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17巻
17-2
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「ノルン様、キュアイルネスポーションって、そんなに大量に作れないと思いますよ」
「それは正攻法ならね」
「えっと、裏ワザでもあるんですか?」
「そう! この創世の女神ノルンが、レシピを教えちゃいましょう!」
「そ、そうですか」
そうしてノルン様が教えてくれたのは、精霊樹、または世界樹の葉っぱとヒルクク草を使うものだった。
「えっと、精霊樹の葉っぱはまずくないですか?」
「大丈夫よ。かなり少量で大量のポーションが作れるから」
「ヒルクク草は、患者の体力を回復させるのと、精霊樹の葉っぱが入っているのを誤魔化すためですか?」
「そう! そのとおーり!」
ノルン様から聞いたキュアイルネスポーションのレシピは、僕の知っているものとは違い、世界樹や精霊樹の葉っぱを使うものだった。
精霊樹の葉っぱは、万能薬の材料になるだけあり、かなり薄めたとしても、それだけで疫病を治せる激レア素材だ。
ヒルクク草なんて、そのポーションの色や味を誤魔化すためと、疫病で弱った患者の体力を回復させるだけのオマケだ。
通常のキュアイルネスポーションのレシピと違って、とてもシンプルなレシピなので、確かに聖域なら大量生産も可能だと思う。
「薄めた精霊樹の葉っぱから作ったポーションで、治るレベルの疫病なんですね」
「そうよ。多分、タクミ君が前世で暮らしていた日本なら、致死率もそんなに高くない病気だと思うけど、残念ながらこの世界はまだまだ遅れてるのよね」
「ああ、確かに、ちょっとした病気で亡くなる人も多いですもんね」
聖域は別にして、この世界は貧富の差が激しく、日常的に栄養が足りていない人が……特に子供や老人に多い。
そんな人達にとっては、いくら前世基準で致死率が高くない病気でも、命に関わる可能性が大なんだ。
「ああ、勿論、タクミ君達以外は、普通のレシピでキュアイルネスポーションを作ってもいいのよ」
「バーキラ王国やロマリア王国、ユグル王国には話しておいた方がいいですね。あっ、ユグル王国は世界樹があるか」
通常のキュアイルネスポーションのレシピでは、そこそこ貴重な素材も使用するので、富裕層じゃないと買えない。
とはいえ、疫病の流行には備えてもらう必要はある。お金がある貴族や豪商は、正規の値段で薬師から購ってもらいたい。
「あっ、そろそろ時間ね。じゃあ、タクミ君、頼んだわねー!」
「あっ! ノルン様っ!」
僕はいつものように、唐突に元の場所へと戻っていた。いや、僕自身は教会で祈りを捧げている姿のままだったんだろうけどね。
「はぁ……」
思わず溜息を吐き、立ち上がる。
とりあえず家に戻り、皆んなと情報共有しないとな。
バーキラ王国は、聖域にいるロザリー夫人から夫である王国宰相のサイモン様へ伝えてもらうか。ボルトン辺境伯にも報告しておいた方がいいかな。ロマリア王国へは、バーキラ王国から話を通してもらおう。
ユグル王国については、ルーミア王妃かミーミル王女に任せて大丈夫だよね。
疫病の発生源となるサマンドール王国と、ノムストル王国へはどうしようかな。やっぱりバーキラ王国経由がいいか。
トリアリア王国は……サマンドール王国から情報を流すしかないよな。割を食うのは一般の国民だけど、僕があの国にできる事は少ない。
はぁ、また面倒な事を頼まれちゃったなぁ。とはいえ僕は錬金術師でもあり、薬師でもあるんだから頑張らないといけないな。
4 会議と準備
今回は聖域にある僕の家じゃなく、聖域の役所として使われている建物の会議室に、騎士団からガラハットさん、ユグル王国からルーミア様とミーミル様、バーキラ王国からは宰相のサイモン様の奥さんであるロザリー夫人、そして僕の妻達とアカネ、ルルちゃん、レーヴァが集まった。
「……しかし、離島の処理も終わらぬうちに、また神託ですか」
「ガラハット殿、島の方は落ち着いているのでしょう? ノルン様もタクミ君に、無理難題を押しつけているわけじゃないのだから」
