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冒険しましょう
報酬をもらいました
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馬車の置いてある所まで戻り、アルベールたちに声を掛けようとして、周りに漂う酷い匂いに気づく。
・・・臭い。
キョロキョロと辺りを見回して、ピタリと目を止めたのはゴブリンの死体を処理している墓穴。
「あれか・・・」
私はトコトコとそちらに足を向けて、自分で深く掘った穴をそろりと覗き込む。
「おい、お嬢。危ないぞ」
「・・・あんまり燃えてないね」
炎は盛んに燃えているのだが、折り重なったゴブリンの死体はほぼ残っている状態だ。
精神苦痛耐性が無ければ、こんな墓穴を見ようとも思わなかっただろうな・・・チートばんざーいっ!
「ああ。数も多いしな。燃え尽くすのに、一昼夜はかかるぞ」
「・・・それは、たいへん」
え?もしかして、この死体処理が終わらないと、ここから離れられないとか言わないよね?
火の始末はちゃんとしないと危ないけど、私たちがずっとここで火の見張り番をするの?
リュシアンは、私の問いに当たり前だろうって顔をして頷いた。
「えーっ!」
こんな森の中で、ゴブリンの死体と異臭に囲まれて夜を過ごすなんて、絶対にイヤ!
私はリュシアンの体を押しのけて、まず墓穴全体を防御膜で覆う。
「まずは匂いを遮断しよう」
そのまま防御膜を上に高く伸ばしていき、さらに細い煙突もどきを伸ばして、あとは上の部分を全部塞いでしまう。
これで匂いの元の煙は上に行くから、ここまでは臭わないはず。
風魔法でここら辺一帯、風を吹かせて空気を入れ替える。
あとは、処理速度を速めるために、アルベールたちが放った火魔法の温度を上げよう。
「ファイア」
魔力を込めまくった火玉を防御膜の中に展開させ、温度を一気に上げると炎の色が鮮やかな赤から青白く変わる。
「よしっ」
ふーっと腕で額の流れていない汗を拭う。
「・・・お嬢・・・」
リュシアンが愕然とした体で佇んでいるが無視をして、アルベールたちの元へと足を向ける。
みんなで犠牲になった人たちへ、お祈りをしまょう。
みんなで洞窟だった山壁に一列に並んで、彼女たちの死を悼む。
この世界での祈りは膝を付き右手を曲げて胸に当てるスタイルらしいが、私は両手を合わせて「なーむー」です。
えっ?みたいな反応されたけど、要は気持ちが籠っているのが大事なんだから、いいの!
「なーむー」
どうか、安らかに眠ってください。
さあ、帰る前に馬車の中でひと休みしていこう。
私は、セヴランとルネ以外のメンバーにも「クリーン」をかけてあげる。
リオネルの白い獣毛がふわふわサラサラになった。
馬車の中で、「無限収納」に仕舞ってあった軽食とお茶を出してひと息つきましょう。
「ふーっ。疲れた」
本当に、こんなハードな仕事だなんて聞いてないわよっ。
物理的にも大変だったけど、いろいろと精神的苦痛も負ったわ。
「アルベール。ギルドの人に報酬の上乗せを交渉してよ」
ひょいと片眉を上げたアルベールは、紅茶を口に運びながらも「ふむ」と思案顔。
現金はなしだったけど、やっぱり現金を幾ばくか貰おうよ。
地獄の沙汰も金次第だぜっ。
「あ、そうだ。リオネルを元に戻さないとね」
「ガルッ?」
不思議そうな顔をしないで、人型に戻りなさい!
そちらの姿の方がラクなのは分かるけど、いきなり子虎がメンバーに増えていたらギルドの人がびっくりするでしょっ!
ぐにぐにと頬を強めに揉み揉みしていたら、「ギャオゥ」不満げに鳴いてポンッとリオネルは人型に戻った。
「ヴィーさん。リオネルの子虎姿も問題ですけど、この子のことはどうするんですか?」
セヴランが、ひょいひょいと抱いた赤ちゃんを私の目の前に連れてくる。
「アラスのギルドに対応してもらうよ?セヴランが集めて来た犠牲者の遺品もアラスのギルドに託すし。私たちの仕事はゴブリンの巣の掃討だけだもん、アフターフォローはアラスの冒険者ギルドの仕事ですぅ」
「それもそうですね」
久しぶりに赤ちゃんのお世話ができたルネはちょっと残念そうだけど、すぐ隣にお姉ちゃんを赤ちゃんに取られてぷくぅと頬を膨らませた弟がいますし。
意外とリュシアンも赤ちゃんの世話に馴れていたけど、理由はルネと同じ孤児院出身だからだし。
アルベールに至っては「ヴィーの小さい頃を思い出します」とか、人の覚えていない歴史を語りだすし。
どうせ厄介事なんだから、アラスの冒険者ギルドに任せましょうよ。
そして、あっという間にゴブリンの死体の山も燃え尽きたので、穴に土を戻してしっかりと埋めて、馬車を「無限収納」に仕舞い、私たちはやっと森を出るのだった。
結果、ゴブリンの巣の掃討の報酬。
元々請求していた「解毒ポーション」など数種のポーション類と野営用のテントなど冒険者必需品と金銭を少し。
そして・・・馬だけど・・・。
「なんでこんな性格の悪い魔獣馬・・・」
2頭譲ってもらえたけど・・・性格に難ありの問題児。
そして、そして・・・。
「元気だしてください。ヴィー様」
がっくりしている私を慰めてくれる天使なルネに抱かれている、トラブルの元である赤子がひとり。
「なんで、こんなことになってるのよーっ!」
ちょっとやさぐれた気分で叫んでもしょうがなくない?
