私異世界で成り上がる!! ~家出娘が異世界で極貧生活しながら虎視眈々と頂点を目指す~

春風一

文字の大きさ
322 / 363
第8部 分かたれる道

5-5私にはルールよりも守りたい大切なものがある

しおりを挟む
 時間は、十二時を少し回ったころ。私は〈西地区〉の上空を、大型のエア・ドルフィンで飛んでいた。つい先ほど観光案内を終え、お客様を、ランチの美味しい、お勧めのレストランに、送ってきたところだ。

 ちなみに、通常の観光案内は、エア・カートを使う場合が多い。ゆったりしたシートに座れるし、屋根付きタイプなら、冷暖房も完備だ。

 ただ、中には『風や空を飛ぶ感覚を楽しみたい』という人もいる。その場合は、エア・ドルフィンでの案内になる。カートよりも、眼下の景色が見やすいし。何より、全身に風を浴びて飛ぶ感覚は、ドルフィンじゃないと味わえない。

 私も、どちらかというと、ドルフィンのほうが好きだ。見習い時代は、毎日、練習機に乗って、飛び回ってたからね。ただ、最近は、通勤もノーラさんからもらった、エア・カートだし。すっかり、乗る機会が減ってしまった。

 なので、たまに、エア・ドルフィンに乗ると、物凄く、伸び伸びした気分になる。私は、開放感を存分に味わいながら、全身で風を浴び、大きく息を吸い込んだ。

「さて、私も、お昼ごはんにしよっと。急がないと、午後の予約があるし。パンを買って、事務所で食べようかなぁ……」

 昔は、パンを買って、よく広場で昼食をしていた。でも、上位階級になってからは、何かと目立ってしまうので、気楽に、外で食事も出来なくなってしまった。なので、あまり目立たない店や、事務所で食事する場合が多い。

 みんなに、認知してもらえるのは、とても嬉しいけど。なまじ顔が知られていると、自由に行動できないので、ちょっと不自由な気がする。

 とはいえ、他の上位階級の人たちも、条件は同じだし。上位階級は、人から見られるのが仕事だから、文句は言えないんだよね。

「って、何だろ、この匂い? ちょっと、焦げ臭いような――?」
 ほんの少しだが、風の中に、何かが焦げたような匂いが、混じっていた。

 スピードを緩めると、私は、周囲に視線を動かした。すると、かなり遠くのほうで、微かに、煙のようなものが見える。しかも、煙は二ヵ所から上がっていた。西のほうは大きめで、北のほうは小さめだ。

 ただ、煙が見えるとはいえ、おそらく、常人なら、見えないレベルの大きさだと思う。日ごろ目を鍛えているので、どんなに小さなものでも、目に入ってしまうのだ。

 どうしよう……あまり、時間がないし。見に行ってる暇なんて、ないよね。でも、何だろう、この妙な胸騒ぎは――?

 二つある煙の、小さなほうには、緑色のマナラインが伸びていた。そちらの方から、何か、嫌な感じがしてくる。

「ええい、ままよっ! 悩んでても、しょうがない。一食、抜くぐらい何よ」
 結局、思い立ったら即行動の精神で、北のほうに向けて、機体を加速させて行く。

 マナラインは逆風で、向こうから、こちらに風が吹いている。そのため、近付くにつれ、どんどん、焦げ臭さが増していった。

 やがて、私の前方には、マンションが見えて来た。高さは、十階建て以上。その、真ん中あたりの階から、煙が出ている。どうやら、火事のようだ。

 でも、ただの火事なら、何の問題もない。消防隊が駆けつけて、すぐに、消火活動をしてくれる。しかし、私の視界には、憂慮すべき事態が映っていた。

 そのマンションのベランダには、取り残された人がいたからだ。しかも、まだ、年端も行かない少女が一人。部屋の中には、赤い炎の光と煙が見えている。ベランダにも、モクモクと黒い煙が流れ出してきていた。

 私は、急いでマンションに近付くと、少し離れたところで滞空し、細かい状況を確かめる。火事の部屋は六階。今のところ、まだ、消防隊は来ていない様子だ。しかも、サイレンの音も、全く聞こえてこない。

 下の方には、たくさんの人が集まり、ザワザワしながら、不安そうに、火事の部屋を見つめていた。だが、誰も助けに行こうとはしない。

「おいっ、消防隊はどうした? 遅くないか?」 
「だいぶ前に、連絡はしたらしいけど……」
「何でも、ほぼ同じ時間に、別の場所で、大きな火事があったらしいわよ」
「まったく、よりによって、こんな時に――」