ガラハットさんが、今回のノルン様からの神託を聞いて顔をしかめる。
対してロザリー夫人は、この世界の人達のおおよそがそうであるように、ノルン様の神託は絶対と考えているから、ガラハットさんを窘めていた。
「うむ。分かっております。いずれにせよ、今回我らは素材の採取でもあまり役に立ちませぬし」
ガラハットさんも神託に否はないらしい。聖域騎士団としてできる仕事が限られていると思ってのしかめっ面なんだ。
「確かに、聖域騎士団は採取の時の護衛くらいしかできないわね」
「アカネさん、ヒルクク草なら騎士達でも採取できるでありますよ。聖域の中にもたくさんあるであります」
「ヒルクク草なんて、聖域じゃ雑草と変わらないじゃない。聖域の子供達で十分よ」
「そうだったであります」
アカネとレーヴァが口々に言った。
アカネが言うように、ヒールポーションの素材であるヒルクク草は、聖域ではそこら中に生えている。雑草かというくらい、あちこちにね。
聖域の子供達がお小遣い稼ぎに採取するくらいだ。
「タクミ様、聖域で作るキュアイルネスポーションは、ノルン様のレシピなのは分かったであります。多分、そのポーションだけで、疫病は治せると思うであります。ただ、普通のキュアイルネスポーションが高価なのは仕方ないでありますが、それを買えない人やポーションを手に入れるまでに時間がかかる人用に、解熱剤も必要なのでありますよ」
「それは必要かもしれないね」
レーヴァの指摘は、その通りだと思う。
僕達が市場に流すポーションは、既に発病して高熱があったとしても、飲んだ時点で回復するだろう。
そのための体力回復用のヒルクク草だしね。
ただ、精霊樹や世界樹の葉っぱを使わない、普通のレシピで作るキュアイルネスポーションは、そこまで著しい回復はしない。
それに、ポーションを飲むまでに、熱が高くなりすぎないように解熱剤は必須だろう。その後の体力回復用のヒールポーションもだ。
「ただ、解熱剤のレシピって一般に拡がってたかな?」
「確か、バーキラ王国の薬師や錬金術師は知っていたと思うでありますよ」
「なら大丈夫かな」
薬のレシピって、同じ薬でも共通じゃなかったりするんだよね。
薬師独自の工夫やアレンジがある場合もあって、そのせいで薬の効果にバラツキがあるのは当たり前だ。
解熱剤は、それほど難しいレシピじゃないし、素材も特に手に入れにくいものじゃないけど、効果にバラツキがあるのはいただけない。
怪しいもぐりの薬師なんてのもいるらしいから、一定の水準に達する薬を望むのも難しい。
「一応、通常レシピのキュアイルネスポーションや解熱剤用の薬草をうちでも集めた方がいいわね」
「トリアリア以外に売るの?」
「トリアリア王国にも、パペックさん辺りが第三者を挟んで売ったり、サマンドール王国経由で売ったりしてもいいんじゃない」
「それもそうだね。トリアリア王国の薬師や錬金術師が、どれだけの能力を持っているかは分からないけど、僕達やユグル王国産の精霊樹や世界樹の葉っぱを使うキュアイルネスポーションなんて買わないだろう。それでも、自国の国民向けに薬を作れるよう最低限のサポートは必要だろうね」
アカネの意見に、僕も賛成する。
「じゃあタクミとレーヴァで、キュアイルネスポーションの量産。私達で、通常品のための素材採取。聖域の子供達にもヒルクク草を集めてもらいましょう」
「そうね。タクミ君やアカネさん達は、それで進めてもらっていいわ。ノルン様の言う疫病の流行は半年後くらいだから、急いだ方がいいわね」
アカネとロザリー夫人が今後の方針を確認した。
「だね。とりあえず、キュアイルネスポーションの素材を優先に、その後余裕があれば解熱剤の素材と下級のヒールポーションも量産した方がいいかな」
「そうでありますな」
僕も優先順位を考慮しつつ、レーヴァと生産の打ち合わせをする。
ポーションを作るのは当然だけど、ポーション用の入れ物も大量に必要だから、その生産も急ピッチで行う必要がある。ガラス瓶の材料が、聖域にはたくさんあるけれど、他の国はどうか分からないからね。
それからそれぞれ直ぐに動き出した。
ロザリー夫人はサイモン様経由で、バーキラ王国へ注意喚起と協力要請。
