銀腕の武闘派聖女

小狐丸

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三十一話 大漁

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 数えるのも馬鹿らしい魔物の群れに、先頭切って飛び込み、オリハルコンの長杖を一閃。

 弾け飛ぶ魔物を確認すらせずに、片っ端から攻撃する。

 突き、薙ぎ払い、打ち付ける。変幻自在の長杖の動きに、魔物達は成す術もなく討ち倒されていく。

 ララは両手に持った短剣を振るい、尚且つ至近距離から味方を巻き込まないように魔法を放っている。手数の多さは四人の中でも一番だろう。

 マーテルは、結局片手半剣に落ち着いた。いわゆるバスタードソードと呼ばれる剣だ。片手でも両手でも扱えるけれど、その分使い熟すのが難しい。ただ、小さな頃から剣を振っていたマーテルなら問題はなかった。意外と器用だしね。

 パティは、ロングソードと小さめのバックラー。攻守に優れたオーソドックスなスタイルだけに安定感はある。平民出身だから、皆んなと比べるとスタートは遅かったんだけど、それも七年も鍛錬すれば、もうそう差はないと思う。魔力量もだいぶ増えたしね。

 ノックスは、初志貫徹の大剣を元気に振り回している。十五歳で既に大人の体格なのは、父親のガーランドに似たのか。ガチガチのパワーファイターに見えるけれど、意外と小技も上手い。

 そして、いい歳をしてハッチャケているのが二人程。オリハルコンの剣での実戦が嬉しいのは分かるけれど、もう少し歳を考えて欲しい。

 一応、お祖父様達には、さりげなく護衛は付いている。




 熊や猪などの大型の魔物が混じり始めた。この後、多分ブタ野郎が来るんだろう。

 そんな私の予想通り、オークが混じり始めた。

 この世界のオークは、見た目はブタというよりも二足歩行する猪に近い。足は偶蹄類らしく二股に分かれた蹄が、進化なのか何なのか分からないけれど、二足歩行時の体重を支えれるような形になっている。ところが、前脚の筈の手は、私の印象ではゴリラの手に近い。

 まあ、世界が違うし、魔法なんてモノがある世界だから、その辺はもう深く考えない事にしている。

 このオーク。ファンタジー小説なんかでよくあるような、人間の女性を繁殖の為に攫うなんて事はないけれど、その代わりに人間が好物なのよね。

 だから、見つけたら積極的に狩るようにしている。

「ララ! オークのお出ましよ!」
「明日は、豚肉祭りね!」
「ユーリちゃん! ベーコン作ってください!」
「わ、私は、ポークソテーがいいです!」
「俺、串焼きがいい!」
「OK! 全種類作りましょう!」
「「「「オー!」」」」

 オークが出現した事で、皆んなのテンションが上がる。何故なら、オーク肉は美味いから。とても美味しいから。大事な事だから二度言った。

 食用に向く魔物肉は、どれも美味しい傾向があるんだけど、それはオークも同じだった。私の記憶にあるブランド豚よりも確実に美味しい。

 私は一瞬で間合いを詰めると、長杖を額に突き入れ仕留める。ララは、頸を堕とすか喉を切り裂き、他の皆んなも頸を堕として斃している。理由は言うまでもない。内臓にダメージが大きいと、美味しい肝臓や心臓がダメになる。頸を堕とすのも同じ理由。一番、可食部に影響が少ない上に、血抜きの手間も省けるから。


 私達は、身体強化をフルに使い、魔物から認識できないようなスピードでは動かない。わざと注目を引く事で、囮の役目も担っているから。

 ただ、そんな私達を魔物の攻撃は当たらない。擦りすらしない。虚実織り交ぜた動きと歩法、更に魔力によるフェイントも加えると、この森に棲む魔物程度では、私達にされるがままだった。

 ドォパァン!

 私の掌底で爆散する魔物。虫系の魔物は要らないのよ。

「ユーリ! 虫系の魔物も売れる素材はあるのよ!」
「えー! 分かったわよ!」

 虫系の魔物を爆散させたらララに叱られた。

 別に虫が苦手という訳じゃない。シルクワームやホーリースパイダーを飼ってるしね。

 そもそも私は、アガートラムのお陰で尋常じゃない膂力を誇る。それは、体の成長と共に増している訳で、魔力量の増加も相まって、素材を傷付けないよう斃す事に神経を使うようになっちゃった。

