いずれ最強の錬金術師?

小狐丸

文字の大きさ
301 / 321
連載

十三話 部活動をスタートさせます

しおりを挟む
 部活の設立と部室の準備も整ったので、私達は部活動をスタートさせた。

 春香とフローラ、サティとユークス、ルディの五人は、部室を二つに分けて更衣室として使う事にしたみたい。

 実際の活動は、外で余り人の目に付かない場所を見つけ、武術の型から始めているようね。

 流石に学園じゃ本人のレベルを上げれないので、武術関連のスキルや有ると有用なスキルの獲得を目指すらしい。その辺は春香がしっかりしているから大丈夫でしょう。

「エトワールちゃん。こんなに沢山の薬草、いいの?」
「これは下級ポーションの素材になる薬草だし、結構何処にでも有る薬草なんだ。だから大丈夫だよ」

 ゴリゴリと乳鉢で薬草をすり潰していると、シャルルがこの薬草を使ってもいいのか心配そうにしている。

 こんな何処にでも生えてる薬草、ちょっと外に出れば見つかるから大丈夫でしょう。

「でもエトワールさん。駆け出しの冒険者が採取する薬草って、これじゃないの?」
「そうだと思うよ。でも、いいのいいの。パパが実家の近くで採取してくれたやつだから」
「ならいいのかな?」

 ミュゼもタダで貰うのは抵抗あるみたい。でも折角パパが送ってくれたんだから、使わない方が勿体無いもの。

 今、私達は、生の薬草をすり潰した物。乾燥させた薬草をすり潰した物の二種類を作っている。

 この後、薬効成分を抽出するんだけど、煮る、乾留する、魔力を込めながら煮る、など色々試したいと思っている。



 私達は早速基本的な初級ポーションで実験を始めた。

「煮出すのか? それとも水出しがいいのか? 調べないとね」
「エトワールちゃん。煮出す温度も色々変えて実験するのね」
「うん。兎に角色々とデーターを取らないとね」

 因みにミュゼは、魔力感知と魔力操作の練習をしている。

 彼女には魔法の指導をしてあげる約束をしたから、先ずはその二つのスキル獲得を目指して貰う。

 ミュゼの属性は土属性。世間的には地味で不遇な扱いだったのだけど、この十数年でその認識も変化している。他ならぬわたし達のパパが土属性魔法を使い、大規模な土木工事を実現していたから。

 とはいえ、普通の人間にそこまでの魔力は無い。でも土属性魔法は鉱石からの金属の抽出したり錬金術に近い事が出来る。しかも魔導具職人になりたいミュゼにとって、土属性魔法はとても有用な属性だった。

 でもミュゼは、十二歳になるまで魔法の訓練をした事がなかった。そこでわたしは、ミュゼの体に自分の魔力を少量流し、魔力感知の切っ掛けを与えてスキルを早期に取得できるようにしたの。

 ミュゼは今、その感覚を思い出しながら、瞑想中だ。




 さて、シャルルも初級ヒールポーションのレシピは知っていた。私も錬金術を使わない薬師の作る初級ヒールポーションのレシピは教えて貰った事があるから覚えていた。

・初級ヒールポーション
 品質:普通
 ヒルクク草+水(2:8)
 薬師が製作したヒールポーション。

 この初級ヒールポーションの品質を上げる事が目標になる。

「水が八割を占めるんだから、これを魔力精製水にしてみる?」
「でも、普通の薬師は魔力精製水は難しいよ」
「その辺は後で考えようよ。パパから魔力精製水用の魔導具が送られて来てるから、取り敢えずそれを使ってみよう」

 ヒールポーションの効果では、薬草の品質も大きな要因だと思うけど、一つ一つ変えてみて比べてみるところから始めよう。

「あとシャルルの実家ではヒルクク草は乾燥? それとも生?」
「乾燥だよ。生だと凄い酷い味になるの」
「ああ、味の酷いポーションは飲みたくないわね」

 効き目が錬金術師の作ったポーションに負けてるのに、味も酷いのはダメよね。


 兎に角、パパの魔導具で乾燥したヒルクク草を粉末にし、薬効成分を抽出する温度を変えてみる。

「先ず、水出しと煮出しの二種類試してみようか」
「そうだね」

 結果、ヒルクク草は熱に強いみたいで、煮出した方がポーションの効果は高いと分かった。

 ただ、水出しの方が苦味は少なく飲みやすいのよね。

「う~ん。温度を変えて、苦味が少なくて薬効が高いラインを探してみるか」
「凄いよエトワールちゃん。この粉砕機で粉にすると、水出しでもかなり効果があるもん」

 確かにパパったら張り切り過ぎだと思う。送ってくれた器具は、街の薬屋では買えないレベルの魔導具だもの。


「ただ新鮮なヒルクク草の方が、どう考えても効果は高いわよね」
「そうだね。あとは味を飲めるレベルに研究するかだよね」
「だね」

 そこで私はシャルルと、ヒルクク草の薬効成分が何故苦いのか調べる事にした。もし、効果に苦味成分が関係ないなら、その苦味の素だけを取り除けばいい。

「でも、エトワールちゃん、どうやって調べるの? そんな詳細に鑑定でにる人なんて居ないと思うよ」
「そんな時こそコレよ! ジャジャァーン! 通信の魔導具ぅ~!」

 私はパパから貰ったアクセサリー型アイテムボックスから手のひらよりも少し大きな魔導具を取り出した。

「エトワールちゃん! 通信の魔導具なんて、国や高位貴族、あとはギルドくらいじゃないと持てない高価な魔導具じゃないの! それに凄く大きいって聞いたよ!」
「ふっふ~ん。そんなのパパが私達用に作ってくれたに決まってるじゃない」

