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第9部 夢の先にあるもの
3-2今の幸せは誰かの努力の上にあることを忘れてはいけない
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私は、ロード・カートに乗って〈南地区〉の港湾エリアに来ていた。ここは、旧市街の海沿いにあり、古びた倉庫がたくさん並んでいる。〈南地区〉は、観光客が多く、とても賑わっているが、ここは、人の数がまばらで、とても静かだ。
まだ『マナ・フローター・エンジン』がなかったころは、主な移動手段は、船だった。その当時は、たくさんの船が行き来して、滅茶苦茶、賑わっていたらしい。ただ、エア・ブルームが普及してからは、船の数が、大幅に減少した。
加えて〈グリュンア国際空港〉が出来てからは、町の中心地が、新市街のほうに移ってしまった。また、運送関連も、今は空輸がメインなので、港の倉庫街は、あまり使われていない。
ただ、普段は、賑やかな場所ばかり行っているので、たまには、こんな、のどかな雰囲気も悪くない。聞こえてくるのは、カモメの鳴き声と、波の音だけ。一人、静かに海を眺めていると、心が落ち着いてくる。
私は、今、停泊したばかりの船を、じっと見つめていた。一日に数回、大陸とこの町を往復している、小型のフェリーだ。
料金は安いが、最近では、観光がてらや、よほど船が好きな人以外は、まず、乗ることはない。運航数が少ないので、待ち時間が長いし。飛空艇に比べると、到着までの時間が、四倍以上かかるからだ。
でも、乗客が少ないお蔭で、目的の人を、すぐに見つけられた。私は、彼が港に降り立つと同時に、元気に声を掛ける。
「お待ちしておりました、ジェームズさん。遠方から、ご苦労様でした。大変、ご無沙汰しております」
私は、頭を下げて、丁寧にあいさつした。
「ふむ、久しぶりだな。わざわざ、迎えに来たのか。今から、会社に向かう予定だったのだが。観光案内とは、そういうルールではないのか?」
「通常は、送迎しないんですけど。ジェームズさんは、特別なお客様ですから」
「特別……?」
「以前、一緒に〈北地区〉まで、長時間の散歩をした仲じゃないですか?」
「あれは――あんなに遠いとは、思わなかっただけだ」
彼は、微妙な表情を浮かべる。
私が、まだ、見習いの時。道に迷っている、ジェームズさんを発見し、三時間近く掛けて〈北地区〉の農場に、徒歩で案内したことがあった。凄く大変だったけど、今となっては、いい思い出だ。
あの時のことが、物凄く印象に残っており、私にとって、ジェームズさんは、特別なお客様だった。なので今日は、休日を返上して、彼につきっきりで、案内する予定だ。
「でも、ご安心ください。今日は、ちゃんと、乗り物を用意しましたので。どんな遠い所でも、楽に行けますから」
「言っておくが、わしは、空飛ぶ乗り物には、絶対に乗らんぞ」
エア・ブルームが嫌いなのは、以前と、全く変わっていないようだ。ちょっと浮遊するだけの、エア・カートも、ダメなんだよね。
「はい、存じております。今日は、ちゃんと、安全な機体を用意しましたので」
私は、乗って来たカートまで、彼を案内する。
「むっ……これは、クラシック・カートではないか?! しかも、最初期の機体のようだが。よく、こんな骨董品を見つけたな?」
カートを見た瞬間、ジェームズさんは、驚きの表情を浮かべた。
『クラシック・カート』とは、車輪が付いた、普通の車だ。向こうの世界では、当たり前の乗り物だけど。この世界では、非常に珍しい。そもそも、車輪の付いた乗り物が、ほとんど使われていないのだ。
「知り合いに、カートが大好きな人がいまして。でも、その人も、持っていなかったので。クラシック・カートの所有者を、紹介してもらい、借りて来たんです」
「何っ?! わざわざ、わしの観光のためだけに、借りて来たのか――? こんな貴重な機体を、よく貸してくれたな」
