異世界立志伝

小狐丸

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魔物と亜人との違い

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 私達が住むのは、人の踏み入る事のない魔物の領域。そんな場所じゃなければ私達は生きていけなかった。

 私はアラクネと呼ばれる種族。決して魔物ではありません。
 だけど、獣人やエルフ、ドワーフやホビットに比べ、下半身が蜘蛛というのは、人間と認めてもらえないのです。ですから私達は亜人と蔑まれ、人の中で住むことが出来なかった。
 危険な魔物が住む領域に、細々と隠れる様に暮らすしかなかった。

 でも、それも限界がきていました。

 魔物の領域での暮らしは想像以上に過酷で、私の周りにはとうとう私を含めて十四人しか居なくなってしまった。
 これでは、この集落は近い将来無くなってしまうだろう事は容易に想像出来た。
 おまけに残された十四人は、全員が女なのだから。これはそういう種族だからとしか言えないけど。
 本来私達の種族は、他種族の強い雄から種を貰い存続して来た。それは私達が産むのは100パーセント女の子だから。私達の種族がいかに特殊かが分かると思う。
 この集落には、、三つの種族が暮らしているが、よりにもよって、その三つの種族が同じ特性を持っていた事も、集落に男が居ない理由の一つだった。
 昔は外から男を拐って来ては、種族を維持していたけど、ここ数十年は私達のようなアラクネなどは、魔物として討伐対象になっているようで、人の住む近くから逃げ続ける暮らしを送っていた。

 そんなある日、今まで感じた事もない位の強大な存在が、集落に近付いて来るのを感じたわ。
 こんな危険な場所で暮らす私達は、危機察知能力に長けている。その私ともう一人の種族を代表する彼女も、近付いて来るモノが今まで経験した事のない強大な存在だと理解していたわ。

 そこで私が代表して確認する事になったの。
 それは私がこの中で一番の年長だという事もあるけど、多分私は疲れきっていたのだと思う。
 この集落にはアラクネは私独りだけ。おそらくこの周辺にたった一人のアラクネ。もう私は未来に希望を持てなくなっていたのだと思う。

 そして私は出逢ったの。





「立ち去りなさい!
 ここより先へは通しません!」

「……アラクネ」

 イリアが呟いた。

 腰まで伸びた白い髪。
 整った目鼻立ちに涼しげな紅い瞳。
 抜けるような白い肌。
 たわわな乳房。

 それだけを見れば、この魔物の領域に余りにも場違いだったけど……、その裸の美女の下半身は巨大な蜘蛛のソレだった。



「君達はこの森に住んでいるのかい?」

 警戒するアラクネの女性に出来るだけ威圧感を与えないように話し掛ける。

「俺はこの地を治めるカイトだ。
 この森には魔物の素材調達に来ていたんだ。そこでこんな魔物の領域に、纏まった反応を察知してね、危険な魔物の集落なら大きくなる前に対処しようと来たわけさ」

「……………………」

 警戒を解かない美しいアラクネの女性に、敵意のない事を何とかわかって貰わないと、と思っていた。

「どうしてこんな危険な場所に住んでるんだ」

「私達が好き好んでこんな危険な場所に住むとでも思ったか!
 お前達人族が、私達を魔物として討伐対象にしているのだろう!」

 アラクネの女性は激昂して俺に喰ってかかる。

 その時、複数の気配が近付いて来るのを俺達は気付いていた。

 俺は目の前のアラクネの女性と、近付く複数の気配に対して少し強めの威圧をかける。

「俺達への攻撃はお勧めしない。
 俺達は別に争いに来た訳ではないからね」

 俺が威圧した瞬間、アラクネの女性は体を硬ばらせる。

「好んでこの地で住んでいるんじゃないのなら、俺の街か村へ来ないか?
 俺の領地では種族間の差別は違法だし、ウチの領地では人族のほうが少ない位だよ。
 俺が領主として君達を差別なく受け入れる事を約束しよう。君達が安全に暮らせる環境を用意するよ」

 アラクネの女性が戸惑うのが分かった。

 それはそうだろう……、こんな魔物の領域で隠れ住まなければならない彼女達が、簡単に俺の言う事を信じる事は出来ないだろう。だからこそ、俺と彼女達との実力差を分からせる為に少し強めに威圧したんだ。
 力の差を示しながらも彼女達の意思に任せ、選択肢を選べるようにした。

「…………皆んなと相談して良いですか」

 当初の警戒した態度が、今は少し怯えている。
 少し脅し過ぎたか、と思ったけど、人間が信じられなくなってる彼女には、普通に話しても伝わらないと思ったんだ。

「あゝ勿論、俺達はここで待ってるから、相談して決めて下さい」

 戸惑いながら美しいアラクネの女性が、仲間の元へ帰って行った。


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