異世界立志伝

小狐丸

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カイト久しぶりの王城へ

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 俺は領内の開発と騎士団や守備隊の訓練で忙しいなか、レイラさんからの頼みで王都へ来ていた。
 まぁ、王からの頼みであれば、俺に断る選択肢は無いのだけど、レイラさんに預けてある通信の魔導具で連絡をしてきたという事は急ぎだという事だ。


 王都の近くに転移して、そこからバスターク辺境伯の王都屋敷へ向かう。

 バスターク辺境伯の屋敷の前に着くと、門番が俺の顔を憶えていたのか、直ぐに取り次いでくれた。

「お久しぶりですカイト様、今回はわざわざ申し訳ありません」

 門まで出て来たのはフレデリックさんだった。

「お久しぶりですフレデリックさん。お元気そうでなによりです」

「さあ、どうぞ。王城からのお迎えが来るまで、奥様とお茶でも飲んでお待ち下さい」

 応接室へ通されると、レイラさんが先に座って待っていた。

「カイトさんお久しぶり、どうぞお座りになって」

「レイラさんご無沙汰してます」

 レイラさんの対面に座ると、メイドがお茶をいれてくれた。
 そのお茶を一口飲んでから、今日の事を少し聞いておこうと思った。

「それで今日の事なんですけど、クララ王女とは面識がないのですが、どのようなかたですか?」

 陞爵の時に、二人の王妃と二人の王子は見た事があるけど、クララ王女は見た事がなかった。

「クララ様はまだ6歳になったばかりの子供だから、カイト君が王城に呼ばれた謁見の時は5歳だもの。
 それにカイト君の事は出来るだけ隠す方針だったでしょう」

 なるほど、確かに毒蛇王を討伐して未開地の開発が成功して初めて陞爵する予定だったし、ゴンドワナ帝国を俺達だけで撃退した事は、一応秘密だったものな。

「でも6歳のクララ王女が俺に会いたい理由がわからないんですけど……」

「ふふふっ、カイト君知らないの?」

「えっ?何がですか?」

「今王都で流行っている物語があるのよ」

 なんか嫌な予感がヒリヒリするぞ。

「ふふふっ、もう分かるでしょう。今、王都ではカイト君の英雄譚が大流行しているのよ」

「なっ?!」

 俺が放心していると、フレデリックさんが呼びに来た。王城からの迎えが来たようだ。




 王城からの迎えの馬車に乗り込み、15分程で王城へ着く。もともとバスターク辺境伯の屋敷は貴族街の中でも王城に近い場所にあったので、馬車に乗る程の事もないのだけど……。

 王城に入ると、謁見の間では無く、応接室のような部屋に通される。

 暫く待つと護衛の騎士と共に、国王バージェスと二人の王妃と二人の王子、最後に小さな女の子が入って来た。

 席を立って、あの女の子がクララ王女かと思って見ていると、俺の顔を見たクララ王女が駆け出す。

「えいゆうだー!」

「これ!クララ!」

 バージェス王が呼び止めるが、聴こえないのか、一直線に俺のもとに駆け寄る。
 俺の太ももにしがみついて、満面の笑みで見上げてくる。

「クララ、ドラーク子爵に失礼でしょ!」

 第二王妃のロマーヌ様がクララ王女を叱るが、クララ王女の耳には入っていないようだ。

「えいゆうしゃま!クララはクララなの!」

「クララ王女様、カイトとお呼び下さい」

「すまんなドラーク子爵、クララが其方に逢いたがってな」

 バージェス王もクララ王女には激甘なようだ。確かに愛らしくて、将来はロマーヌ様の様な美女になるだろう。



 改めて王妃や王子と挨拶を交わし、応接室のソファーに座り、お茶を飲みながら雑談を交わしていた。クララ王女様は何故か俺の膝の上に座っている。

 そこで俺はクララ王女に、何か記念になる物を贈ろうと思いつく。

 アイテムボックスから適当な魔石とミスリル銀を取り出す。クララ王女は俺が何をするのか、興味津々で見ている。
 俺は魔石に術式を描き込み、ミスリル銀で土台を作り魔石をはめ込む。ミスリル銀の加工も鍛治魔法だ。残りのミスリル銀をチェーンを作り、ペンダントに仕上げる。

「はい、クララ王女様」

 クララ王女の首にペンダントを掛けてあげる。

「うわぁー!ありがとう!」

「クララ王女様が困った事があったら、そのペンダントをギュと握って、私に助けを求めて下さい」

「はい!」

「ドラーク子爵、それは魔導具なのか?」

 まぁ父親なら気になるよな。

「はい、緊急時にクララ王女を護る結界と、私にそれを報せる機能が付いています。
 あと、私とのみですが通信の魔導具も兼ねています」

「……ドラーク子爵、それは最早アーティフェクト級だぞ。いや、クララの為になるのならば良しとするか」

 その後、王家の人達との会食を挟んで、夕方までクララ王女は俺を離してくれなかった。
 まぁ、可愛いから良いけど、夕方になって眠くなったクララ王女が侍女に連れられ退出して、やっと王城を後にできた。

 王家の人達とずっと一緒って、精神的に消耗した一日だった。

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