異世界立志伝

小狐丸

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王子と王女

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 サーメイヤ王国のバージェス・サーメイヤ王には二人の王子と一人の王女がいる。
 王妃は正室の第一夫人と側室の第二夫人の二人で、二人の王子は正妻の子供で、王女は側室の子供である。

 正妻はアレクシア、側室がロマーヌ、第一王子がクレモン、第二王子がノーラン、第一王女がクララ。

 クレモンが16歳、ノーランが14歳、クララは6歳になったばかりだ。


 第一王子と第二王子の仲は良く、王位継承も問題無く第一王子が継ぐことで、家臣の中でもまとまっていた。
 王妃も第一夫人と第二夫人の仲も良好で、王女のクララも皆から可愛がられていた。
 王が二人しか妻を持たない事は、この世界の王族では珍しいが、王子が二人産まれた為に問題にならなかった。




「おとうしゃま、クララもえいゆうにあいたいですぅ」

 バージェス王に、金色の髪を長く伸ばした、小さな女の子が何かをねだっていた。

「クララ、我儘言わないの」

 そう言ったのは、二十代半ばの薄い金髪を長く伸ばした美女。よく見るとクララと良く似ている。
 彼女が第二夫人のロマーヌだ。王家の人間が寛ぐ部屋で、クララ王女が父親であるバージェス王に、何かをねだっていたのだ。

「クララのお願いは聞いてあげたいが、そんな事で忙しいドラーク子爵を呼びつける事は出来ん」

「え~!クララはあいたいのれしゅ!」

 カイトがゴンドワナ帝国からの侵攻を退けた話は、今ではサーメイヤ王国中で知られている。
 一万の軍勢に単騎で挑んで撃破した話は、王都でも知らぬ者はいない。
 クララも物語の英雄のように讃えられるカイトに逢いたいと願っていた。

「クララ、僕達も陞爵の時に見かけたくらいだから、逢いたいというだけじゃ無理だよ」

「そうだよクララ、ドラーク子爵は開発に忙しいと聞くよ」

 クレモンとノーランが、可愛い妹をなだめる。

「以前、パーティーでバスターク辺境伯夫人のレイラさんがおっしゃっていたけど、ドラーク子爵と連絡をとる魔導具をお持ちらしいですよ」

「まぁ本当ですかアレクシア様、それなら一度レイラさんにお願いしても良いかもしれませんね」

 第一夫人のアレクシアが、義母にあたるレイラがカイトと連絡を取る手段を持つ事を言うと、第二夫人のロマーヌも娘の望みが叶うかもと微笑む。

「確か、レイラさんは王都の屋敷に滞在していた筈よ」

「ふぅ~、仕方ないの。一度バスターク辺境伯夫人に話してみるか」

「ほんとうですか!おとうしゃま!」

 よろこんだクララがバージェス王に抱きつく。
 サーメイヤ王家のアイドルである、クララのお願いを断れる者は少ない。

 クレモンとノーランも妹の愛らしさに目尻を下げている。

「ではメルコムにバスターク辺境伯夫人へ書簡を送るよう伝えよう」






 王都にあるバスターク辺境伯の屋敷に、バージェス王から書簡が届く。

 それを受け取ったフレデリックがレイラへと届ける。

「レイラ奥様、バージェス王から書簡を預かりました」

「バージェス王から?何かしら、ゴドウィンじゃなくて私宛なのよね?」

 渡された書簡は間違いなくレイラ宛だった。
 書簡の内容を読み進めるレイラが、全て読み終えるとため息をつく。

「バージェス王もクララ王女には弱いのね」

「どの様な内容だったのですか?」

 フレデリックの問いに、第一王女のクララ王女が、サーメイヤ王国で英雄視されているドラーク子爵に逢いたいと言っているらしい事を話す。

「カイト様は人気者ですな」

「それはそうよ、物語や演劇の題材になるほどなんだから」

 カイトが聞けば身悶えしそうだが、色々と脚色されて演劇や物語として出回り始めている。

「まぁ一度連絡を取ってみるわ」

「そうですね、カイト様には、この御屋敷へ来ていただいて、その後王城からの迎えを待って頂きましょう」

「じゃあ、ちょっと連絡を取ってみるわ」

 レイラは身につけているペンダントを握りしめると魔力を流す。

「カイト君、カイト君、今大丈夫かしら」

『レイラさんですか、ご無沙汰しています。どうしたんですか?』

 レイラが身につけていたのは、カイトが造った通信の魔導具だった。緊急時の連絡用にレイラやゴドウィン達に渡してあった。
 レイラの呼びかけに、カイトの声が聞こえてきた。

「二、三日中に王都に来れないかしら。バージェス王に連絡を取るよう頼まれたのよ」

『緊急の案件ですか?』

「ああ、心配しないで。実は第一王女のクララ様があなたに会いたいらしいのよ。バージェス王も娘には弱いから、困って私に頼んできたのよ」

 何か悪い事があったのかとカイトが誤解しないように、バージェス王からの依頼を伝える。

『王の召還を断れる臣下はいませんから、呼ばれれば行きますけど、明日は難しいので明後日で良いですか?』

「それで構わないわ、どうせカイト君は転移で来るのでしょう。普通なら何日もかかる所を、明後日ならバージェス王も問題無いと思うから。
 じゃあ明後日に、一度家の屋敷に来てちょうだい」

『分かりました。では明後日伺いますね』

 通話を終えてレイラがペンダントに魔力を流すのを止める。

「ふぅ、これで良いわね」

「それでは王城に報せておきます」

 フレデリックが部屋を出て行って、レイラはカイトが王城へ上がる時に持って行く手土産を探しに出かける用意をし始める。

 6歳の幼女のお願いに、大の大人が動き回ることになる。

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