彼が獣になる瞬間

高福あさひ

文字の大きさ
2 / 12

02

しおりを挟む
「いつにする?やるなら早いほうが良いでしょ?」

あっさりと話がまとまって、まるでカラオケでも行かない?みたいなノリで予定が埋まっていく。

「えっ、あっうん。今週の土日とか、どうかな?その、馨がよければ、だけど」

「私は全然いいわよ、空いてるし。私の家に来るでしょ、着替えとか準備しときなさいよ。それから使いたいゴムとかあったら希望聞くけど」

「ひえっ、あああああの、いやその私詳しくないから全部お任せする!!でもその、急にやっぱり嫌だって言っちゃうかも…」

ゴムとか資料としては見たことあっても使ったことがないからどんな種類があるとかも詳しく知るわけがない。電話で口約束なのに、軽々しくセックスしようなんて言ってしまった自分に早くも後悔が募っていく。けれどその先が見たいと思っているのもまた事実で。

「いいわよ、ゆっくり慣らしていけば。アンタのペースに合わせるわ、私は全然気にしないから。それじゃあ、明後日の朝からおいで。いきなりヤりますなんてことにはならないから、それなりにムードってもんがいるでしょ」

「あ、そっか。じゃあゲーム持って行くね、今度のネタになりそうな感じのゲーム仕入れてきたの」

「ええ、わかったわ。また明日も連絡するわね、おやすみ」

「うん、おやすみ」

軽いノリで週末の予定がセックス初体験とかいうことになってしまった。うわぁ、と頭を抱えるがどこかちょっと楽しみのようなどんな風になるんだろうって思っている自分もいて、不安なんて少ししかなかった。







「あっ、馨。お、おはよう」

肝心の週末になってピンポン、と玄関の呼び鈴を鳴らしてドアの前に立つ。不思議と緊張はなくてなんだか女友達のところに泊まりに来た気分だ。

「おはよう、凜。さ、入って」

何度か来たことのある部屋は相変わらず綺麗に整頓されていて私の部屋とは大違いだ。私の部屋はトーンが落ちてたりとかして汚いし洗濯物も大量放置が当たり前の汚部屋。女子力がない。

「ふふ、緊張なんてする必要はないわ。紅茶でも飲む?」

「うん、飲む。ありがと、あんまり緊張はしてないかな。なんていうか、実感がなくて」

そう、ここまで来たのに未だに実感がないのだ。ふわりと優しく肩を自然に抱かれてなんの躊躇いもなく足を進めていく。勝手知ったる部屋だから遊びに来た日と同じように行動する。

「座って。ゲームは…あ、テレビゲームね。繋ぐわよ」

「ありがとう、その、ごめんね。急に」

「いいのよ、私をそれだけ信頼してくれてるってことでしょ」

たしかに、馨の言うとおりだった。誰かと経験をすると考えたときに、誰と私はするんだろうって想像した。そうしたらなぜかあんまり幸せな想像は出来なくて、もし妊娠しちゃったらどうしようとか、気持ちよくなれなくて痛いだけだったらどうしようとかそういうことばかりが頭を支配していた。けれど馨だったら大切にしてくれる、馨なら優しく抱いてくれる、そう思った瞬間に馨に初めてをもらってほしいって思えた。馨はマナーも守ってくれるし私たちはいい大人だけれど、きっと、私にだけつらい思いはさせたりしないってわかってるから。だから馨がいいって思ったんだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敏腕SEの優しすぎる独占愛

春咲さゆ
恋愛
仕事も恋愛も、兎に角どん底の毎日だった。 あの日、あの雨の夜、貴方に出逢うまでは。 「終わらせてくれたら良かったのに」 人生のどん底にいた、26歳OL。 木崎 茉莉 ~kisaki matsuri~ × 「泣いたらいいよ。傍にいるから」 雨の日に現れた、30歳システムエンジニア。 藤堂 柊真 ~Todo Syuma~ 雨の夜の出会いがもたらした 最高の溺愛ストーリー。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

密会~合コン相手はドS社長~

日下奈緒
恋愛
デザイナーとして働く冬佳は、社長である綾斗にこっぴどくしばかれる毎日。そんな中、合コンに行った冬佳の前の席に座ったのは、誰でもない綾斗。誰かどうにかして。

若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~

雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」 夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。 そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。 全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

イケメンイクメン溺愛旦那様❤︎

鳴宮鶉子
恋愛
イケメンイクメン溺愛旦那様。毎日、家事に育児を率先してやってくれて、夜はわたしをいっぱい愛してくれる最高な旦那様❤︎

手のかかる社長から狂愛されちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
手のかかる社長から狂愛されちゃいました

続・ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました

かほなみり
恋愛
『ド派手な髪の男にナンパされたらそのまま溺愛されました』、『ド派手な髪の男がナンパしたら愛する女を手に入れました』の続編です。こちらをお読みいただいた方が分かりやすくなっています。ついに新婚生活を送ることになった二人の、思うようにいかない日々のお話です。

処理中です...