いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

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4巻

4-2

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「いえタクミ様、精霊樹だけではこの短時間で、ここまではならなかったと思いますよ。おそらくアンデッドと戦った時のサンクチュアリフィールドと、その後の魔導具の力が大きいのだと思います」

 という事は、僕のせいでこんな事になっちゃったのかもしれないけど……その意味なんて僕には分からないし分かる必要もないよね。
 とりあえず僕は、新しく用意したサンクチュアリフィールドの魔導具を設置する事にした。今回の魔導具は六個でワンセット。
 六芒星ろくぼうせいの形になるように、レーヴァと協力して設置していく。

「おーい! 準備は良いかー!」
「はーい! 準備オッケーでーす!」

 続いて、僕とレーヴァで順番に魔導具を起動していった。最後の魔導具を起動させると、精霊樹を中心に六芒星が浮かび上がって消えた。
 これで、精霊樹を中心とした半径200メートルにサンクチュアリフィールドを張る事に成功した。ちなみにこれは、魔物の侵入を防ぐ結界のようなものではない。土地を浄化する事で、魔物が忌避きひする環境を作ったのだ。

「よし! これで、ここが荒らされる事も減るだろう」
「神聖な雰囲気を感じますけど……それでもこの場所は魔境なんですよね」

 レーヴァが近寄ってきて尋ねる。

「そうだね。魔境には違いない。だから光属性を忌避しない魔物の侵入は防げないかな」

 ただ、そういう魔物は人と共存出来る場合もある。その代表格がツバキの種族である竜馬りゅうば魔馬まば。アラクネの特異種であるカエデは瘴気を好む魔物だけど、僕と魔力のパスが繋がった瞬間から、その性質は変化している。
 タイタンが僕に話しかけてくる。

「マスター、ストーンゴーレムヲ、スウタイヨウイシテハドウデショウ」
「魔物に荒らされるのは嫌だし。頼めるかな」
「オマカセクダサイ」

 タイタンが警護用にストーンゴーレムを配置するのを勧めてきたので、その生成を含めてタイタンに任せる事にした。タイタンが造るゴーレムには単純な指示しか出来ないが、この場を護る役割だったら十分だと思う。
 タイタンが四体のストーンゴーレムを造り出し、精霊樹を中心としたこの土地の四方に配置する。これで滅多な事では精霊樹は荒らされなくなったかな。



 3 精霊の楽園


 僕達は、定期的に精霊樹がある場所へ足を運ぶようになった。その度にソフィアが精霊樹から要望を聞き、僕達はそれに応える。
 ある時は、ボルトン周辺の土が欲しいとリクエストされ、精霊樹の周りに蒔いた。またある時は、落ち葉を土に混ぜ込むように頼まれたりした。何だか農家にでもなった気分だ。
 ちなみにボルトンから現地までは、人目を避けるために転移の魔法で移動している。これは、ソフィアの希望。精霊樹がユグル王国外で育っているのを面白く思わないエルフがいるから、目立たない方が良いらしい。ちなみに、ツバキは現地に着いてから自由に走る事で、ストレス解消してもらっている。
 精霊樹の前に立った僕が言う。

「……しかし、十日しか経っていないのに、凄いな」
「そうですね、さすが精霊樹といったところでしょうか」

 元々は、アンデッドの巣窟で、泉の水は腐り、木々は枯れ、雑草も生えない、瘴気の溢れる土地。それが今となっては、泉の水は澄み、まだ背丈ほどだが木々が生え、緑の絨毯じゅうたんが広がっている。
 何より精霊樹の成長が凄かった。既に大きなビルほどの高さになり、幹の太さも直径数メートルはあるだろう。

「それはさておきタクミ様、今日も精霊樹に魔力をお願いします」

 僕は精霊樹に手を当て、既に日課になっている魔力の流し込みを行った。精霊樹がこの過酷な環境で速く成長するのに必要な事らしい。
 僕が魔力を注ぎ込んでいると、精霊樹の周りに広がる緑の絨毯に色とりどりの花が咲き始めた。