 魔物をハイペースで葬りながらも、戦場全体を把握する。

 メルティやルードも活躍しているわね。ルミエール伯爵家で、十歳にもなればこのくらいは戦えるって事ね。

 エリザベス義姉様は、まだ戸惑っているわね。ローディンお兄様が、過保護なくらい側でフォローしている。

 アレクお父様やフローラお母様も、メルティとルードをフォローしながら、戦場全体を把握して指揮している。

 サーシャお祖母様とバーバラお祖母様も無双状態ね。

 ルーシーやミュシャ達孤児院組は、防壁近くで危なげなく戦っている。それもそうだ。私が孤児院の子供達を鍛え始めて七年経つもの。一番お金が掛かる装備も、格安で提供してるからね。多分、他の領で活動する冒険者基準で言うと、強さとしては一人前と言えるんじゃないかな。

『珍しい。トロールだよ』
『へぇ。この森に、トロールなんて居たんだ』

 ハヤテとゴクウが、トロールの存在を教えてくれた。

 トロールは、体高4メートル~5メートル。魔法耐性、物理耐性共に高く、しかも再生能力まであり、とにかくタフな人型の魔物。まあ、私からすれば、魔法を使う訳でもないので、雑魚なのは変わらない。でも、ルミエール伯爵領以外でなら、トロールが出没すれば大騒ぎなのは間違いない。

「ララ、トロールが居るらしいよ」
「うへっ。私はパス」
「じゃあ、マーテルは?」
「えぇ~。私もキモイのはパスです」
「私も同じで」

 ララにトロールの存在を教えると、嫌な顔をして即パスと拒否された。マーテルとパティも同じく。仕方ないか。トロールは、見た目がキモイのよね。

「ならノックスは、どう?」
「俺もパス! 皮がダメになりそうだしな」
「はぁ、仕方ないわね。ちゃっちゃと斃しちゃおうか」

 ノックスにも断られた。トロールは、その皮が高く売れる。とても頑丈で、ブーツや革鎧に向いているんだって。トロールの皮なんて、私なら絶対嫌だけどね。



 グゥォォォォーー!!

 森の木をそのまま引っこ抜いた物を棍棒にして振り回すトロール。

 私の周囲の魔物ごと叩き潰す暴れよう。ただ、こんなのに時間を掛けるのも勿体無いので、サッサと片付けますか。

 トロールは、振り上げた丸太を私目掛け振り下ろした。それを私は、避ける事もせず右腕を上げる。

 ウゴッ!?

 小さな人間一人、叩き潰したと思ったのだろう。ところが、丸太は私の右腕一本にピタリと止められ、オツムの弱いトロールでも困惑しているようだ。

 バキッ!

 グゥワァッ!!

 戸惑うトロールの片方の脚に崩拳を放ち、像よりも太く頑丈であろう足を砕く。

 バギッ!

 ギャアァァァァ!!

 残った足にも崩拳を打ち込み砕くと、トロールはそのまま横倒しになる。

 ズドォォーーン!!

 崩拳は、形意拳などの中国拳法に於いて、基本となる中段突きで、空手などと違い、拳を縦に突く。

 形意拳の伝説的な武術家、郭雲深は「半歩崩拳、あまねく天下を打つ」と謳われるほどで、半歩進んで打ち込む崩拳はどんな相手も一撃で倒したらしい。

 今世の私の場合。どんな攻撃も手加減が必要なので、崩拳でも掌底でも変わらないんだけどね。

 そのまま頭に虎爪掌で、内部破壊の一撃を打ち込んだ。

 いくら再生能力が高くても、脳を破壊すれば終わりなのは変わらない。

「さぁ、ラストスパートよ!」

 終わりが見えてきたので、声を掛けて皆んなを鼓舞する。

「適当に弱らせて、後ろに通すわよ!」
「了解! あぁ! 加減が難しいわね!」

 私が、メルティやルード、あと孤児院や学園の子供達用に、弱らせた魔物を数の調整をしながら後ろに通すと言うと、ララが了承しながらも、面倒だとキレ気味にぼやく。

 まあ、これからのルミエール伯爵領を担う子供達の経験の為なんだから頑張ろう。







エリザベス視点

 私がルミエール伯爵家に嫁いで来てもう直ぐ三年になります。跡取りも授かり、順風満帆と言えるでしょう。

 ですが、ルミエール伯爵家は、実家であるロックウェル侯爵家とは何もかも違いました。

 先ず、ルミエール伯爵家では、家人全てが並外れて高い戦闘力を有しています。そう、家人全てです。メイドや執事から家僕、料理人や庭師までが、日常的に武術や魔法の訓練をしているのです。