「私の知り合いは、元シルフィード・クイーンで、とても顔の利く人ですので。持ち主の方も、快く貸してくださいました」
クラシック・カートは、かなり昔に、生産が終了しており、ほとんど現存していない。非常にレアなので、マニアの間では、とんでもなく高額で取引されている。実用性は低いので、完全に、コレクターズ・アイテムになっていた。
「それでは、後ろの席にどうぞ」
私は、扉を開け、エスコートする。預かった荷物は、後部のトランクにしまい、運転席に乗り込んだ。
「本日は、どちらにお泊りですか?」
「〈南地区〉のホテルに、予約を入れてある」
「では、先に、チェックインを済ませましょうか?」
「観光案内だけでなく、そこまで、やって貰えるのか?」
「うちは、個人企業ですので、割と自由なんです。宿泊施設だけでなく、美味しいレストランへ送迎したり。お客様のご要望は、何でもお受けしているんです」
「ふむ……なら、頼もうか」
「はい、お任せください」
私たちは、軽く世間話をしながら、のんびり移動を開始するのだった――。
******
私たちは、クラシック・カートで移動しながら〈中央区〉に来ていた。タイヤの付いた乗り物は、久しぶりなので、何だか物凄く新鮮な気分だ。向こうの世界では、当たり前なのに、こっちに来てからは、移動は全て、空を飛んでいるので。
ただ、クラシック・カートは、私たち以外、全く走っていないので、物凄く目立つ。信号待ちで停まっていると、周囲から、やたらと注目される。ただ、ジェームズさんは、乗り慣れているせいか、特に、気にした様子はない。
ちなみに、ジェームズさんは『この町の歴史が分かるものが見たい』と、ご要望だった。特に、この町を作った、四魔女に興味があるらしい。
そこで、まずは、定番の『シルフィード像』を見に〈シルフィード広場〉に向かった。これは、終戦後すぐに、平和の象徴として建てられた像で、この町の歴史には、欠かせない存在だ。
〈シルフィード広場〉を、ゆっくり回ったあとは、ちょうどお昼時だったので、レストランに入って昼食にした。結構、高そうだったけど、リチャードさんに合わせて、高級なお店を選んだ。
彼は、物凄く身なりもしっかりしているし、気品が漂っている。詳しくは知らないけど、おそらく、上流階級の人だと思う。最近は、こういうお客様の対応も増えたので、しっかりと、お店を選び分けていた。
見習い時代なら、絶対に入れなかったと思うけど。最近は、会食やパーティーなどで、高級ホテルや高級レストランに行く機会も多いので、だいぶ慣れて来た。
ランチが終わると、私たちは〈旧行政府〉の建物に向かった。現在の行政府の、近代的で大きなビルとは違い、古い様式の建物だ。三階建てで高さはないけど、敷地と建物はかなり広く、貴族のお屋敷みたいな感じだ。
駐機場にカートを止めると、私たちは、建物に向かって歩いて行く。レンガ造りの外壁に沿って進むと、やがて、門が見えて来る。
私は、門の前に来ると、ふと足を止めた。つい先日、過去の世界に行った時は、出来たばかりで、真新しかった。でも、今は色あせて、ずいぶんと古びており、歴史を感じさせる。
それを見た瞬間、嬉しいような、ちょっと寂しいような、複雑な気分になった。本来なら、私がまだ、生まれていない時代の物なのに。何とも言えない、懐かしさを感じたからだ。
私はここで、三人の魔女たちと、一ヶ月も、共に過ごした。だから、彼女たちにも、この建物にも、深い愛着があった。
「どうしたのだ?」
「あっ、いえ。歴史を感じさせる建物だなぁー、と思いまして」
「まぁ、百年以上、前のものだからな。しかし、なかなか保存状態はいいようだ」
「そうですね。行政府も、歴史的な建造物は、保全に力を入れていますので」
私は、笑顔で答えると、少し先に行っていたジェームズさんに、早足で追いつく。
この町は、どんどん新しく発展しているけど。『四魔女』に関する建物は、しっかり、残されている。特に〈中央区〉には『グリュンノア創成期』の建物が多い。
かつての『四魔女』は、力の象徴だった。小さな都市国家だったにもかかわらず、四魔女の圧倒的な強さで、敵の侵攻を防いでいた。また、彼女たちの存在が大きく、大国も、うかつに手を出せなかったのだ。
