異世界立志伝

小狐丸

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冒険者登録

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 次の日、早朝の鍛錬を終え、全身を浄化した後、朝食を食べるため、食堂に向かった。

「おはようエル」

 食堂に行くと、既にエルがテーブルに座っていた。

「……おはようカイト」

 うん?寝不足かな?

「どうしたの?寝不足?大丈夫?」

 寝不足の原因を作った相手をジト目で睨みつける。

「……あなたねぇ~」

 エルの向かい側に座って、朝食を食べる。

「そうそう、冒険者ギルドで魔物の素材を売りたいんだけど、冒険者ギルドに登録してからの方が良いかな?」

「……もしかしなくても、深淵の森の魔物よね」

「不味いかな?」

「はぁ~、登録したての新人が、深淵の森に生息する魔物を持って来たら目立つに決まってるじゃない。外縁部でも最低ランクがDランクよ」
「そのランクって、魔物の強さで区別してるんだよね」
「そこからなのね。そうよ、上はSランクから下はFランクまであるわ。ゴブリンの単体がFランクね」

 それを聞いて、少し不味いかもと思うけど、お金も必要だし、ある程度目立つのは仕方ないかもしれないな。

「まあ、装備を造る素材に残す分以外は、売ってお金にするか。工房も借りたいしな」
「まあ、カイトが良いなら、私は何も言わないけど。ちなみに、どんな魔物を持ってるのよ」
「そこ聞いちゃう?」

 何かを感じとったエルがそれ以上聞くのをやめる。

「……やっぱりやめとくわ」





 エルレインに連れられて、冒険者ギルドにやって来た。
 石造りの三階建ての立派な建物で、盾に剣と槍が交差する意匠の、看板が掛かっていた。

 エルレインが建物に入って行くのを追いかける。

 一階のホールは、広く綺麗で、長いカウンターがあり、そこが受付になっている。
 その受付の一つに並ぶ。

「すいません登録したいのですが」

 俺がそう言うと受付嬢が一枚の紙を差し出した。

「いらっしゃいませ。それではこちらの用紙に、記入して下さい。登録には、銀貨5枚が必要です」

 用紙を見ると、年齢、種族、職業、得意分野などが、書く欄があった。

「全部書かなければ、いけないんですか?」
「いえ、名前と年齢それと種族を記入して頂ければ結構です。ただパーティーを組む際に、職業や得意分野を書いておけば、アピールになります」

 当面、パーティーを組む予定はないので、最低限の記入で済ませる。

「はい、これで大丈夫です。少しお待ち下さい」

 受付の女性が、魔導具を操作すると、名刺大のカードが出てきた。

「こちらに魔力を流して下さい。はい、結構です。こちらがカイト様の冒険者カードになります。紛失すると、再発行に銀板5枚が必要になりますので、失くさないようにして下さい」

 ギルドカードを受け取る。
 カードには、名前とランクのみが記されていた。

「ギルドランクは、ご覧のとおり、Gランクからのスタートになります。早速なにか依頼を受けていかれますか?」
「ごめんなさい。この分の報償金をカイトと半分で分けたいんだけど」

 エルレインが盗賊達のカードを受付に渡す。

「……これは、はい、確認しました。盗賊討伐の報償金、金貨1枚と銀板1枚になりますが、どう分けますか?」
「じゃあカイトに、銀板6枚と私に5枚で」
「畏まりました。少々お待ちください」

 受付嬢がお金を取りに席を離れようとする。

「すいません。魔物の素材買取を、お願いしたいのですが、解体していないけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。素材買取カウンターは、右端にあります」
「いや、量が多いので」

