Boundary Balance ー世界を量る少女は教室ではよくしゃべるー

おぼろ藍

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地下審議会

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数日後。
学園は、いつも通りだった。
授業は進み、 生徒は笑い、 廊下には恋の噂が流れている。
――けれど。
正門前には、見慣れない黒塗りの車が停まっていた。
校舎の屋上には、警備ドローンが一機増えている。
誰も気に留めない。 この学園では、珍しい光景ではないからだ。
***
地下審議室。
分厚い扉が閉じられる音が、鈍く響く。
五つの影が、円を描くように座っていた。
『鉄律の法典』が、机の上に一冊の資料を叩きつける。
「国家情報局から正式要請だ」
空気がわずかに張り詰める。
『断裁の執行剣』の指が、膝の上で震えた。
「対象は?」
低く問う『深罪の刻印』。
資料の表紙には、 赤い封印印が押されていた。
極秘指定。
「国家中枢監視網《アルケオス》の設計図が盗難された」
静寂。
地下室の空気が、音を失う。
『聖光の冠』が、ベール越しに顔を上げた。
「国家の均衡を監視する、全領域統合管理システム」
『鉄律の法典』が言葉を継ぐ。
「軍事、経済、通信、衛星、防衛線――すべてを一括制御する国家の神経だ」
『断裁の執行剣』が、かすれた声を出した。
「国家は、盲目になる」
淡々と告げる『深罪の刻印』。
私は資料に視線を落とす。
ページをめくるたび、 数字と地図が絡み合っている。
奪われた設計図には、 まだ完成していない部分がある。
それは――
制御権限の分配アルゴリズム。
「犯行組織は不明」
『鉄律の法典』が続ける。
「だが一つ、確定している」
机の中央に、写真が置かれた。
制服姿の生徒。
この学園の、男子生徒だった。
胸の奥が、冷たく沈む。
「内部協力者」
『断裁の執行剣』が、息を呑む。
「……どうして学園に」
『聖光の冠』が小さくつぶやいた。
その問いに答えたのは、 『深罪の刻印』だった。
「この学園は、国家の未来を担う人材の集積地だ」
袖口から、刻まれた文字が覗く。
「そして」
「国家機密研究の、分散保管施設でもある」
沈黙。
私は目を閉じた。
やはり。
盗まれた設計図の一部は、 この学園に存在していた。
「境界の天秤」
呼ばれる。
私は顔を上げる
空気が、私に収束する。
五大賢は、それぞれが象徴。
法。 救済。 執行。 罪。
そして――均衡。
私はゆっくりと口を開いた。
「対象生徒の監視を優先」
「拘束は?」
『鉄律の法典』が即座に問う。
「まだ」
私は首を横に振る。
「設計図は完全ではない」
「彼が鍵を持っている可能性がある」
『深罪の刻印』が、静かに頷いた。
「続けろ」
「学園内での行動制限は最小限」
私は資料を閉じる。
「ー壊す必要はない」
わずかに、『聖光の冠』が肩を震わせた。
「……だが」
『鉄律の法典』が、低く言う。
「国家が傾けば、意味を持たない」
私は視線を合わせる。
「国家を守るために、未来を潰すなら」
言葉が、静かに落ちる。
「均衡とは呼ばない」
地下室に、長い沈黙が広がった。
やがて。
『深罪の刻印』が、ゆっくり立ち上がる。
「採択」
それだけを告げる。
会議は、終了した。
***
翌日。
私の朝は大体早い。
でも、その先にはいつも先客がいる。
廊下から、教室のドアの隙間から中を見る。
教室の奥。
窓際の席に座る男子生徒がいた。
さっき配られたプリントを取り出す。
――対象生徒。
国家要請の資料には、名前が載っていた。
月代 湊(つきしろ みなと)
窓際。 理系クラス。 成績上位。
問題行動、なし。
完璧すぎる履歴。
だからこそ、不自然だった。
でも、私はー
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