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君のいない一日
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起きないと。
僕が隼人を起こさないと、遅刻しちゃう……
「隼人。朝、だよ」
体が、熱い。怠い。重い。
「ん、おはよ」
ドサッ——
「優那!?」
「……遅刻、するよ」
「そんなことどうだっていいんだよ! 今は優那が一番だから!」
「…冷たい」
隼人は首筋を氷で冷やしてくれた。
「今日はここにいる」
「……ダメ。隼人は学校行って」
「優那が心配で授業どころじゃない」
「僕が出られない分、隼人がしっかり受けてきて」
「…優那」
泣き出しそうな表情で「行ってきます」と手を振った。
*
「隼人」
後ろの席の彼は元気がない。
原因はいつも一緒にいるあの人がいないから。
「あ、優那が来た」
勢いよく体を起こした彼は、辺りを見回した後「いないじゃん」と俺を睨んだ。
「お前が起きないから」
「寝る」
「おい!」
もう少しで授業始まるのに。
「優那に報告するからな?」
「諒のスマホから優那の連絡先を消す」
「いや、怖いわ」
二人のことは中学の頃から知ってるけど、親友以上の関係だと、俺は思ってる。
「隼人って本当に優那のことが好きだよな」
俺の言葉に彼は顔を上げ、見たことのないやさしい笑顔で…
「好きだよ」
……うん。コイツが女子にモテる理由がわかった。
今の表情で「好き」なんて言われたら、確実に落ちる。
男の俺でも落ちかけた。
新しい扉を開くところだった、危ない。
「大好きな優那のために真面目に授業受けなさい」
「……お前に言われたくない」
「はいはい」
優那に頼まれたから、なんて言えない。
そんなことを言ったら俺の命が危ない気がする。
『諒くん。今日一日、隼人のことをよろしくね』
……優那は隼人の保護者かな?
その日一日、彼が真面目に授業を受けたのは言うまでもない。
*
「ただいま」
返事がないってことは、寝てるのか?
「優那」
彼に近づくと、すやすやと眠っていた。
朝に比べると顔色は良い。
熱も朝よりは下がったみたいだけど、完全に下がったわけではなくまだ熱い。
「……おかえり」
掠れた声でそう言って俺に手を伸ばす。
「ちゃんと授業受けた?」
「うん」
「あとでノート見せてね」
「うん」
「寂しかった?」
「……うん」
「隼人らしくない」
少し口角を上げて俺の頬に触れる彼の手は熱い。
「…僕も、寂しかった」
「優那…」
「明日は雪かな?」
突っ伏して肩を震わす俺の頭を優しくなでて呟いた。
僕が隼人を起こさないと、遅刻しちゃう……
「隼人。朝、だよ」
体が、熱い。怠い。重い。
「ん、おはよ」
ドサッ——
「優那!?」
「……遅刻、するよ」
「そんなことどうだっていいんだよ! 今は優那が一番だから!」
「…冷たい」
隼人は首筋を氷で冷やしてくれた。
「今日はここにいる」
「……ダメ。隼人は学校行って」
「優那が心配で授業どころじゃない」
「僕が出られない分、隼人がしっかり受けてきて」
「…優那」
泣き出しそうな表情で「行ってきます」と手を振った。
*
「隼人」
後ろの席の彼は元気がない。
原因はいつも一緒にいるあの人がいないから。
「あ、優那が来た」
勢いよく体を起こした彼は、辺りを見回した後「いないじゃん」と俺を睨んだ。
「お前が起きないから」
「寝る」
「おい!」
もう少しで授業始まるのに。
「優那に報告するからな?」
「諒のスマホから優那の連絡先を消す」
「いや、怖いわ」
二人のことは中学の頃から知ってるけど、親友以上の関係だと、俺は思ってる。
「隼人って本当に優那のことが好きだよな」
俺の言葉に彼は顔を上げ、見たことのないやさしい笑顔で…
「好きだよ」
……うん。コイツが女子にモテる理由がわかった。
今の表情で「好き」なんて言われたら、確実に落ちる。
男の俺でも落ちかけた。
新しい扉を開くところだった、危ない。
「大好きな優那のために真面目に授業受けなさい」
「……お前に言われたくない」
「はいはい」
優那に頼まれたから、なんて言えない。
そんなことを言ったら俺の命が危ない気がする。
『諒くん。今日一日、隼人のことをよろしくね』
……優那は隼人の保護者かな?
その日一日、彼が真面目に授業を受けたのは言うまでもない。
*
「ただいま」
返事がないってことは、寝てるのか?
「優那」
彼に近づくと、すやすやと眠っていた。
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熱も朝よりは下がったみたいだけど、完全に下がったわけではなくまだ熱い。
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掠れた声でそう言って俺に手を伸ばす。
「ちゃんと授業受けた?」
「うん」
「あとでノート見せてね」
「うん」
「寂しかった?」
「……うん」
「隼人らしくない」
少し口角を上げて俺の頬に触れる彼の手は熱い。
「…僕も、寂しかった」
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突っ伏して肩を震わす俺の頭を優しくなでて呟いた。
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