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冒険しましょう
ゴブリンの巣に侵入しました
しおりを挟む森の中で洞窟が目視できる場所で、ひとまず休憩を取る。
小さな森だから、1刻(約2時間)ほど歩いただけで、奥の山まで辿り着いてしまった。
まだ、心の準備ができてないんですけど・・・。
リュシアンが大剣を片手に遊ばせながら、私の顔を覗き込む。
「なに?」
「ん?お嬢さ、洞窟の中って探査できないの?」
探査・・・ねぇ。
鑑定魔法の探査を使えば、洞窟内の生物の居場所は分かる・・・と思う。
でも、そのままだとゴブリンもゴブリンの上位種も、囚われた人もみんな同じに見えちゃうよな・・・。
「せめて、救出する人がいるかどうかだけでも」
リュシアンが両手を合わせて、私を拝む。
救出すべき人の有無とその人の居る場所よねぇ・・・。
あ、そうだ!
「やってみるけど、失敗しても許してよ」
「りょーかい!」
私はその場から一歩前に進み出て、目をゆっくり閉じて、洞窟の中に意識を集中させる。
『鑑定・探査!ゴブリンは黄色、ゴブリンの上位種は赤色、それ以外で生きている人は青色、死んでいる人は黒色で示せ!』
久しぶりな日本語呪文!唸れ、私のチート能力!
体全体からドバーッと魔力が抜けて、洞窟の中へと注ぎ込まれるのが感覚として伝わってくる。
頭の中に浮かび上がる洞窟の中。
私は忘れないうちに、土に木の枝でガシガシと洞窟内部の地図を書き出した。
そして、ピコピコと点滅する点も書き足していく。
「ヴイー、何をやっているんですか?」
アルベールの声でハッ!と意識を取り戻した。
そして、私に襲い掛かる疲労感・・・、疲れたぁ。
リュシアンの体に凭れるようにして、アルベールに地面に書いた地図を指差して見せる。
「これは?」
「お嬢が書いた洞窟の中の地図だよ。この、珍妙な印はなんだろうな?」
「珍妙って何よ!失礼ね!この星型がゴブリンの上位種、四角は囚われた人、黒い丸は死んでいる人。あと・・・ゴブリンがうじゃうじゃいる」
私は顔をうえーっ、と歪めて説明した。
「救出すべき人は2人ですか・・・」
その人たちは、洞窟の奥の手前に二手に分かれた道の片方にいる。
「セヴランはこの2人を連れ出して逃げろ。出口まで無事に来れたら俺とお嬢で援護してやるから」
うししっと笑うリュシアンに、冷たい眼を向けてセヴランは口を尖らして文句を言う。
「なんで私が奥まで行かないといけないんですか・・・。しかもこの辺りは上位種がいっぱいいるじゃないですか・・・」
そうなんだよねぇ。
この洞窟の奥には、たぶんアラスの街の冒険者ギルドの調査員が調べた「ゴブリンジェネラル」がいると思う。
でもそれ以外にも、いっぱいいるよ?
「ゴブリンメイジやゴブリンナイト・・・。油断はできないですね」
高ランク冒険者のふたりの真剣な顔に、怖くて震えが止まらないセヴラン。
でも、ルネとリオネルは可愛く準備体操をして、突入を今か今かとワクワクして待っている。
「・・・。しょうがない。最終兵器を投入しようじゃないか!」
何言ってんだこいつ?みたいな視線を寄こさないの!
「リオネル、おいで」
私の呼ぶ声に、トテトテと歩いてくるリオネル。
かわゆす・・・じゃなかった。
私はしゃがんでリオネルと視線を合わして、まずリオネルの服に着けられた魔道具のアクセサリーを外す。
シュンと白猫の耳と尻尾が白虎のそれに変わる。
「?」
こてんと首を傾げて私を見つめるリオネル。
「リオネル。ゴブリンの強いのがいっぱいいるんだって。あのさ、獣化して戦わない?」
目をパチクリさせたあと、リオネルは満面の笑顔になり、そして・・・ボワン!とな。
「ガルルッ」
白虎で子虎なリオネル参上!です。
「さあ、行きますよ。セヴランもいい加減、諦めなさい」
アルベールがセヴランの襟首をしっかりと掴んで、洞窟前まで引き摺って歩いてきた。
ルネの腕の中には、「俺はやるぜ!」と燃えている子虎姿のリオネル。
その前に私は魔法で、洞窟前にいた見張りのゴブリンをやっちまったけどな!
でも殺る感触が残るのは嫌なので、風魔法「エアショット」でズバンズバンズババハン!と、指をピストルの形にして撃ちまくりました。
「アルベール、俺たちはここで逃げて来たゴブリンを倒すが、危なくなったらすぐに救難信号を出せ。無理するなよ」
「ええ。・・・どちらかと言えばやりすぎないか、不安ですけど」
アルベール、苦笑していますが、君もやりすぎなメンバーだと思います。
私は自分の体の状態よりも戦うほうが大事!みたいなバトルジャンキーな仲間のために、バイタルサインを見逃さない魔道具を装着させています。
軽傷で光が点き、重傷で点滅、重体で点滅に加えてサイレンがけたたましく鳴り響くという魔道具を。
仲間がポーション回復を怠っていたら、周りの人が力づくでポーションを飲ませてね!という、主にリオネルのための魔道具だけど。
「じゃあ、ゴブリンの巣の掃討作戦、開始よ!」
私はセヴランと違って、洞窟の外に待機だから、ちょーっと気持ちに余裕が出ちゃうの。
いってらっしゃーい、セヴラン!
泣くな、男だろうが!
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