平和になった今でも、この町では、大英雄として称えられている。とはいえ、年々その歴史も、忘れられてきていた。
〈旧行政府〉は、博物館になっているが、訪れる人は、あまり多くない。それに、来るのは、観光客だけで、地元の人は、まず訪れない場所だ。
私たちは、中に入ると、一階から順に回って行く。各部屋は、以前、過去の世界に行った時と、ほぼ同じだった。ただ、廊下には、ウインドウ・ケースが置かれ、様々な資料や、古い品が展示されていた。
私は、過去に行った時の記憶を頼りに、ジェームズさんに、様々な説明をして行く。彼は、表情は全く変えなかったが、私の話を真剣に聴いていた。時折り、展示されている資料の前で立ち止まり、何かを考え込んでいる様子だった。
館内を一通り回ると、再び、クラシック・カートに乗り、海沿いに向かう。この町を一周しながら、四方にある『守護女神像』を回るためだ。まず、最初は〈東地区〉にある『大地の魔女』の像に向かう。
ついでに〈エメラルド・ビーチ〉を散策したり、近くにあるお店を、見て回ったりする。相変わらず、難しい表情をしているが、それなり満足している様子だった。ずっと一緒にいたら、何となく、雰囲気で、感情が分かるようになってきた。
守護女神像を一つずつ回り、最後の〈北地区〉の『叡智の魔女』の像を、見に行ったあと。車で移動していると、すでに、日が傾いてきていた。
「ずいぶんと、四魔女のことに詳しいのだな」
後部座席にいた、ジェームズさんが、ボソッとつぶやく。
「この町に住んでいる人なら、誰もが知っていますし。シルフィードは、歴史的な知識も、必要ですので」
「いや、そうではない。普通なら、知り得ないような知識も、持っているように感じたが。単に、仕事だからではなく、そうとう、思い入れがあるようだな?」
「えぇ、まぁ。私は、心から『四魔女』を、尊敬していますので。彼女たちがいたからこそ、今の平和な世界と、この町がありますので」
流石に、過去の世界に行って、本人たちに会って来たとは言えない。
「だが、今の若者たちは、そのことを、皆忘れておる。豊かな生活が、先人のお蔭であることも、平和の大切さも。いずれは、完全に、忘れ去られるのだろうな……」
彼の言葉は、少し寂しげに聞こえた。
「確かに、過去を気にせず、今を楽しむことだけを考え、生きている人も多いです。私もそうですが、戦争を体験したことのない、平和な時代に、生まれた世代ですので」
「でも、完全に忘れられることは、絶対にないと思います。少なくとも私は、毎日、平和な世界と、この町を作った人たちに、心から感謝しています」
特に、過去の世界に行ってから、その想いが、ますます強くなった。
「それは、君が、シルフィードだからか?」
「それもあります。シルフィードは、平和の象徴ですから。でも、私、個人の願いでもあるんです」
「願い――?」
「私は、この世界平和を、永遠に守りたいんです。だから、日々シルフィードの仕事を、全力で頑張っているんです。四魔女たちの努力を、無駄にしないためにも」
平和は、自然に、転がり込んでくるものではない。歴史上、永遠の平和はあり得なかったし。人々が不幸になったり、大きな不満がたまれば、再び、戦争が起こる可能性だってあるのだ。
「シルフィードは、自分のために、やっているのではないのか?」
「最初は『シルフィードで成功したい』という、願望がありました。でも、今は、そんなのは、些細なことです。みんなの幸せとか、世界が平和であることのほうが、はるかに重要だと思うので。だから、私は、戦い続けます」
「戦う……? 何と?」
「平和な時代には、平和な時代なりの、戦いがあります。それは、たくさんの人を幸せにして、平和を守ることです」
私が答えると、ジェームズさんは、黙り込んでしまった。
「すいません、ちょっと、大げさな話でしたね」
「いや、構わん。だが、もし、本気で言ってるなら、茨の道だぞ」
「それは、分かっています。でも、四魔女たちも、その茨の道を進んでいましたし。そのお蔭で、今があるのですから」
