84 / 163
王子と王女
しおりを挟む
サーメイヤ王国のバージェス・サーメイヤ王には二人の王子と一人の王女がいる。
王妃は正室の第一夫人と側室の第二夫人の二人で、二人の王子は正妻の子供で、王女は側室の子供である。
正妻はアレクシア、側室がロマーヌ、第一王子がクレモン、第二王子がノーラン、第一王女がクララ。
クレモンが16歳、ノーランが14歳、クララは6歳になったばかりだ。
第一王子と第二王子の仲は良く、王位継承も問題無く第一王子が継ぐことで、家臣の中でもまとまっていた。
王妃も第一夫人と第二夫人の仲も良好で、王女のクララも皆から可愛がられていた。
王が二人しか妻を持たない事は、この世界の王族では珍しいが、王子が二人産まれた為に問題にならなかった。
「おとうしゃま、クララもえいゆうにあいたいですぅ」
バージェス王に、金色の髪を長く伸ばした、小さな女の子が何かをねだっていた。
「クララ、我儘言わないの」
そう言ったのは、二十代半ばの薄い金髪を長く伸ばした美女。よく見るとクララと良く似ている。
彼女が第二夫人のロマーヌだ。王家の人間が寛ぐ部屋で、クララ王女が父親であるバージェス王に、何かをねだっていたのだ。
「クララのお願いは聞いてあげたいが、そんな事で忙しいドラーク子爵を呼びつける事は出来ん」
「え~!クララはあいたいのれしゅ!」
カイトがゴンドワナ帝国からの侵攻を退けた話は、今ではサーメイヤ王国中で知られている。
一万の軍勢に単騎で挑んで撃破した話は、王都でも知らぬ者はいない。
クララも物語の英雄のように讃えられるカイトに逢いたいと願っていた。
「クララ、僕達も陞爵の時に見かけたくらいだから、逢いたいというだけじゃ無理だよ」
「そうだよクララ、ドラーク子爵は開発に忙しいと聞くよ」
クレモンとノーランが、可愛い妹をなだめる。
「以前、パーティーでバスターク辺境伯夫人のレイラさんがおっしゃっていたけど、ドラーク子爵と連絡をとる魔導具をお持ちらしいですよ」
「まぁ本当ですかアレクシア様、それなら一度レイラさんにお願いしても良いかもしれませんね」
第一夫人のアレクシアが、義母にあたるレイラがカイトと連絡を取る手段を持つ事を言うと、第二夫人のロマーヌも娘の望みが叶うかもと微笑む。
「確か、レイラさんは王都の屋敷に滞在していた筈よ」
「ふぅ~、仕方ないの。一度バスターク辺境伯夫人に話してみるか」
「ほんとうですか!おとうしゃま!」
よろこんだクララがバージェス王に抱きつく。
サーメイヤ王家のアイドルである、クララのお願いを断れる者は少ない。
クレモンとノーランも妹の愛らしさに目尻を下げている。
「ではメルコムにバスターク辺境伯夫人へ書簡を送るよう伝えよう」
王都にあるバスターク辺境伯の屋敷に、バージェス王から書簡が届く。
それを受け取ったフレデリックがレイラへと届ける。
「レイラ奥様、バージェス王から書簡を預かりました」
「バージェス王から?何かしら、ゴドウィンじゃなくて私宛なのよね?」
渡された書簡は間違いなくレイラ宛だった。
書簡の内容を読み進めるレイラが、全て読み終えるとため息をつく。
「バージェス王もクララ王女には弱いのね」
「どの様な内容だったのですか?」
フレデリックの問いに、第一王女のクララ王女が、サーメイヤ王国で英雄視されているドラーク子爵に逢いたいと言っているらしい事を話す。
「カイト様は人気者ですな」
「それはそうよ、物語や演劇の題材になるほどなんだから」
カイトが聞けば身悶えしそうだが、色々と脚色されて演劇や物語として出回り始めている。
「まぁ一度連絡を取ってみるわ」
「そうですね、カイト様には、この御屋敷へ来ていただいて、その後王城からの迎えを待って頂きましょう」
「じゃあ、ちょっと連絡を取ってみるわ」
レイラは身につけているペンダントを握りしめると魔力を流す。
「カイト君、カイト君、今大丈夫かしら」
『レイラさんですか、ご無沙汰しています。どうしたんですか?』
レイラが身につけていたのは、カイトが造った通信の魔導具だった。緊急時の連絡用にレイラやゴドウィン達に渡してあった。
レイラの呼びかけに、カイトの声が聞こえてきた。
「二、三日中に王都に来れないかしら。バージェス王に連絡を取るよう頼まれたのよ」
『緊急の案件ですか?』
「ああ、心配しないで。実は第一王女のクララ様があなたに会いたいらしいのよ。バージェス王も娘には弱いから、困って私に頼んできたのよ」
何か悪い事があったのかとカイトが誤解しないように、バージェス王からの依頼を伝える。
『王の召還を断れる臣下はいませんから、呼ばれれば行きますけど、明日は難しいので明後日で良いですか?』
「それで構わないわ、どうせカイト君は転移で来るのでしょう。普通なら何日もかかる所を、明後日ならバージェス王も問題無いと思うから。
じゃあ明後日に、一度家の屋敷に来てちょうだい」
『分かりました。では明後日伺いますね』
通話を終えてレイラがペンダントに魔力を流すのを止める。
「ふぅ、これで良いわね」
「それでは王城に報せておきます」
フレデリックが部屋を出て行って、レイラはカイトが王城へ上がる時に持って行く手土産を探しに出かける用意をし始める。
6歳の幼女のお願いに、大の大人が動き回ることになる。