「なっ!」

 僕の驚きは続く。
 鮮やかな色の淡い光が踊るように舞うのが見えたのだ。

「……精霊なのか?」
「はい、様々な属性の精霊が集まってきています。意思を持たない下級精霊ですが、時間が経てば上位の精霊達も増えるでしょう」

 この世界には、風の精霊が自由に飛び回っている。しかし、瘴気の溢れた土地には近寄らない。
 それが、精霊樹がこの地を浄化したおかげで、水の精霊、風の精霊、土の精霊、木の精霊、光の精霊、闇の精霊、様々な精霊が集まる場所になったらしい。

「僕には気配が感じられる程度だけど、精霊が見えるソフィアにはにぎやかに見えているんだろうね」
「はい、とても楽しそうに精霊達が飛び回っています」

 そう言う言葉とは裏腹に、ソフィアの表情はどこか冴えなかった。
 何か心配事でもあるみたいだ。

「どうしたの?」
「……これは本格的に、ユグル王国に見つかるとまずい事になってしまったかもしれません」
「ん?」

 精霊樹がユグル王国の外にあるのは許容出来ない、そう考えるエルフは少なくない。何故なら、世界樹の種はユグル王国の中でさえ滅多に芽吹かないから。
 そこまでソフィアは説明して、さらに続ける。

「精霊樹を増やす事は、ユグル王国にいる精霊の成長を促します。精霊が成長するという事は、ユグル王国の国力を増強する事に繋がるのです。だから、ユグル王国の王家でも毎年儀式を行い、世界樹の種を蒔くのですが、そのほとんどが芽吹きません」
「芽吹かせるのって難しいんだ。でも、その割にはここでは簡単に芽吹いたよね。しかも既に大樹になってるし」

 スケルトンキングから取り出した時には魔力を注がなきゃいけないくらい弱ってたのに、異常なスピードで大きくなっている。
 ふと周囲を見渡すと、不思議な光景が広がっていた。
 精霊樹の周囲の花や草に、雨のように水がかれているのだ。ルルちゃんは喜んで走り回っているけど、アカネはその光景を見て口をポカンと開けていた。
 僕はソフィアに尋ねる。

「ねぇ、アレも精霊の仕業しわざなの?」
「はい、中級の水精霊が植物に水を与えているのです」

 風の精霊が種を運び、水の精霊と土の精霊がそれをはぐくむ。僕はふと思った。この地は精霊の楽園になりえる……と。
 というか、既に聖域といっても過言ではないんじゃないかな。

「ユグル王国の外に、聖域なんてあったらまずいのか」
「それはもう。世界樹の根元でさえ、ここまで清浄な水と土と空気は存在しませんから」
「……それは見つかったらまずいね」

 どうやらこの数百年、世界樹の状態は悪くなっていってるという。花が咲かなくなり、実をつける事もないらしい。
 近年では儀式を行うにしても、そのために保存してきた世界樹の種がなくなっているとの事。

隠匿いんとく結界の魔導具も必要かな」
「用意した方が良いでしょうね」

 そんなわけで僕は、この場所を隠すために魔導具を製作するはめになった。
 もちろん、引き続き精霊樹からのリクエストは止まらない。もっと広範囲に土地を浄化しろとか、植物の種を集めろとか、様々な樹木を植樹しろなんて要求もある。
 精霊樹のリクエストはソフィア経由で来るんだけど、僕はソフィアにお願いされると断れない。結局、全て精霊樹の言いなりに働いている。
 そして二ヶ月も経つ頃には、大陸西端の地に、誰にも知られる事のない精霊達の楽園が出来上がった。


