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第七十一話 使い魔
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魔法陣が光り輝き、その光の中に中型犬サイズの魔物が現れる。
「フランソワさん、契約してみて下さい!」
ボォッとしていたフランソワに、メフィス教授が契約を促す。
「は、はい!」
フランソワが現れた犬のような魔物に対して、魔力を流しながら契約を試みる。
「私と契約して、私の召喚獣なってくれませんか」
フランソワの魔力を魔物が受け入れる。
魔法陣の光が収まり、その真ん中に銀色の美しい毛並みの狼の子供が座っていた。
ただの狼ではない。その額には、10センチ程の角が一本生えていた。
「ほぉ、これは珍しい、【ブリザードウルフ】ですね。ブリザードウルフは、冒険者ギルドではランクAの魔物とされています。まだ子供の様ですが、この先の成長が楽しみな召喚獣です。
フランソワさん、早く名前を付けてあげて下さい。それで契約は完了です」
フランソワは、メフィス教授にうながされ、目の前のブリザードウルフの子供を見て、インスピレーションで浮かんだ名前を告げる。
「…………あなたの名前は【エッジ】よ」
『ワゥ!』
フランソワの呼び掛けに、それが自分の名前だとブリザードウルフが認識すると、フランソワとの間にパスが繋がり、召喚契約が結ばれた。
『ワゥ!ワゥ!』
エッジと名付けられたブリザードウルフがフランソワの元へ駆け寄り、足に角が当たらぬように擦り付け甘える。フランソワもしゃがみこみ、中型犬サイズのブリザードウルフの子供、エッジと名付けられた己の召喚獣を撫でて可愛がる。
「成功ですね」
無事に召喚術が成功し、メフィス教授もホッとした声でフランソワを労う。
「では、次はサクヤさんどうぞ」
メフィスにうながされ、サクヤが魔力を魔法陣へと込め始める。
『我は求め訴える、素盞鳴尊(スサノオノミコト)様に仕える、太陽の化身の分御霊を、高天原よりこの世に顕現させたまえ、その漆黒の翼で異界を超えよ、急急如律令』
サクヤが小さな声で囁くように祝詞を口ずさむ。
円の中に描かれた五芒星が、サクヤの魔力を受けて輝きだす。魔法陣の中心に眩い光の塊が現れ、やがて光は鳥の姿を形取っていく。
その大きさは、150センチ程にもなり、光の輪郭が羽ばたいて燐光を散らし、その姿を現わす。
五芒星の中心に現れたのは、全身を漆黒の羽根で身を包んだ烏だった。
「…………………………」
「あなたの名は【ミサキ】です」
ミサキとは、日本の神、悪霊、精霊などの神霊の出現前に現れる霊的存在の総称で、熊野三山においてカラスはミサキ神とされている。八咫烏は熊野大神[素盞鳴尊(スサノウノミコト)]に仕える存在として信仰されていて、サクヤは、そこからミサキの名を付けた。
『拝命イタシマシタ、懐カシキニオイノ我ガ主』
八咫烏のミサキは、サクヤの前世がコノハナノサクヤヒメの分け御霊である事を感じとった様だ。
「ミサキ、サイズを普通の烏位になれる?」
『是』
惚けているメフィス教授を置き去りに、サクヤはミサキへと指示を出すと、ミサキの身体が小さく縮んで普通の烏位に小さくなった。
バサッ
ミサキは羽ばたくとフワリと翔び立ち、サクヤの肩に泊まる。
その時になってやっと、ハッとしてメフィス教授がサクヤに詰め寄った。
「サクヤさん!そ、その魔物は何なんですか?!
見たこともない鳥型の魔物!しかも三本脚なんて聞いたことないです!
それに大きさが変えられるなんて……、高位の精霊ですか?!
