オオカミ少年 〜嘘つきの少年、村を守るために狼と戦ってたら最強になっていた模様〜

tanahiro2010

文字の大きさ
5 / 10
第一章

〝嘘つきの少年〟

しおりを挟む



 ――名無し帰村後、村長の家にて。
 ルードの死体を中心に、村の長老たちが集まっていた。

 議題は、名無しの取り扱いについて。
 突拍子のない思い付きにより名無しは「ルードとセレーネを殺した」と言ったものの、それは名無しの思う以上に村の住人を動揺させていた。

 長老というには少し若めな男が、声を上げる。

「……あいつが、ルードを殺したらしいな」

 対し、反応するのはこの村の村長——セレーネの祖父だった。

「ああ、門番のやつがそう聞いたと報告してきた。……そして、あいつはセレーネを殺した、とも言っていたらしい」

 村長の一言に、僅か5人ほどの長老たちがざわめく。

「――それなら、あいつを殺すべきなんじゃないか? この村に、人を殺すような愚か者はいらん」

「だ、だが……それが本当かはわからないぞ」

「あいつならやりかねん」

「どうせあれだろう。嘘をついても誰にもかまわれなくなったから、自信をつけていた二人を殺した、とか。そんな感じなのが予想できるだろう」


「―――静粛に」

 盛り上がりかけていたところへの、村長の一言。
 その一言で、部屋の空気が止まった。

「見ろ、ルードの死体を」

 村長がそっとルードへかけられていた布をどけ、その傷にさらされた体を長老たちに見えるようにする。


「――ッ! なんだ……この傷は」

「三本の……かぎ爪のあと……?」

 胸元は抉られ、手にはかぎづめに掻かれたような爪痕。
 ところどころはがれちらつく肉に、押しつぶされたような凹み。
 人に攻撃されただけでは説明のつかない傷跡が、そこにはあった。


「……本当に、これを名無しがやったというのか?」

「あまりにも……無残すぎる」


「――まるで人が殺したというよりも……獣に襲われたような」

 何気なく呟かれたその一言に、長老たちが顔を合わせる。

「もしかして……魔物か?」

「いや、そんなはずは……

「いやしかし……そうでもないとこの傷跡は説明できないのではないか」

「いやだが、ルードは名無しが殺したのではないのか?」

 〝嘘つきの少年〟——そのレッテル……いや、呼称になりつつあるそれ名無しを、みなが思い浮かべる。

「これも……嘘だというのか?」

「しかしじゃあ、殺したというのが嘘だとしていったい何のために……」

 だれも、名無しの考えを理解できずまま、会議が終わろうとした、その時———




「―――ん、おはよ」

 部屋の端で布をかけられていたセレーネが、むくりと起き上がった。
 その時、村長の家の下で待機させられていた名無し曰く、男たちの野太い悲鳴が聞こえたという。鼓膜が潰れるかと思った、と。そう嘆いていた。



 ◆ ◆ ◆



「無罪放免ってのは、予想外だったなぁ……」

 村長たち村の長老たちの会議が終わった後、僕はまさかの無罪として解放されていた。

 というのも、どういうことなのか村長宅二階から男達の悲鳴が聞こえてすぐ、どたどたと走る……いや、もはやころげ落ちてくるような音が聞こえ、長老の1人に「釈放じゃ! お前は無罪じゃ! だから今すぐ帰れ!!」と叫ばれてしまったのだ。正直殺人装ってんだしなんらかの刑を受けるのかなと思ってたから拍子抜けである。

 それに、あんな嘘までついたのに無罪って言われすぐ帰されるんだからちょっと悲しくもある。構ってもらえなかったからね。
 もしかしたら、僕が構ってもらうためだけに嘘ついたのがばれたのかな? それとも2人とも生きてたとか。
 いやまぁ、少女Aが生きてる可能性はあれど青年Aが生きてる可能性はないだろう。冷たかったしね。

 でも、今の問題はそれじゃない。構ってもらえなかったのは問題だけど……

「……さて、帰れと言われたものの僕には家がないんだけど、どうしようか」

 そう、帰る場所がない、それが問題なのだ。

 前も言った通り、僕村長の家のベッドで寝たせいでこれまで使っていたゴミ捨て場で寝ることに拒否感が生まれている。というかまともな人間ならみんなそういうと思うけど、アレは普通の人間が寝る……寝れる場所ではないのだ。
 あの快適な環境に慣れちゃった僕からすれば、あんな腐臭漂うとこで寝たくないというのが本音である。近づきたくもないしね。

「でもなあ……森は危険だし、結局寝るなら村の中が1番なんだよなあ……」

 塀に囲われているというだけはあり、魔物が入ってくることはないし、常時警備というか門番というか、街で雇ったらしい傭兵さんが見張り台で待機はしているため、魔物が来たら多分わかる。


 ……あれ? それじゃあなんで僕は前魔物を死ぬ気で討伐する必要があったんだ…?
 こっちに魔物が来たらわかるだろうし……僕も逃げれば解決だったのでは……?

 もしかしたら、僕の努力は無駄だったのかもしれない。嫌だなぁ、それは。
 せっかく僕が善意で動いたんだから、それだけはないと願いたい。


 とまぁ、そんなことより本題だ。
 僕の家、どうしようかなぁ……親が残してくれてれば僕が住めたというのに、もう家は無くなっちゃってるからなぁ……。


「いっそのこと、自分で家つくっちゃう?」

 いいかもしれない。
 最初の炎の狼の魔物を倒したので一回。
 そしてさっきの狼の魔物の大群を倒した……誰かに僕の体で倒してもらったおかげで、僕はものすごいパワーアップを果たしている。
 狼の魔物の一匹や二匹は多分倒せるだろうし、木を殴って折ることも、手刀で切ることもできる。……あ、いや嘘。切るのは無理かもしれない。
 いやまあ、それでも頑張れば家を作るくらいはいけるだろうし、試す価値はあるだろう。

 よし、そうと決まれば素材集めだ。
 村にスペースはないし、どうせなら地下に作ろう。必要なのは……木材の柱かな。


 ということで、僕は再びならぬみたたび森へ向かうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...