ルーミア様とミーミル様は、ユグル王国にキュアイルネスポーションの量産を指示。同時に、輸出可能な素材の確保。
アカネは、聖域にある創世教の教会に、大陸中の教会への情報共有と、聖域で作ったキュアイルネスポーションの分配、患者の治療の協力要請。
あとバーキラ王国とユグル王国から、ロマリア王国とノムストル王国、サマンドール王国に注意喚起と、疫病対策を行うように促してもらう。これは一般人の僕じゃ信用がないので、国同士で話してもらわないとね。
で、僕はソフィアと二人でボルトンへと来ていた。
勿論、ボルトン辺境伯と会うためだ。
「イルマ殿、ソフィア殿も、久しぶりだな」
「ご無沙汰しています」
アポを取ってその日のうちに、ボルトン辺境伯は会ってくれた。このスピード感は、流石辺境を守るボルトン辺境伯らしい。
「で、早急の用となると厄介事だろう」
「はい。実は、ノルン様から神託がありまして……」
「!? イルマ殿へ神託か。それは、思った以上に大事だな。それで、内容は?」
「実は……」
ボルトン辺境伯に、サマンドール王国から疫病が流行するので、それに備えるようにと、ノルン様から神託があったと告げる。
一応、ユグル王国へは、ルーミア様とミーミル様から、バーキラ王国にもロザリー夫人から宰相のサイモン様へ伝えてもらい、創世教には各教会のネットワークを使って情報共有していると伝える。
「なんと……厄介な。疫病か」
ボルトン辺境伯が眉間に皺を寄せて唸る。
それも仕方ない。この世界でそんな事が起きたら、どれほどの人が亡くなるか読めない。金持ちから貧乏人まで等しくパニックになるだろう。
特に広い領地を持つボルトン辺境伯は、より大変だ。
「サマンドール王国からという事は、疫病の原因は魔大陸から持ち込まれたのだろうか?」
「その辺は、おそらくとしか言えませんが」
「ふむぅ。魔大陸に暮らす魔族は、頑丈だと聞くからな」
「はい。純粋な肉体的強さ以外にも、病毒に対しても耐性があるみたいですから。今回の疫病も魔族からすれば、軽い風邪が流行った程度の認識かもしれないですね」
ボルトン辺境伯は、疫病がサマンドール王国から流行ると聞き、その源流は魔大陸だと気が付いたみたいだ。
この大陸の南にある魔大陸との交易は、聖域を除けばサマンドール王国が窓口となっている。
魔大陸のそれぞれの国――国と言っても大きな城塞都市一つが都市国家という形だが――は、交易の頻度はそれほど多くないが、それでも人の行き来はある。
検疫なんて意識のないこの世界では、疫病が流行ったとして止める術はない。
魔大陸に暮らす人達は丈夫で、少々の病気など跳ね返してしまう。魔大陸は一般人のレベルも高いから、疫病で大きな被害なんて事にならないんだろうな。
あの魔王達を思い出す。……うん。病気に罹っているイメージが湧かないね。
◆
バーキラ王国の王城にて――
ロザリーから通信の魔導具で入った報せを、サイモンは直ぐにバーキラ王ロボスに報告。早速秘密裏に会議が行われた。
何故、秘密裏なのかと言うと、下手に情報が漏れると、キュアイルネスポーションやそれを作るための薬草などの素材が高騰するからだ。
このバーキラ王国でも、人命がかかろうと、買い占めて儲けようとする倫理観のない貴族や商人は多いのだ。
「はぁ、疫病か。備えなければいけないが、迂闊に情報を漏らせぬな」
「ええ、まかり間違ってもランズリット公爵達に知られるわけにはいきませんな」
聖域よりもたらされた報告に、ロボス王は難しい顔をしていた。サイモンも貴族派筆頭であるランズリット公爵の名を口にして、頷く。
自身の派閥と敵対しているという事だけでなく、ランズリット公爵は色々と困った人物だ。どうして自分と親戚関係にある人間が、ああも愚かなのか、ロボスは常々考えるが答えは出ない。
ある程度の派閥の対立は、国内の貴族を纏める上で必要悪だと思っているが、トップがああも馬鹿だといっそ潰してしまいたくなる。
しかもランズリット公爵は馬鹿なだけならいいものを、変にお金の匂いに敏感だったりする。やはり、あの男に知られるわけにはいかない。
「騎士団の訓練を装い、ポーションの素材採取をしますか?」
近衛騎士団の団長で、聖域騎士団の団長ガラハットの息子ギルフォードが、騎士団での素材採取をロボス王とサイモンに問うが、サイモンは首を横に振る。
