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訓練番号5番、底辺の底辺、それが僕

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主人公とは別サイドから見た景色からスタートです。他の視点から見た主人公や息子君や男性諸君を是非お楽しみ下さい。


少し暗くダークな部分です。
三ページ位説明文続きます(*- -)(*_ _)ペコリ





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僕の...俺の名前はレオン

生まれはスラム街、人に言えない事をしてここまで大きくなったと言っても過言じゃない


俺の母親はスラム街の高級娼婦だった

中でも数少ない高級娼婦だったからか、客に困るなんてこと無く、下手したらそこら辺の底辺貴族を凌ぐ稼ぎだったのではないだろうか

しかし、母親は娼婦としては一流でも母親としては最低で最悪な女だった

俺は生まれてこの方、母親に抱き締めて貰った事はおろか会話らしい会話すら記憶にない


母親は何時、いかなる時だろうと娼婦だった

自分が信じるのは自分のみ、大事なのは自分と金

俺は何れ末端の男婦館にでも売られる予定だった

顔が良い母親に似ている俺は高額で取引される道具だった

母親とは名ばかりの俺の母親は、俺が生まれて、それはそれは嘆いたらしい

どうしてお前は女で生まれて来なかったのだと

女で産まれてさえ居れば一生飼ってやったもののと、嘆いてはストレスを解消する様によく打たれ

生きて居る、ただそれだけの状況だった

人らしい生活をして来なかった俺にとって、スラム街以外の暮らしなど想像も出来なく最初、苦労の連続だった

まともに飯さえ食えない。言葉も話せない。糞尿は垂れ流しのガリガリの汚い子供

それが俺だった

まず初めに人としての常識から入り、一般的な教養を身に付ける事から始まった


スラム街出身の俺にとってはそれはそれはキツいものだったが、救ってくれた黒騎士隊のアレス隊長の期待に答えたく、俺を拾った事を後悔させたく無くて頑張った


それはアレス隊長に認めて貰いたいから、何れ、アレス隊長率いる黒騎士隊に入れて欲しいから

それはすごく難しい事で他の奴らは無謀だと言うが、俺は絶対諦めない

この世界は俺達の様なスラム街出身の奴にとって、とても住みにくい所で貴族ばかりで成り立つ騎士になど夢のまた夢だとわかってる

その夢を掴む為、俺は今日も奮闘するのだが、俺の人生を大きく変える出来事がこの後、待ってるなど知らず、俺は先を急ぐ

バタバタと長い廊下を進む先は食堂で、俺は取り損ねた遅い昼食をとるべく脚を進める

腹の虫がグゥと鳴るが、こんなのスラムに居た頃の空腹に比べれば屁でもない

あの空腹の壮絶さは二度と味わいたくないしあの苦しさを知ってる俺は今のこの空腹など空腹とは呼ばない

きっと今頃、食堂へ行っても録なものは残ってないだろう

今日は時間も忘れ、朝から剣術の訓練...

まぁ、まだ正式に訓練に参加出来ない俺は時間を見つけては自己流の訓練をしている訳だが

今日午前中は休みだったが、午後はちゃんと仕事が待ってる

あと少しでその仕事の時間が来る

急いで行かなければ飯すらあり付けないかも知れない

だいたいあの食堂の副料理長は何かと俺に煩いしキツい

あの食堂の料理長は良い人だと知ってるが....

俺を汚い物でも見てくる副料理長が俺は苦手だ


食堂で飯を食うのすら気に食わないらしくて、何時も食堂の隅で飯を食う

漸く一般的な常識が身に付き、飯も普通に食える様になったが、ポロポロと良く食い物を落とす俺が気に食わないのか、嫌、俺がする事全般的に受け付けないのかもしれない


黒騎士隊のアレス隊長に拾われ二年、その後、見習い訓練生になって三ヶ月


この場所が住みやすいばかりでは無いと分かってる


黒騎士隊のアレス隊長に拾って貰わなければ俺は今ここに居ないだろう


この場所は嫌な事は多々ある

でも、あのスラム街に比べたらここは遥かに天国だ

味の有る食事は腐っても無く、泥水を啜る事も無い


弱者だからと謂れのない暴力を振るわれる事も無く、雨風凌げる建物と寝具まで付いてる

オマケに勉強までできる

勉強は正直言うとわからない事だらけだけど黒騎士隊に入る為には絶対欠かせない事だ

俺が入りたい黒騎士隊は主に王都の巡察、偶に市街地の治安維持活動や訓練...要するに様々な事をやる機関な訳だが、国民、主に平民や末端の貴族に人気がある

そして反対に白騎士隊は王族、貴族の護衛、そしてこの世界には少ない女性の近辺警護

コチラは貴族や王族の女性に頗る人気がある

白騎士隊に入るには容姿端麗が必須と言う決まりでも有るのか白騎士隊のメンバーは誰もが容姿端麗で整ってる

白騎士隊が女性寄りの美しさなら、黒騎士隊は男らしいとか、逞しいとか、そう言う言葉が似合うカッコ良さ、そう、野性味溢れると言えるのかもしれない

まぁ、言葉を置き換えるなら、ガサツ、乱暴、汗臭い...

おっと、こう言ったら少しも褒めて無風に聞こえるけど、俺は決して褒めて無いわけでは無い

取り敢えず嫌いだったらこんな事は言わない

でも、そんな野性味溢れる中で別格なのが何人か居るとだけ言っておこう

その一人がアレス隊長

白騎士隊隊長にも負けず劣らずの美形

あの鉄仮面を脱ぎ捨てればさぞやモテるだろうと思えるが本人にその気が無いので仕方ない


話しは戻すが、そんな黒騎士隊と白騎士隊だが

何が問題なのかと言えば

白騎士隊と黒騎士隊は犬猿の仲だと言う事だろうか

目が合えば罵りあい、口を開けば罵声が飛び出る

殴り合いの殺傷は禁止されてるので今の所それは大丈夫

だけど、はっきり言って俺は

白騎士隊より黒騎士隊の方が俺は好きだ


助けられたからとか、欲目で見ているとかでは無く、何がとは言えないけど...


黒騎士隊のメンバーが俺を普通に扱ってくれると言う事が大きいのかもしれない

ま、中には鬼の様に使ってくる奴居るし、ウザイくらい扱いて来る人も居る


だけど何故か憎めない

スラム街に居る時は全てが敵だった筈なのに

まぁ、黒騎士隊のことを考えればキリがない

黒騎士隊も白騎士隊もお互いが相手の名前は禁句だと言っておく


ただ例外はお互いの隊長が仲が良い...


とは言えないが、悪くも無く良くも無い

白騎士隊が身分の高い貴族ばかりの者だとすれば黒騎士隊は身分の低い貴族ばかり

その中でも白騎士隊の隊長は王族の.....

「何時まで突っ立ってるつもりだ?」

騎士に付いて考えてたらどうやら食堂に着いてたらしく、俺の事が大嫌いな副料理長が腕を組み、嫌そうな顔して仁王立ちしてる


俺はハッとしてキョロキョロと周りを見つめる

やはり時間外な事もあり、人は少ない

俺は副料理長にペコリと頭を下げ慌ててカウンターへ向かう

チッと嫌そうに舌打ちした副料理長は俺を目に移す事も嫌なのか厨房奥へと戻って行く

ここは、騎士以外にも様々な役職の者が居たりする

その中の一人、薬師で医者のリアムさんは時間外に良くやって来ては食事をとる人だ


優しくて、ここの人達の中でも常識人

良いことは良い、悪いことは悪いがはっきりしてる人

腹に一物も二物も持ってる誰かさんに比べたらマトモな大人と言える

まぁ、この中での話しだけど


ただ、この人も問題が無いと言えば嘘になる


本来なら名門貴族で大きな領地を管理する立場の筈のリアムさんで

本当は様を付けないといけない、この人が何故か医者などしている

女が少ないこの世界だけど、大貴族なんかは嫁に困るなど、あまり聞いた事が無い

王族貴族は身分の高い者から女性が宛がられる

所謂見合いだ


最終的に選ぶのは女性に権利が有るけれど、やはり人気が有るのは身分の高い見目麗しい王族や貴族

白騎士隊の隊長なんかが良い例だ

この国では女性は五人までなら夫を持てる

女性が少なく、やむを得ない処置だが、仕方が無い事らしい

ただ、夫候補と言う制度があり、候補と言う言葉が曲者だ

子供を作れるのは夫とだけ

候補が女性に認められると正式な夫になれる

その夫候補と言うものは男が自分で決めるもので、幾ら女性に夫を選ぶ権利が有ろうと、男が夫候補に名乗りを挙げなければ女性は選びたくても選べない

五人の夫が決まれば夫候補達は解除され、解散し、新たに他の女性の夫候補に名乗りを上げる

また、途中で他の夫候補になりたい場合なんかは名乗りを上げてる女性、その家の主に辞退する旨を示して違約金やらを払い、漸く夫候補を辞退出来るらしいが、物凄く面倒臭いからやる者は少ない

いつか夫候補から夫にと願う者は後を絶たない

だが、夫候補中、何時まで経っても選ばれず長い期間を待つことになる者も少なくない

だから男側(王族貴族限定)も妻にと望む者に慎重になる

その繰り返し

選ばれない者は何時まで経っても選ばれず、人気が有る者は女性からもアプローチがある

貴方だったら直ぐに夫にします、だから私の夫候補になりませんか?と



その夫候補の期間中、女性は選別するのが普通で

その期間、性格や思考、趣味や相性や、家柄なんかを主に見ると言う



そんな中、大貴族で見た目も整ってて性格も問題無いリアムさんは現在も含め誰の夫候補でも無いし、なってない

どんなに家の者に進められても女性を寄り付け無かったらしい

女性が嫌いだとか苦手だとかでは無いらしいが、嫁取りに忙しい他の貴族からしたら異質に見えたらしい


俺はただ単に勉強に忙しく、興味がある事が薬学で、そんな暇が無かっただけだと思うけど...


「さっさと食えこの糞ガキ」


その言葉にハッとし、止まってたスプーンを動かす

「ったくスラム街出身の奴はコレだから躾のなってねぇ...何時まで経っても片付かねぇ....ったく、ここも汚しやがって...」

ブツブツと一人呟きながら乱雑にテーブルを拭く副料理長

俺は慌てて料理を口に詰め込む

そして急いで返却口まで持って行くと、途中リアムさんと目が合う

気にしない方が良いと苦笑いされヘラリと笑う

「あ、リアムの若旦那様!食後のお飲み物など如何でしょうか」

大貴族出身で何れ莫大な遺産と領地なんかを継承するリアムさんにヘコヘコ頭を下げる副料理長


俺には見せない満面の笑みを浮かべてる

その手はゴマを摺る見たいにモミモミと動く


俺には既に興味が無いのかリアムさんに媚を売る事に忙しいのかもしれない

俺はそんな二人を横目に見ながら、その背後を通り抜ける

その二人の間を通る時、リアムさんが慌てた様に声を張り上げる

「ああっとごめんねぇ!零しちゃった!」



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