「ねぇ、やっぱり、助けに行ったほうが、いいんじゃないの?」
「さっき、行った人がいるけど、玄関のカギが閉まってたらしくて」
「どうやら、子供、一人みたいだしな」
「火が回って、玄関のほうに、行けないんじゃないの……?」

 下のほうから、集まった人たちの会話が、続々と聞こえて来る。

 そうか――じゃあ、さっき向こうのほうに、見えたのって。あっちも、同時に、火事が起こってたんだ……。

「おーい、お嬢ちゃん、窓を閉めるんだ!」
「そうよ、窓を閉めないと、煙が出てきちゃうわよ!」
「危ないから、早く窓を閉めて!」

 大人たちは、必死に叫んでいるが、少女の耳には、入っていない様子だった。ベランダの少女は、へたり込んで泣いていた。おそらく、完全に、気が動転しているのだと思う。

「どうしよう――? このままじゃ、あの子が……。でも、消防隊が来る様子も、全然ないし――」
 周囲を見回すが、消防隊が来る気配は、依然としてなかった。

 私は、必死になって考える。彼女を、あそこから、助け出すことは可能だろうか? もし、助け出すとしたら、ベランダのギリギリまで、近づかなければならない。しかし、助け出すとしても、その間、ハンドルから手を離す必要がある。

 ハンドルから手を放しても、飛行は可能だ。エア・ゴンドラのように、ハンドルのない機体も操縦しているから、理論上はできる。

 手を放している間、足から魔力を流せばいい。とはいえ、そのように作られた機体ではないので、極めて危険な運転だ。もちろん、航空法では、禁止されている。

 それに、二人乗りの大型機は、一人乗りの小型機に比べ、重量もあるし。重い機体ほど、滞空時に、機体が不安定になる。

 場所は、六階。万一、失敗して墜落すれば、二人とも、ただでは済まない。下手をすれば、命を落とす高度だ。しかも、かなり強めの風が吹いている。大きな建物の付近では、不規則な動きの、ビル風が吹きやすい。

 あと、一番の問題は『航空法』と『消防法』だ。火災があった際『一般人は手を出してはいけない』と、法律で定められている。災害時の救助作業は、特別な資格がある人しか、やってはいけない。これは、二次災害を防ぐためだ。

 例外として、資格のある人に、許可をもらった時だけOK。それ以外の時に、勝手な行動をすれば、厳罰に処されてしまう。特に、航空法では『火災の起こっている建物の、半径二十メートル以内には、近付いてはならない』と、明文化されている。

 昔の私だったら、迷わず、飛び込んで行ったはずだ。でも、今は上位階級の立場があるため、安易に、法律違反をする訳にはいかない。

 どうしよう……。もう少し、待っていれば、ちゃんと、救助が来るはずだよね? 私、専門家じゃないし。そもそも、救助訓練もしたことないし――。

 でも、もし、救助が間に合わなかったら……? あの子は、どうなっちゃうの――? 目の前で、助けを求めている子がいるのに、放っておくの……?

 再び、ベランダで、泣きじゃくっている少女の姿を見た時。私の中で、何かが『プツッ』と、切れる音がした。

 何を迷ってるのよ、私! 立場が何よ。人の命のほうが、大事じゃない! それに、今まで、何のために、ずっと練習してきたの? 大丈夫、今の私なら、絶対にできる。必ず、助け出して見せる!

 私は、覚悟を決めると、少しずつ、火事が起こっている階に、機体を寄せて行った。だが、風が強すぎて、機体がグラグラして安定しない。かなり、危険な状態だ。

 私が、機体を近づけていくと、下のほうから、再びザワザワと声があがった。

「おいっ、機体が近づいて行くぞ!」
「あれ、シルフィードじゃないの?」
「風が強いけど、大丈夫なのか?」
「素人が手を出すのは、マズイんじゃないのか?」

「でも、シルフィードだって、空のプロだぞ」
「消防隊が来ないんだから、しょうがないだろ」
「そうよ、今は、彼女に任せるしかないわ」

 私は、ベランダのすぐ横まで行くが、どうしても、機体が揺れて、安定しない。風が、想像以上に強いのだ。しかも、風の方向が、常に変わっている。

 ハンドルを握った状態でも、安定させるのがやっとだ。こんな状態で、両手を離し、さらには、女の子を受け止めるのは、あまりにも無謀すぎる。でも、例えそうだとしても、今はやるしかない。