 ◇


 僕達は相変わらず、精霊樹のもとに定期的に通っていた。
 精霊樹を中心としたその場所は、日を追うごとに姿を変えている。精霊樹は既に大樹となり、見上げるほどの高さに成長した。それでも隠匿の魔導具と認識阻害の魔導具を二重に使用しているから、ここの事を知られる心配はない。
 精霊樹の成長速度には、この世界の住人であるソフィアやマリア達も驚いていた。ソフィアによると、ユグル王国外で精霊樹の種が育ったという記録はないらしい。そもそも世界樹の種は国外に持ち出された事さえないそうだ。
 僕は精霊樹周辺の環境を整えるべく、石材を運び込む事にした。岩山でストーンゴーレムを造り、隊列を組んで精霊樹まで来てもらう。その後、ゴーレム核を外して石材に戻ってもらってそれを利用するのだ。
 そうして集まった石材を土魔法と錬金術で変形させた後、石の家を造り上げた。
 家の中には土魔法で地下室を掘り、転移陣を設置した。ボルトンとここを繋いだので、これでいつでも行き来が出来る。セキュリティのため、僕達の魔力を登録して他の者が使えないようにした。
 家の窓には強化ガラス並みの強度を誇るおお蜻蛉とんぼの羽を使い、床や壁にはトレント材を贅沢に使った。テーブルや椅子などの家具はレーヴァと協力して作った。

「ここに住むわけじゃないから、このくらいで十分だろう」
「十分すぎると思いますよ」

 石造りの家を眺めて僕がそう言うと、ソフィアが呆れた顔でつっこむ。
 石造りの家にはいつの間にかつたのような植物が巻き付いており、周りの景色と溶け合っていた。出来たばかりの家を二人で眺めていたら、急にソフィアが声を上げる。

「!? タクミ様! 高位の精霊の気配です!」
「高位の精霊?」

 泉の方に走りだしたソフィアを追って、僕も走る。
 ソフィアに追いつき、清らかな水をたたえる泉にたどり着く。僕達の目の前で、泉の中央で水がうずを巻いて盛り上がり始めた。
 直感スキルでは危険なものは感じられない。ちょっと心配に思いながらも、僕はソフィアと一緒に成り行きを見守る事にした。
 盛り上がった水は、やがて人型を形成し始める。そうして現れたのは、腰まで伸びた青い髪、青いワンピース、人間離れした美貌を持つ、20代半ばに見える女性だった。


 泉の中央に浮かぶその美女は水の上を滑るように歩きだすと、そのまま僕達のところにやってきた。

「なっ! ……み、水の上位精霊!」

 そう言って固まるソフィアをよそに、水上の美女は僕の方を見て話しかけてくる。

「私は水の精霊ウィンディーネ。貴方の名前は何て言うの?」
「……タクミ・イルマです」

 僕が緊張しながらも名前を告げると、ウィンディーネと名乗った美女が笑いかけてくる。

「タクミっていうのね。アンデッドに囚われた世界樹の種を救ってくれたばかりか、芽吹かせてくれて助かったわ」
「……い、いえ。僕がやったというより、ソフィアが世界樹の種の声を聞けたおかげで」

