異世界立志伝

小狐丸

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王都招喚

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 ノトスに戻り、一日ゆっくりしてから、冒険者ギルドに依頼の報告に行った。

 ギルドに入ると、アンさんが直ぐに気付き、奥の応接室に連れて行かれた。

「カイトさんお疲れさまです。ご無事でなによりです」
「ご苦労じゃたのう」

 応接室に入るとギルドマスターのレイナードさんが既に座っていた。

 その場で報告書をレイナードさんに渡す。

「ふむ、よく出来た報告書じゃ。今まで何度も探索に向かった冒険者や騎士団は、誰一人帰って来なかったからのう」

 ドンッ!テーブルに、お金の詰まった袋が置かれる。

「白金貨で50枚入っている。これだけの成果に対して少ないかもしれんがの」

 白金貨50枚を受け取る。

「いえ、お金はもう十分有りますから」
「カイトさん、出来れば毒蛇王の森の魔物素材を、売って貰えれば有り難いのですが」

 アンさんが、出せよ~、一杯あるんだろ~、という吹き出しが見えそうな顔をしてる。

「自分達で使う分以外なら大丈夫だと思います」

 アンさんの圧力に、そう言うしかない。
 ギルドの帰りに、倉庫で素材を吐き出し、査定は後日という事で、俺は家に帰った。




 三日間の完全休養を取り、四日目からクリストフ君の為に、深淵の森での訓練を再開した。
 勿論、聖騎士ジョブを目指してである。

 クリストフ君の装備は、既にアダマンタイト合金製の装備に変わっている。ステータスが上昇し、重い剣や盾を楽に扱えるようになった。
 聖騎士を目指すのに、黒い鎧はイメージが違うと思い、ミスリルをコーティングして白銀の鎧になった。盾にも同じくミスリルコーティングで白銀ベースの盾になった。

 俺もレンジャーと忍者マスターのレベル上げをしている。

 深淵の森での魔物討伐と模擬戦を繰り返し、俺を含めウチのメンバーの良い訓練になった。


 そんなある日、家で昼食後に皆んなでお茶を飲んでいると、ギルドの受付のアンさんが訪ねて来た。

「どうしたんですか?」

 アンさんが家に来たのは初めてだった筈だ。

「カイトさんが、ここの所ギルドに顔を出さないので、私から来ました」

 アンさんはそう言うと、上質な紙が使われた封筒をテーブルに置いた。

「……これは」

 封蝋に押された、印璽(いんじ)の紋章を見て、エルの顔が青くなる。

「どうしたの?」
「……この紋章は王家の物なの」
「そうですね、多分カイトさんに、王都への招喚状だと思います」

 アンさんが、何か知っているのかそう言った。
 慌ててエルが封を切り、中味を確認する。

「間違いなく王からの招喚状ね」
「断っても良いのかな?」
「「良いわけないじゃない!」」

 ひょっとして断っても良いのか聞いてみたら、エルとアンさんから、マッハの突っ込みが入る。

「私もこの間の指名依頼だけで、王都から招喚状がカイトさんへ届くのは不思議に思ったのですが、カイトさん何かしましたね」

 おぅふ、断定されたよ。
 何だろう、何かしたかな?って言うか、帝国の事がバレちゃってるよね。

「まぁ、やったと言えばやったのかな」
「……何をしたんですか?」

 仕方ないので、帝国との戦闘をアンさんに話した。

「…………何してるんですか!それが理由に決まってるじゃないですか!エルさんも、バスターク辺境伯の長女だなんて!聞いてないですよ!」

 アンさんがツバを飛ばして叫んでる。

「そうよね~、あの事をお父様が報告したのよね~」
「まぁ、報告するよな。普通」
「はぁ~、もう良いです。だいたい招喚された理由も想像つきますし」
「はぁ、見え見えよね」

 アンさんとエルにも王国が俺に何を望んでいるのか分かったようだ。さすがに俺にだって分かる。

「要するにタイラントトライヘッドバイパーを討伐しろって事だよね」
「お父様と陛下が噛んで、それで終わる訳ないわよ」
「甘いですカイトさん。甘々です」

 そうだろうなぁ、俺でも一万の軍勢を蹴散らす戦力なんて、ほって置けないよな。

「やっぱり警戒するよな」
「カイト、きっと悪い話じゃないと思うわ。
 タイラントトライヘッドバイパーの討伐は決定事項だと思うけど、要するにあの地を開発して欲しいのよ」

 開発?俺が?

「俺が?開発するの?」
「カイトにしか、あの森を切り拓くのなんて無理でしょう。
 毒蛇王が居なくても、あの森の推奨レベルはAランクパーティーよ」
「そうです。冒険者ランクがパーティーでAランク必要だと言う事です。そして現在、個人でAランクの冒険者は居ますが、パーティーでは存在しません」
「いや俺達もAランクパーティーじゃないよ」

 うん、全然足りないよな。

「カイト、多分例え他にAランクパーティーが有っても、私達に話が来るわよ。
 きっと陛下とお父様は、バスターク辺境伯家と王国から人を出したいでしょうし」

 未開地を開拓して成功すると、爵位を賜りその地を治める事は有る事らしい。そこで俺を貴族に叙任して、エルと結婚させバスターク家と縁を繋ぐ積もりだと言う。

「それにカイトが居れば、ローラシア王国もゴンドワナ帝国も、迂闊に手を出せないでしょ」
「ひょっとして、俺をサーメイヤ王国に縛り付けるため?」
「それは一軍に匹敵する戦力を、他国に行かせたくないでしょうね」

 まぁ今更エルの事を、責任取らない選択肢はないよな。

「まぁ、結局は成るように成るだろう」

 深く考えても、行ってみなければ始まらないもんな。
 また全員で行くのかな?


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