 パパも私達に甘いわよね。でも聖域では個人用の通信の魔導具なんて普通なのよね。

 私は徐に登録してある番号をワンタッチ。

 トゥルルルゥ、トゥルルルゥ。

『はい。エトワールかい? 何かあった?』
「パパ、落ち着いて。聞きたい事があって連絡しただけだから」

 もう。ツーコールで出るなんて、こっちがびっくりするじゃない。

「あのねパパ。ヒルクク草から錬金術を使わないでヒールポーションを作ろうと思うんだけど、薬効成分と苦味成分は同じものか知りたかったの」
『ああ、錬金術なら薬効成分だけ抽出するから、それ程味は気にならないけど、薬師の人が作るのは苦いからね。どんなに頑張っても錬金術師のポーションほど効果の高いのは難しいけど、それに近いのは可能だと思うよ』
「そうだよね。で、苦味が少なくなる方法はあるの?」
『ヒントは葉脈だよ』
「確かパパは初級ヒールポーションを作る時、葉っぱだけ使ってたよね。という事は、極力要らない部分を取り除けばいいのね。ありがとうパパ! じゃあ、またねー!」
『あ、エトワー』

 私は通信を切ってシャルルを見る。

「シャルル、ヒルクク草の茎や葉脈まで徹底して取り除くわよ!」
「エトワールちゃんの奥の手って、お父さんだったんだね」
「私は使えるものは使うたちなの。こんな所で遠回りするなんて無駄だもの」

 少しシャルルが私を非難するような目で見るけど、立ってる者は親でも使えってアカネお姉ちゃんからの教えだもの。





春香視点

 私とフローラ、サティとユークスにルディで、武術研究部を立ち上げた。

 騎士の家系のサティ以外、まともに武術を学んだ事はないのは当然。平民だからね。

 とはいえ……

「ユークス、あなたそれでもパペックおじさんの孫なの? パペック商会では、修行中は行商に行かされるって聞いたわよ」
「そうだよ。そんなんじゃ盗賊や魔物にやられちゃうよ」
「クッ、分かってるんだよ。分かってるけど、王都の道場じゃイジメられるから嫌なんだよ!」

 もう。情けないわね。ユークスに剣を振らせてみたんだけど、ダメダメもいいところ。パペックおじさんも決して強くないし、戦えるタイプじゃないけど、度胸はあるってパパは言ってたもの。

「ほらほら、ルディも変わらないよ」
「クソッ! 商人の倅に無茶言うなよ!」

 ルディもたいして変わらないのよね。

 そんな中、流石サティの素振りは形が綺麗だ。

「サティ、スタンスをもう気持ち狭めた方がいいわ」
「うん! 本当だ! 気持ち振りが鋭い気がするよ!」

 やっぱり剣術のスキル持ちとスキルを持たない人じゃ、その差は大きいわね。

「ほらほら、ユークス。こう、ヒュンッて感じ。ほら、ヒュンッて!」
「ヒュンで分かるかよ!」

 相変わらずフローラの指導は感覚的過ぎるわね。あれで理解するのは同じ天才タイプだけよ。

「ユークス、剣筋を意識しないと、幾ら振ってもダメよ」
「あ、ああ」

 パパが使う片刃の剣は斬る剣だけど、一般的な騎士が持つのは、両刃の直剣で斬撃というより押し潰すタイプの剣を使っている。

 この剣の違いは、戦い方全てに影響してくる。基本、斬る事に特化した剣は、切れ味を追求する為に鋭い刃が特徴だけど、そんな剣で受け太刀したら直ぐに刃毀れしちゃう。まあ、パパが作った剣は別だけど。

 それとは違って刺突と鈍器のように扱う両刃の騎士剣なんかじゃ剣術の理に大きな違いがあって当然だからね。

 で、騎士の家系であるサティは勿論、ユークスやルディも繊細な扱いをしなくても大丈夫な両刃の直剣を選んでいる。

 片手剣と盾で戦う方が、素人には無難だからね。魔物にも対人戦でも使いやすい。

 これを三年続ければ、このメンバーの実力は騎士科なんて目じゃない実力になるわね。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『いずれ最強の錬金術師?』のコミック版6巻が、7月19日より順次書店にて発売予定です。

お手に取って頂けると嬉しいです。

よろしくお願いします。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。