 ローディン様。ロディが言うには、領民も定期的に訓練をしていると言うのです。特に、孤児院や学園の子供達は、小さな頃から段階を踏んで訓練をしているらしく、成人する頃には一人前の戦士になっていると、当たり前の事であるように言います。

 確かに、ルミエール伯爵領は、辺境で他国との矢面に立つ家です。しかも、魔力が濃い土地柄から、棲息する魔物も強力で、その数も多いという事は、私でも知っている事です。

 そして、それが当然であるように、私も訓練に参加します。ええ、とても大変です。実家から着いて来てくれた、私付きの侍女も例外ではありません。

 そんな日々を送る私に、特大の驚愕すべき日が訪れました。

「あ、あの、魔物のスタンピートとは、災害なのでは?」
「ん、ああ、中央の貴族からすると、そうかもね」

 旦那様。軽いです。そうかもね。じゃないです。間違いなく災害です。

「心配しなくても大丈夫だよ。ルミエール伯爵領にとっては、この程度のスタンピードは、お祭りみたいなものだから」
「…………」

 私は、旦那様が何を言っているのか、理解出来ませんでした。だってスタンピートをお祭りですよ。

「大丈夫、大丈夫。ユーリが、その気になれば、一人でも殲滅できる程度だから。でもそれをすると、肉や魔石なんかの素材がダメになるからね」
「……ユーリさんがですか?」
「ああ、ここだけの話、ユーリはルミエール最強。いや、足りないな。世界最強だから」

 イヤイヤ、ユーリさんは、まだ成人もしていない貴族令嬢ですよ。その彼女が、世界最強?

「ああ、世界っていうのは、人間だけじゃなくて、魔物も含めてだからね」

 もう、意味が分かりません。ルミエール伯爵家は、人外魔境だったのでしょうか?



 そして始まった魔物のスタンピート。ええ、驚きしかありません。実家のお父様やお母様は、信じてくれるでしょうか?

 先ず、孤児院や学園の子供達が、普通に戦闘に参加します。それも嬉々として。

 更に、ユーリさんと四人の親衛隊。騎士団長のガーランド殿の嫡男であるノックス殿が十五歳で、あとはユーリさんを含めて十四歳です。その五人が、数も数えきれない魔物の塊に、先頭を切って突撃して行きました。

 アレは、私と同じ人なのでしょうか? そんな私の感想は、間違っていたのです。

「ユーリ達、手加減が上手いな」
「えっ!? 手加減ですか?」
「ああ、素材が無駄にならない場所を攻撃しているからね」
「……本当ですわね」

 どうやら、ルミエール伯爵家にとって、このレベルのスタンピートは、手加減は必須技術のようです。

「特に、ユーリが本気を出せば、素材なんて残らないからね。僕は、ドラゴンが相手でも、ユーリが負ける姿を想像できないからね」

 これは現実なのでしょうか? ああ、ほぼ終息し始めています。

「キャッ!?」

 ユーリさんの三倍は有りそうな魔物。トロールと言うそうです。その魔物が、大木を棍棒にしてユーリさんに振り下ろし、思わず私は悲鳴を上げてしまいました。

「へっ?」

 でも、次の瞬間、私は変な声を上げる事になります。でも、仕方ないです。ユーリさんが、右腕一本で、トロールの振り下ろした大木を受け止めたのですから。

「え~と……」
「ハハッ、ユーリにとってトロールもゴブリンも変わらないからね」

 ええ、瞬殺です。とても頑丈で死に難い魔物らしいのですが。他の領なら大被害間違いなしの魔物ですが。ええ、瞬殺です。

 魔物のスタンピートは、何事もなく終息しました。ええ、最初から最後までお祭り騒ぎでした。

 私の息子も、ああなるのでしょうか? とてもじゃないけれど信じられません。ええ、これはきっと夢を見ているのです。そうに違いありません。




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 この度、作者著作の「いずれ最強の錬金術師?」のアニメ化が決定しました。

 初回放送はいかがでしたでしょうか。
 楽しんでいただければ幸いなのですが。
 次回の放送も楽しんで頂けると嬉しいです。

 それと「いずれ最強の錬金術師?」の17巻が12月中旬に発売されます。書店で手に取って頂ければ幸いです。


 あとコミック版の「いずれ最強の錬金術師?」8巻が、12月16日より順次発売予定です。



 また、コミック版の「いずれ最強の錬金術師?」1巻~7巻の増刷されます。

 12月中頃には、お近くの書店に並ぶと思いますので手に取って頂ければ幸いです。




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