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第八十話 実家の休日2
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ヴァルハイム領の実家へと帰省しているホクトとサクヤ。今日はジルを連れて3人と使い魔達で領内の魔物駆除をしていた。
冒険者達の食い扶持を奪わぬ様に、儲けにならないゴブリンやコボルトを狩って行く。
「流石にヴァルハイム領ですね。魔物の駆除がされています」
「父上や兄上が聞いたら喜ぶよ」
ホクトの父であるカインとサクヤの父バグスは、共に優れた戦士だ。
アルバンとジョシュアの兄二人も一般的な基準で言えば、優れていると言っていいだろう。
そこにホクトの誕生だ。
ホクトの魅せた武の才に、カインは息子の前に少しでも長く立てるよう己を鍛え直した。
バグスも娘のサクヤに負けたくない一心で、カインと共に必死に鍛錬に励んだ。
その影響はヴァルハイム家の従士たちにも波及し、お陰でヴァルハイム家の戦力は少数ながら非常に高かった。
そのためヴァルハイム領は治安が良く、領民も増加傾向だ。
順調に成長するヴァルハイム領だが、それだけにトリアリア王国でのゴブリンの話を聞いてホクトは考える。
このヴァルハイム領では感じていないが、最近オーガやゴブリンなど、この世界で小鬼や鬼と呼ばれる魔物に関する不穏な噂をよく聞く。
嘗て鬼の王であり、その後鬼狩りだったホクトだけに気になっていた。
ヴァルハイム領を一望できる高台に立ち、ホクトは領内全土の防衛を考える。
「街や村単位での防衛はもちろんだけど、いち早く察知して領界で迎え撃つのが理想かな」
「そうね」
ホクトがそう言うと、サクヤは何がと聞くまでもなく、そうねと頷く。
現状、どれだけ強力なゴブリンが群れて襲いかかろうが、カインとバグスたちなら跳ね除けるとホクトは考えている。
だけど、それは犠牲を無しにという訳にはいかないだろうとも思っている。
さらにヴァルハイム家の戦力は少数精鋭だ。
少数精鋭だけに、同時に多発的に魔物が襲って来ると、対応しきれないだろう。
「……領内全土をまんべんなく護るなんて無理だな」
「防壁のある街なら兎も角、村は無理ね」
「ああ、村によっては簡単な柵程度しかないからな」
魔物が想定を超える大きな群で襲って来た時、街なら防衛を利用しての撃退も考えられるだろうが、辺境の小領でしかないヴァルハイム領には有効ではない。
「理想は領外での撃退だけど……」
「他領や他国での戦闘なんてあり得ないものね」
「ああ、だけど魔物が来るなら南だと分かっているんだ。ならやりようはある」
自慢にはならないがヴァルハイム領は大きくない。
不穏な噂が流れて来るトリアリア王国と接している距離もそんなに長くない。
地形を調べ、砦を築き、進行を妨害する防衛を築き、足止めのための堀を張り巡らせば、寡兵でも戦えるとホクトは考えた。
「でも先におじさまに許可を得ないとダメよ」
「分かってる。もちろん父上と兄上に許可はとるさ。実際に戦うのは父上たちなんだから」
「でもホクト様、砦一つで魔物の大群を撃退できますか?」
ホクトとサクヤがカインやアルバンとの話し合いについて話していると、ジルが砦一つでは魔物の大群を撃退するのは無理なのではと言う。
ただホクトには何世代にも渡る長い戦闘の歴史がある。
その何度も転生する度に戦いの中に身を置き続けたホクトは、日本の多くの堅城をその目で見て来た。
仮に統率する個体が居たとしても、戦場をコントロールすることができると思っていた。
「砦には連射式のバリスタを複数設置したいな」
「ホクトが作るの?」
「ああ、一応仕組みは分かってるからね」
「連射式のバリスタですか。確かにバリスタならシロウトでも扱えますね。」
ジルも連弩やバリスタは知っている。ジルが言うように、普通の弓は熟練の技が必要だが、連弩やバリスタは操作にさえ習熟すれば、あとは狙って撃つだけだ。
城塞都市の城壁には大型のバリスタが設置されている場合が多い。
あれはワイバーンなどの飛行タイプの魔物用だが、ホクトはもっと小型で尚且つ強力な連射式のバリスタを作れると確信していた。
様々な仕掛けで足止めされた魔物の大群に対して、長射程かつ高威力の矢が大量に降り注ぐ。
「あと簡単に設置できるトラップなんかもあればいいと思うわ」
「サクヤ様、トラップは私にもお手伝いできると思います」
「確かにジルに手伝ってもらうのは正解ね」
サクヤがトラップに言及すると、ジルが自分も手伝えると言う。
元裏稼業のジルは、その手のトラップにも詳しかった。
三男のホクトが、将来的にヴァルハイム領の運営に関わる事はないだろう。
だけど今世の故郷であり、父や母、兄たちや義父や義母となる人たち、それに多くの領民を守るためなら自重などしないと決めていた。
「そうと決まれば、領境を調べようか」
「そうね。でも砦を建てる位置や堀の形と大きさを決めるための正確な地図も必要ね」