 僕がそう言うと、ウィンディーネは頷いて続ける。

「それでも、瘴気溢れるこの地と腐りかけていた泉の水を浄化してくれたのは貴方でしょう? 今では神聖な魔力に満ち溢れ、ここは聖域とも言える土地になったわ」

 その時、ずっと固まっていたソフィアが復活して声を上げる。

「ウィ、ウィンディーネ!? 水の大精霊様!!」

 ソフィアは慌てて膝をつくと、そのままこうべを垂れた。
 ウィンディーネは笑みを浮かべ言う。

「ソフィアといったかしら、普通にしてて良いのよ。貴女も精霊樹を助けてくれてありがとう」
「も、もったいないお言葉、身に余る光栄です」

 突然顕現した水の大精霊と僕とソフィアがやりとりしている光景を、他のメンバーは遠巻きに眺めていた。
 ウィンディーネが改まったように告げる。

「それで、タクミに話があって、私はこの場に姿を現したの」
「……話ですか?」

 大精霊という高位の存在が話って何だろうと、僕はちょっと身構えてしまう。すると、ウィンディーネは、僕の心を見透みすかしたように言う。

「そんなに気負う事はないのよ。貴方が精霊樹に頼まれた事を、この先もしばらくの間続けてほしいの」

 ウィンディーネの要望をまとめると、この土地が真の聖域となれるように協力してほしい、という事だった。
 実は、ウィンディーネなどの大精霊が顕現出来る土地はなかなかないらしい。ユグル王国の世界樹の周辺は霊的にも魔力の濃さ的にも適しているのだが、そこを管理するエルフ達のプライドの高さ、他種族をさげすむ態度を嫌って、大精霊達は顕現しないそうだ。
 ウィンディーネは悲しそうに言う。

「エルフが私達をうやまってくれているのは分かるのよ。でも、精霊はミルドガルドと共にあるの。エルフだけが特別などという事はないわ」

 大精霊が姿を現さなくなってもう数百年になるという。
 その影響は大きかった。魔境が広がり、浄化されない瘴気が土地をむしばんだのだ。
 実は、ミルドガルドで人が住める土地は少ない。
 世界樹が土地を浄化する速度と、魔境が広がる速度のバランスが崩れてしまえば、ますます住める土地は狭くなっていく。

「そこで聖域が意味を持つの。ここに聖域が出来て、私達大精霊が顕現する。そうなれば、最初は聖域周辺の土地が浄化される程度でしょうけど、その影響はやがてミルドガルド全土に拡大するでしょう」

 ミルドガルドで負のエネルギーが増えれば、魔境が拡大して魔物は増えて強力になる。逆に聖域が正のエネルギーを増やせば、魔境は縮小し魔物は減って弱体化していくらしい。
 ひと通り説明を受けてから、僕はウィンディーネに言う。

「ミルドガルドの人達のためになるのなら、僕も協力は惜しみません。ところでウィンディーネ様はこの地に住むのですか?」
「ウィンディーネでいいわよ。そう、私はここに住まわせてもらうわ。そのうちこの地も賑やかになるわよ」

 まだ今は顕現出来る力のある精霊は少ないらしいけど、これからもっと増えるようだ。さっそくウィンディーネは鍛冶工房かじこうぼうを設立するように言ってきた。
 というのも――

「既にこの地には、水、土、風、木、光、闇の精霊が集まってきているけど、火の精霊が少ないの」

 ウィンディーネによると、ここが聖域になるためには少なくとも三つの属性の大精霊が必要らしい。現状この土地はまだ、聖域(仮)に過ぎないようだ。
 そんなわけで僕達は、精霊樹に加え、ウィンディーネの要望のためにも奔走ほんそうする事になった。



 4 大精霊、続々


 ウィンディーネに頼まれた鍛冶工房はレーヴァと僕も使うので、すぐに手配した。そうして工房を建設して数日経った頃、精霊樹から異変が感じられた。
 ただならぬ気配に精霊樹のもとへ走ると、太い幹からズルリと美女が出てきた。
 鮮やかな緑色の長い髪、茶色地に緑色の葉っぱが巻きついたワンピース、その美女は明らかに人ではなかったが……
 僕達が精霊樹から出てきた女性を警戒していると、その場にウィンディーネが現れた。

「あら、ドリュアスじゃないの。心配しなくても大丈夫よ。彼女は木の大精霊ドリュアス。精霊界以外で会うのは何百年ぶりかしら」

 ウィンディーネによると、この地に精霊樹があるのだから木の大精霊ドリュアスが顕現しても不思議ではないらしい。にしても、唐突すぎるけど。
 ドリュアスは伸びをして、微笑みながら言う。

「う~~ん、あ~~、久しぶりに顕現したわ~」

 ウィンディーネが優しそうなお姉さんなら、ドリュアスは色っぽいお姉さんという感じだ。ウィンディーネがドリュアスに親しげに話しかける。

「ドリュアス久しぶりね」
「あら、ウィンディーネ、何百年ぶりかしら? でも、顕現した場所がエルフが管理する土地じゃないなんて」
「そうね、精霊の力を借りて暮らすエルフの態度が変わってしまっているのですものね」

