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十二話 研究室を設立しました
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エトワール視点
パパから色々と送って来たので、それを活かすべく考えた。
シャルルと薬類を研究するのは決まっている。パパが作るみたいな、効果の高い魔法薬じゃなく、魔力が少ない薬師でも作れる薬。でも、今までの薬よりもずっと効果の高いものを目指して研究するの。
それを春香とフローラに言うと、賛成してくれた。
「良いと思うよ。でも何処でするの?」
「うん。フローラも良いと思うけど。此処を使うの?」
「学園長に話してみるつもり。部活動みたいな感じかな」
私達は、受ける授業がほとんど無いから時間は有り余ってるけど、シャルルはそうじゃないものね。だから部活動みたいなのが良いんじゃないかと思ったの。
「じゃあフローラは、春香お姉ちゃんと一緒に『闘い部』を作る!」
「やめなさい。その馬鹿なネーミング。せめて『武術研究部』にしなさい。私まで馬鹿だと思われるじゃない」
私が薬学系の研究部を立ち上げると言うと、フローラが自分も部を作ると言いだしだ。春香に直ぐに却下されてたけど『闘い部』は無いわよ。馬鹿丸出しじゃない。
「ぶぅぶぅ。フローラ、馬鹿じゃないもん!」
「はいはい。フローラは馬鹿じゃないわよ。少し天真爛漫なだけ」
「そう!」
「あんまり褒めてない気がするんだけど、まぁ良いわ」
フローラは馬鹿じゃない。あの子、咄嗟に私の立ち上げる研究室に入りたくないから、あんな事言ったんだもの。本当に勉強が嫌いなのね。パパの子供だから地頭は賢いのに。
そして学園の教室で、シャルルに『薬学研究部』を設立したいと言うと、彼女も是非参加したいと言ってくれた。
「嬉しいです。この学園では錬金術を教える授業はあっても、薬師を育てるようなプログラムはなかったもの」
「仕方ないよ。一部の特殊な素材を使った薬以外、魔法薬じゃないと儲からないもの」
で、案の定、サティやユークス、ルディはフローラと春香の『武術研究部』の方に興味を示した。
「でもそんな部活、俺達でも出来るのか?」
「それは学園長に頼んでみるわ。多分、許可してくれる筈よ」
ルディがそんなに簡単に部を設立できるのか聞いてきたけど、その辺は問題ないと思ってる。私達姉妹が受けれる授業が無い事が原因だもの。何ならサイモンお爺ちゃんにお願いしてもいい。
「なら俺達は『武術研究部』だよな。他の教養科や騎士科の奴らと同じ部活なんて嫌だしな」
「だよね。平民は良い様に使われちゃうよ」
「ならユークスとルディは『武術研究部』に決まりだね。あとはエトワールお姉ちゃんに任せるね!」
「……私が言い出した事だからいいけど、見事に便乗して、要領がいいんだから」
学園長への許可取りは、どうせ次いでだからと私に丸投げするフローラ。まあいいか。
私が学園長に許可を取るのはいいわ。でも誰も一緒に来ようとしないのはどうなのかしら。
「部活動かね。新規の部ね。既存の部ではいかんのかね」
「私達姉妹が入っても大丈夫なのですか?」
「うん。許可しよう。えーと『武術研究部』と『薬学研究部』だね。書類は回しておくよ。部室は普通科の校舎で空いた部屋を使いなさい」
嫌な予感がしたのか、凄い掌返しね。ある意味清々しいわ。
私達がトリアリア王国の貴族と揉めるならまだいいけど、バーキラ王国の貴族や王族と揉めると学園長先生の責任問題だものね。
「部室に念の為、結界の魔導具を設置してもいいですか? ああ、勿論自前で用意します」
「君、結界の魔導具など高価な物を自前でなどと……うん、君なら可能だね。何なら学園にある魔導具の大半は君のお父さんの作品だったね」
部室に魔導具を設置する許可も取れた。フローラ達はまさか部室で暴れないだろうから必要ないでしょうけど、私とシャルルは実験したりするからね。ポーション作りで爆発はないと思うけど、私は兎も角シャルルが居るから安全には気を付けないと。
勿論、私達の部室にもフローラ達の部室にも、侵入を防ぐ魔導具は付けるけどね。盗難なんて嫌だもの。
教室に戻って許可がおりたと言うと皆んなから歓声が上がる。
