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運命の鐘を鳴らしましょう

王都の冒険者ギルドに行きました

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都門を抜けてガラガラと馬車を走らせてる私たち。
門を抜けてもしばらくは田畑や空き地が続き、町に入るための門が別にある。
その門を抜けて見えたのは、まさしく前世のヨーロッパの街並みに劣らない壮観な石造りの町だった。

以前にアンティーブ国の王都に来たことがあるアルベールとリュシアン、カミーユさんの勧めで、メインストリートを外れて商店街を行く。
市場で屋台などががひしめき合うメインストリートよりも人通りが少ないからって言ってたけど、十分人手が多いですよ。

左右に並ぶ石造りの建物は、今までが2~3階建てだったのに比べて、5~6階建てにグレードアップしている。
私が「上の階まで階段昇るのやだなー」とうげぇと舌を出していると、アルベールが「魔道具を使った昇降機がありますよ」と教えてくれた。
つまりエレベーターね。

ここは、やや生活に余裕がある市民が買い物に来る所なので、石畳も綺麗だし歩いている人たちも身だしなみが整えられている。
このまま冒険者ギルドが用意してくれた、カミーユさんの常宿だという宿屋まで進む。

「はああああっ。今までは王都に来て当たり前にあそこに泊まっていたけど・・・今回は憂鬱だなあぁぁぁぁっ」

カミーユさんがもの凄い深ーいため息と一緒に不穏なことを漏らした。

「・・・王都の宿ってそんなに酷いんですか?」

「いやいや。僕が利用していたところは一般市民が利用するのには最高級の所だよ?ただね・・・この馬車で生活してヴィーちゃんのご飯を3食おやつ付きで食べてたらね・・・」

カミーユさんの言葉に、みんなもうんうんと頷く。
私は楽しみですよ?
なんていっても人様が作ってくれた久しぶりの食事ですからね!

最近では、セヴランやルネが手伝ってくれるけど・・・他の連中が壊滅的に料理ができないからねぇ。
カミーユさんなんて魔獣学のフィールドワークと称して、あちこち旅に行ってたのにご飯が作れないってどういうことよ?
芋の皮むき頼んだら、自前の爪で剥いててびっくりしたけど、「はい」て渡されたお芋が人差し指サイズの大きさしかなくて、2度びっくりよ!
ま、リオネルに玉ねぎの皮むき頼んで、涙ポロポロ零して「なくなったー」と騒いだときと同じぐらいの衝撃だけど。
リオネル・・・玉ねぎの白いところは皮じゃないんだよ・・・。

私ひとりが宿に泊まれることにウキウキしながら、辿り着いた老舗高級ホテルばりの外観の宿屋に、ちょっと小市民根性を出してビビりながらチェックインして、馬車とカヌレとブリュレを宿に預けて徒歩で冒険者ギルドへと向かいます。

途中でカミーユさんたちから王都のレクチャーを受けながら。
ここは市民街で、王宮はやや中央の小高い丘の上に鎮座してます。
ここは尖塔がある「お城」っていうイメージそのままの王城です。
敷地はすごく広く、王宮内にはいくつもの建物があってそこだけでもひとつの町と評してもいいほど。
王宮内で暮らしている人も多いんだって。

その王宮には別に城壁がちゃんとぐるりと巡らせてあって、その周りに堀があって数ヵ所の出入り口は跳ね橋で出入りを管理されている。
でも、アンティーブ国の人たちって大雑把だから空から飛んで入ろうとして、防御の魔道具が張った結界に当たって墜落する人がいるのはあるあるらしい。

んで王宮の外周には貴族街が広がっている。
でも、王宮の後ろ側は、防衛の観点から、貴族のお屋敷じゃなくて、騎士団、魔法兵団の宿舎や練兵場があるんだって。
確かに裏切り者が後ろから侵入!という事態を防ぐために必要な配置かも。
そしてまたぐるりと広い川が流れていて、その向こう側は田畑や牧場地帯になっている。

王宮の正面側は貴族街と川挟んで市民街、とりあえず貴族街に近い所は富裕層が占めている。
そして東側にはゴダール男爵領地にもあった鍛冶職人たちが工房を構える職人街と貧困地区、スラム街がある。
真ん中から西側は宿屋、商店が立ち並ぶ一般市民が住む所。

そして大体、領地にひとつ冒険者ギルドの支部があればいいのに、ここ王都には3つの支部がある。
まずは貴族街に面した市民街に「王都ギルド」。
ここは主にギルド内の重鎮が偉そうに会議をしたり、貴族や富裕層の依頼を受けたりしている。
高ランク冒険者もお金持ちだから、王都に住むそういう冒険者は富裕層が住む所に家を持っているそうだ。

東側にあるギルドは「王都東ギルド」
・・・主にスラム街で生活する日雇いができる業務や、孤児院の子供たちが生活費を稼ぐお遣い程度の依頼が多い。
利用する冒険者も荒くれ者が多いので、高ランク冒険者や王都に定住していない冒険者は利用しない。
はっきり言って、おいしい依頼は無いし、絡まれるし、下手をすればお金だけでなく装備も含めて身ぐるみを剥がされるからだ。

私たちが徒歩でお店をひやかしながら向かっているのは、多くの市民、冒険者たちが利用する西側にあるギルド「王都西ギルド」。

「東よりは安全ですが、子供の冒険者は珍しいのでジロジロ視られるかもしれませんが気にしないように」

「「「はーい」」」

そんな冒険者ギルドに初めて訪れた異世界人が遭遇するだろうなトラブルはいりません。
私は緩く頭を左右に振って、カミーユさんが開けてくれた扉からギルドの中へと入っていく。

ここのギルドは木造のログハウスのような佇まいで、なかなかに落ち着く造りです。
ガヤガヤと人の騒めきと、土と汗の匂いが漂ってくる。
ギルドは前世の市役所や銀行のようにいくつかの受付がブースで区切られていて、背中に斧を背負ったいかつい冒険者や魔法使いのローブを被った細身の人がそれぞれの目的にあった場所に並んでいる。
キョロキョロと見回したけど、ここには酒場は併設されていないみたい。

そして、アルベールの注意どおり、あちこちから視線がビュンビュン飛んでくる。
そんなに子供の冒険者が珍しいの?

「大抵、子供の冒険者は東に行きますし、王都の子供は家の手伝いなどでギルドに登録するのは成人してからですから」

そしてアンティーブ国は獣人の住民が多く、子供と雖もお肉が食べたかったら自分で狩ってきて、売れる物は冒険者ギルドを介さずに知り合いの店に売るそうだ。

「ちょっとウザイですね。このまま受付を通らずにギルマスの部屋に直接行きましょう」

即座にリオネルをその腕に抱え上げて、カミーユさんはスタスタと奥に進み階段を昇り始めてしまう。
私たちも慌てて後を追いかけて階段を昇り始めたのだが・・・。

「ん?」

私の前にいたリュシアンが急に足を止めて、ギルドの一角をジッと見つめる。
急に止まれずにドンと軽くリュシアンの背中に鼻を当てしまった私は、抗議するためリュシアンの顔を見上げ、その視線を追いかけて。

「あれ?」

依頼が張られた依頼ボードの前に数名の冒険者たちがいる。
その中で犬?獣人の青年と話している、若い冒険者・・・金髪のなかなかにイケメンな冒険者は・・・。

「ヴィクトル・・・兄様?」


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