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第七十話 召喚術
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ホクト達が学園に通い始めて早一年。
ホクト達は一般教科の授業の大半を収め、この調子だと三年を待たず卒業してしまいそうな勢いだった。
錬金術や召喚術の授業も、シェスター教授やメフィス教授のもとで学び、図書館の文献を調べ、もはや学生の域を超えた知識と技術を身につけていた。
「さて、今日は一日使って、召喚術で使い魔、いわゆる召喚獣を使役してみましょう」
ホクト、サクヤ、フランソワの前でメフィス教授が今日一日の予定を話す。一般教科といくつかの専門教科を学び終えた三人は、二年生に昇級したこの春、彼等が学ぶ内容は、より専門的になっていた。ホクト達は気付いていないが、すでに学園生が学ぶレベルを超えているのだが、シェスター教授もメフィス教授も、優秀な生徒に気を良くして、自重を忘れて、より高度な知識や技術を教えていた。
「召喚された使い魔は、魔物や精霊、そして私達と同じ様に成長する事が出来ます。その事も頭に入れて召喚する対象を吟味して下さい」
この世界には、ゲームの様なレベル(魂の格)というモノに近いシステムが存在している。明確に自分のレベルを知る事は出来ないが、戦闘を生業とする者なら、普通の人族でも三回~五回ほど、格が上がる瞬間を経験するだろう。このレベルアップと言うのか、魂の格が一つ上がる恩恵は絶大で、身体能力や魔力が跳ね上がる。
当然、ホクトやサクヤも既に何度かのレベルアップをはたしているが、ホクト達は種族的に長寿な為、他の種族に比べ、生涯で何度も魂の格を上げる機会があり、人外の存在になるだろう事が予想される。
魔物は、このレベルアップで種族自体がランクアップする事が知られている。
例えば、ゴブリンがホブゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングとランクアップする事は良く知られている。これは、オークやオーガにも当てはまる。
「サクヤは、どんな召喚獣にするか決めた?」
「ええ、イメージは固めたわ」
ホクトがサクヤに聞くと、サクヤからイメージを固めるとの答えが返って来た。
「と、言う事は、陰陽師が使役していた、式神の様な使い魔を召喚するんだね」
「ええ、御使と言う訳じゃないけど、その方向で考えてるわ」
召喚術には、既存の魔物を指定して召喚する方法と、召喚者が望むイメージの使い魔を召喚獣として呼び出す事も出来る。サクヤは、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)いわゆるお稲荷さんとして知られるかの神が狐を御使としていた様なイメージで、使い魔の召喚に挑戦するつもりだった。
「そう言うホクトも、もう決まったの?」
「あゝ、安倍晴明の十二天将じゃないけど、僕もイメージする召喚獣は決めたよ」
「アベノセイメイって何ですの?」
ホクトがサクヤに答えた中に、聞き慣れない言葉が聞こえたフランソワが首をかしげる。
「あゝ、遠い遠い国の昔々の術者だよ」
「へぇ~、ホクト様は博学なのですね」
ホクトが慌ててごまかした言葉に、フランソワは素直に納得する。
三人はそれぞれ術が干渉しない距離を置いて、召喚術の準備を始める。
魔石を砕いて粉にした物で、ホクト、サクヤ、フランソワが魔法陣を地面に描いていく。手に持った羊皮紙に、それぞれが描いた魔法陣を見ながら、間違いがないか確認しながら慎重に作業を進めていく。
ホクトとサクヤは、この世界のスタンダードな召喚魔法陣に五芒星を組み込み、魔法文字と魔法記号、漢字と梵字を記していく。フランソワは、円形の中に魔法文字と魔法記号を記したオーソドックスな召喚魔法陣だ。
そこにホクトとサクヤは、触媒として己の血と、魔物素材を魔法陣の中心へと配置する。ホクトとサクヤが血を触媒に使うのを見て、フランソワが驚いていたが、これは使い魔との繋がりを強固にする為と、召喚された使い魔の能力アップを狙っての事だった。
「間違いがないか確認を忘れないでください」
メフィス教授に言われ、三人が何度も自分が描いた魔法陣を確認して、間違いがないかチェックしていく。
「「「大丈夫です」」」
「では、順番に魔力を流して、召喚魔法陣を起動しましょう。
召喚された魔物や精霊と最終的に契約するまで気を抜かないで下さい」
召喚が成功しても、対象と契約出来なければ意味がない。高い知性を持つ魔物や精霊を使い魔にする場合は戦闘になる事は少ないが、知能が低い魔物の場合、力で従わせる必要がある場合もある。その為に、この実習室には強固な結界が張られていた。
「では、先ずフランソワさんからお願いします」
「はい」
