2 / 2
プロローグ
蛇に騙された蛙
しおりを挟む
「小出くんがやったの見ました!」
今でも鮮明に思い出すあの光景。あれが全ての始まりだった。教室の扉に群がる生徒たち、中心にはうずくまり頭を抱えた女性。地面いっぱいに広がったチョークの粉は煙を上げて入道雲のようになっていた。犯人と見られる男子達は焦りながらもばれないように野次馬に紛れている。そのリーダーが天野だった。クラスの人気者だった彼はいつも同じ野球チームの子と徒党を組んでは教師を対象にいたずらをしていた。
ある日の昼休み、先生が来るタイミングを見計らって黒板消し落としをしようと教卓に集まっていた。
「これさぁ、藪崎なら引っかかるやんな?おっさんやしわからんやろ!」
グループの一人斉藤雄二がそう言った。
「でもさぁこれありきたりじゃない?二組のこうすけ達もやってたし、一個下の五年もやっとったやろ。ちょっとちゃうやつやってみよや」
その中でも過激派な山本玄はイタズラのマンネリ化に悩んでいた。
「ならこん中の粉かぶせてみる?あいつが粉被ってんのばりおもろない?」
チョークボックスを取り出した天野の提案にグループは盛り上がりを見せていた。小出は何やら物騒な話をしているなと思いながら6時間目のプールの心配をしていた。黒板に近い窓で機嫌の悪い空と睨めっこしていた。そして昼休みが終わりに差し掛かり天野達は粉をぎっしり入れた黒板のチョークボックスを扉に挟んだのだ。扉は昼休み終了の五分前に開かれた。凶器は藪崎に向かってまっすぐ下に振り下ろされるはずだった。しかしここでイレギュラーが発生した。扉を開けたのは担任の藪崎ではなくなぜか新任の副担任横山先生だった。藪崎よりも小柄な彼女は身長が低い分距離が伸び、チョークボックスはより凶暴な牙となった。角がおでこに当たり大きく鈍い音が鳴った。粉は満遍なく降りかかり先生は短く悲鳴を上げた。生徒達が集まり犯人達は焦りを見せていた、ただ一人を除いては。
すぐに先生がやってきた。藪崎だ、職員会議が伸びて代わりに副担任の横山先生を、向かわせたそうだ。保健室の先生が来る事態にまで発展し、その異様さから他クラスや他学年の生徒まで押し寄せてきた。
「誰がこんなことやったんだ。天野、お前らか?」
いつもいたずらをしている天野達が疑われるのは自明の理であった。しかし天野はすぐこれを否定した。
「いや僕らは怪我させるようないたずらせえへんよ先生」
藪崎は愚かにもこれに納得したようだった。
「小出です!小出くんがやったの見ました!」
驚愕した。まさか飛び火がくるとは思っていなかった。俺はずっと窓で空を見ていた。雨でプールがなくならないか心配だったから。そう言っても先生は信じてくれなかった。流血沙汰になるほどだ、犯人にされたらただじゃ済まないに決まっている。小出は否定するのに必死だった。次第に天野のグループも活気を取り戻し横山親衛隊の女子達にも責められはじめどんどん追い詰められていった。何も言葉が出なくなった。外は大雨が降り始めていた。今日はプールじゃなくなったかな。
校長室に連れ出され親を呼びだされた。事情を説明したが誰も信じてくれなかった。家での風当たりはますます強くなり、学校ではいじめが始まった。上靴と画鋲はセットだった。守ってくれる人は誰もいないと思っていた。天野のグループが話している時近くに座っていた生徒は誰も声を上げなかった。全て諦めていた。消えてしまいたかった。しかし、ただ一人味方になってくれる人がいた。ゆりちゃん。藤井ゆり、唯一いじめを止めようとし俺の話は全て信じてくれた。彼女がいなければ俺はどうなっていただろうか。公立の学校に上がればどうなるかわからない。親の機嫌を伺いながら家では勉強しかしなかった。結果中学受験には成功、小学校の生徒との関係はゆりちゃんを含め全てなくなった。中学からテニスをはじめ大学まで続けることとなる。筋肉はつけるようにした。スポーツをするためでもあったが何より強くなりたかった。弱いままでいるのは嫌だった。そして、彼女が俺にしたように俺も誰かを守れる強い存在になりたい。そう思った。だけどあいつと再会した時、前向きにはなれなかった。蛇がカエルを食べれてもカエルは蛇を食べられないのだ。強く実感してしまった。恐怖や敗北感で消えてしまいたいと思っていた。お前が死んだと聞いた時正直胸がスッとしてしまった。これじゃあお前と一緒なのかな?