「学園長先生からの許可は貰ったわ。部室はこの校舎の空き教室を使っていいそうよ」
「やった!」
「早速、部室を決めようぜ!」
ユークスとルディが教室を駆け出して行った。
「流石エトワールお姉ちゃんね」
「うん。春香お姉ちゃん、私達も行こう」
「そうね」
「私も行くわ!」
春香とフローラもサティと一緒に部室を探しに教室を出て行った。
「さて、シャルル。私達も空き教室を見に行こうか」
「うん。良い部屋があればいいね」
私とシャルルが教室を出て行く時、羨ましそうに見ている女の子がいた。仲間に入りたいのかな? 声を掛けてくれればいいのにね。
春香やフローラ達が空き教室の一つを『武術研究部』の部室に決め、私とシャルルもその二つ隣りを『薬学研究部』の部室に決めた。
わざわざ間を空けたのは、この教室には水回りの設備があったから。多分、理科室だったんじゃないかな。この学園の理科って、薬学に近いと思うけど、人気が無くて今は無くなったらしい。
シャルルと魔導具を設置している途中、私はドアに向かって声を掛ける。
「興味があるなら入って来たら」
「!? ご、ごめんなさい」
顔を見せたのは、さっきこっちを見ていた女の子。
「私はエトワール。こっちはシャルル。同じクラスだから知ってるかもしれないけど」
「わ、私はミュゼです」
「ミュゼね。ミュゼは薬学に興味があるの?」
私がそう聞くと、少し迷った顔をしてボソリと言った。
「私、魔法に興味があるんです」
「へぇ、確かに魔力量は教養科や騎士科の貴族の子供達に負けないくらいあるわね」
「へぇー、凄いんだミュゼちゃん」
普通科にも選択式だけど魔法の授業はある。だけど平民が生徒の普通科では、基礎中の基礎から教えられる。平民は貴族のように、幼い頃から家庭教師に魔法を学ぶ事もないのだから当たり前なんだけど、三年間学んでも一人前の魔法使いになんて成れない授業内容だ。
それは私が三年分の教科書を見せて貰ったから確かだ。だから私は魔法の授業をパスしたんだから。
「なら薬学の研究をしながらでよかったら、私が魔法を教えようか?」
「い、いいの?」
「勿論、これでも私はエルフだから。魔法なら任せてちょうだい。卒業する頃には、一人前の魔法使いにしてあげるわ」
「ううん。魔法使いじゃなくて、魔導具を造る職人になりたいの」
「う~ん。魔導具はパパの領分だからな。まあ、いいか。関連する本なら実家に一杯あるから今度持って来るよ」
「ほんと!」
ミュゼはびっくり、魔導具職人志望だった。パパとレーヴァさんが喜びそうね。
『薬学研究部』は、私とシャルルにミュゼを加えて三人でスタートした。
「魔導具なら魔法陣を描けるようになる必要があるけど、魔法文字や記号の辞書が実家に有った筈だから持って来るね」
「えっ、そんなのあるんですか? 王都の図書館は通ったんですが、見た事ないです」
「それはそうよ。パパが書いた辞書だもん」
「ええっ!?」
パパに解読できない文字や記号はない。それはこの世界の全ての文字や記号が対象になる。
「エトワールさん達のお父さんって、凄い学者さんですか?」
「パパは一応錬金術師が本職なのかな? 色々としてるからね」
「凄い! 是非辞書をお借りしたいです!」
「複製が可能か聞いてみないと分からないし、多分外には出せない知識もあるから、ミュゼにも見せれる基本的な部分を抜粋してもらおうかな」
お仕事が忙しいパパに頼むのは心苦しいけど、パパなら直ぐに送ってくれそうな気がする。無理してママに叱られないといいけど。
「取り敢えず、残りの魔導具を設置したり、製薬用の器具を設置してしまいましょう」
「魔導具ですか!!」
「ミュゼちゃん、落ち着いて!」
この部室には、パパとレーヴァさんが作った貴重な魔導具や器材を設置するので、セキュリティは万全にしないといけない。
「魔力を登録した人しか入室できないようにする魔導具と、侵入者を防ぐ魔導具、爆発から身を守る魔導具と」
「何だか物騒なワードだねエトワールちゃん」
私が確認しながら魔導具の設置をしていると、シャルルが少し引き気味なのはどうしてかしら。ミュゼは目をキラキラさせて見ているのにね。
「必要な事だよ。パパの造った魔導具は買おうと思っても買えないんだから」
特に今回は私の為に造ってくれたワンオフだもの。
