異世界立志伝

小狐丸

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深淵の森

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 異世界に来て七年、ドルファレス師匠との思い出深い住みかから、旅立ってから一週間が経った。

 だけど俺は、いまだに深淵の森を未だ彷徨っていた。

 「フンッ!」

 バルディッシュを一閃すると、軽トラ位はあるデカイ虎の頸が跳ぶ。

 Aランクの魔物で、フォレストタイガーという魔物らしい。

 もう、余りに頻繁に襲われるから、いちいち鑑定で、名前も調べず、斃してはアイテムボックスへ放り込む事の繰り返しだ。

「そろそろ森を抜けても、いい頃だと思うんだけどな」


 森へ踏み入って早一週間。一日多分40キロ~50キロは歩いている筈なので、約300キロ以上は歩いた事になる。

「出てくる魔物も、段々と弱くなって来たし、きっともう直ぐ抜けれるよな」

 この深淵の森は、何故か俺が暮らしていた、山に囲まれたあの土地の近くが、一番強力な魔物が徘徊していた。
 そこから南に離れる度に、魔物の強さが弱くなっていくのに気付いた。
 もう一つ、魔素が段々と薄くなってきている。魔物が弱くなってきているのにも、関係しているのかもしれない。


 旅立って最初は、本当に大変だった。
 高い山をやっとのことで越えた途端、いきなりワイバーンに襲われた。その後も、地竜やキメラ、中には木に擬態している、エビルトレントや4メートルを超える馬鹿でかい蟷螂、キラーマンティスみたいな虫系の魔物まで。
 もはや地竜なんて、少し大きいトカゲでしかない。ブレスも魔力障壁で防げるし、デカイから動きも遅いし、既に大きなまとでしかない。


「本当にどうなってるんだろう、この森は、奥に生息する魔物の強さと、大きさがおかしいよな」

 竜が大きいのは分かるんだけど、虫がデカイのは気持ち悪い。特に、蜘蛛とムカデは気持ち悪かった。ムカデはまだ大きくても一匹だったからいいけど、蜘蛛は団体さんで襲ってきたので大変だった。
 まあ、それも慣れたけど。

 ただこの一週間で、素材的には色々手に入れたので、落ち着いたら造りたい物が色々ある。
 多分この森にいる魔物の素材は、貴重な物が多いと思う。
 これは鍛治師ジョブと鍛治スキルのお陰で、わかるんだけど、武器や防具などの装備品に使える、希少な素材が、いっぱい手に入った。
 ちゃんとした防具も欲しいし、魔道具にも興味があるし、どこかの街で、鍛治師でもして暮らすのも良いかもしれない。

 森に入る前と後では、随分ステータスも成長している。それだけ過酷だったという事だけど。
 たかだか一週間で、伸び過ぎな気がする。遭遇する魔物のレベルも、高い個体が多かった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 NAME カイト 人族

 HP  1,920/1,920
 MP  3,290/3,290
 AGE 14
 JOB 剣士10  魔導士10
 STR 1,160
 DEF 760
 INT 1,580
 AGL 1,085
 DEX 1,605
 MEN 1,710

 SKILL
 剣術Lv.4 短剣術Lv.3 槍術Lv.4 
 体術Lv.4 斧術Lv.4 棍術Lv.3
 投擲術Lv.4 棒術Lv.3 戦鎚術Lv.3
 身体強化Lv.4 気配隠匿Lv.4 気配察知Lv.4
 ハイドLv.3 
 属性魔法適正 魔力操作Lv.4
 火魔法Lv.3 水魔法Lv.4 土魔法Lv.4
 風魔法Lv.5 氷魔法Lv.3 雷魔法Lv.4
 光属性Lv.4 闇魔法Lv.3 回復魔法Lv.4
 時空間魔法Lv.2 無属性魔法Lv.4
 付与魔法Lv.4 刻印魔法Lv.3
 魔力感知Lv.4
 鍛治Lv.4 調合Lv.3
 木材工芸Lv.3 裁縫Lv.3

 物理耐性Lv.2 状態異常無効
 大陸共通語 鑑定Lv.4
 空間収納

 JOB
 戦士Lv.20 剣士Lv.10 魔法使いLv.20
 狩人Lv.20 武闘家Lv.20 盗賊Lv.20
 魔導士Lv.10 僧侶Lv.20 アサシンLv.10
 付与術師Lv.20 村人Lv.10
 木工職人Lv.10 服飾職人Lv、10
 薬師Lv.20 錬金術師Lv.20 鍛治師Lv.20

加護
 精霊女王の加護

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 この森に居るうちに、出来るだけ初級職のレベルをあげようと思い、薬師、鍛治師、錬金術師を鍛え、安全に夜を過ごす為に、アサシンにジョブを変え、ハイドのスキルレベルをあげた。
 ハイドは、気配隠匿と組み合わせれば、先ず見つかる事がない、使えるスキルだった。

 気配隠匿は、気配を察知されにくくするスキルだが、ハイドは、実際に姿を隠すスキルだ。このスキルがなかったらと思うとぞっとする。
 昼夜問わず襲われるので、ハイドと気配隠匿のコンボが使えるまで、この七日間まともに寝る事も出来なかった。


「あゝ、お風呂に入りたい」

 小屋に住んでいた頃は、湯船を造り、お湯は魔法で入れて、一日毎に入っていたが、さすがに森の中ではお風呂に入れない。
 光魔法の中に、ピュリフィケーション(浄化)の魔法があるんだけど、この浄化の魔法が万能で便利過ぎる魔法だった。
 浄化の魔法は、呪いや穢れの浄化や、アンデットに対しての攻撃方法にとどまらず、部屋のホコリや服の汚れ、身体の垢や汚れをキレイにしてしまう。
 汚れを落とすのに、浄化魔法を使っているのは、俺だけかもしれないけど。



 やっと森の外縁部にたどり着いた。そこでふと、自分の服装が気になった。俺の服は、革のシャツとパンツに革のブーツだが、なんせ自作だから、この世界の服のデザインなんて分からない。ドルファレス師匠は、五百年前の知識だし、そもそも服装に興味がないのか、話題に出てくる事もなかった。

「田舎者丸出しに見られたらどうしよう」

 毛皮ベストのマタギ風や、山賊風じゃなくて良かった。

 木々の間隔がまばらになってきて、屋久島の縄文杉みたいなデカイ樹木から、比較的細い木々ばかりになって来た。
 木々から漏れる日の光が、明るく感じて来た時に、森の外にとうとう人の気配を複数捉える事が出来た。

「やった!やっと人との遭遇だ!」

 あまりの嬉しさに走りだす。

 遂に、森の切れ目が見えてきた。

 森から飛び出した、俺の目に飛び込んできたのは、汚れた革鎧や錆びた鉄の胸当てを付け、近くにいるだけで、臭ってきそうな汚らしい姿の男達。
 その男達に囲まれている、こちらも革鎧を装備した、一人の少女だった。

 ・
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 ・

「あ、えっと、こんにちは」

「「「「「…………」」」」」

 思わず挨拶してしまった。

 うん、これ盗賊に襲われている少女って、見えるけど、皆んなで仲良く楽しむのが癖の人達かもしれないもんね。
 うん、スルーしよう。それがいい。

「では、おさきに失礼します」

 ・
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 ・
「ちょっと!待ちなさいよ!」

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