「……そうだな」
それ以降、会話が途切れ、周りの景色だけが、静かに流れていく。しばらく、進んだところで、私は、静かにカートを止める。
「到着しました」
「ん――? 会社に戻っているのでは、なかったのか?」
「えぇ。本日の観光の、最後の場所です」
ジェームズさんは、機体を降りると、唖然として立ち尽くしていた。
「おいっ、ここは?! 来るようには、頼んでないぞ!」
「でも、娘さんやお孫さんとも、お会いしたいかと思いまして」
「むっ……余計なことを――。そもそも、来る予定はなかったから、何も持って来ていない。手ぶらで会う訳には、行かんだろうが」
「それなら、大丈夫です」
私は、トランクを開け、リボンの掛かった箱と、紙袋を取り出した。先ほど、お店を見に寄った時に、買っておいたものだ。
「……いつの間に? まったく、余計なことに気が回るな」
「すいません。出過ぎたことだったでしょうか?」
「まぁ――せっかく用意したのであれば、仕方があるまい」
彼は、むすっとした表情で答える。
「でも、これで、ようやく約束が果たせましたね」
「約束……?」
「以前、ここでお別れした時のこと、覚えていませんか?『次に来る時までに、一人前になっておけ』って、おっしゃられたこと」
「そういえば、そんなことも、言った気がするな――。しかし、まさか、上位階級にまで、なっているとは……」
「私も、ここまでは、想定外でしたが。あのあと、必死に頑張りましたから」
私は、笑顔で答える。
「……」
彼は、少し考えたあと、スーツの内ポケットから、紙とペンを取り出した。ササッと、紙に何かを書きこんで、私に差し出してきた。
「えーっと、これは――?」
「小切手だ。わしは、マギコンとかは、好かんのでな」
今は全て、マギコンでのデータ取引なので、小切手なんて初めて見る。ただ、それよりも、そこに書かれた金額を見て、目の玉が飛び出しそうになった。
「えぇっ!? これ、金額、間違えていませんか!」
「なんだ、それでは不足か?」
「いえ、逆です! いくらなんでも、多過ぎです」
そこに書かれていたのは、ジェームズさんのサインと『1000万ベル』の金額だった。いくら上位階級が案内したって、10~20万ベルが相場なのに。
「前回は、払いそびれてしまったから、それも合わせてだ。いいから、とっておけ。その土産代も、込みだからな」
反論しようとするのを、遮るように言いながら、私が持っていたお土産を、サッと取り上げた。
「次に来た時も、案内を頼むから、ちゃんと準備をしおくのだぞ。あと、おごらず、しっかり、精進を忘れずにな」
「はい……精一杯、頑張ります!」
彼が踵を返して、建物に向かって行くと、ちょうど娘さんが、小走りで、こっちに向かって来ている最中だった。
ジェームズさんは、ちょっと、気難しい人だけど。前回と同様、とても有意義な観光案内だった。それに、何だかんだで、しっかり見てくれてるし。根は優しい人なんだと思う。
私も、もっともっと、頑張ろう。こういう小さな積み重ねが、人々の幸せや、世界の平和に、つながるのだから。
私は、親子の再会を、笑顔で見守りながら、心に深く誓うのだった……。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
次回――
『今の私にできるのは平和の象徴になる事だと思う』
人知を超えた平和は望みません。平和をもたらす人知を望みます
まだ『マナ・フローター・エンジン』がなかったころは、主な移動手段は、船だった。その当時は、たくさんの船が行き来して、滅茶苦茶、賑わっていたらしい。ただ、エア・ブルームが普及してからは、船の数が、大幅に減少した。
加えて〈グリュンア国際空港〉が出来てからは、町の中心地が、新市街のほうに移ってしまった。また、運送関連も、今は空輸がメインなので、港の倉庫街は、あまり使われていない。
ただ、普段は、賑やかな場所ばかり行っているので、たまには、こんな、のどかな雰囲気も悪くない。聞こえてくるのは、カモメの鳴き声と、波の音だけ。一人、静かに海を眺めていると、心が落ち着いてくる。