メフィス教授に言われて、フランソワが自分が描いた魔法陣へ、魔力を流して召喚術を発動させようとする。
魔法陣が光を発して起動した。
ホクト達は一般教科の授業の大半を収め、この調子だと三年を待たず卒業してしまいそうな勢いだった。
錬金術や召喚術の授業も、シェスター教授やメフィス教授のもとで学び、図書館の文献を調べ、もはや学生の域を超えた知識と技術を身につけていた。
「さて、今日は一日使って、召喚術で使い魔、いわゆる召喚獣を使役してみましょう」
ホクト、サクヤ、フランソワの前でメフィス教授が今日一日の予定を話す。一般教科といくつかの専門教科を学び終えた三人は、二年生に昇級したこの春、彼等が学ぶ内容は、より専門的になっていた。ホクト達は気付いていないが、すでに学園生が学ぶレベルを超えているのだが、シェスター教授もメフィス教授も、優秀な生徒に気を良くして、自重を忘れて、より高度な知識や技術を教えていた。
「召喚された使い魔は、魔物や精霊、そして私達と同じ様に成長する事が出来ます。その事も頭に入れて召喚する対象を吟味して下さい」
この世界には、ゲームの様なレベル(魂の格)というモノに近いシステムが存在している。明確に自分のレベルを知る事は出来ないが、戦闘を生業とする者なら、普通の人族でも三回~五回ほど、格が上がる瞬間を経験するだろう。このレベルアップと言うのか、魂の格が一つ上がる恩恵は絶大で、身体能力や魔力が跳ね上がる。
当然、ホクトやサクヤも既に何度かのレベルアップをはたしているが、ホクト達は種族的に長寿な為、他の種族に比べ、生涯で何度も魂の格を上げる機会があり、人外の存在になるだろう事が予想される。
魔物は、このレベルアップで種族自体がランクアップする事が知られている。
例えば、ゴブリンがホブゴブリン、ゴブリンナイト、ゴブリンジェネラル、ゴブリンキングとランクアップする事は良く知られている。これは、オークやオーガにも当てはまる。
「サクヤは、どんな召喚獣にするか決めた?」
「ええ、イメージは固めたわ」
ホクトがサクヤに聞くと、サクヤからイメージを固めるとの答えが返って来た。
「と、言う事は、陰陽師が使役していた、式神の様な使い魔を召喚するんだね」
「ええ、御使と言う訳じゃないけど、その方向で考えてるわ」
召喚術には、既存の魔物を指定して召喚する方法と、召喚者が望むイメージの使い魔を召喚獣として呼び出す事も出来る。サクヤは、宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)いわゆるお稲荷さんとして知られるかの神が狐を御使としていた様なイメージで、使い魔の召喚に挑戦するつもりだった。
「そう言うホクトも、もう決まったの?」
「あゝ、安倍晴明の十二天将じゃないけど、僕もイメージする召喚獣は決めたよ」
「アベノセイメイって何ですの?」
ホクトがサクヤに答えた中に、聞き慣れない言葉が聞こえたフランソワが首をかしげる。
「あゝ、遠い遠い国の昔々の術者だよ」
「へぇ~、ホクト様は博学なのですね」
ホクトが慌ててごまかした言葉に、フランソワは素直に納得する。
三人はそれぞれ術が干渉しない距離を置いて、召喚術の準備を始める。
魔石を砕いて粉にした物で、ホクト、サクヤ、フランソワが魔法陣を地面に描いていく。手に持った羊皮紙に、それぞれが描いた魔法陣を見ながら、間違いがないか確認しながら慎重に作業を進めていく。
ホクトとサクヤは、この世界のスタンダードな召喚魔法陣に五芒星を組み込み、魔法文字と魔法記号、漢字と梵字を記していく。フランソワは、円形の中に魔法文字と魔法記号を記したオーソドックスな召喚魔法陣だ。
そこにホクトとサクヤは、触媒として己の血と、魔物素材を魔法陣の中心へと配置する。ホクトとサクヤが血を触媒に使うのを見て、フランソワが驚いていたが、これは使い魔との繋がりを強固にする為と、召喚された使い魔の能力アップを狙っての事だった。
「間違いがないか確認を忘れないでください」
メフィス教授に言われ、三人が何度も自分が描いた魔法陣を確認して、間違いがないかチェックしていく。
「「「大丈夫です」」」
「では、順番に魔力を流して、召喚魔法陣を起動しましょう。
召喚された魔物や精霊と最終的に契約するまで気を抜かないで下さい」
召喚が成功しても、対象と契約出来なければ意味がない。高い知性を持つ魔物や精霊を使い魔にする場合は戦闘になる事は少ないが、知能が低い魔物の場合、力で従わせる必要がある場合もある。その為に、この実習室には強固な結界が張られていた。
「では、先ずフランソワさんからお願いします」
「はい」
メフィス教授に言われて、フランソワが自分が描いた魔法陣へ、魔力を流して召喚術を発動させようとする。
魔法陣が光を発して起動した。
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