異世界立志伝

小狐丸

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新しい仲間達と

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 マドゥークの街に着いて、ホテルへ向かった。

「カイトおにいちゃーん!」

 ドンッ! 重い音がお腹から聞こえる。
 レベルアップを経て、身体能力が半端なく上昇しているルキナが、ホテルのドアを開けた瞬間飛び込んで来た。

(これ、俺じゃなきゃ死んでるな)

 それを証拠に、新しく仲間になった奴隷達は、ルキナの突進を見て顔を青くしている。

 ルキナをそのまま抱きあげる。

「さあ、中に入って」

 豪華なホテルのスイートルームに、新しく入った奴隷達は落ち着かないようだ。

 ルシエルを抱いたアンナさんが、ルシエルをベッドに寝かせに行った。

「じゃあ、先ずランカスを治してしまおう」
「???」

 俺の言ってる言葉の意味が分からず、困った顔をするランカス。

「ランカス、取り敢えずそこに座りなさい」

 エルがソファーにランカスを座らせる。

「じゃあ楽にしてね。……エクストラヒール!」

 ランカスの身体を光が包み、手と脚が再生されていく。

「「「えっ!?」」」
「な、なんとっ!」

 新規組みが驚くなか、ランカスの身体が元に戻る。

「暫くの間は、リハビリが必要だからね」

 俺はそう言って、ルシエルを寝かせた部屋に向かう。

「アンナさんの知り合い?」

 ベッドの横で付いていたアンナさんが振り返る。

「はい、ルシエル様はエルフの里では英雄ですから。ですから森林火災程度のことで、この様なお姿になるなんて、信じられません」
「……うん、何かあったのかもね。まぁ治してから聴けば良いよ」

 ふぅ、ひとつ息を吐きだして集中する。

「エクストラヒール!」

 ルシエルの身体を光が包み、劇的に変化していく。
 焼け爛れた頭や顔が綺麗な透き通る白い肌に戻っていく。
 緑色の綺麗な髪が再生されていく。
 身体中のケロイドが消えて、綺麗な白い肌が再生され、光が収まったあとに、神秘的な美しさを持つエルフの女性が現れた。

「ふぅ、後はアンナさんお願いします」

 ルシエルさんのことはアンナさんに任せ、ランカスにも少し話を聞かなければいけない。



「少し落ち着いた?」

 リビングに戻り、ランカスに聞く。すると、ランカスがその場に膝をつく。

「カイト様、バスターク辺境伯領をお救い下された事、ありがとうございました」

 エルに聞いたのか、ランカスが頭を下げるのを、俺は手を振って制する。

「いやいや、あれはエルの為だけにやった事だから、バスターク領はオマケだよ」

 ランカスにソファーに座るよう促す。

「では改めて自己紹介しよう。俺の名前はカイトだ」
「違うでしょう。
 カイト・フライヘーア・フォン・ドラーク。
 今は、ドラーク男爵よ」

 その言葉に、俺の事を羽振りの良い冒険者だと思っていた奴隷組が、驚愕のあまり固まっている。

「まぁ、カイトで良いよ」
「カイト様、ランカス・ロックウッド。元バスターク辺境伯領軍、第一騎士団団長を勤めていました」
「それで、ランカスを解放したいと思うけど、そしたらバスターク辺境伯軍に、戻れるよう計らうけど?」
「……買われたばかりで解放されると言われるのか?」
「まぁ、騎士団団長だからねぇ~」

 戦死扱いだったランカスが戻れば、バスターク辺境伯様も嬉しいだろう。そう思って言ったんだけど、エルが爆弾を落とす。

「でもランカス居なくても、もう大丈夫よ」
「「えっ!?」」
「だって、カイトがクリストフを鍛えて、あの子今じゃ聖騎士よ。あの子が居たらバスターク辺境伯領は安泰でしょう」
「……聖騎士?聖騎士ですと!」

 まぁ驚くよな。クリストフ君まだ成人していないし、聖騎士職なんてドルファレス師匠以外で見た事ないしな。

「カイト様は、聖騎士の転職条件をご存知なのですか?」

 おぅ、ランカスのテンションが、おかしな事になってる。

「うん、まぁ、俺の師匠が聖騎士だったからな」
「カイト様のお師匠様が聖騎士?現在、聖騎士は確認されていなかったと思いますが?」

 う~ん、どう説明したものかな。

「ランカスにドルファレス師匠の事を言っても分からないだろうしなぁ」
「ドルファレス!」

 ランカスが驚きの声を上げる。

「聖騎士ドルファレスとは、大昔大陸の北にあった、アンタレス王国の英雄の名ではないですか!」
「あゝ、そんな国の名前を聞いた覚えがあるな。多分その聖騎士ドルファレスが俺の師匠だ。
 まぁ、俺が会った時にはアンデットだったけどね」

 ランカスに、ドルファレス師匠との出会いと別れを簡単に話す。

「深淵の森の奥にそんな地が?確かにあの辺りは、昔アンタレス王国が在った場所ですが。
 それ以前に、人の身であの森を一人で抜けて来るなんて……」
「ランカス、その位じゃないと一万の帝国軍に、単騎で突撃しないわよ。言ったでしょう、バスターク辺境伯領を救ったって」

 ブツブツと呟くランカスにエルが言う。

「なっ!一万の帝国軍!それを単騎で突撃して生きて帰って来られたのか……」
「だ~か~ら~、生きて帰って来たじゃなくて、ケチョンケチョンにして敗走させたの!」
「「「「…………」」」」

 それを聞いた、ランカスを始めとする奴隷組は、分かり易く口を開けて驚いていた。

「奴隷商の店主も言ってたでしょう。カイトの事を厄災って、初めて聞いたけど、ローラシア王国やゴンドワナ帝国にとっては、確かに厄災よね」

 何故か獣人達は、目をキラキラさせて俺を見ている。ホビットのサンクも尊敬の目で見ているので、そういう事だろう。

「まぁ、そう言う事だから。バスタークへ戻るも、ここに残ってカイトの力になるのも、好きにすれば良いと思うわ」

 ランカスが俺を見て来る。その目は、何かを決意した目だと分かった。

「カイト様には、二度と剣を持てない身体を治して頂き、もう一度生きる道を示して頂きました。
 ランカス・ロックウッド、身命を賭してお仕えする所存でございます」

 ランカスが片膝をつき、胸に手を当て宣誓する。

「あゝ、これからよろしく頼む」

 ふと見ると、ランカス以外のユーファン・ボーデン・バルデス・サンクまで片膝をつき胸に手を当て頭を垂れている。

「「「「我等もカイト様にお仕えします」」」」

 その後、全員を奴隷から解放した。
 彼等はドラーク男爵家の家臣として雇用する事になった。


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