私は、今、停泊したばかりの船を、じっと見つめていた。一日に数回、大陸とこの町を往復している、小型のフェリーだ。
料金は安いが、最近では、観光がてらや、よほど船が好きな人以外は、まず、乗ることはない。運航数が少ないので、待ち時間が長いし。飛空艇に比べると、到着までの時間が、四倍以上かかるからだ。
でも、乗客が少ないお蔭で、目的の人を、すぐに見つけられた。私は、彼が港に降り立つと同時に、元気に声を掛ける。
「お待ちしておりました、ジェームズさん。遠方から、ご苦労様でした。大変、ご無沙汰しております」
私は、頭を下げて、丁寧にあいさつした。
「ふむ、久しぶりだな。わざわざ、迎えに来たのか。今から、会社に向かう予定だったのだが。観光案内とは、そういうルールではないのか?」
「通常は、送迎しないんですけど。ジェームズさんは、特別なお客様ですから」
「特別……?」
「以前、一緒に〈北地区〉まで、長時間の散歩をした仲じゃないですか?」
「あれは――あんなに遠いとは、思わなかっただけだ」
彼は、微妙な表情を浮かべる。
私が、まだ、見習いの時。道に迷っている、ジェームズさんを発見し、三時間近く掛けて〈北地区〉の農場に、徒歩で案内したことがあった。凄く大変だったけど、今となっては、いい思い出だ。
あの時のことが、物凄く印象に残っており、私にとって、ジェームズさんは、特別なお客様だった。なので今日は、休日を返上して、彼につきっきりで、案内する予定だ。
「でも、ご安心ください。今日は、ちゃんと、乗り物を用意しましたので。どんな遠い所でも、楽に行けますから」
「言っておくが、わしは、空飛ぶ乗り物には、絶対に乗らんぞ」
エア・ブルームが嫌いなのは、以前と、全く変わっていないようだ。ちょっと浮遊するだけの、エア・カートも、ダメなんだよね。
「はい、存じております。今日は、ちゃんと、安全な機体を用意しましたので」
私は、乗って来たカートまで、彼を案内する。
「むっ……これは、クラシック・カートではないか?! しかも、最初期の機体のようだが。よく、こんな骨董品を見つけたな?」
カートを見た瞬間、ジェームズさんは、驚きの表情を浮かべた。
『クラシック・カート』とは、車輪が付いた、普通の車だ。向こうの世界では、当たり前の乗り物だけど。この世界では、非常に珍しい。そもそも、車輪の付いた乗り物が、ほとんど使われていないのだ。
「知り合いに、カートが大好きな人がいまして。でも、その人も、持っていなかったので。クラシック・カートの所有者を、紹介してもらい、借りて来たんです」
「何っ?! わざわざ、わしの観光のためだけに、借りて来たのか――? こんな貴重な機体を、よく貸してくれたな」
「私の知り合いは、元シルフィード・クイーンで、とても顔の利く人ですので。持ち主の方も、快く貸してくださいました」
クラシック・カートは、かなり昔に、生産が終了しており、ほとんど現存していない。非常にレアなので、マニアの間では、とんでもなく高額で取引されている。実用性は低いので、完全に、コレクターズ・アイテムになっていた。
「それでは、後ろの席にどうぞ」
私は、扉を開け、エスコートする。預かった荷物は、後部のトランクにしまい、運転席に乗り込んだ。
「本日は、どちらにお泊りですか?」
「〈南地区〉のホテルに、予約を入れてある」
「では、先に、チェックインを済ませましょうか?」
「観光案内だけでなく、そこまで、やって貰えるのか?」
「うちは、個人企業ですので、割と自由なんです。宿泊施設だけでなく、美味しいレストランへ送迎したり。お客様のご要望は、何でもお受けしているんです」
「ふむ……なら、頼もうか」
「はい、お任せください」
私たちは、軽く世間話をしながら、のんびり移動を開始するのだった――。
