱で叫んだ。
自分に言い聞かせるように、でないと。
悪魔に飲み込まれてしまいそうで。
その時、世界に波紋ができた。


「そうだね」

背後から抱きしめられる。
耳を清めるように、沁みこんでいく声は姉さんの声。
暖かな腕で、優しく抱きしめてくれている。

「目を閉じちゃだめ、まずは相手をしっかりとみて」

宥めるようにそういってくれた。
私はその言われたとおりにする、怖いけれど。

「それはなに?」

――悪魔。
そう答えると首を振った。

「彼女はあなたの中の力、あなたがそう思い込めば
力はそのように形を変えてしまう」

――あなたはどんな力がほしいの。
頭を撫でてくれる。
するとさっきまでのモヤモヤや気持ち悪さがすっきりとした。
お姉ちゃん凄い。
お姉ちゃんってこんなこともできたんだ。

「お姉ちゃんを守れるような、力がほしい、怖い力なんていらない」

光があふれる。
世界に満ちていた水面が波紋を広げ、世界はひび割れるように
本来の色を取り戻していく。
その景色は色とりどりの花に包まれた草原。
気持ちのいい風が吹き抜け、輝く太陽に包まれた大地。
抱きしめていたお姉ちゃんの腕がゆっくり解かれる。

「どうして、お姉ちゃんはここにいるの?」

そう問いかけようとして、私は息をのんだ。
言葉は風に乗る。
風に乗って、変わり果てたお姉ちゃんに届く。

「どう、して・・・」

お姉ちゃんの綺麗だった黒髪は、色を失っていた。

「だって、怖い力はいらないのでしょう?」

私の隣で声がした。
ワタシの声だ。

「だから、怖い力は――」

優しかった風が吹き荒れる。
風が吹き荒れてお姉ちゃんの髪を巻き上げる。
そこには血のように朱い瞳があった。
私の視線が不自然だったことに気付いたのか
お姉ちゃんは、はっとしたように目を閉じた。


「大丈夫、大丈夫」

笑うお姉ちゃんに、私は笑いかけられなかった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

10歳のころの出来事。
そうして彼女が変わった。
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