「……いや、それは冒険者ギルドと薬師ギルド、錬金術師ギルドに任せよ。ただ、依頼は複数の筋から分散し、大量のキュアイルネスポーションを欲しているとできるだけ悟らせぬようにな」
それでもいずれ情報は漏れるだろうが、サイモンとしては、それを可能な限り遅らせたい。
「陛下、それよりもロマリア王とサマンドール王、ノムストル王にも知らせるよう、イルマ殿から要請がありましたぞ」
「ああ、ユグル王国は王妃と王女が直接伝えるだろうから、その三国には我が国から知らせねばならんな。ノルン様よりイルマ殿に神託があったと言えば大丈夫だろう」
サイモンの言葉に、ロボスは頷いてそう言った。サイモンは続けて言う。
「旧シドニアの民の分もキュアイルネスポーションがいるのでは?」
「旧シドニアで必要となるポーションは、同盟三ヶ国から必要分を用意せねばならんだろうな」
大陸を疫病が襲うとなると、敵国であるトリアリア王国はともかくとして、旧シドニアは同盟三ヶ国が何とかしなければいけない。
特に、距離が近いバーキラ王国とロマリア王国は自国に準ずる対応が必要になる。
「はい。聖域産のキュアイルネスポーションを、どれほどの量提供してもらえるか、早急に問い合わせする必要もあります。なにせ、聖域産か、それ以外かでは、ポーションの効果に差がありますからな」
「イルマ殿の話では、女神様から教えていただいたレシピは精霊樹の葉を使うらしいな。効果に差が出るのも当然か」
既存のキュアイルネスポーションと、聖域産のキュアイルネスポーションは、同じようで実はその効果に大きな差があると分かっていた。
病を治すのは同じだが、聖域産のキュアイルネスポーションは、一度飲めばひと月は効果が持続すると言われている。
万能薬や、霊薬ソーマの素材である精霊樹の葉を使用している聖域産のキュアイルネスポーションは、もはや別物と言っていいだろう。
「ああ、そうそう。イルマ殿からは、疫病に罹った者を集めて隔離する場所があった方がいいとアドバイスをもらっています」
「流行り病の対処としては、昔から知られているが、患者の世話をする者はどうする? 病がうつるぞ」
「それは心配ないようです。聖域産のキュアイルネスポーションをあらかじめ飲んでおけば、疫病には罹らないようですから」
ギルフォードが口を挟む。
「陛下や宰相、あとは国を動かす上で重要なポジションの者は、あらかじめ聖域産のキュアイルネスポーションを飲んでおくべきですね」
「ああ、近衛騎士団の中でも数名選んで飲ませるべきですな」
「ふむ。それも必要か」
サイモンとロボスも同意した。さらにギルフォードが尋ねる。
「王妃様やお子達はどうされますか?」
「……いらぬだろう。王城にもポーションを備蓄するのだ。直ぐに治療できる態勢があれば問題ない。王族とはいえ、貴重な聖域産のポーションを無駄に飲ませる必要はない」
「承知しました」
ロボスは少し考え、不要だと首を横に振る。必ずしも疫病に罹るとは決まっていないのだ。
しかも王城なら疫病に罹った時点で、直ぐに治療できる準備が整っている。
「人口の多い都市に、キュアイルネスポーションの備蓄を指示しておきます」
「農村や小さな街へは、冒険者ギルドを通して指示するか。創世教への協力もお願いせねばなりませんな」
ギルフォードとサイモンが言うと、ロボスが付け加える。
「サイモン、創世教へは国庫から治癒魔法の代金を支払うよう取り計らうように」
「承知しました」
女神ノルンがわざわざ神託を下すのだから、無策では大陸規模で疫病が流行るのだろう。
ただ、バーキラ王国に限って言えば、それほど心配ないだろうと、ロボスやサイモンは考えていた。
バーキラ王国と創世教の教会を通し、女神ノルンの神託が伝えられたロマリア王国でも、早速対策に動いていた。
宰相のドレッドとロマリア王が、聖域産のキュアイルネスポーションの確保に動く。
自国でのポーション生産量の増加、創世教への協力要請、その際の国からの支払いなど、決めなければいけない事は多い。
「陛下、食料の備蓄も進めるべきかと思いますが?」
「ああ、だが俺に反抗的な派閥には……分かってるな?」
「勿論です。この機会に、力を削げるだけ削いでおきましょう」