・・・臭い。
キョロキョロと辺りを見回して、ピタリと目を止めたのはゴブリンの死体を処理している墓穴。
「あれか・・・」
私はトコトコとそちらに足を向けて、自分で深く掘った穴をそろりと覗き込む。
「おい、お嬢。危ないぞ」
「・・・あんまり燃えてないね」
炎は盛んに燃えているのだが、折り重なったゴブリンの死体はほぼ残っている状態だ。
精神苦痛耐性が無ければ、こんな墓穴を見ようとも思わなかっただろうな・・・チートばんざーいっ!
「ああ。数も多いしな。燃え尽くすのに、一昼夜はかかるぞ」
「・・・それは、たいへん」
え?もしかして、この死体処理が終わらないと、ここから離れられないとか言わないよね?
火の始末はちゃんとしないと危ないけど、私たちがずっとここで火の見張り番をするの?
リュシアンは、私の問いに当たり前だろうって顔をして頷いた。
「えーっ!」
こんな森の中で、ゴブリンの死体と異臭に囲まれて夜を過ごすなんて、絶対にイヤ!
私はリュシアンの体を押しのけて、まず墓穴全体を防御膜で覆う。
「まずは匂いを遮断しよう」
そのまま防御膜を上に高く伸ばしていき、さらに細い煙突もどきを伸ばして、あとは上の部分を全部塞いでしまう。
これで匂いの元の煙は上に行くから、ここまでは臭わないはず。
風魔法でここら辺一帯、風を吹かせて空気を入れ替える。
あとは、処理速度を速めるために、アルベールたちが放った火魔法の温度を上げよう。
「ファイア」
魔力を込めまくった火玉を防御膜の中に展開させ、温度を一気に上げると炎の色が鮮やかな赤から青白く変わる。
「よしっ」
ふーっと腕で額の流れていない汗を拭う。
「・・・お嬢・・・」
リュシアンが愕然とした体で佇んでいるが無視をして、アルベールたちの元へと足を向ける。
みんなで犠牲になった人たちへ、お祈りをしまょう。
みんなで洞窟だった山壁に一列に並んで、彼女たちの死を悼む。
この世界での祈りは膝を付き右手を曲げて胸に当てるスタイルらしいが、私は両手を合わせて「なーむー」です。
えっ?みたいな反応されたけど、要は気持ちが籠っているのが大事なんだから、いいの!
「なーむー」
どうか、安らかに眠ってください。
さあ、帰る前に馬車の中でひと休みしていこう。
私は、セヴランとルネ以外のメンバーにも「クリーン」をかけてあげる。
リオネルの白い獣毛がふわふわサラサラになった。
馬車の中で、「無限収納」に仕舞ってあった軽食とお茶を出してひと息つきましょう。
「ふーっ。疲れた」
本当に、こんなハードな仕事だなんて聞いてないわよっ。
物理的にも大変だったけど、いろいろと精神的苦痛も負ったわ。
「アルベール。ギルドの人に報酬の上乗せを交渉してよ」
ひょいと片眉を上げたアルベールは、紅茶を口に運びながらも「ふむ」と思案顔。
現金はなしだったけど、やっぱり現金を幾ばくか貰おうよ。
地獄の沙汰も金次第だぜっ。
「あ、そうだ。リオネルを元に戻さないとね」
「ガルッ?」
不思議そうな顔をしないで、人型に戻りなさい!
そちらの姿の方がラクなのは分かるけど、いきなり子虎がメンバーに増えていたらギルドの人がびっくりするでしょっ!
ぐにぐにと頬を強めに揉み揉みしていたら、「ギャオゥ」不満げに鳴いてポンッとリオネルは人型に戻った。
「ヴィーさん。リオネルの子虎姿も問題ですけど、この子のことはどうするんですか?」
セヴランが、ひょいひょいと抱いた赤ちゃんを私の目の前に連れてくる。
「アラスのギルドに対応してもらうよ?セヴランが集めて来た犠牲者の遺品もアラスのギルドに託すし。私たちの仕事はゴブリンの巣の掃討だけだもん、アフターフォローはアラスの冒険者ギルドの仕事ですぅ」
「それもそうですね」
久しぶりに赤ちゃんのお世話ができたルネはちょっと残念そうだけど、すぐ隣にお姉ちゃんを赤ちゃんに取られてぷくぅと頬を膨らませた弟がいますし。
意外とリュシアンも赤ちゃんの世話に馴れていたけど、理由はルネと同じ孤児院出身だからだし。
アルベールに至っては「ヴィーの小さい頃を思い出します」とか、人の覚えていない歴史を語りだすし。
どうせ厄介事なんだから、アラスの冒険者ギルドに任せましょうよ。
そして、あっという間にゴブリンの死体の山も燃え尽きたので、穴に土を戻してしっかりと埋めて、馬車を「無限収納」に仕舞い、私たちはやっと森を出るのだった。
結果、ゴブリンの巣の掃討の報酬。
元々請求していた「解毒ポーション」など数種のポーション類と野営用のテントなど冒険者必需品と金銭を少し。
そして・・・馬だけど・・・。
「なんでこんな性格の悪い魔獣馬・・・」
2頭譲ってもらえたけど・・・性格に難ありの問題児。
そして、そして・・・。
「元気だしてください。ヴィー様」
がっくりしている私を慰めてくれる天使なルネに抱かれている、トラブルの元である赤子がひとり。
「なんで、こんなことになってるのよーっ!」
ちょっとやさぐれた気分で叫んでもしょうがなくない?
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