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私たちは、クラシック・カートで移動しながら〈中央区〉に来ていた。タイヤの付いた乗り物は、久しぶりなので、何だか物凄く新鮮な気分だ。向こうの世界では、当たり前なのに、こっちに来てからは、移動は全て、空を飛んでいるので。
ただ、クラシック・カートは、私たち以外、全く走っていないので、物凄く目立つ。信号待ちで停まっていると、周囲から、やたらと注目される。ただ、ジェームズさんは、乗り慣れているせいか、特に、気にした様子はない。
ちなみに、ジェームズさんは『この町の歴史が分かるものが見たい』と、ご要望だった。特に、この町を作った、四魔女に興味があるらしい。
そこで、まずは、定番の『シルフィード像』を見に〈シルフィード広場〉に向かった。これは、終戦後すぐに、平和の象徴として建てられた像で、この町の歴史には、欠かせない存在だ。
〈シルフィード広場〉を、ゆっくり回ったあとは、ちょうどお昼時だったので、レストランに入って昼食にした。結構、高そうだったけど、リチャードさんに合わせて、高級なお店を選んだ。
彼は、物凄く身なりもしっかりしているし、気品が漂っている。詳しくは知らないけど、おそらく、上流階級の人だと思う。最近は、こういうお客様の対応も増えたので、しっかりと、お店を選び分けていた。
見習い時代なら、絶対に入れなかったと思うけど。最近は、会食やパーティーなどで、高級ホテルや高級レストランに行く機会も多いので、だいぶ慣れて来た。
ランチが終わると、私たちは〈旧行政府〉の建物に向かった。現在の行政府の、近代的で大きなビルとは違い、古い様式の建物だ。三階建てで高さはないけど、敷地と建物はかなり広く、貴族のお屋敷みたいな感じだ。
駐機場にカートを止めると、私たちは、建物に向かって歩いて行く。レンガ造りの外壁に沿って進むと、やがて、門が見えて来る。
私は、門の前に来ると、ふと足を止めた。つい先日、過去の世界に行った時は、出来たばかりで、真新しかった。でも、今は色あせて、ずいぶんと古びており、歴史を感じさせる。
それを見た瞬間、嬉しいような、ちょっと寂しいような、複雑な気分になった。本来なら、私がまだ、生まれていない時代の物なのに。何とも言えない、懐かしさを感じたからだ。
私はここで、三人の魔女たちと、一ヶ月も、共に過ごした。だから、彼女たちにも、この建物にも、深い愛着があった。
「どうしたのだ?」
「あっ、いえ。歴史を感じさせる建物だなぁー、と思いまして」
「まぁ、百年以上、前のものだからな。しかし、なかなか保存状態はいいようだ」
「そうですね。行政府も、歴史的な建造物は、保全に力を入れていますので」
私は、笑顔で答えると、少し先に行っていたジェームズさんに、早足で追いつく。
この町は、どんどん新しく発展しているけど。『四魔女』に関する建物は、しっかり、残されている。特に〈中央区〉には『グリュンノア創成期』の建物が多い。
かつての『四魔女』は、力の象徴だった。小さな都市国家だったにもかかわらず、四魔女の圧倒的な強さで、敵の侵攻を防いでいた。また、彼女たちの存在が大きく、大国も、うかつに手を出せなかったのだ。
平和になった今でも、この町では、大英雄として称えられている。とはいえ、年々その歴史も、忘れられてきていた。
〈旧行政府〉は、博物館になっているが、訪れる人は、あまり多くない。それに、来るのは、観光客だけで、地元の人は、まず訪れない場所だ。
私たちは、中に入ると、一階から順に回って行く。各部屋は、以前、過去の世界に行った時と、ほぼ同じだった。ただ、廊下には、ウインドウ・ケースが置かれ、様々な資料や、古い品が展示されていた。
私は、過去に行った時の記憶を頼りに、ジェームズさんに、様々な説明をして行く。彼は、表情は全く変えなかったが、私の話を真剣に聴いていた。時折り、展示されている資料の前で立ち止まり、何かを考え込んでいる様子だった。
館内を一通り回ると、再び、クラシック・カートに乗り、海沿いに向かう。この町を一周しながら、四方にある『守護女神像』を回るためだ。まず、最初は〈東地区〉にある『大地の魔女』の像に向かう。