一応、春香達の部室にも侵入防止と登録された魔力の人しか入室できないように魔導具を設置しておくか。
パパから色々と送って来たので、それを活かすべく考えた。
シャルルと薬類を研究するのは決まっている。パパが作るみたいな、効果の高い魔法薬じゃなく、魔力が少ない薬師でも作れる薬。でも、今までの薬よりもずっと効果の高いものを目指して研究するの。
それを春香とフローラに言うと、賛成してくれた。
「良いと思うよ。でも何処でするの?」
「うん。フローラも良いと思うけど。此処を使うの?」
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私達は、受ける授業がほとんど無いから時間は有り余ってるけど、シャルルはそうじゃないものね。だから部活動みたいなのが良いんじゃないかと思ったの。
「じゃあフローラは、春香お姉ちゃんと一緒に『闘い部』を作る!」
「やめなさい。その馬鹿なネーミング。せめて『武術研究部』にしなさい。私まで馬鹿だと思われるじゃない」
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「ぶぅぶぅ。フローラ、馬鹿じゃないもん!」
「はいはい。フローラは馬鹿じゃないわよ。少し天真爛漫なだけ」
「そう!」
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フローラは馬鹿じゃない。あの子、咄嗟に私の立ち上げる研究室に入りたくないから、あんな事言ったんだもの。本当に勉強が嫌いなのね。パパの子供だから地頭は賢いのに。
そして学園の教室で、シャルルに『薬学研究部』を設立したいと言うと、彼女も是非参加したいと言ってくれた。
「嬉しいです。この学園では錬金術を教える授業はあっても、薬師を育てるようなプログラムはなかったもの」
「仕方ないよ。一部の特殊な素材を使った薬以外、魔法薬じゃないと儲からないもの」
で、案の定、サティやユークス、ルディはフローラと春香の『武術研究部』の方に興味を示した。
「でもそんな部活、俺達でも出来るのか?」
「それは学園長に頼んでみるわ。多分、許可してくれる筈よ」
ルディがそんなに簡単に部を設立できるのか聞いてきたけど、その辺は問題ないと思ってる。私達姉妹が受けれる授業が無い事が原因だもの。何ならサイモンお爺ちゃんにお願いしてもいい。
「なら俺達は『武術研究部』だよな。他の教養科や騎士科の奴らと同じ部活なんて嫌だしな」
「だよね。平民は良い様に使われちゃうよ」
「ならユークスとルディは『武術研究部』に決まりだね。あとはエトワールお姉ちゃんに任せるね!」
「……私が言い出した事だからいいけど、見事に便乗して、要領がいいんだから」
学園長への許可取りは、どうせ次いでだからと私に丸投げするフローラ。まあいいか。
私が学園長に許可を取るのはいいわ。でも誰も一緒に来ようとしないのはどうなのかしら。
「部活動かね。新規の部ね。既存の部ではいかんのかね」
「私達姉妹が入っても大丈夫なのですか?」
「うん。許可しよう。えーと『武術研究部』と『薬学研究部』だね。書類は回しておくよ。部室は普通科の校舎で空いた部屋を使いなさい」
嫌な予感がしたのか、凄い掌返しね。ある意味清々しいわ。
私達がトリアリア王国の貴族と揉めるならまだいいけど、バーキラ王国の貴族や王族と揉めると学園長先生の責任問題だものね。
「部室に念の為、結界の魔導具を設置してもいいですか? ああ、勿論自前で用意します」
「君、結界の魔導具など高価な物を自前でなどと……うん、君なら可能だね。何なら学園にある魔導具の大半は君のお父さんの作品だったね」
部室に魔導具を設置する許可も取れた。フローラ達はまさか部室で暴れないだろうから必要ないでしょうけど、私とシャルルは実験したりするからね。ポーション作りで爆発はないと思うけど、私は兎も角シャルルが居るから安全には気を付けないと。
勿論、私達の部室にもフローラ達の部室にも、侵入を防ぐ魔導具は付けるけどね。盗難なんて嫌だもの。
教室に戻って許可がおりたと言うと皆んなから歓声が上がる。
「学園長先生からの許可は貰ったわ。部室はこの校舎の空き教室を使っていいそうよ」