王妃は正室の第一夫人と側室の第二夫人の二人で、二人の王子は正妻の子供で、王女は側室の子供である。
正妻はアレクシア、側室がロマーヌ、第一王子がクレモン、第二王子がノーラン、第一王女がクララ。
クレモンが16歳、ノーランが14歳、クララは6歳になったばかりだ。
第一王子と第二王子の仲は良く、王位継承も問題無く第一王子が継ぐことで、家臣の中でもまとまっていた。
王妃も第一夫人と第二夫人の仲も良好で、王女のクララも皆から可愛がられていた。
王が二人しか妻を持たない事は、この世界の王族では珍しいが、王子が二人産まれた為に問題にならなかった。
「おとうしゃま、クララもえいゆうにあいたいですぅ」
バージェス王に、金色の髪を長く伸ばした、小さな女の子が何かをねだっていた。
「クララ、我儘言わないの」
そう言ったのは、二十代半ばの薄い金髪を長く伸ばした美女。よく見るとクララと良く似ている。
彼女が第二夫人のロマーヌだ。王家の人間が寛ぐ部屋で、クララ王女が父親であるバージェス王に、何かをねだっていたのだ。
「クララのお願いは聞いてあげたいが、そんな事で忙しいドラーク子爵を呼びつける事は出来ん」
「え~!クララはあいたいのれしゅ!」
カイトがゴンドワナ帝国からの侵攻を退けた話は、今ではサーメイヤ王国中で知られている。
一万の軍勢に単騎で挑んで撃破した話は、王都でも知らぬ者はいない。
クララも物語の英雄のように讃えられるカイトに逢いたいと願っていた。
「クララ、僕達も陞爵の時に見かけたくらいだから、逢いたいというだけじゃ無理だよ」
「そうだよクララ、ドラーク子爵は開発に忙しいと聞くよ」
クレモンとノーランが、可愛い妹をなだめる。
「以前、パーティーでバスターク辺境伯夫人のレイラさんがおっしゃっていたけど、ドラーク子爵と連絡をとる魔導具をお持ちらしいですよ」
「まぁ本当ですかアレクシア様、それなら一度レイラさんにお願いしても良いかもしれませんね」
第一夫人のアレクシアが、義母にあたるレイラがカイトと連絡を取る手段を持つ事を言うと、第二夫人のロマーヌも娘の望みが叶うかもと微笑む。
「確か、レイラさんは王都の屋敷に滞在していた筈よ」
「ふぅ~、仕方ないの。一度バスターク辺境伯夫人に話してみるか」
「ほんとうですか!おとうしゃま!」
よろこんだクララがバージェス王に抱きつく。
サーメイヤ王家のアイドルである、クララのお願いを断れる者は少ない。
クレモンとノーランも妹の愛らしさに目尻を下げている。
「ではメルコムにバスターク辺境伯夫人へ書簡を送るよう伝えよう」
王都にあるバスターク辺境伯の屋敷に、バージェス王から書簡が届く。
それを受け取ったフレデリックがレイラへと届ける。
「レイラ奥様、バージェス王から書簡を預かりました」
「バージェス王から?何かしら、ゴドウィンじゃなくて私宛なのよね?」
渡された書簡は間違いなくレイラ宛だった。
書簡の内容を読み進めるレイラが、全て読み終えるとため息をつく。
「バージェス王もクララ王女には弱いのね」
「どの様な内容だったのですか?」
フレデリックの問いに、第一王女のクララ王女が、サーメイヤ王国で英雄視されているドラーク子爵に逢いたいと言っているらしい事を話す。
「カイト様は人気者ですな」
「それはそうよ、物語や演劇の題材になるほどなんだから」
カイトが聞けば身悶えしそうだが、色々と脚色されて演劇や物語として出回り始めている。
「まぁ一度連絡を取ってみるわ」
「そうですね、カイト様には、この御屋敷へ来ていただいて、その後王城からの迎えを待って頂きましょう」
「じゃあ、ちょっと連絡を取ってみるわ」
レイラは身につけているペンダントを握りしめると魔力を流す。
「カイト君、カイト君、今大丈夫かしら」
『レイラさんですか、ご無沙汰しています。どうしたんですか?』
レイラが身につけていたのは、カイトが造った通信の魔導具だった。緊急時の連絡用にレイラやゴドウィン達に渡してあった。
レイラの呼びかけに、カイトの声が聞こえてきた。
「二、三日中に王都に来れないかしら。バージェス王に連絡を取るよう頼まれたのよ」
『緊急の案件ですか?』
「ああ、心配しないで。実は第一王女のクララ様があなたに会いたいらしいのよ。バージェス王も娘には弱いから、困って私に頼んできたのよ」
何か悪い事があったのかとカイトが誤解しないように、バージェス王からの依頼を伝える。
『王の召還を断れる臣下はいませんから、呼ばれれば行きますけど、明日は難しいので明後日で良いですか?』
「それで構わないわ、どうせカイト君は転移で来るのでしょう。普通なら何日もかかる所を、明後日ならバージェス王も問題無いと思うから。
じゃあ明後日に、一度家の屋敷に来てちょうだい」
『分かりました。では明後日伺いますね』
通話を終えてレイラがペンダントに魔力を流すのを止める。
「ふぅ、これで良いわね」
「それでは王城に報せておきます」
フレデリックが部屋を出て行って、レイラはカイトが王城へ上がる時に持って行く手土産を探しに出かける用意をし始める。
6歳の幼女のお願いに、大の大人が動き回ることになる。
65
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる