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3、屋上での出会い

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この学校は給食がなく、お弁当だ。どこで食べてもいいらしい。ということで、私は誰も来ない屋上で食べるのが日課だ。
………でも、今日はお弁当が今日はお弁当が食べられない……。
まりあと、その取り巻き__ゆう美里みさと彩花あやか__に、お弁当の中身を全部、トイレに捨てられてしまった………。大好きな、お母さんのお弁当……。
__なんで、こんなことになったんだろ……
………夏葉ちゃんは来なくなってしまったけど、あの時の私の行動、間違ってないよね__?
じわじわと、涙がこみ上げてくる。
……誰も来ないし、泣いてしまおうか………。
ガチャッ。

「………え?」

うそ、誰か来た……?

「先客がいたか……。ねえ君、僕ここでお弁当食べてもいい?」

私は小さくうなずいた。……この人、トップ3の人だ……。教室で、いつもまりあたちが話していた。
あとの2人は、私と同じクラスの天宮伶あまみやれいくんと、田中陸人たなかりくとくん。
こんな人とここで会うなんて、まりあに知られたら大変だ。

「隣、座るねー」

え⁉︎と私が驚いているあいだに、彼はさっさと座った。

「よろしくねー。僕は3組の矢神星夢やがみせいむ。君、2組の転校生だよね?」

「あ、うん。私、鈴村遥香です……。」

「タメでいいよ!遥香だから………はるちゃん、はどう?」

いきなりあだ名⁉︎……はるちゃんって、初めて言われた……。

「い、いいよ……!」

「わーい!じゃあさ、僕のことも名前で呼んでくれない?」

さらに求めてくるの⁉︎どうなってるの、この人…

「えと、せ、星夢くん………?」

「うん!言いにくかったら、せいでいいよ!」

「じゃあ、星くん……」

そう言うと、星くんは嬉しそうに笑った。

「よーし!お弁当食べよっと!いただきまーす……って、はるちゃん、お弁当は?」

「あ………」

うつむく私の顔を、星くんが覗き込んでくる。

「どうかした?」

「あの、す、捨てられたの……トイレに……。」

「えっ⁉︎なん……誰に⁉︎」

星くんは、私がイジメられてることを察してくれたみたい………。あえて「何で」と言わないでくれた……。優しい……よね……。
でも、誰に、って言っちゃったら、マズイよね……

「ご、ごめんね、それは言えない………。」

「僕、はるちゃんを助けたいよ。」

「気持ちは嬉しいよ……。でも__」

星くんに、手を取られた。

「はるちゃんは、僕に会うのは今日が初めてだと思う。でも僕は、君が転校して来た日から、君を見てた。一目惚れっていうのもあったと思う。毎日毎日、君に心を奪われた。いつも僕に話しかけて来る女の子たちの中に、君がいてくれたら、って、何度も思った。君がここでお弁当を食べてるって、昨日知ったから、今日、僕はここに来たんだ。……はるちゃん、君が転校して来てから2週間……。僕は__」

途中で少し下を向いた星くんの瞳が、私をうつした。

「僕は……、もう自分でも止められないくらい、君のことが好きなんだ………‼︎」

星くんの言葉は、真っ直ぐに刺さった。

「初めて会った人に急に告白されて、ビックリしたよね、ゴメン……。はるちゃんの返事は、いつでもいいよ。僕はずっと、待ってるから。……でも、そういうことだから、はるちゃんを助けたいんだ。お願い……!」

私が知らなかっただけで、星くんはこんなにも私を想ってくれていたんだ………。
もう、断れる訳ないじゃない………。

「……うん。ありがとう、星くん……。」

そこから、まりあたちのことを話した。まりあたちは、星くんたちのファンクラブに入っているらしい。

「やっぱり星野さんって女王様的存在なんだ。いつも3人取り巻いてるからそうかなーとは思ってたけど。でも僕、星野さんたちみたいな女の子って苦手だなぁ……。それよりはるちゃん、話してくれて本当にありがとう。絶対に力になるからね!」

そう言って、星くんは優しく微笑んだ。

「ううん、こちらこそ、本当にありがとう。家族には言えなくて……。少しスッキリした。」

「じゃ、お弁当食べよ?」

「え、でも私……お弁当………」

「半分あげるよ。僕小食なんだ。」

大丈夫だよ、と言おうとしたけど、星くんに遮られた。

「はるちゃん、もう少し自信持って!こういう時は、「ありがとう」で受け取って?どうせ自分なんて、って思わないで。君は僕から見て、特別な存在なんだからさ。」

そう言われて、私は素直に「ありがとう」と言って半分もらった。

「ん、そうだ。これから、ここでお弁当食べてもいい?」

「……来て……くれるの……?」

「うん!はるちゃんが嫌じゃなければ。」

私はうなずいた。

「じゃ、明日から毎日くるね!」

そんな優しすぎる彼の笑顔に、私の胸は高鳴っていた………。
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