 受付嬢が怪訝な顔をする。それはそうだろう、俺は手ぶらなんだから。

「わかりました。倉庫に案内します」

 巨大な倉庫へ、受付嬢の案内され着いて行く。

「ここに出して下さい」

 受付嬢に促され、俺は倉庫に魔物を並べて行く。

 ギガントロックボア×1
 キラーマンティス×5
 ジャイアントセンチピート×3
 ヒュージスパイダー×36
 フォレストバイパー×3
 フォレストタイガー×1
 シャドウパンサー×4
 キラーエイプ×30
 エンペラーエイプ×1
 ジェネラルオーガ×2
 オーガ×56
 グランドレッサードラゴン×2
 ワイバーン×1

「とりあえずこの位で良いかな」

 自分の装備に使う素材を確保して、残りを放出した。

「「……………………」」

 固まったまま、再起動しないエルレインと受付嬢。その間に、ギルドの解体職人が、ワラワラと集まって来る。

「おい、見ろよ。最低でもCランクの魔物だぞ!間違いなく、深淵の森の魔物に間違いない」
「それよりも、キズの少なさを見ろよ!ほとんど一撃で仕留めているのか。こんな綺麗な物は見た事ないぞ」
「オイオイ、地竜にワイバーンもあるぞ。俺、地竜なんて初めて見た」

 職人達がワイワイと騒いでいると、やっと受付嬢が再起動をはたす。

「少しお待ち下さい」

 受付嬢は、そう言うと走り去って行った。



 う~ん、さすがにこれだけ並ぶと壮観だな。
 ノンビリとそんな事を考えていると、エルが俺の胸ぐらを掴んできた。

「ちょっと!どういうことよ!」

 エルの目が血走って怖い。

「いや、だって、素材を売るって言っただろ」
「量と内容が問題なのよ!」




 俺がエルに責められていると、受付嬢がガタイの良い爺さんを連れて来た。

「ふむ、これは凄いのう。これは少年が斃したのか?」

 うん?  いきなり話しかけられて、「誰だ?」と思っていると、爺さんが改めて自己紹介してきた。

「おお、これはすまんかった。儂はここのギルドマスターをしておる。レイナードじゃ」
「カイトです」
「ふむ、それでカイト君。この魔物は、深淵の森で狩ったという事じゃな」
「ええ、そうです」
「……なるほどのぅ。カイト君、済まんが一度にこれだけの量となると、ギルドの資金が足りなくなるんじゃ。そこで、頼みなんじゃが、分割にしてくれんかのう。なに、これだけの素材じゃ、商人ギルドも職人ギルドも高額で買うじゃろう」
「はい、良いですよ」

 俺はは二つ返事で了承する。一度に貰わなくても全く問題ない。何せお金を使う環境は久しぶりだし、使わなくても暮らして行けていたので、欲しい物がある訳でもないし。

「済まんのう。では受付でお金を受け取ってくれ。全ての査定が終わるのに、一週間ほど掛かると思っておいてくれ」
「わかりました。エル、行こう」

 俺はエルを引き摺って受付へ向かった。






「ギルドマスター、カイトさんを調べますか?」

 倉庫で影から見ていた、副マスターのロベルトがギルドマスターのレイナードに、カイトを調査するか確認する。

「いや、せっかくの大型ルーキーじゃ。下手に嗅ぎ回って、ノトスを出て行かれでもしたら、この街の損失じゃ」
「しかし、彼は今日登録したてのGランクですよ。しかもまだ14歳らしいですし」
「なに、彼の実力は本物じゃよ。現役時代ならいざ知らず、今の儂では荷が勝つほどにわな」

 ロベルトがまさかという表情をするが、レイナードの顔は真剣だった。

「かつてSランクまで上り詰めた、レイナード様と同等だと?」
「現役時代なら儂の勝ちじゃが、今ならいい勝負だろうな」

 レイナードが楽しそうにそう言う。

「それほどですか……」

「しかも彼はまだまだ成長途中じゃ。どこまで強くなるのか、楽しみじゃのう」




 受付で、分割で受け取る内の白金貨100枚を受け取る。

(おお、日本円なら10億円位か、一気にお金持ちになっちゃった)

 盗賊討伐の報償金は、エルに全部あげると、物凄い良い笑顔で受け取っていた。

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