カリスマ性があり、強い求心力を持つロマリア王だが、反抗的な派閥の力も大きい。ロマリア王とドレッドは、この機会に敵対派閥の力を削ぐつもりだった。
それにより、敵対派閥に属する民の生命が多く失われるとしても……
「それは正攻法ならね」
「えっと、裏ワザでもあるんですか?」
「そう! この創世の女神ノルンが、レシピを教えちゃいましょう!」
「そ、そうですか」
そうしてノルン様が教えてくれたのは、精霊樹、または世界樹の葉っぱとヒルクク草を使うものだった。
「えっと、精霊樹の葉っぱはまずくないですか?」
「大丈夫よ。かなり少量で大量のポーションが作れるから」
「ヒルクク草は、患者の体力を回復させるのと、精霊樹の葉っぱが入っているのを誤魔化すためですか?」
「そう! そのとおーり!」
ノルン様から聞いたキュアイルネスポーションのレシピは、僕の知っているものとは違い、世界樹や精霊樹の葉っぱを使うものだった。
精霊樹の葉っぱは、万能薬の材料になるだけあり、かなり薄めたとしても、それだけで疫病を治せる激レア素材だ。
ヒルクク草なんて、そのポーションの色や味を誤魔化すためと、疫病で弱った患者の体力を回復させるだけのオマケだ。
通常のキュアイルネスポーションのレシピと違って、とてもシンプルなレシピなので、確かに聖域なら大量生産も可能だと思う。
「薄めた精霊樹の葉っぱから作ったポーションで、治るレベルの疫病なんですね」
「そうよ。多分、タクミ君が前世で暮らしていた日本なら、致死率もそんなに高くない病気だと思うけど、残念ながらこの世界はまだまだ遅れてるのよね」
「ああ、確かに、ちょっとした病気で亡くなる人も多いですもんね」
聖域は別にして、この世界は貧富の差が激しく、日常的に栄養が足りていない人が……特に子供や老人に多い。
そんな人達にとっては、いくら前世基準で致死率が高くない病気でも、命に関わる可能性が大なんだ。
「ああ、勿論、タクミ君達以外は、普通のレシピでキュアイルネスポーションを作ってもいいのよ」
「バーキラ王国やロマリア王国、ユグル王国には話しておいた方がいいですね。あっ、ユグル王国は世界樹があるか」
通常のキュアイルネスポーションのレシピでは、そこそこ貴重な素材も使用するので、富裕層じゃないと買えない。
とはいえ、疫病の流行には備えてもらう必要はある。お金がある貴族や豪商は、正規の値段で薬師から購ってもらいたい。
「あっ、そろそろ時間ね。じゃあ、タクミ君、頼んだわねー!」
「あっ! ノルン様っ!」
僕はいつものように、唐突に元の場所へと戻っていた。いや、僕自身は教会で祈りを捧げている姿のままだったんだろうけどね。
「はぁ……」
思わず溜息を吐き、立ち上がる。
とりあえず家に戻り、皆んなと情報共有しないとな。
バーキラ王国は、聖域にいるロザリー夫人から夫である王国宰相のサイモン様へ伝えてもらうか。ボルトン辺境伯にも報告しておいた方がいいかな。ロマリア王国へは、バーキラ王国から話を通してもらおう。
ユグル王国については、ルーミア王妃かミーミル王女に任せて大丈夫だよね。
疫病の発生源となるサマンドール王国と、ノムストル王国へはどうしようかな。やっぱりバーキラ王国経由がいいか。
トリアリア王国は……サマンドール王国から情報を流すしかないよな。割を食うのは一般の国民だけど、僕があの国にできる事は少ない。
はぁ、また面倒な事を頼まれちゃったなぁ。とはいえ僕は錬金術師でもあり、薬師でもあるんだから頑張らないといけないな。
4 会議と準備
今回は聖域にある僕の家じゃなく、聖域の役所として使われている建物の会議室に、騎士団からガラハットさん、ユグル王国からルーミア様とミーミル様、バーキラ王国からは宰相のサイモン様の奥さんであるロザリー夫人、そして僕の妻達とアカネ、ルルちゃん、レーヴァが集まった。
「……しかし、離島の処理も終わらぬうちに、また神託ですか」
「ガラハット殿、島の方は落ち着いているのでしょう? ノルン様もタクミ君に、無理難題を押しつけているわけじゃないのだから」
ガラハットさんが、今回のノルン様からの神託を聞いて顔をしかめる。
対してロザリー夫人は、この世界の人達のおおよそがそうであるように、ノルン様の神託は絶対と考えているから、ガラハットさんを窘めていた。
「うむ。分かっております。いずれにせよ、今回我らは素材の採取でもあまり役に立ちませぬし」
ガラハットさんも神託に否はないらしい。聖域騎士団としてできる仕事が限られていると思ってのしかめっ面なんだ。
「確かに、聖域騎士団は採取の時の護衛くらいしかできないわね」
「アカネさん、ヒルクク草なら騎士達でも採取できるでありますよ。聖域の中にもたくさんあるであります」
「ヒルクク草なんて、聖域じゃ雑草と変わらないじゃない。聖域の子供達で十分よ」
「そうだったであります」
アカネとレーヴァが口々に言った。
アカネが言うように、ヒールポーションの素材であるヒルクク草は、聖域ではそこら中に生えている。雑草かというくらい、あちこちにね。
聖域の子供達がお小遣い稼ぎに採取するくらいだ。
「タクミ様、聖域で作るキュアイルネスポーションは、ノルン様のレシピなのは分かったであります。多分、そのポーションだけで、疫病は治せると思うであります。ただ、普通のキュアイルネスポーションが高価なのは仕方ないでありますが、それを買えない人やポーションを手に入れるまでに時間がかかる人用に、解熱剤も必要なのでありますよ」
「それは必要かもしれないね」
レーヴァの指摘は、その通りだと思う。
僕達が市場に流すポーションは、既に発病して高熱があったとしても、飲んだ時点で回復するだろう。
そのための体力回復用のヒルクク草だしね。
ただ、精霊樹や世界樹の葉っぱを使わない、普通のレシピで作るキュアイルネスポーションは、そこまで著しい回復はしない。
それに、ポーションを飲むまでに、熱が高くなりすぎないように解熱剤は必須だろう。その後の体力回復用のヒールポーションもだ。
「ただ、解熱剤のレシピって一般に拡がってたかな?」
「確か、バーキラ王国の薬師や錬金術師は知っていたと思うでありますよ」
「なら大丈夫かな」
薬のレシピって、同じ薬でも共通じゃなかったりするんだよね。
薬師独自の工夫やアレンジがある場合もあって、そのせいで薬の効果にバラツキがあるのは当たり前だ。
解熱剤は、それほど難しいレシピじゃないし、素材も特に手に入れにくいものじゃないけど、効果にバラツキがあるのはいただけない。
怪しいもぐりの薬師なんてのもいるらしいから、一定の水準に達する薬を望むのも難しい。
「一応、通常レシピのキュアイルネスポーションや解熱剤用の薬草をうちでも集めた方がいいわね」
「トリアリア以外に売るの?」
「トリアリア王国にも、パペックさん辺りが第三者を挟んで売ったり、サマンドール王国経由で売ったりしてもいいんじゃない」
「それもそうだね。トリアリア王国の薬師や錬金術師が、どれだけの能力を持っているかは分からないけど、僕達やユグル王国産の精霊樹や世界樹の葉っぱを使うキュアイルネスポーションなんて買わないだろう。それでも、自国の国民向けに薬を作れるよう最低限のサポートは必要だろうね」
アカネの意見に、僕も賛成する。
「じゃあタクミとレーヴァで、キュアイルネスポーションの量産。私達で、通常品のための素材採取。聖域の子供達にもヒルクク草を集めてもらいましょう」
「そうね。タクミ君やアカネさん達は、それで進めてもらっていいわ。ノルン様の言う疫病の流行は半年後くらいだから、急いだ方がいいわね」
アカネとロザリー夫人が今後の方針を確認した。
「だね。とりあえず、キュアイルネスポーションの素材を優先に、その後余裕があれば解熱剤の素材と下級のヒールポーションも量産した方がいいかな」
「そうでありますな」
僕も優先順位を考慮しつつ、レーヴァと生産の打ち合わせをする。
ポーションを作るのは当然だけど、ポーション用の入れ物も大量に必要だから、その生産も急ピッチで行う必要がある。ガラス瓶の材料が、聖域にはたくさんあるけれど、他の国はどうか分からないからね。
それからそれぞれ直ぐに動き出した。
ロザリー夫人はサイモン様経由で、バーキラ王国へ注意喚起と協力要請。
ルーミア様とミーミル様は、ユグル王国にキュアイルネスポーションの量産を指示。同時に、輸出可能な素材の確保。
アカネは、聖域にある創世教の教会に、大陸中の教会への情報共有と、聖域で作ったキュアイルネスポーションの分配、患者の治療の協力要請。
あとバーキラ王国とユグル王国から、ロマリア王国とノムストル王国、サマンドール王国に注意喚起と、疫病対策を行うように促してもらう。これは一般人の僕じゃ信用がないので、国同士で話してもらわないとね。
で、僕はソフィアと二人でボルトンへと来ていた。
勿論、ボルトン辺境伯と会うためだ。
「イルマ殿、ソフィア殿も、久しぶりだな」
「ご無沙汰しています」
アポを取ってその日のうちに、ボルトン辺境伯は会ってくれた。このスピード感は、流石辺境を守るボルトン辺境伯らしい。
「で、早急の用となると厄介事だろう」
「はい。実は、ノルン様から神託がありまして……」
「!? イルマ殿へ神託か。それは、思った以上に大事だな。それで、内容は?」
「実は……」
ボルトン辺境伯に、サマンドール王国から疫病が流行するので、それに備えるようにと、ノルン様から神託があったと告げる。
一応、ユグル王国へは、ルーミア様とミーミル様から、バーキラ王国にもロザリー夫人から宰相のサイモン様へ伝えてもらい、創世教には各教会のネットワークを使って情報共有していると伝える。
「なんと……厄介な。疫病か」
ボルトン辺境伯が眉間に皺を寄せて唸る。
それも仕方ない。この世界でそんな事が起きたら、どれほどの人が亡くなるか読めない。金持ちから貧乏人まで等しくパニックになるだろう。
特に広い領地を持つボルトン辺境伯は、より大変だ。
「サマンドール王国からという事は、疫病の原因は魔大陸から持ち込まれたのだろうか?」
「その辺は、おそらくとしか言えませんが」
「ふむぅ。魔大陸に暮らす魔族は、頑丈だと聞くからな」
「はい。純粋な肉体的強さ以外にも、病毒に対しても耐性があるみたいですから。今回の疫病も魔族からすれば、軽い風邪が流行った程度の認識かもしれないですね」
ボルトン辺境伯は、疫病がサマンドール王国から流行ると聞き、その源流は魔大陸だと気が付いたみたいだ。
この大陸の南にある魔大陸との交易は、聖域を除けばサマンドール王国が窓口となっている。
魔大陸のそれぞれの国――国と言っても大きな城塞都市一つが都市国家という形だが――は、交易の頻度はそれほど多くないが、それでも人の行き来はある。
検疫なんて意識のないこの世界では、疫病が流行ったとして止める術はない。
魔大陸に暮らす人達は丈夫で、少々の病気など跳ね返してしまう。魔大陸は一般人のレベルも高いから、疫病で大きな被害なんて事にならないんだろうな。
あの魔王達を思い出す。……うん。病気に罹っているイメージが湧かないね。
◆
バーキラ王国の王城にて――
ロザリーから通信の魔導具で入った報せを、サイモンは直ぐにバーキラ王ロボスに報告。早速秘密裏に会議が行われた。
何故、秘密裏なのかと言うと、下手に情報が漏れると、キュアイルネスポーションやそれを作るための薬草などの素材が高騰するからだ。
このバーキラ王国でも、人命がかかろうと、買い占めて儲けようとする倫理観のない貴族や商人は多いのだ。
「はぁ、疫病か。備えなければいけないが、迂闊に情報を漏らせぬな」
「ええ、まかり間違ってもランズリット公爵達に知られるわけにはいきませんな」
聖域よりもたらされた報告に、ロボス王は難しい顔をしていた。サイモンも貴族派筆頭であるランズリット公爵の名を口にして、頷く。
自身の派閥と敵対しているという事だけでなく、ランズリット公爵は色々と困った人物だ。どうして自分と親戚関係にある人間が、ああも愚かなのか、ロボスは常々考えるが答えは出ない。
ある程度の派閥の対立は、国内の貴族を纏める上で必要悪だと思っているが、トップがああも馬鹿だといっそ潰してしまいたくなる。
しかもランズリット公爵は馬鹿なだけならいいものを、変にお金の匂いに敏感だったりする。やはり、あの男に知られるわけにはいかない。
「騎士団の訓練を装い、ポーションの素材採取をしますか?」
近衛騎士団の団長で、聖域騎士団の団長ガラハットの息子ギルフォードが、騎士団での素材採取をロボス王とサイモンに問うが、サイモンは首を横に振る。
「……いや、それは冒険者ギルドと薬師ギルド、錬金術師ギルドに任せよ。ただ、依頼は複数の筋から分散し、大量のキュアイルネスポーションを欲しているとできるだけ悟らせぬようにな」
それでもいずれ情報は漏れるだろうが、サイモンとしては、それを可能な限り遅らせたい。
「陛下、それよりもロマリア王とサマンドール王、ノムストル王にも知らせるよう、イルマ殿から要請がありましたぞ」
「ああ、ユグル王国は王妃と王女が直接伝えるだろうから、その三国には我が国から知らせねばならんな。ノルン様よりイルマ殿に神託があったと言えば大丈夫だろう」
サイモンの言葉に、ロボスは頷いてそう言った。サイモンは続けて言う。
「旧シドニアの民の分もキュアイルネスポーションがいるのでは?」
「旧シドニアで必要となるポーションは、同盟三ヶ国から必要分を用意せねばならんだろうな」
大陸を疫病が襲うとなると、敵国であるトリアリア王国はともかくとして、旧シドニアは同盟三ヶ国が何とかしなければいけない。
特に、距離が近いバーキラ王国とロマリア王国は自国に準ずる対応が必要になる。
「はい。聖域産のキュアイルネスポーションを、どれほどの量提供してもらえるか、早急に問い合わせする必要もあります。なにせ、聖域産か、それ以外かでは、ポーションの効果に差がありますからな」
「イルマ殿の話では、女神様から教えていただいたレシピは精霊樹の葉を使うらしいな。効果に差が出るのも当然か」
既存のキュアイルネスポーションと、聖域産のキュアイルネスポーションは、同じようで実はその効果に大きな差があると分かっていた。
病を治すのは同じだが、聖域産のキュアイルネスポーションは、一度飲めばひと月は効果が持続すると言われている。
万能薬や、霊薬ソーマの素材である精霊樹の葉を使用している聖域産のキュアイルネスポーションは、もはや別物と言っていいだろう。
「ああ、そうそう。イルマ殿からは、疫病に罹った者を集めて隔離する場所があった方がいいとアドバイスをもらっています」
「流行り病の対処としては、昔から知られているが、患者の世話をする者はどうする? 病がうつるぞ」
「それは心配ないようです。聖域産のキュアイルネスポーションをあらかじめ飲んでおけば、疫病には罹らないようですから」
ギルフォードが口を挟む。
「陛下や宰相、あとは国を動かす上で重要なポジションの者は、あらかじめ聖域産のキュアイルネスポーションを飲んでおくべきですね」
「ああ、近衛騎士団の中でも数名選んで飲ませるべきですな」
「ふむ。それも必要か」
サイモンとロボスも同意した。さらにギルフォードが尋ねる。
「王妃様やお子達はどうされますか?」
「……いらぬだろう。王城にもポーションを備蓄するのだ。直ぐに治療できる態勢があれば問題ない。王族とはいえ、貴重な聖域産のポーションを無駄に飲ませる必要はない」
「承知しました」
ロボスは少し考え、不要だと首を横に振る。必ずしも疫病に罹るとは決まっていないのだ。
しかも王城なら疫病に罹った時点で、直ぐに治療できる準備が整っている。
「人口の多い都市に、キュアイルネスポーションの備蓄を指示しておきます」
「農村や小さな街へは、冒険者ギルドを通して指示するか。創世教への協力もお願いせねばなりませんな」
ギルフォードとサイモンが言うと、ロボスが付け加える。
「サイモン、創世教へは国庫から治癒魔法の代金を支払うよう取り計らうように」
「承知しました」
女神ノルンがわざわざ神託を下すのだから、無策では大陸規模で疫病が流行るのだろう。
ただ、バーキラ王国に限って言えば、それほど心配ないだろうと、ロボスやサイモンは考えていた。
バーキラ王国と創世教の教会を通し、女神ノルンの神託が伝えられたロマリア王国でも、早速対策に動いていた。
宰相のドレッドとロマリア王が、聖域産のキュアイルネスポーションの確保に動く。
自国でのポーション生産量の増加、創世教への協力要請、その際の国からの支払いなど、決めなければいけない事は多い。
「陛下、食料の備蓄も進めるべきかと思いますが?」
「ああ、だが俺に反抗的な派閥には……分かってるな?」
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