「大丈夫? ケガはない? 今助けてあげるから、安心して!」
 私は、精一杯の笑顔を少女向け、大きな声で話し掛けた。

「た――助けて……くれるの?」
 少女は、せき込みながら、力なく答える。

「任せて、必ず助けてあげるから。あと少しの辛抱だよ。立てる?」
「うん――」
 少女は、よろよろと、立ち上がった。

 それと同時に、私もハンドルから手を放し、ゆっくりと立ち上がる。正直、物凄く怖い。この高さで、滞空したまま両手を離すなんて、初めての経験だった。

 当然だが、両手をハンドルから離す運転なんて、完全に航空法違反の、極めて危険な運転だ。加えて、空中での滞空は、非常に、魔力制御が難しい。

 だが、今は、そんなことを、言っている場合ではない。私は、全神経を集中し、魔力を繊細にコントロールしながら、機体を安定させる。

「ちょっと、怖いかもしれないけど、私を信じて。ちゃんと、受け止めてあげるから。大丈夫?」
「……うん」

 私は、柵の隙間から手を入れると、まずは、彼女を柵の上に登らせる。ずっしりと、彼女の重さが、手から伝わって来た。その時、機体が、ぐらりと揺れた。その瞬間、下のほうから、悲鳴が上がる。

 やっぱり、キツイ――。物凄く不安定だ。風が強すぎる……。

 お願い、私に力を貸して。ほんの、一瞬だけでいいから、風よ吹き止んで。どうか、この子を救うために、力を――。

 私は、必死に心の中で祈る。問題は、彼女を受け止めた時、無事に機体を安定させられるかどうかだ。いくら少女とはいえ、受け止める際には、数十キロの重量が掛かる。
 
 ただでさえ、両手を離しているので、強風の中では、不安定、極まりない。足元の機体は、小刻みに、グラグラと揺れ続けている。

 緊張で、額から汗が噴き出す。腕も、微かに震えている。でも、ここまで来たら、やるしかない。何としてでも、この子を助けないと……。

 私は、覚悟を決めると、笑顔で声を掛けた。
「さぁ、おいで。私が、受け止めてあげるから」
「うん――」

 少女は、小さくうなずくと、意を決して、私に飛びついて来た。私は、精一杯、足で踏ん張り、全力で彼女を抱きとめる。一瞬、後ろに傾きそうになった。だが、その瞬間、後ろから強い風が吹き、体が支えられた。

 地上からは、悲鳴が上がったあと、安堵の声に変わる。

 不思議なことに、後ろからの強風のあと、ピタッと風がやんだ。あれほど強く吹いていたのに、完全に、無風になっていた。私は、彼女を抱きかかえたまま、ゆっくりと、機体を下降させていく。

 やがて、地上にたどり着くと、周囲から、大歓声と拍手が巻き起こった。

「よかった、本当に、よかった!」
「ありがとう、彼女を助けてくれて!」
「流石は、シルフィード! 実に見事な操縦だった!」
「まさに、幸運の使者ね! 来てくれて、ありがとう!」
  
 少女は、すぐに保護され、傷の手当てを受けている。ススで、黒くなっているだけで、幸いやけどはないようだ。軽い擦り傷程度で、治療シートを貼ってもらっている。

 ふぅー……大事にならなくて、よかった――。滅茶苦茶、きわどかったけど。無事に助けられて、本当に、よかった……。

 私は、ホッとして、大きく息を吐きだした。今回ばかりは、流石に、自信がなかった。一歩、間違えれば、墜落していても、おかしくない状況だ。あんな危険な飛行、もう、二度とできないと思う。

 安心した直後、上のほうで『ドーーンッ!!』と、派手な爆発音が聞こえた。と同時に、窓ガラスが、派手に砕け散る音が響く。周囲から、大きな悲鳴が上がった。

 しばし、頭を抱えて伏せたあと、ゆっくり顔を上げる。すると、先ほどまでいた部屋から、赤い炎と、真っ黒な煙が、猛然と噴き出していた。

 それを見た瞬間、背筋が凍り付く。あと、ほんのちょっと遅ければ、確実に、あの爆発に、巻き込まれていたはずだ。

「か――間一髪だったな……」
「あ――危なかったわね……」
「いやはや――実に、いいタイミングで、助けに来てくれたな……」
「これは――本当に、運がよかったな……」

 再び、周囲の人たちの視線が、私に集中した。私は、苦笑いを浮かべる。

 それから、数分後。ようやく、サイレンの音が聞こえ、消防隊の機体が飛んできた。すぐさま、消防隊の消火活動が始まる。少女は、一緒にやって来た、救急コンテナに運ばれていった。

 まぁ、これで、一件落着かな。とはいえ、私は、このあと、色々処罰がありそうだけど。それでも、何も悔いはない。

 私は、煙で少し黒くなったまま、静かに、消火活動を見守るのだった……。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次回――
『何が正しいかは人それぞれだから難しいよね』

 間違っているとか正しいとか、誰が決めるっていうのよ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...