異世界立志伝

開発準備

　全員を奴隷から解放し、部位欠損から復帰したランカスや、酷い火傷で寝たきりだったルシエルの為に、マドゥークの街で３日の休養をとった俺達は、ノトスへと戻って来た。
　バドックの奴隷商の店主には、奴隷狩りにあった人達を保護して貰う為に、白金貨１０枚預けておいた。
　未開地を開発した後に、最初に生産系の職人や農民が必要になるからだ。

　ノトスに帰ったは良いが、俺の家もこの人数ではさすがに手狭なので、女性陣以外は宿に泊まってもらう事にした。

　毒蛇王の森へ行くに辺り、新規組ランカス達の装備だが、俺が造る時間もないので、とりあえず街売りの装備を購入することにする。
　ノトスの街は、深淵の森に近いだけあって、冒険者も多く、武器防具を扱う店や鍛治職人がいる。
　今回は時間がないので、先ずは武器屋に向かった。

　ランカスは、ロングソードを一本選び出し、武器屋のスペースで素振りをして、バランスを確認している。
　さすがに元騎士団長だけあって、その剣を振る姿も様になっている。

「ふむ、剣はこれで良いです。後は盾と槍ですね」

　護ることに重きを置く騎士だけあって、盾は必須らしい。
　ユーファンはロングボウを見繕っていた。矢筒と矢を纏めて買っていく。
　そのうち俺が造った装備に変えていく積りだけど、弓は造ったことがないからな。落ち着いたらトライしてみよう。

「後はナイフが欲しいニャ」

　ユーファンは、近接戦闘用にナイフを選んだ。

　ボーデンは、その巨体を活かしたロングメイス。メイスヘッドが大きく、メイスの重さも相当の重量になるのだが、ボーデンは楽に扱えている。
　ボーデンはメイスの他に大盾を選んだ。普通の人族では持てない様な、重量の大盾を楽々扱うのはさすがに熊人族だと言えるだろう。

　ブンッ！　「ふむ」

　無口なボーデンだが、気に入ったようだ。

　バルデスは、巨大な斧刃を持つ戦斧。持ち手も長く、石突きに小型のメイスヘッドの様な物を付けて貰う為に、鍛治師の所へ走って行った。
　バルデスは戦斧の他に、左腕に装着するタイプの盾を購入した。

　サンクは、生粋の斥候職みたいだ。短剣とスローイングナイフを購入していた。

「おいらは、罠の発見や解除、鍵開けが得意だから、戦闘向きじゃないんだよなぁ」

　サンクはそう言ってるが、決して戦闘力が低い訳ではない。他のメンバーがより戦闘向きなだけだ。
　あとサンクは、罠を解除する為の工具を道具屋で購入していた。

　ルシエルは、精霊魔法を主体としているので、指輪型の魔法発動体を用意した。

「私は剣もそこそこ使えますのよ」

　ルシエルはそう言って、ミスリル製のショートソードを購入する。ミスリル製の武器は、魔力を纏わせる事で斬れ味が増すので、ルシエルの様に魔力量が多いエルフ向きではある。欲を言えばオリハルコン製の方が魔力に親和性が高いのだが、街売りではミスリル製が精一杯だ。


　ランカスは、槍と剣にラウンドシールド。
　ユーファンは、弓とナイフ。
　ボーデンは、ロングメイスと大盾。
　バルデスは、戦斧と盾。
　サンクは、短剣と投げナイフ。
　ルシエルは、魔法発動体とショートソード。

　防具もランカスやバルカスの騎士組は、プレートメイルとガントレットにグリーブを、速さが売りのユーファンとサンクは革鎧を買った。バルデスは、鋼鉄の胸当てと籠手にブーツ、ルシエルは革の胸当てとブーツを買う。
　あとは、全員分のフード付きの外套を買った。

　イリアやコレットの様に、カイト製の装備ほどの性能はないが、一応カイトが追加で簡単にエンチャントで強化してある。


　他にも手斧や鉈など、森を拓く為の道具も買っていく。

「せっかく改造したけど、この家は売らないと駄目だよな」
「そうね、ただトイレやお風呂の魔導具は回収して置いてね」

　エルの指示に従い、灯の魔導具や冷蔵庫の魔導具も回収していく。

　ベッドなどの家具もアイテムボックスに収納していく。

　冒険者ギルドに挨拶を済ませ、商業ギルドに家も売却する。

「さて、この街とも暫くお別れだな」
「行きましょう」

　トテトテ　ドンッ　

　ルキナが飛びついて来たのを、そのまま抱き上げる。

「しゅっぱーつ！」

　ルキナが手を挙げ声をあげる。



　ノトスの南門を出て暫く歩き、車とブリッツとラヴィーネを出す。
　全員が車に乗れないので、ランカスとバルデスにはゴーレム馬で移動してもらう。

「これは……、凄い馬ですな……。装甲といい、馬体の大きさといい」
「………………」

　ランカスとバルデスは、ブリッツとラヴィーネを見て、かなり気に入ったようだ。

「それは私とカイトのだからあげないわよ」

　エルが、ラヴィーネに乗るのは苦手なくせにそう言ってランカスとバルデスをガックリさせていた。
　ゴーレム馬は、そのうち全員分がいるかもしれない。一度、鉱石を掘りに行かないとダメかな。

　ゴーレム馬で移動するランカスとバルデスに合わせ、俺達はゆっくりと移動して2日で森の端に着き、その日はそこで野営する。

　明日の朝から開拓で、ハードワークになるだろうから、今日は早く寝る事にした。
　結界を張り、ルフトに警戒を任せて眠りについた。