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第四十五話 ベルンにて
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盗賊のアジトを潰した後、訓練がてら街道脇の走り辛い場所を選んで走り、フランソワ王女の馬車を追い越した。
道中、盗賊に出会う事なく、魔物もゴブリンやコボルトなどを倒した程度で、一日の野営を挟んで二日目の日が暮れる前にベルンへとたどり着いた。
当然、約一名ヘロヘロになっている訳で。
「し、死ぬ、死ねる」
ベルンの街を目の前にして、カジムが街道脇に倒れている。
「さすが死の森が近いだけあって、アールスタット並みの城塞都市だな」
「そうね、街の規模はアールスタットよりも小さいけど、防壁の高さは負けてないわね」
へばるカジムをよそ目に、平常運転のホクトとサクヤ。
「カジム、門に並ぶぞ」
「ま、待ってアニキ」
カジムを引き摺って門に並ぶ。
ベルンは、死の森が近いだけあって、冒険者の街と呼ばれている。門には、依頼を受けた冒険者専用の列が別に設けられている。
ホクト達は一般の人達と同じ列に並んでいる。
「さすがにバーキラ王国が近いからか、獣人族が多いな」
門を抜けてベルンの街に入ると、街中は多くの人で賑わっていた。中でも獣人族が目立つ。
猫人族、犬人族、熊人族、鼠人族、狐人族と様々な種族が見て取れる。
人族以外では、次に多いのがドワーフ、あと少数だがエルフの姿も見て取れた。
「虎人族は居ないな」
「アニキ、獣人族の中でも虎人族と獅子人族は少ないんだよ」
カジムと同じ虎人族の姿が見えない事をホクトが言うが、カジムがその訳を話してくれた。
獣人族の中でも戦闘能力が高い獅子と虎の獣人は、バーキラ王国の中でも希少種族だとカジムが教えてくれた。
露店が並ぶ賑やかな大通りを歩いて行くと、街の中心にベルバッハ伯爵の城の様な屋敷がそびえ建っている。そこを北に抜けて10分程歩いた場所に冒険者ギルドが建っていた。
「南門から随分歩いたわね」
「そうだね、北門は死の森に近いから、冒険者ギルドが北寄りにあるんだろうね」
ホクト達が南門から街に入り、冒険者ギルドまで30分は歩いた。冒険者の出入りが多いのは、北門と東門なので、北寄りに建てられたのだろうと推測出来た。
ホクト達がギルドに入ると、それまで騒がしく喧騒溢れるギルド内がしんと静まりかえる。
ホクトとサクヤは、この街に来てから何時ものようにローブのフードを目深に被らず、顔を晒していた。
だけど今回はホクトやサクヤに絡んで来る者は居なかった。
サクヤの美しい姿に引き寄せられそうになったゴロツキも、ホクトとサクヤの後ろに付き従うカジムを見た瞬間、全員が目をそらす。
ベルンは冒険者の街だけあって、虎人族の戦闘能力を知っている。しかもカジムはホクトに鍛えられ、この数ヶ月でもともと筋肉質の肉体が、一回り大きくなって、凶悪な雰囲気を醸し出していた。
そのお陰で、ホクトとサクヤにとって、良い虫除けになっている。
ベルンへ到着した次の日、冒険者ギルドでホクト達が依頼書が貼り出された掲示板を見ていると、背中から再び、羨望・嫉妬・蔑視、様々な視線が投げ掛けられる。これも馴れた事なので無視して依頼書を吟味していく。
「やっぱり場所柄か、討伐依頼が多いな」
ホクト達は全員が冒険者ランクがCランクに上がった。本来は昇格試験を受けるのだが、Cランクに昇格する条件として、盗賊などの討伐があった。
悪即断で盗賊に対して剣を振るえるか、それがDランクからCランクへの壁となっている。
今回、ベルンの冒険者ギルドへ到着した日に、盗賊の討伐をステータスプレートを添えて報告した事で、三人が揃ってCランクへと昇格した。
Cランクに昇格した事によって、Bランクの依頼が受けれる様になった事が大きい。Bランクからは、地竜や飛竜の討伐依頼があるからだ。
「これか、これの二択かな」
・地竜の討伐
討伐ランク B
出没地点 死の森中央部
地竜の肉を500キロ確保する。
報酬 白金貨1枚
・はぐれ劣飛竜(ワイバーン)の討伐
討伐ランク B
出没地点 ベルンと死の森付近
ロドム山脈よりはぐれ劣飛竜がベルン周辺に流れて来ている。家畜や冒険者の被害が出ている。至急討伐されたし。
報酬 白金貨2枚
「ワイバーンも地竜も素材的にはガンツが喜びそうだな」
「なら両方を受けたらどうだいアニキ」
ホクトは少し考えて頷くと、カジムの言った様に二枚の依頼書を掲示板から剥がす。
竜種の討伐依頼としては、報酬が安い様に感じるが、竜種はその素材が高額なので討伐の報酬はこの程度が相場らしい。
ヴァルハイムや王都の冒険者ギルドには、竜種の討伐依頼など貼り出される事はないので、ホクト達がその相場を知るわけもないのだが。
「本当は、エンシェントドラゴン辺りの素材が有れば良いんだけどね」
そう言って二枚の依頼書をギルドのカウンターに持って行く。
依頼書と三人のステータスプレートを渡す。
「ッ?!ホクト様、この依頼で間違いないのですか?」
ギルドの受付嬢が二枚の依頼書とホクト達のステータスプレートを見て確認してくる。
ホクトとサクヤのステータスプレートには、家名が記されているのだから当然かもしれない。昨日、盗賊の討伐を報告した別の受付嬢も、ホクト達の素性を見て驚いていた。
「ええ、問題ありません」
「そ、そうですか。依頼の失敗時に違約金が発生しますのでお気をつけ下さい。
それと、出来ればワイバーンの討伐を先行して頂けるとありがたいのですが」
ワイバーンの討伐は、既に被害がでている為に、その依頼を先に処理する様に受付嬢から頼まれる。ホクトもそれに関しては異論は無いので了承する。
「分かりました。
ワイバーンの被害がでた場所と目撃情報が有れば教えて下さい」
ホクト達は、ワイバーンと地竜の出没しそうな場所を聞いて、早速討伐に向かう事にする。
道中、盗賊に出会う事なく、魔物もゴブリンやコボルトなどを倒した程度で、一日の野営を挟んで二日目の日が暮れる前にベルンへとたどり着いた。
当然、約一名ヘロヘロになっている訳で。
「し、死ぬ、死ねる」
ベルンの街を目の前にして、カジムが街道脇に倒れている。
「さすが死の森が近いだけあって、アールスタット並みの城塞都市だな」
「そうね、街の規模はアールスタットよりも小さいけど、防壁の高さは負けてないわね」
へばるカジムをよそ目に、平常運転のホクトとサクヤ。
「カジム、門に並ぶぞ」
「ま、待ってアニキ」
カジムを引き摺って門に並ぶ。
ベルンは、死の森が近いだけあって、冒険者の街と呼ばれている。門には、依頼を受けた冒険者専用の列が別に設けられている。
ホクト達は一般の人達と同じ列に並んでいる。
「さすがにバーキラ王国が近いからか、獣人族が多いな」
門を抜けてベルンの街に入ると、街中は多くの人で賑わっていた。中でも獣人族が目立つ。
猫人族、犬人族、熊人族、鼠人族、狐人族と様々な種族が見て取れる。
人族以外では、次に多いのがドワーフ、あと少数だがエルフの姿も見て取れた。
「虎人族は居ないな」
「アニキ、獣人族の中でも虎人族と獅子人族は少ないんだよ」
カジムと同じ虎人族の姿が見えない事をホクトが言うが、カジムがその訳を話してくれた。
獣人族の中でも戦闘能力が高い獅子と虎の獣人は、バーキラ王国の中でも希少種族だとカジムが教えてくれた。
露店が並ぶ賑やかな大通りを歩いて行くと、街の中心にベルバッハ伯爵の城の様な屋敷がそびえ建っている。そこを北に抜けて10分程歩いた場所に冒険者ギルドが建っていた。
「南門から随分歩いたわね」
「そうだね、北門は死の森に近いから、冒険者ギルドが北寄りにあるんだろうね」
