はやゆうの話

もしもの話

もしも……

僕が、

隼人の子だったら。


「パパ！　おきて！」
「んー、もう少し寝かせてよ…」

パパは朝が弱い。
だから僕は、パパをおこす係。

「いっしょにあそぶって、やくそくしたじゃん！」

パパは僕の涙と、

「パパなんて、だいっきらい！」
「ゆ、優那！　そんなこと言わないでよ！」

「だいきらい」という言葉に弱い。

僕だって本心でこんなことを言っているわけじゃない。

パパが悪いんだよ…？

「パパ、あたらしいほんがほしい！」
「えー、この前買ってあげたのに」
「あれはぜんぶよんだ！」
「もう読んだのか！？」
「うん！　すごくおもしろかったよ」
「すごいなぁ、優那は」

そう言ってパパは僕の頭をなでた。

あったかくて大きな手。
いつも僕を守ってくれるパパは、僕のヒーロー。

ママがいなくても…寂しくなんかないよ。

だって僕には、パパがいるから。


「ねぇ、パパ」
「どうした？」
「えへへ」

パパは不思議そうに僕を見る。

「あのね、僕…だいすきな人がいるんだ」
「え！？　だ、誰？」

びっくりしすぎて、目がまん丸になってる。

「しりたい？」
「…うん」
「じゃあ、こっそりおしえてあげるね」

パパはきっと、僕のだいすきな人は「ゆみちゃん」か、「あいりちゃん」だって思ってる。

その二人はおともだちだよ、パパ。

「僕のだいすきな人は……」

生まれる前からずーっと僕のことを考えてくれて、
僕に「優那」ってすてきな名前をつけてくれて、
僕のことがだいすきで、
いつもおしごとをがんばってる人。

「……パパだよ」

パパの顔を見ると、嬉しそうに笑って僕をぎゅーっとだきしめた。

「く、苦しい。パパ」
「優那ぁ～。パパも大好きだよ！　世界一優那のことが好き！」


もしも……

僕が、

隼人の子だったら。


こんな感じなのかな…？

なんて、ね？