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3話 ゆかりさんとわたしと、校舎裏にて
会えない日々に
しおりを挟むそれから休日を挟んで四日間。
わたしはゆかりさんのお家には行きませんでした。
正確にいうと学校の帰りに近道として利用させてはもらいましたが、家の中には入っていません。
だって、そこにゆかりさんは居ないから。
彼女は今病室に居ます。
清潔な部屋で、ベッドの上で、わたしを待ってくれています。
お見舞いに行くたびにゆかりさんのお母さんに容体はどうかと訊ねると、順調に安定しているそうです。
病室へ行けばそこにゆかりさんはいて、わたしを笑顔で歓迎してくれます。
会いに行ってお話をして、楽しい時間を一緒に過ごす。
わたしにとってはいつもの光景、いつもの日常。
なのに、どこか心寂しいのはどうしてでしょうか。
原因は分かっていました。きちんと自覚しています。
わたしはゆかりさんに会いたいのです。
毎日顔を合わせている彼女に、会いたくて会いたくて仕方がないのです。
何を言っているのでしょうね、わたしは……。
自分でも最低だと思います。
こんなことを、わたしを覚えていない彼女をゆかりさんだと認めないみたいな卑屈な気持ちを、勝手に抱いてしまうだなんて……。
心底自分を嫌に思って、それでも胸の疼きは日に日に増す一方でした。
病室でではなく、あの古風なお家で遊びたかった。
変わらない笑顔で笑い合っていたい。
……いいえ、ただ意固地になっていただけなのかもしれません。
ゆかりさんに変に遠慮してしまっていることに、素の自分で接していないことに違和感を覚えて。
ゆかりさんに対して、友達に対して、それはおかしいんじゃないか、と。
つまり、全部わたしの我がままです。
正直なところを漏らせば、不安でした。
このままゆかりさんは目を覚ましたままで、わたしのことを忘れたままで、もう〝ゆぅちゃん〟とは呼べないことが確定してしまうんじゃないかと。
あの家でゆかりさんと笑い合える日は、幽霊のゆかりさんと会える日は、もう来ないんじゃないかと。
ゆかりさんは居なくなったわけじゃありません。
これからも病室に行けば会えるわけで、存在そのものが不安定だった頃よりずっと理解の及ぶ場所に居てくれて。
それをわたしも望んでいたはずなのに……。
何故でしょう、ゆかりさんが目を覚ましてとても嬉しいのに、その度に見えなくなったゆかりさんの姿を求めてしまうのです。
これも結局ただの我がままに過ぎませんけれど、ただそれだけじゃなくて。
ゆかりさんに相談したいことがあったのです。
窓ガラスの事件が悪い方向へ傾きつつありました。
わたしはそれを傍から見ているしかなくて、何も言うことのできない自分が恥ずかしくて嫌になって。
ゆかりさんに事件を解決してもらおうとか、決してそんなことじゃなくて。
無性に話を聞いてもらいたかった。
ゆかりさんに、わたしの話を……。
ただ、それだけでした。
わたしが疑われているわけではないとはいえ、窓ガラスを割ったかもしれない野球部主将の峰岸さんと直前に会話をしていたわけで。
気にしなければ嘘ですし、気にならないといっても嘘になります。
ゆかりさんが検査のある日はやることもなくて、とはいえ早く家に帰っても物哀しいだけなので、賑々しい部活動の声に耳を傾けつつ、今日も今日とて校内を徘徊して、
「で、結局ここへ来てしまうんだよね……」
校舎裏へとやってきました。
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