ホクトたちは早速行動を開始する。
休暇の間にある程度形にしてしまう必要があると、ホクトとサクヤ、ジルはヴァルハイム領を駆け回る。
冒険者達の食い扶持を奪わぬ様に、儲けにならないゴブリンやコボルトを狩って行く。
「流石にヴァルハイム領ですね。魔物の駆除がされています」
「父上や兄上が聞いたら喜ぶよ」
ホクトの父であるカインとサクヤの父バグスは、共に優れた戦士だ。
アルバンとジョシュアの兄二人も一般的な基準で言えば、優れていると言っていいだろう。
そこにホクトの誕生だ。
ホクトの魅せた武の才に、カインは息子の前に少しでも長く立てるよう己を鍛え直した。
バグスも娘のサクヤに負けたくない一心で、カインと共に必死に鍛錬に励んだ。
その影響はヴァルハイム家の従士たちにも波及し、お陰でヴァルハイム家の戦力は少数ながら非常に高かった。
そのためヴァルハイム領は治安が良く、領民も増加傾向だ。
順調に成長するヴァルハイム領だが、それだけにトリアリア王国でのゴブリンの話を聞いてホクトは考える。
このヴァルハイム領では感じていないが、最近オーガやゴブリンなど、この世界で小鬼や鬼と呼ばれる魔物に関する不穏な噂をよく聞く。
嘗て鬼の王であり、その後鬼狩りだったホクトだけに気になっていた。
ヴァルハイム領を一望できる高台に立ち、ホクトは領内全土の防衛を考える。
「街や村単位での防衛はもちろんだけど、いち早く察知して領界で迎え撃つのが理想かな」
「そうね」
ホクトがそう言うと、サクヤは何がと聞くまでもなく、そうねと頷く。
現状、どれだけ強力なゴブリンが群れて襲いかかろうが、カインとバグスたちなら跳ね除けるとホクトは考えている。
だけど、それは犠牲を無しにという訳にはいかないだろうとも思っている。
さらにヴァルハイム家の戦力は少数精鋭だ。
少数精鋭だけに、同時に多発的に魔物が襲って来ると、対応しきれないだろう。
「……領内全土をまんべんなく護るなんて無理だな」
「防壁のある街なら兎も角、村は無理ね」
「ああ、村によっては簡単な柵程度しかないからな」
魔物が想定を超える大きな群で襲って来た時、街なら防衛を利用しての撃退も考えられるだろうが、辺境の小領でしかないヴァルハイム領には有効ではない。
「理想は領外での撃退だけど……」
「他領や他国での戦闘なんてあり得ないものね」
「ああ、だけど魔物が来るなら南だと分かっているんだ。ならやりようはある」
自慢にはならないがヴァルハイム領は大きくない。
不穏な噂が流れて来るトリアリア王国と接している距離もそんなに長くない。
地形を調べ、砦を築き、進行を妨害する防衛を築き、足止めのための堀を張り巡らせば、寡兵でも戦えるとホクトは考えた。
「でも先におじさまに許可を得ないとダメよ」
「分かってる。もちろん父上と兄上に許可はとるさ。実際に戦うのは父上たちなんだから」
「でもホクト様、砦一つで魔物の大群を撃退できますか?」
ホクトとサクヤがカインやアルバンとの話し合いについて話していると、ジルが砦一つでは魔物の大群を撃退するのは無理なのではと言う。
ただホクトには何世代にも渡る長い戦闘の歴史がある。
その何度も転生する度に戦いの中に身を置き続けたホクトは、日本の多くの堅城をその目で見て来た。
仮に統率する個体が居たとしても、戦場をコントロールすることができると思っていた。
「砦には連射式のバリスタを複数設置したいな」
「ホクトが作るの?」
「ああ、一応仕組みは分かってるからね」
「連射式のバリスタですか。確かにバリスタならシロウトでも扱えますね。」
ジルも連弩やバリスタは知っている。ジルが言うように、普通の弓は熟練の技が必要だが、連弩やバリスタは操作にさえ習熟すれば、あとは狙って撃つだけだ。
城塞都市の城壁には大型のバリスタが設置されている場合が多い。
あれはワイバーンなどの飛行タイプの魔物用だが、ホクトはもっと小型で尚且つ強力な連射式のバリスタを作れると確信していた。
様々な仕掛けで足止めされた魔物の大群に対して、長射程かつ高威力の矢が大量に降り注ぐ。
「あと簡単に設置できるトラップなんかもあればいいと思うわ」
「サクヤ様、トラップは私にもお手伝いできると思います」
「確かにジルに手伝ってもらうのは正解ね」
サクヤがトラップに言及すると、ジルが自分も手伝えると言う。
元裏稼業のジルは、その手のトラップにも詳しかった。
三男のホクトが、将来的にヴァルハイム領の運営に関わる事はないだろう。
だけど今世の故郷であり、父や母、兄たちや義父や義母となる人たち、それに多くの領民を守るためなら自重などしないと決めていた。
「そうと決まれば、領境を調べようか」
「そうね。でも砦を建てる位置や堀の形と大きさを決めるための正確な地図も必要ね」
ホクトたちは早速行動を開始する。
休暇の間にある程度形にしてしまう必要があると、ホクトとサクヤ、ジルはヴァルハイム領を駆け回る。
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