ついでに〈エメラルド・ビーチ〉を散策したり、近くにあるお店を、見て回ったりする。相変わらず、難しい表情をしているが、それなり満足している様子だった。ずっと一緒にいたら、何となく、雰囲気で、感情が分かるようになってきた。
守護女神像を一つずつ回り、最後の〈北地区〉の『叡智の魔女』の像を、見に行ったあと。車で移動していると、すでに、日が傾いてきていた。
「ずいぶんと、四魔女のことに詳しいのだな」
後部座席にいた、ジェームズさんが、ボソッとつぶやく。
「この町に住んでいる人なら、誰もが知っていますし。シルフィードは、歴史的な知識も、必要ですので」
「いや、そうではない。普通なら、知り得ないような知識も、持っているように感じたが。単に、仕事だからではなく、そうとう、思い入れがあるようだな?」
「えぇ、まぁ。私は、心から『四魔女』を、尊敬していますので。彼女たちがいたからこそ、今の平和な世界と、この町がありますので」
流石に、過去の世界に行って、本人たちに会って来たとは言えない。
「だが、今の若者たちは、そのことを、皆忘れておる。豊かな生活が、先人のお蔭であることも、平和の大切さも。いずれは、完全に、忘れ去られるのだろうな……」
彼の言葉は、少し寂しげに聞こえた。
「確かに、過去を気にせず、今を楽しむことだけを考え、生きている人も多いです。私もそうですが、戦争を体験したことのない、平和な時代に、生まれた世代ですので」
「でも、完全に忘れられることは、絶対にないと思います。少なくとも私は、毎日、平和な世界と、この町を作った人たちに、心から感謝しています」
特に、過去の世界に行ってから、その想いが、ますます強くなった。
「それは、君が、シルフィードだからか?」
「それもあります。シルフィードは、平和の象徴ですから。でも、私、個人の願いでもあるんです」
「願い――?」
「私は、この世界平和を、永遠に守りたいんです。だから、日々シルフィードの仕事を、全力で頑張っているんです。四魔女たちの努力を、無駄にしないためにも」
平和は、自然に、転がり込んでくるものではない。歴史上、永遠の平和はあり得なかったし。人々が不幸になったり、大きな不満がたまれば、再び、戦争が起こる可能性だってあるのだ。
「シルフィードは、自分のために、やっているのではないのか?」
「最初は『シルフィードで成功したい』という、願望がありました。でも、今は、そんなのは、些細なことです。みんなの幸せとか、世界が平和であることのほうが、はるかに重要だと思うので。だから、私は、戦い続けます」
「戦う……? 何と?」
「平和な時代には、平和な時代なりの、戦いがあります。それは、たくさんの人を幸せにして、平和を守ることです」
私が答えると、ジェームズさんは、黙り込んでしまった。
「すいません、ちょっと、大げさな話でしたね」
「いや、構わん。だが、もし、本気で言ってるなら、茨の道だぞ」
「それは、分かっています。でも、四魔女たちも、その茨の道を進んでいましたし。そのお蔭で、今があるのですから」
「……そうだな」
それ以降、会話が途切れ、周りの景色だけが、静かに流れていく。しばらく、進んだところで、私は、静かにカートを止める。
「到着しました」
「ん――? 会社に戻っているのでは、なかったのか?」
「えぇ。本日の観光の、最後の場所です」
ジェームズさんは、機体を降りると、唖然として立ち尽くしていた。
「おいっ、ここは?! 来るようには、頼んでないぞ!」
「でも、娘さんやお孫さんとも、お会いしたいかと思いまして」
「むっ……余計なことを――。そもそも、来る予定はなかったから、何も持って来ていない。手ぶらで会う訳には、行かんだろうが」
「それなら、大丈夫です」
私は、トランクを開け、リボンの掛かった箱と、紙袋を取り出した。先ほど、お店を見に寄った時に、買っておいたものだ。
「……いつの間に? まったく、余計なことに気が回るな」
「すいません。出過ぎたことだったでしょうか?」
「まぁ――せっかく用意したのであれば、仕方があるまい」