「やった!」
「早速、部室を決めようぜ!」
ユークスとルディが教室を駆け出して行った。
「流石エトワールお姉ちゃんね」
「うん。春香お姉ちゃん、私達も行こう」
「そうね」
「私も行くわ!」
春香とフローラもサティと一緒に部室を探しに教室を出て行った。
「さて、シャルル。私達も空き教室を見に行こうか」
「うん。良い部屋があればいいね」
私とシャルルが教室を出て行く時、羨ましそうに見ている女の子がいた。仲間に入りたいのかな? 声を掛けてくれればいいのにね。
春香やフローラ達が空き教室の一つを『武術研究部』の部室に決め、私とシャルルもその二つ隣りを『薬学研究部』の部室に決めた。
わざわざ間を空けたのは、この教室には水回りの設備があったから。多分、理科室だったんじゃないかな。この学園の理科って、薬学に近いと思うけど、人気が無くて今は無くなったらしい。
シャルルと魔導具を設置している途中、私はドアに向かって声を掛ける。
「興味があるなら入って来たら」
「!? ご、ごめんなさい」
顔を見せたのは、さっきこっちを見ていた女の子。
「私はエトワール。こっちはシャルル。同じクラスだから知ってるかもしれないけど」
「わ、私はミュゼです」
「ミュゼね。ミュゼは薬学に興味があるの?」
私がそう聞くと、少し迷った顔をしてボソリと言った。
「私、魔法に興味があるんです」
「へぇ、確かに魔力量は教養科や騎士科の貴族の子供達に負けないくらいあるわね」
「へぇー、凄いんだミュゼちゃん」
普通科にも選択式だけど魔法の授業はある。だけど平民が生徒の普通科では、基礎中の基礎から教えられる。平民は貴族のように、幼い頃から家庭教師に魔法を学ぶ事もないのだから当たり前なんだけど、三年間学んでも一人前の魔法使いになんて成れない授業内容だ。
それは私が三年分の教科書を見せて貰ったから確かだ。だから私は魔法の授業をパスしたんだから。
「なら薬学の研究をしながらでよかったら、私が魔法を教えようか?」
「い、いいの?」
「勿論、これでも私はエルフだから。魔法なら任せてちょうだい。卒業する頃には、一人前の魔法使いにしてあげるわ」
「ううん。魔法使いじゃなくて、魔導具を造る職人になりたいの」
「う~ん。魔導具はパパの領分だからな。まあ、いいか。関連する本なら実家に一杯あるから今度持って来るよ」
「ほんと!」
ミュゼはびっくり、魔導具職人志望だった。パパとレーヴァさんが喜びそうね。
『薬学研究部』は、私とシャルルにミュゼを加えて三人でスタートした。
「魔導具なら魔法陣を描けるようになる必要があるけど、魔法文字や記号の辞書が実家に有った筈だから持って来るね」
「えっ、そんなのあるんですか? 王都の図書館は通ったんですが、見た事ないです」
「それはそうよ。パパが書いた辞書だもん」
「ええっ!?」
パパに解読できない文字や記号はない。それはこの世界の全ての文字や記号が対象になる。
「エトワールさん達のお父さんって、凄い学者さんですか?」
「パパは一応錬金術師が本職なのかな? 色々としてるからね」
「凄い! 是非辞書をお借りしたいです!」
「複製が可能か聞いてみないと分からないし、多分外には出せない知識もあるから、ミュゼにも見せれる基本的な部分を抜粋してもらおうかな」
お仕事が忙しいパパに頼むのは心苦しいけど、パパなら直ぐに送ってくれそうな気がする。無理してママに叱られないといいけど。
「取り敢えず、残りの魔導具を設置したり、製薬用の器具を設置してしまいましょう」
「魔導具ですか!!」
「ミュゼちゃん、落ち着いて!」
この部室には、パパとレーヴァさんが作った貴重な魔導具や器材を設置するので、セキュリティは万全にしないといけない。
「魔力を登録した人しか入室できないようにする魔導具と、侵入者を防ぐ魔導具、爆発から身を守る魔導具と」
「何だか物騒なワードだねエトワールちゃん」
私が確認しながら魔導具の設置をしていると、シャルルが少し引き気味なのはどうしてかしら。ミュゼは目をキラキラさせて見ているのにね。
「必要な事だよ。パパの造った魔導具は買おうと思っても買えないんだから」
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