彼が獣になる瞬間

高福あさひ

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本日、二話目です。






「あら、ここいいじゃない。部屋もきれいだし、各部屋にエアコンもついてるし。何より明るくて南向き、キッチンも新しくリノベーションしてるからオール電化」

「オール電化は、電気代高くなっちゃうよ?」

「安全には変えられないわ。それに払うものが少ないのは楽でいいわ」

「じゃあ、ここにする?」

少し各部屋の広さは違うが、すんなりと決まり店で手続きを行う。詳しい書類や必要な書類、今ここでする必要のあることを終わらせてしまって引っ越し日なんかも決める。私は比較的融通の利く職業だから融通の利かない馨にお任せ状態。こういうとき、漫画家でよかったって思うよね。

「ありがとうございました!!」

私たちを担当してくれてたのは馨の後輩なので、気楽にやり取りをして紹介ということで割引もしてもらえた。馨の人脈の広さには驚きで、住む世界の違う人だなぁとしみじみと思うことも多かった。

「こちらこそありがとう、またお願いするわ」

「はい!!」

馨と後輩君のやり取りをほほえましく見つめて、二人で店を出る。今日はそのままショッピングとお昼を食べることになっている。そのために持てる服で精いっぱいのオシャレはしたつもりだ。まあ馨に即座に却下されて朝一で様々な種類の服を取り扱っている、結構いいお値段のするアパレルショップへと放り込まれた。ちなみにその時に着ていた格安、庶民の味方な大手チェーンの服は剥ぎ取られて、店員さんの着せ替え人形になりました。そして馨によっていつの間にか会計されていて、それをそのまま着ていくことになった。靴もすべて、全身が馨によって選ばれたものだ。次に放り込まれたのは美容室で、伸びっぱなしになっていた髪の毛を少しだけ整え、そのまま化粧を施された。プロの手によって施された化粧はとても綺麗で、自分でやるよりも何倍も輝いていて、馨の隣に立つのに恥ずかしくない程度にはなっていた。しかし、その時点で私は疲れ切っていた。さすがに連れまわされすぎたというか、慣れないことをしすぎたというか…。

「凛、よく似合ってる」

その一言で、私はすごく嬉しくなって元気になっちゃうんだから、だいぶ馨のこと好きよね。











「さあ、次は化粧品を買いに行くわよ!!」

「え!?まだ買うの!?」

すでに紙袋に大量に入った服、まだ持てるけど今日一日でかなり散財している気がする、というかしている。それなのにまだ買うのか!?しかもほとんど馨が買っている。

「何言ってるの、今使ってるのほとんど肌に合ってないでしょ。それに今日見た限り、アイシャドウとか最低限で無難な色だけ。そもそも基礎化粧品が肌に合ってないんだから、めんどくさがりな凜でも使えるオールインワンとか試していくわよ」

もはや早口すぎて怖かった。馨ってどこまで見てるの。私、馨の前ではスッピンだったんだけどな。

「あ、はい」

そうして連れていかれた化粧品店は高級ブランドのモノばかりで、おいそれとは手が出せない。馨は別のものを見るといって私を店員さんに預けた後はさっさと離れてしまった。

「お客様は普段、どんな化粧品を使っていらっしゃいますか?」

「あ、えっとそのお恥ずかしい話ですが、ほとんどメイクをしないんです。化粧品もドラッグストアで買えるようなプチプラコスメばかりで…」

「そうだったんですね。では、基礎化粧品等はどうですか?お肌に合っていますか?」

「実は、痛みが出ることもあって…。あんまり使っていません」

そう、適当に買ってきたのが悪いんだけど、とある化粧水を使ったところ肌がひきつるほどの痛みがあって、それ以来は使えず、どうしても必要な時しか使っていない。なんか捨てるのがもったいなくてね。

「それはすぐに新しいものにするべきです。そうですねぇ、お客様のお話を聞く限りではかなり敏感肌と思われますので、こちらの化粧水と乳液、全てがそろったオールインワンはどうでしょうか?」

美容室でしてもらった化粧は落とされ、またスッピンなわけだけど、あの時痛かったのが相当堪えたのかちょっと怖い。それを感じ取ったのか、店員さんが敏感肌の人からとても人気だということを伝えてくれた。

「それじゃあ、ちょっとつけていきますね」

コットンにたっぷりとオールインワン・ジェルがつけられ、肌にのせられていく。少しひんやりとしたが痛みが発生することはなく、むしろ気持ちいくらいだ。

「痛みなどはございませんか?」

「はい、大丈夫です」

「それでは次はファンデーションなんですけど、こちらの商品はいかがでしょうか?」

最近人気だという大手化粧品会社のリキッドファンデーションとパウダーファンデーションの間くらいのクリームファンデーションだった。色は数色あったが一番合うといわれた色でそのままのせられていく。次々にアイシャドウ、チークを入れていき、あっというまに口紅まで終わってしまった。

「よくお似合いです」

ニッコリと微笑まれ、鏡を差し出される。そこにはたしかにさっきとはまた違った印象の私が写っていた。明るい肌色、ライトに当たってきらめく品のいいアイシャドウ。赤すぎないチークはほどよく、同じプロの手にかかれば私の平凡な顔もここまで見違えるのかと、しげしげと鏡を見つめてしまった。そうしていると馨が戻ってきて、さっき私の相手をしてくれた店員さんと何やら話をし始めた。そして、さっき紹介された化粧品は基礎化粧品も含めてすべてお買い上げとなった。





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