彼は、むすっとした表情で答える。
「でも、これで、ようやく約束が果たせましたね」
「約束……?」
「以前、ここでお別れした時のこと、覚えていませんか?『次に来る時までに、一人前になっておけ』って、おっしゃられたこと」
「そういえば、そんなことも、言った気がするな――。しかし、まさか、上位階級にまで、なっているとは……」
「私も、ここまでは、想定外でしたが。あのあと、必死に頑張りましたから」
私は、笑顔で答える。
「……」
彼は、少し考えたあと、スーツの内ポケットから、紙とペンを取り出した。ササッと、紙に何かを書きこんで、私に差し出してきた。
「えーっと、これは――?」
「小切手だ。わしは、マギコンとかは、好かんのでな」
今は全て、マギコンでのデータ取引なので、小切手なんて初めて見る。ただ、それよりも、そこに書かれた金額を見て、目の玉が飛び出しそうになった。
「えぇっ!? これ、金額、間違えていませんか!」
「なんだ、それでは不足か?」
「いえ、逆です! いくらなんでも、多過ぎです」
そこに書かれていたのは、ジェームズさんのサインと『1000万ベル』の金額だった。いくら上位階級が案内したって、10~20万ベルが相場なのに。
「前回は、払いそびれてしまったから、それも合わせてだ。いいから、とっておけ。その土産代も、込みだからな」
反論しようとするのを、遮るように言いながら、私が持っていたお土産を、サッと取り上げた。
「次に来た時も、案内を頼むから、ちゃんと準備をしおくのだぞ。あと、おごらず、しっかり、精進を忘れずにな」
「はい……精一杯、頑張ります!」
彼が踵を返して、建物に向かって行くと、ちょうど娘さんが、小走りで、こっちに向かって来ている最中だった。
ジェームズさんは、ちょっと、気難しい人だけど。前回と同様、とても有意義な観光案内だった。それに、何だかんだで、しっかり見てくれてるし。根は優しい人なんだと思う。
私も、もっともっと、頑張ろう。こういう小さな積み重ねが、人々の幸せや、世界の平和に、つながるのだから。
私は、親子の再会を、笑顔で見守りながら、心に深く誓うのだった……。
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次回――
『今の私にできるのは平和の象徴になる事だと思う』
人知を超えた平和は望みません。平和をもたらす人知を望みます
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『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
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北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
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でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
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パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
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が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
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「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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