 ドリュアスが僕の方を見て、笑みを浮かべる。

「タクミちゃんね、精霊樹を育ててくれてありがとう」
「い、いえ、僕に出来る事をしているだけですから」

 アンデッドが闊歩かっぽしていたこの場所には、今や緑の絨毯に色とりどりの花が咲き乱れている。僕達が植えた樹々が泉の対岸に立ち並び、小さな林も出来上がっていた。そんなわけで、ドリュアスが顕現しやすい環境となっていたようだ。
 ウィンディーネとドリュアスの言うところによると、ソフィアの家名の元となった風の大精霊シルフが顕現するのも時間の問題との事だった。


 ◇


 それは事実、ドリュアスが現れて二日後に現実となった。
 ウィンディーネに頼まれ、僕とタイタンが聖域を大きく囲うように土魔法で堀を造っていた時――
 突然、柔らかな風が優しく渦を巻き、花びらを巻き上げた。
 その中から、透き通るような水色の髪をなびかせ、10代半ばに見える美少女が現れた。

「うーん! シルフ参上ーー!」

 空中に浮いている少女の元気な声が響き渡る。

「もう、少しは落ち着きなさい、シルフ」
「そうよ~、いつまで経っても落ち着きがないんだから~」

 そこにウィンディーネとドリュアスが現れ、シルフをたしなめた。
 僕は状況に付いていけず、ポカンと見ているしかなかった。ソフィアはシルフと呼ばれる風の大精霊の登場に感動し、膝をつき祈りを捧げた。

「なになに! ここ凄いじゃない! うーん、いい風が吹いてるね!」
「いい土地でしょう、水も清らかなのよ」
「あら、草花や樹々も元気に育っているわよ」
「ウィンディーネとドリュアスに私がいるって事は、あと少しで聖域に育つのね!」

 シルフはそう言うと、膝をつき自分に祈りを捧げるソフィアに気づいた。

「あら、貴女は……ふんふん、あぁ、シルフィード家の娘ね。私の名を家名にするエルフがいるって知っていたわ」

 シルフは風精霊からソフィアの事を聞いていたらしい。
 ソフィアはうやうやしく頭を下げる。

「お初にお目にかかり光栄の至りです。シルフィード家の長女ソフィアと申します」
「そう、ソフィアっていうのね。そんなに固くならなくていいのよ」

 緊張するソフィアに楽しげに話しかけるシルフ。彼女はいかにも元気少女といった感じで、気安くソフィアに接していた。
 その様子をぼうっと見ていた僕を、ウィンディーネがしかる。

「ほらほら、タクミ。堀を造った後は水堀にするんだから、早く完成させるのよ」
「そうよ~タクミちゃん。水堀が完成すれば、周辺の土地に緑が広がるのよ」
「……はい、分かりましたよ」

 こんな時でも休ませてくれないようだ。
 ともかく、ウィンディーネとドリュアスの言葉のようにこの堀は水堀になるらしい。この水堀の水はウィンディーネの力でよどむ事はなく、堀の周囲はドリュアスの力で緑が広がるという。
 精霊樹の影響が及ぶ範囲が広がっているので、それに合わせてサンクチュアリフィールドの魔導具も追加してるんだけど、ここが聖域になれば魔導具さえ必要なくなるらしい。
 精霊樹を中心とした小さな範囲だったはずなのに、いつの間にか大規模になってきた。既にストーンゴーレム四体では警備が追いつかない。
 それをウィンディーネに言うと、全く問題ないのだそうだ。

「大精霊が三人もいるのよ、ドラゴンが群れで襲ってきても平気よ」

 これには、シルフやドリュアスも頷いていた。ドラゴンの群れも平気とは……恐るべし大精霊の力と言うべきか。
 精霊樹を中心として、水堀で囲われた一辺が500メートルの土地。さらにその外側にも、緑の草原が広がり始めていた。


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