今でも鮮明に思い出すあの光景。あれが全ての始まりだった。教室の扉に群がる生徒たち、中心にはうずくまり頭を抱えた女性。地面いっぱいに広がったチョークの粉は煙を上げて入道雲のようになっていた。犯人と見られる男子達は焦りながらもばれないように野次馬に紛れている。そのリーダーが天野だった。クラスの人気者だった彼はいつも同じ野球チームの子と徒党を組んでは教師を対象にいたずらをしていた。
ある日の昼休み、先生が来るタイミングを見計らって黒板消し落としをしようと教卓に集まっていた。
「これさぁ、藪崎なら引っかかるやんな?おっさんやしわからんやろ!」
グループの一人斉藤雄二がそう言った。
「でもさぁこれありきたりじゃない?二組のこうすけ達もやってたし、一個下の五年もやっとったやろ。ちょっとちゃうやつやってみよや」
その中でも過激派な山本玄はイタズラのマンネリ化に悩んでいた。
「ならこん中の粉かぶせてみる?あいつが粉被ってんのばりおもろない?」
チョークボックスを取り出した天野の提案にグループは盛り上がりを見せていた。小出は何やら物騒な話をしているなと思いながら6時間目のプールの心配をしていた。黒板に近い窓で機嫌の悪い空と睨めっこしていた。そして昼休みが終わりに差し掛かり天野達は粉をぎっしり入れた黒板のチョークボックスを扉に挟んだのだ。扉は昼休み終了の五分前に開かれた。凶器は藪崎に向かってまっすぐ下に振り下ろされるはずだった。しかしここでイレギュラーが発生した。扉を開けたのは担任の藪崎ではなくなぜか新任の副担任横山先生だった。藪崎よりも小柄な彼女は身長が低い分距離が伸び、チョークボックスはより凶暴な牙となった。角がおでこに当たり大きく鈍い音が鳴った。粉は満遍なく降りかかり先生は短く悲鳴を上げた。生徒達が集まり犯人達は焦りを見せていた、ただ一人を除いては。
すぐに先生がやってきた。藪崎だ、職員会議が伸びて代わりに副担任の横山先生を、向かわせたそうだ。保健室の先生が来る事態にまで発展し、その異様さから他クラスや他学年の生徒まで押し寄せてきた。
「誰がこんなことやったんだ。天野、お前らか?」
いつもいたずらをしている天野達が疑われるのは自明の理であった。しかし天野はすぐこれを否定した。
「いや僕らは怪我させるようないたずらせえへんよ先生」
藪崎は愚かにもこれに納得したようだった。
「小出です!小出くんがやったの見ました!」
驚愕した。まさか飛び火がくるとは思っていなかった。俺はずっと窓で空を見ていた。雨でプールがなくならないか心配だったから。そう言っても先生は信じてくれなかった。流血沙汰になるほどだ、犯人にされたらただじゃ済まないに決まっている。小出は否定するのに必死だった。次第に天野のグループも活気を取り戻し横山親衛隊の女子達にも責められはじめどんどん追い詰められていった。何も言葉が出なくなった。外は大雨が降り始めていた。今日はプールじゃなくなったかな。
校長室に連れ出され親を呼びだされた。事情を説明したが誰も信じてくれなかった。家での風当たりはますます強くなり、学校ではいじめが始まった。上靴と画鋲はセットだった。守ってくれる人は誰もいないと思っていた。天野のグループが話している時近くに座っていた生徒は誰も声を上げなかった。全て諦めていた。消えてしまいたかった。しかし、ただ一人味方になってくれる人がいた。ゆりちゃん。藤井ゆり、唯一いじめを止めようとし俺の話は全て信じてくれた。彼女がいなければ俺はどうなっていただろうか。公立の学校に上がればどうなるかわからない。親の機嫌を伺いながら家では勉強しかしなかった。結果中学受験には成功、小学校の生徒との関係はゆりちゃんを含め全てなくなった。中学からテニスをはじめ大学まで続けることとなる。筋肉はつけるようにした。スポーツをするためでもあったが何より強くなりたかった。弱いままでいるのは嫌だった。そして、彼女が俺にしたように俺も誰かを守れる強い存在になりたい。そう思った。だけどあいつと再会した時、前向きにはなれなかった。蛇がカエルを食べれてもカエルは蛇を食べられないのだ。強く実感してしまった。恐怖や敗北感で消えてしまいたいと思っていた。お前が死んだと聞いた時正直胸がスッとしてしまった。これじゃあお前と一緒なのかな?
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
幼馴染の許嫁
山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
アルファポリスであなたの良作を1000人に読んでもらうための25の技
MJ
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスは書いた小説を簡単に投稿でき、世間に公開できる素晴らしいサイトです。しかしながら、アルファポリスに小説を公開すれば必ずしも沢山の人に読んでいただけるとは限りません。
私はアルファポリスで公開されている小説を読んでいて気づいたのが、面白いのに埋もれている小説が沢山あるということです。
すごく丁寧に真面目にいい文章で、面白い作品を書かれているのに評価が低くて心折れてしまっている方が沢山いらっしゃいます。
そんな方に言いたいです。
アルファポリスで評価低いからと言って心折れちゃいけません。
あなたが良い作品をちゃんと書き続けていればきっとこの世界を潤す良いものが出来上がるでしょう。
アルファポリスは本とは違う媒体ですから、みんなに読んでもらうためには普通の本とは違った戦略があります。
書いたまま放ったらかしではいけません。
自分が良いものを書いている自信のある方はぜひここに書いてあることを試してみてください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる