ぼくの夢をくれた理学療法士と超能力な患者さんたち

莉桜咲

文字の大きさ
3 / 43
ぼくの夢はサッカー選手

2.ぼくのおばあちゃん

しおりを挟む
 「もうこんな時間。そろそろ出ようね。」
お母さんが、食器を片付けながら、時計を見て言う。ぼくはお父さんとストレッチをしていた。ひざばして、背中をしてもらっていたよ。膝の後ろの筋肉きんにくを伸ばしていて、くすぐったいようないたいような感じがする。お父さんは、ぼくがケガをしないようにと、本を読んだり、動画を見たりして、ストレッチの勉強をして、ぼくに教えてくれるんだ。弟の叶翔かなとは、はみがきをしてリビングにもどってきたところだ。

 今日の試合、楽しみだな。終わったら、ファミリーレストランに連れて行ってくれるって。試合に勝ったごほうびかな。お母さんがおしごとしているお店なんだ。ぼくも大好きなお店。誕生日たんじょうびにはケーキをくれるし、写真もってくれて、ハッピーバースデーの音楽も流してくれるんだ。毎年、ぼくと叶翔の誕生日には必ず連れて行ってもらっているんだ。今日は、ぼくの大好きなハンバーグを食べようっと。それからケーキかアイスも。いっぱい食べよう。楽しみだな。

 荷物をまとめ、家を出る。その前に、仏壇ぶつだんかざられたおばあちゃんの写真が目に付いた。
「今日の試合、がんばってくるね。必ず勝ってくるからね。」
おばあちゃんの写真の前で手を合わせる。ぼくのおばあちゃんは去年、くなってしまった。おばあちゃんは、ぼくの家の近くに住んでいて、よく遊んだんだ。小さい頃から、ぼくをかわいがってくれて、ぼくのサッカーの試合にもたくさん見に来てくれていた。5年生の終わりころ、ぼくのサッカーチームで、春からのエースストライカーを決める選抜せんばつがあって、ぼくは見事えらばれて、背番号10をもらったんだ。とてもうれしかったな。その1週間後に、おばあちゃんは心臓発作しんぞうほっさで亡くなってしまった。選ばれた日、おばあちゃんに、「背番号10のエースストライカーに選ばれたんだよ。」って伝えたら、本当に喜んでくれた。ぼくの試合や練習、全部見に行くって、楽しみにしてくれていたんだ。だけど、それはかなわなかった。おばあちゃんが亡くなった後、もうおばあちゃんにサッカーを見てもらえないし、もう会えないのか、ってぼくが泣いていたら、お母さんが、「おばあちゃんはいつでも空の上から、見守っていてくれてるよ。」って、言っていた。毎日、ぼくは寝る前に、おばあちゃんがぼくのことを、かわいいとか、おばあちゃんの宝物と言ってくれたのを思い出すんだ。ぼくが産まれた日が、人生で一番うれしかったって。かわいくてかわいくて仕方がないって。「ひろくんがサッカー選手になる日が楽しみねぇ。それまで長生きしないとねぇ。」って、よく言っていたな。夢を持って、がんばって練習していてえらいっていつもめてくれたんだ。ぼくが1年生のときサッカーチームに入ってリフティングができるようになってから、リフティングを見せたら、「すごい、すごい、よくそんなに上手にできるねぇ。」ってびっくりしていた。試合でシュートを決めた時は、とっても喜んでくれた。ご褒美ほうびに、サッカーボールを買ってくれたり、ぼくの大好きなファミリーレストランに連れて行ってくれたりしたんだ。去年、おばあちゃんが今日の対戦相手との試合を見に来てくれていたんだけど、今日はいない。でも、天国から見守ってくれてるはず。だから、がんばってシュートを決めるぞ。

 「大夢、早く行かないと遅刻ちこくしちゃうよ。」
お母さんに呼ばれて、おばあちゃんが買ってくれたぼくの宝物のサッカーボールを持って家を出た。

 車には、お父さんとお母さん、叶翔がすわっていた。
「お兄ちゃん、おそいよ。早く行こう。」
と、叶翔が言って、
「さあ、出発だ。」
とお父さんが言って、出発をした。

 なんか、ドキドキするな。親友のほまれはもう来ているかな。今日の相手チームはどんなメンバーだろう。去年、5年生のぼくがスタメン入りした試合で、負けちゃったんだよな。お父さんとお母さん、おばあちゃん、叶翔が見に来てくれていたんだ。その時は、6年生の俊介しゅんすけくんがエースストライカーだったんだ。今、俊介くんは、サッカーが強い中学校へ進学して、がんばっているんだって。ぼくもその中学へ行ってサッカーをがんばりたいと思っているんだ。

 「見て、見て、ちょうちょがいるよ。」
叶翔が、信号待ちで止まったときに、うれしそうにはしゃいでいる。まったく無邪気むじゃきな弟だな。
「もうすぐ着くからね。」
そこは、去年試合した場所と同じ会場だ。

 いよいよ、ぼくたちの試合が始まる。必ず勝って、天国のおばあちゃんに見てもらおう。この時のぼくは、ぼくがエースストライカーとして活躍かつやくする未来しか見えていなかった。試合に勝って、天国のおばあちゃんが喜んでくれるって信じていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

【シスコン】シスターコントロール ~兄のダンジョン探索を動画サイトで配信して妹はバズりたい!~【探索配信】

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 西暦202x年、日本を襲った未曾有の大災害『日本列島地殻変動』により日本での生活環境は一変してしまった。日本中にダンジョンと呼ばれる地下洞窟が口を開き、周辺からは毒ガスが噴出すると言った有様だ。  異変から約一年、毒ガスの影響なのか定かではないが、新生児の中に毒ガスに適応できる肺機能を持った者たちが現れ始めていた。さらにその中の数%には優れた身体能力や頭脳を持つ者や、それだけでなく従来とは異なった超能力と言える特殊な異能力を持つ者もいた。  さらに八十年ほどが過ぎて二十二世紀に入ったころには人々の生活は落ち着き、ダンジョンを初めとする悪辣な環境が当たり前となっていた。そんなすさんだ世の中、人々の娯楽で一番人気なのはダンジョンを探索する限られた者たちの様子をリアルタイムで鑑賞することだった。  この物語は、ダンジョン探索に情熱を燃やす綾瀬六雨(あやせ りくう)と、その様子を配信してバズりたい綾瀬紗由(あやせ さゆ)という、どこにでもいるごく普通の兄妹が身近な人たちと協力し楽しく冒険するお話です。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

不幸でしあわせな子どもたち 「しあわせのふうせん」

山口かずなり
絵本
小説 不幸でしあわせな子どもたち スピンオフ作品 ・ ウルが友だちのメロウからもらったのは、 緑色のふうせん だけどウルにとっては、いらないもの いらないものは、誰かにとっては、 ほしいもの。 だけど、気づいて ふうせんの正体に‥。

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

傷ついている君へ

辻堂安古市
絵本
今、傷ついている君へ 僕は何ができるだろうか

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

処理中です...