いや!待って下さい!今、会話していませんでしたか?!」
メフィス教授は、この世界に存在しないかもしれない、八咫烏という神霊を目にして、興奮してサクヤに詰め寄る。
実際には八咫烏の分霊を、この世界の召喚術と融合し呼び出された為、厳密には八咫烏そのままと言うわけではなかった。
サクヤが用いた魔法陣には、八咫烏を指定して召喚する以外にも、様々な術式が組み込まれていた。それは、魔法を始めとする、この世界のシステムへと順応する為のモノだったり、八咫烏であるサクヤを強化する為の術式だった。
「メフィス教授、落ち着いて下さい。
この子は、魔物というより神霊ですから、メフィス教授がご存知なかったのかもしれません」
「神霊?精霊ではなく神霊なのですか?」
「はい、高位の精霊もある意味神の使いでしょうが、この子は純粋に神の御使の分霊が変化した子です。ですから、精霊と言えなくもないですね」
「……なるほど、世界はまだまだ広く、私が知らないことの方が多いのでしょうね。
あゝ、すいません。ホクト君がまだでしたね。先に召喚術を済ませてしまいましょう」
エキサイトしてサクヤに質問していたメフィスは、ホクトが魔法陣を前に待ち続けているのに気付き、自身の疑問を一時棚上げする。
その後にさらなる衝撃的な経験をする事になるのだが………………。
「フランソワさん、契約してみて下さい!」
ボォッとしていたフランソワに、メフィス教授が契約を促す。
「は、はい!」
フランソワが現れた犬のような魔物に対して、魔力を流しながら契約を試みる。
「私と契約して、私の召喚獣なってくれませんか」
フランソワの魔力を魔物が受け入れる。
魔法陣の光が収まり、その真ん中に銀色の美しい毛並みの狼の子供が座っていた。
ただの狼ではない。その額には、10センチ程の角が一本生えていた。
「ほぉ、これは珍しい、【ブリザードウルフ】ですね。ブリザードウルフは、冒険者ギルドではランクAの魔物とされています。まだ子供の様ですが、この先の成長が楽しみな召喚獣です。
フランソワさん、早く名前を付けてあげて下さい。それで契約は完了です」
フランソワは、メフィス教授にうながされ、目の前のブリザードウルフの子供を見て、インスピレーションで浮かんだ名前を告げる。
「…………あなたの名前は【エッジ】よ」
『ワゥ!』
フランソワの呼び掛けに、それが自分の名前だとブリザードウルフが認識すると、フランソワとの間にパスが繋がり、召喚契約が結ばれた。
『ワゥ!ワゥ!』
エッジと名付けられたブリザードウルフがフランソワの元へ駆け寄り、足に角が当たらぬように擦り付け甘える。フランソワもしゃがみこみ、中型犬サイズのブリザードウルフの子供、エッジと名付けられた己の召喚獣を撫でて可愛がる。
「成功ですね」
無事に召喚術が成功し、メフィス教授もホッとした声でフランソワを労う。
「では、次はサクヤさんどうぞ」
メフィスにうながされ、サクヤが魔力を魔法陣へと込め始める。
『我は求め訴える、素盞鳴尊(スサノオノミコト)様に仕える、太陽の化身の分御霊を、高天原よりこの世に顕現させたまえ、その漆黒の翼で異界を超えよ、急急如律令』
サクヤが小さな声で囁くように祝詞を口ずさむ。
円の中に描かれた五芒星が、サクヤの魔力を受けて輝きだす。魔法陣の中心に眩い光の塊が現れ、やがて光は鳥の姿を形取っていく。
その大きさは、150センチ程にもなり、光の輪郭が羽ばたいて燐光を散らし、その姿を現わす。
五芒星の中心に現れたのは、全身を漆黒の羽根で身を包んだ烏だった。
「…………………………」
「あなたの名は【ミサキ】です」
ミサキとは、日本の神、悪霊、精霊などの神霊の出現前に現れる霊的存在の総称で、熊野三山においてカラスはミサキ神とされている。八咫烏は熊野大神[素盞鳴尊(スサノウノミコト)]に仕える存在として信仰されていて、サクヤは、そこからミサキの名を付けた。
『拝命イタシマシタ、懐カシキニオイノ我ガ主』
八咫烏のミサキは、サクヤの前世がコノハナノサクヤヒメの分け御霊である事を感じとった様だ。
「ミサキ、サイズを普通の烏位になれる?」
『是』
惚けているメフィス教授を置き去りに、サクヤはミサキへと指示を出すと、ミサキの身体が小さく縮んで普通の烏位に小さくなった。
バサッ
ミサキは羽ばたくとフワリと翔び立ち、サクヤの肩に泊まる。
その時になってやっと、ハッとしてメフィス教授がサクヤに詰め寄った。
「サクヤさん!そ、その魔物は何なんですか?!
見たこともない鳥型の魔物!しかも三本脚なんて聞いたことないです!
それに大きさが変えられるなんて……、高位の精霊ですか?!
いや!待って下さい!今、会話していませんでしたか?!」
メフィス教授は、この世界に存在しないかもしれない、八咫烏という神霊を目にして、興奮してサクヤに詰め寄る。
実際には八咫烏の分霊を、この世界の召喚術と融合し呼び出された為、厳密には八咫烏そのままと言うわけではなかった。
サクヤが用いた魔法陣には、八咫烏を指定して召喚する以外にも、様々な術式が組み込まれていた。それは、魔法を始めとする、この世界のシステムへと順応する為のモノだったり、八咫烏であるサクヤを強化する為の術式だった。
「メフィス教授、落ち着いて下さい。
この子は、魔物というより神霊ですから、メフィス教授がご存知なかったのかもしれません」
「神霊?精霊ではなく神霊なのですか?」
「はい、高位の精霊もある意味神の使いでしょうが、この子は純粋に神の御使の分霊が変化した子です。ですから、精霊と言えなくもないですね」
「……なるほど、世界はまだまだ広く、私が知らないことの方が多いのでしょうね。
あゝ、すいません。ホクト君がまだでしたね。先に召喚術を済ませてしまいましょう」
エキサイトしてサクヤに質問していたメフィスは、ホクトが魔法陣を前に待ち続けているのに気付き、自身の疑問を一時棚上げする。
その後にさらなる衝撃的な経験をする事になるのだが………………。
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