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冒険しましょう

報酬が足りないと思いました

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ひとまず、洞窟の外で待っているお嬢にはセヴランとルネが合流できるので、お嬢を任せてもいいだろう。
リュシアンは、洞窟の奥へと足を進めていく。
途中、セヴランの話にあった分かれ道を曲がり、囚われた人たちが眠る場所へと立ち寄る。
それなりに冒険者として活動していて、ゴブリンの巣で壊れた人形のように亡くなった人たちや、オークやオーガの集団に村ごと襲われ焼き払われて、無残に人生を終えた人たちを見たこともある。
それでも・・・。

「っち。やっぱ慣れないな・・・」

リュシアンはひとりひとりの生死を確認し、セヴランが看取った少女の膨らんだ腹を一瞥したあと、口の中で神への祈りを捧げ、その腹へ剣を突き刺した。

「悪いな。あとはゆっくり眠ってくれ」

ブンッと剣を振って付いた血を払い落し、リュシアンはさらに洞窟の奥へと進むために、彼女たちに背中を向け走り出した。

「アルベールたち、まだやってんのか?そんなに強い相手なのか?」

奥には、アルベールとリオネルの気配とゴブリンジェネラルだと思われる強い個体の気配に満ちている。
どちらも致命傷になるようなダメージは負っていないのだろう、伝わってくる気配は生命力に溢れ、一種の興奮状態にある。

「・・・ゴブリンジェネラルって、そんなに強かったか?」

過去、数多くのゴブリンの上位種やゴブリンキングと対峙してきたリュシアンは、この異常な状況に首を傾げたが、実際に見てみりゃ分かるかとさらに足に力を入れスピードを速める。
気を引き締めるように、剣の柄を握りしめながら。





「こらこら、リオネル。無理しないで戻ってきなさい」

アルベールは、ヴィーに持たされた防御の魔道具を使い、戦闘中にも関わらずひと休みしていた。
コクリと水筒から紅茶を飲んで、はぁ、やれやれと肩を大きく回す。

「ガルッ?」

なんで?あいつ、倒すのしないの?と訴えるようなリオネルのクリクリのお目々に、アルベールは苦笑して答える。

「無駄なんですよ。魔法も物理も効かないし、あのデカブツに効くほどの威力で攻撃したら・・・、この洞窟が崩れそうなんですよねぇ」

困った困ったと呟きながら、リオネルの小柄な体を抱き上げ背中を撫でる。

「・・・ガルル」

そうなの?困ったね、と表現するように弱々しく鳴いて、リオネルは耳も尻尾もしょんもりさせる。

「洞窟の外まで誘導して倒すか、土魔法で閉じ込めるか、氷魔法で凍らせて砕くか。でも私たちの属性魔法では無理なので、どうしましょうか」

と言いつつも、洞窟の外に連れ出して、上級攻撃魔法でも叩きつけて倒そうと決めてはいた。
あとは、セヴランたちが囚われていた人たちを助け出してくれれば、こちらも移動ができるんですけど。

「・・・まだかな?」

こしょこしょとリオネルの顎下の柔らかい毛を弄ぶアルベール。
そこへ、バタバタとうるさい音を立てて、躾のなっていない狼が走りこんできた!

「おいっ!無事か?・・・て、何やってんだよ!」

私たちを心配して駆けつけてきたのに、当の本人たちが防御魔道具に守られて、ぬくぬくと休んでいたら怒鳴りますよね?分かります。

「打つ手がないので、ひと休みしていました」

あははは。

「笑いごとかよ?そんなに強いのか、あのゴブリンジェネラルは?」

洞窟の奥で「うおーっ!うおーっ!」と汚い声で唸りながら、錆びて刃毀れした剣をブンブン振り回して、あちこち弱い岩盤を叩いて暴れているゴブリンジェネラルを指差す。

「強いわけではないんですが・・・」

私はゴブリンジェネラルが魔法攻撃耐性と物理攻撃耐性のスキル持ちで手加減したままでは倒せないことと、洞窟の岩盤が弱くて強力な攻撃ができないことを説明した。

「ん?面倒な状況だな。で、どうすんだよ」

リュシアンはドカッとその場で胡坐をかいて、リオネルを私の膝から取り上げてしまう。

「ギャウ」

リュシアンに乱暴な手つきでガシガシと撫でられて、リオネルは不服の意を示す。
私はセヴランたちが無事に洞窟の外に出たら、ゴブリンジェネラルを外に誘導して倒すつもりだと言う。

「ふむ。でも外にはお嬢もいるしな・・・」

目を瞑って考えるリュシアンに、私は内心驚いていた。
そんなにヴィーのことが心配で大事に思っていたんですね、貴方。

「ふふふ」

「何笑ってんだよ?爺」

「いいえ」

貴方が照れ隠しや甘えで、私のことを「爺」呼ばわりするのも可愛いと思ってますよ?言いませんけどね。

「あっ!リュシアン。あなた、氷魔法が使えましたよね?」

「うえっ?おお・・・。一応な」

私は、にまぁと企んだ笑みをリュシアンに向けて、ある作戦を持ち掛けた。
くわぁとリオネルが大きく欠伸をする。
もう少しで暴れさせてあげますから、もう少しいい子で待っててくださいね。





ビッターン!
バッターン!

水流の縄や木の枝に捕まったゴブリンが地面に叩きつけられている音が静かな森に響く。
あちらでは水の魔法でゴブリンをズビシッ!と一撃必殺。
こちらでは木の魔法でゴブリンを叩いて打って突いて、ご臨終。

そろそろ、洞窟の外に出てきたゴブリンが百人を超えるんですけどぉ?

「このゴブリンの巣って、本当に中規模クラスなのかな?」

思いの外、討伐内容がハードで貰える報酬に納得がいかないヴィーだった。
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