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さっきお風呂を借りて、身体中ごしごしこすって綺麗にした。だけど、それでも私は今から抱かれるんだって意識がない。どこか遠い世界の話のようで私には関係のない話のよう。
「ほら、紅茶。アンタは砂糖たっぷりのミルクティーが好きでしょ」
「あ、あったかい!」
ラグにぺたりと座り込んでペンタブをつつく。ゲームに飽きた時は仕事ができるようにペンタブは持ってきていたし、アナログでも描けるからとりあえず作業環境は整えた。
「そうでしょう?ほら、身体冷えちゃうからこれも羽織ってなさい」
「ありがとう、馨」
ブランケットを肩にかけてくれて、自分も隣に腰を下ろす馨。その手には二つの色違いのマグカップが握られている。両方とも湯気が立ってはいるが中身は違うようで馨の飲み物はコーヒーだった。
「ふーん、今回は乙女ゲームなのね。どんな題材にするの?」
「最近流行ってる乙女ゲーム転生ものにしようかなぁって…。ただ、普通に悪役転生とかにしてもありきたりすぎて多分売れないと思うの。それだったら捻ってでも面白い作品を生み出したいじゃない」
「なるほどね。まあ、好きなように考えなさい」
私のペンネーム「りんと馨」の元になっているのはわかりきっているだろうけど馨と私が組み合わさっているだけの名前。行き詰ってしまった時にいつも馨が私のぐちゃぐちゃになった思考を変えてくれるから私にとって馨が一番大事ってことを表現したくてこの名前になった。
「と、いうわけで!!一緒に攻略しよ!!」
コントローラーを握ってゲームを買うときに一緒に購入した攻略本を片手にニッコリと笑う。最初から私は自力で攻略するつもりはない。一緒にするか攻略見ながらするしか頭にない。
「ちょっとは自分でやりなさいよ!!もう、別にいいけど!!」
「やった!!」
あれは違う、これも違う、と言いながら二人で王道のキャラクターから攻略を始める。そこに甘ったるい恋人同士のムードなどは欠片も存在はせず、セックスをするような雰囲気でもない。それがひどく私を安心させた。
「うわー…。このゲーム思ったよりもドロドロ…」
「そうね、なんというか…。展開もそうだけど、人間関係もドロドロしてるわね。これ、本当に人気ゲームなの?甘さが一つも感じられないんだけど」
甘さを求めて乙女ゲームをしてみたのだが、どうもさっぱりとしない。
「あ、これバッドエンドだ」
「え、それ本当?」
どうやら、私たちは攻略本を見てやっていたにも関わらずバッドエンドへとたどり着いたらしい。ちょっと理解ができない。
「もおっ、やっぱりここの選択肢じゃん!!馨がこっちにしようって言うから」
「あら、凛だってこっちの選択肢は間違ってるじゃない」
二人で顔を突き合わせて攻略本と答えあわせをすれば結構、自信満々に選んだ選択肢はどれもバッドエンドに行く選択肢だった。なんともまあ、悲しい話だ。
「次はこっちのキャラで頑張るもん」
「はいはい、飽きるまで頑張りなさい」
それでも喧嘩に発展しないだけ、私たちは特殊だろう。さりげなくそこにボディタッチはあるけれど、いやらしさの気配はなく、本当に女友達といる気分だ。
「ねえ、凛。こんな時に聞くのもアレだけど、キスってあり?」
「へ?キスって、口にするキス?ちゅーのこと?」
「ええ、そうよ。ほら、やっぱり初めては好きな人と、とかキスだけは好きな人に捧げたいとかあるでしょう?」
「いいよ、私あんまりこだわりないしさ。全部、優しく馨が奪ってよ」
「わかったわ。優しく、最高の思い出にしてあげる」
艶やかに笑った馨に不覚にもドキッとさせられたのは秘密だ。ひらりと伸びている私の髪を掬い上げてキスを落とす姿は王子様みたいで本当に、馨によく似合っている。
「ねえ、馨。その、あの、ね」
コントローラーを置いて隣に座る馨に向き合えば。顎をすくわれて目を見つめられる。