ホクト達が南門から街に入り、冒険者ギルドまで30分は歩いた。冒険者の出入りが多いのは、北門と東門なので、北寄りに建てられたのだろうと推測出来た。
ホクト達がギルドに入ると、それまで騒がしく喧騒溢れるギルド内がしんと静まりかえる。
ホクトとサクヤは、この街に来てから何時ものようにローブのフードを目深に被らず、顔を晒していた。
だけど今回はホクトやサクヤに絡んで来る者は居なかった。
サクヤの美しい姿に引き寄せられそうになったゴロツキも、ホクトとサクヤの後ろに付き従うカジムを見た瞬間、全員が目をそらす。
ベルンは冒険者の街だけあって、虎人族の戦闘能力を知っている。しかもカジムはホクトに鍛えられ、この数ヶ月でもともと筋肉質の肉体が、一回り大きくなって、凶悪な雰囲気を醸し出していた。
そのお陰で、ホクトとサクヤにとって、良い虫除けになっている。
ベルンへ到着した次の日、冒険者ギルドでホクト達が依頼書が貼り出された掲示板を見ていると、背中から再び、羨望・嫉妬・蔑視、様々な視線が投げ掛けられる。これも馴れた事なので無視して依頼書を吟味していく。
「やっぱり場所柄か、討伐依頼が多いな」
ホクト達は全員が冒険者ランクがCランクに上がった。本来は昇格試験を受けるのだが、Cランクに昇格する条件として、盗賊などの討伐があった。
悪即断で盗賊に対して剣を振るえるか、それがDランクからCランクへの壁となっている。
今回、ベルンの冒険者ギルドへ到着した日に、盗賊の討伐をステータスプレートを添えて報告した事で、三人が揃ってCランクへと昇格した。
Cランクに昇格した事によって、Bランクの依頼が受けれる様になった事が大きい。Bランクからは、地竜や飛竜の討伐依頼があるからだ。
「これか、これの二択かな」
・地竜の討伐
討伐ランク B
出没地点 死の森中央部
地竜の肉を500キロ確保する。
報酬 白金貨1枚
・はぐれ劣飛竜(ワイバーン)の討伐
討伐ランク B
出没地点 ベルンと死の森付近
ロドム山脈よりはぐれ劣飛竜がベルン周辺に流れて来ている。家畜や冒険者の被害が出ている。至急討伐されたし。
報酬 白金貨2枚
「ワイバーンも地竜も素材的にはガンツが喜びそうだな」
「なら両方を受けたらどうだいアニキ」
ホクトは少し考えて頷くと、カジムの言った様に二枚の依頼書を掲示板から剥がす。
竜種の討伐依頼としては、報酬が安い様に感じるが、竜種はその素材が高額なので討伐の報酬はこの程度が相場らしい。
ヴァルハイムや王都の冒険者ギルドには、竜種の討伐依頼など貼り出される事はないので、ホクト達がその相場を知るわけもないのだが。
「本当は、エンシェントドラゴン辺りの素材が有れば良いんだけどね」
そう言って二枚の依頼書をギルドのカウンターに持って行く。
依頼書と三人のステータスプレートを渡す。
「ッ?!ホクト様、この依頼で間違いないのですか?」
ギルドの受付嬢が二枚の依頼書とホクト達のステータスプレートを見て確認してくる。
ホクトとサクヤのステータスプレートには、家名が記されているのだから当然かもしれない。昨日、盗賊の討伐を報告した別の受付嬢も、ホクト達の素性を見て驚いていた。
「ええ、問題ありません」
「そ、そうですか。依頼の失敗時に違約金が発生しますのでお気をつけ下さい。
それと、出来ればワイバーンの討伐を先行して頂けるとありがたいのですが」
ワイバーンの討伐は、既に被害がでている為に、その依頼を先に処理する様に受付嬢から頼まれる。ホクトもそれに関しては異論は無いので了承する。
「分かりました。
ワイバーンの被害がでた場所と目撃情報が有れば教えて下さい」
ホクト達は、ワイバーンと地竜の出没しそうな場所を聞いて、早速討伐に向かう事にする。
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