幻獣使いの英雄譚

小狐丸

文字の大きさ
59 / 63
エピローグ

未知なる世界へ

しおりを挟む
 旧ケディミナス教国で起こった一連の争乱は、邪神の欠片を召喚した、教祖自らがグレーターデーモンとなり滅ぼされることで終息を迎えた。

 旧ケディミナス教国へ侵攻した、パルミナ王国とブランデン帝国は、共に甚大な被害を受け、自国に戻れた兵士は、1,000人を切る有様だった。

 パルミナ王国、ブランデン帝国共に、国としての体裁を保つギリギリにまで追い込まれ、国内の統治に長く苦労する事になる。
 求心力を失った皇帝と国王は、退位を迫る国内勢力との闘争にも対処しなければならなかった。

 トルースタイン共和国とイオニア王国は、同盟を結ぶ事となり、共同で旧ケディミナス教国の復興を行うことになった。

 ユキトはグレーターデーモンとの戦いの後、ケディミナス国内を出来るだけ浄化して周った。
 大量の濃密な瘴気に曝されて、そのまま放って置くわけには不味そうな場所も多かったからだ。

 一月かけて、旧ケディミナス教国を浄化して周りユキトにとって、この地での仕事は終わった。



「サティスー!食料品は買ったっけ?」

 ユキトが荷物を片付けながらサティスに聞く。

「はい、三ヶ月分の食料は買って置きました」
「イリスお姉ちゃん!お菓子を買って来ていい~!」

 アメリアがイリスに叫んでる。

「ちょっと待ちなさい!私が一緒に行くから!」

 イリスがアメリアを追いかける。

 メイド服に身を包んだ少女達も準備に追われている。特に彼女達は、全員が抜ける事が出来ない為に、誰がティアについて行くのかで揉めに揉めた。結局、ローテーションを組んで、ユキトが転移を使い交代させる事で落ち着いた。

 そう、ユキトはこの大陸を飛び出し、外の世界の探索に出ることを決めた。

 トルースタイン共和国も暫くは安泰だろう。
 まだまだ爺ちゃん達も現役だ。


 全ての準備が終わり、ユキトが旅立つ時がきた。

「身体には気をつけるんじゃぞ」

 ノブツナの言葉に目が熱くなる。

「うん、爺ちゃんも元気で。時々転移で帰って来るよ」

「生水は飲むんじゃないよ」

「バーバラ婆ちゃん、もう子供じゃないよ」

 バーバラは、ユキトを何時迄も子供扱いだ。変わらぬ優しさが身に染みる。

「強ぇ魔物を見つけたら報せろよ」

「分かりました。見つけたら報せに帰ります」

 ヴォルフさんは何時も通りだ。

「ユキト君、また会おう」

「はい、アイザックさんもお元気で」

「本当は、一緒に研究をして欲しかったのですけどね。まぁ、私も暫くは国の事で研究どころじゃないですが」

「フィリッポス先生には、色々と教えて頂きありがとうございました」

「おーい!ユキトー!出発するぞー!」

 ドノバンの野太い声が響く。
 ドノバンは、飛空船の操縦が気に入ったのか、ユキトに着いて来る事になった。

「じゃあ、皆さん!お元気で!また会いましょう!」

 ユキトが飛空船に乗り込むと、静かに船体が浮き上がり。南に舵を取り離れていく。


 ユキトの冒険は、今始まったばかりである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...