「なぁに、凛」
「やさしく、してね」
それが、私たちの合図だった。
「ほら、紅茶。アンタは砂糖たっぷりのミルクティーが好きでしょ」
「あ、あったかい!」
ラグにぺたりと座り込んでペンタブをつつく。ゲームに飽きた時は仕事ができるようにペンタブは持ってきていたし、アナログでも描けるからとりあえず作業環境は整えた。
「そうでしょう?ほら、身体冷えちゃうからこれも羽織ってなさい」
「ありがとう、馨」
ブランケットを肩にかけてくれて、自分も隣に腰を下ろす馨。その手には二つの色違いのマグカップが握られている。両方とも湯気が立ってはいるが中身は違うようで馨の飲み物はコーヒーだった。
「ふーん、今回は乙女ゲームなのね。どんな題材にするの?」
「最近流行ってる乙女ゲーム転生ものにしようかなぁって…。ただ、普通に悪役転生とかにしてもありきたりすぎて多分売れないと思うの。それだったら捻ってでも面白い作品を生み出したいじゃない」
「なるほどね。まあ、好きなように考えなさい」
私のペンネーム「りんと馨」の元になっているのはわかりきっているだろうけど馨と私が組み合わさっているだけの名前。行き詰ってしまった時にいつも馨が私のぐちゃぐちゃになった思考を変えてくれるから私にとって馨が一番大事ってことを表現したくてこの名前になった。
「と、いうわけで!!一緒に攻略しよ!!」
コントローラーを握ってゲームを買うときに一緒に購入した攻略本を片手にニッコリと笑う。最初から私は自力で攻略するつもりはない。一緒にするか攻略見ながらするしか頭にない。
「ちょっとは自分でやりなさいよ!!もう、別にいいけど!!」
「やった!!」
あれは違う、これも違う、と言いながら二人で王道のキャラクターから攻略を始める。そこに甘ったるい恋人同士のムードなどは欠片も存在はせず、セックスをするような雰囲気でもない。それがひどく私を安心させた。
「うわー…。このゲーム思ったよりもドロドロ…」
「そうね、なんというか…。展開もそうだけど、人間関係もドロドロしてるわね。これ、本当に人気ゲームなの?甘さが一つも感じられないんだけど」
甘さを求めて乙女ゲームをしてみたのだが、どうもさっぱりとしない。
「あ、これバッドエンドだ」
「え、それ本当?」
どうやら、私たちは攻略本を見てやっていたにも関わらずバッドエンドへとたどり着いたらしい。ちょっと理解ができない。
「もおっ、やっぱりここの選択肢じゃん!!馨がこっちにしようって言うから」
「あら、凛だってこっちの選択肢は間違ってるじゃない」
二人で顔を突き合わせて攻略本と答えあわせをすれば結構、自信満々に選んだ選択肢はどれもバッドエンドに行く選択肢だった。なんともまあ、悲しい話だ。
「次はこっちのキャラで頑張るもん」
「はいはい、飽きるまで頑張りなさい」
それでも喧嘩に発展しないだけ、私たちは特殊だろう。さりげなくそこにボディタッチはあるけれど、いやらしさの気配はなく、本当に女友達といる気分だ。
「ねえ、凛。こんな時に聞くのもアレだけど、キスってあり?」
「へ?キスって、口にするキス?ちゅーのこと?」
「ええ、そうよ。ほら、やっぱり初めては好きな人と、とかキスだけは好きな人に捧げたいとかあるでしょう?」
「いいよ、私あんまりこだわりないしさ。全部、優しく馨が奪ってよ」
「わかったわ。優しく、最高の思い出にしてあげる」
艶やかに笑った馨に不覚にもドキッとさせられたのは秘密だ。ひらりと伸びている私の髪を掬い上げてキスを落とす姿は王子様みたいで本当に、馨によく似合っている。
「ねえ、馨。その、あの、ね」
コントローラーを置いて隣に座る馨に向き合えば。顎をすくわれて目を見つめられる。
「なぁに、凛」
「やさしく、してね」
それが、私たちの合図だった。
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