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第一章
〝嘘つきの少年〟
しおりを挟む――名無し帰村後、村長の家にて。
ルードの死体を中心に、村の長老たちが集まっていた。
議題は、名無しの取り扱いについて。
突拍子のない思い付きにより名無しは「ルードとセレーネを殺した」と言ったものの、それは名無しの思う以上に村の住人を動揺させていた。
長老というには少し若めな男が、声を上げる。
「……あいつが、ルードを殺したらしいな」
対し、反応するのはこの村の村長——セレーネの祖父だった。
「ああ、門番のやつがそう聞いたと報告してきた。……そして、あいつはセレーネを殺した、とも言っていたらしい」
村長の一言に、僅か5人ほどの長老たちがざわめく。
「――それなら、あいつを殺すべきなんじゃないか? この村に、人を殺すような愚か者はいらん」
「だ、だが……それが本当かはわからないぞ」
「あいつならやりかねん」
「どうせあれだろう。嘘をついても誰にもかまわれなくなったから、自信をつけていた二人を殺した、とか。そんな感じなのが予想できるだろう」
「―――静粛に」
盛り上がりかけていたところへの、村長の一言。
その一言で、部屋の空気が止まった。
「見ろ、ルードの死体を」
村長がそっとルードへかけられていた布をどけ、その傷にさらされた体を長老たちに見えるようにする。
「――ッ! なんだ……この傷は」
「三本の……かぎ爪のあと……?」
胸元は抉られ、手にはかぎづめに掻かれたような爪痕。
ところどころはがれちらつく肉に、押しつぶされたような凹み。
人に攻撃されただけでは説明のつかない傷跡が、そこにはあった。
「……本当に、これを名無しがやったというのか?」
「あまりにも……無残すぎる」
「――まるで人が殺したというよりも……獣に襲われたような」
何気なく呟かれたその一言に、長老たちが顔を合わせる。
「もしかして……魔物か?」
「いや、そんなはずは……森に魔物がいないことは、確かに確認されているはずだ」
「いやしかし……そうでもないとこの傷跡は説明できないのではないか」
「いやだが、ルードは名無しが殺したのではないのか?」
〝嘘つきの少年〟——そのレッテル……いや、呼称になりつつあるそれを、みなが思い浮かべる。
「これも……嘘だというのか?」
「しかしじゃあ、殺したというのが嘘だとしていったい何のために……」
だれも、名無しの考えを理解できずまま、会議が終わろうとした、その時———
「―――ん、おはよ」
部屋の端で布をかけられていたセレーネが、むくりと起き上がった。
その時、村長の家の下で待機させられていた名無し曰く、男たちの野太い悲鳴が聞こえたという。鼓膜が潰れるかと思った、と。そう嘆いていた。
◆ ◆ ◆
「無罪放免ってのは、予想外だったなぁ……」
村長たち村の長老たちの会議が終わった後、僕はまさかの無罪として解放されていた。
というのも、どういうことなのか村長宅二階から男達の悲鳴が聞こえてすぐ、どたどたと走る……いや、もはやころげ落ちてくるような音が聞こえ、長老の1人に「釈放じゃ! お前は無罪じゃ! だから今すぐ帰れ!!」と叫ばれてしまったのだ。正直殺人装ってんだしなんらかの刑を受けるのかなと思ってたから拍子抜けである。
それに、あんな嘘までついたのに無罪って言われすぐ帰されるんだからちょっと悲しくもある。構ってもらえなかったからね。
もしかしたら、僕が構ってもらうためだけに嘘ついたのがばれたのかな? それとも2人とも生きてたとか。
いやまぁ、少女Aが生きてる可能性はあれど青年Aが生きてる可能性はないだろう。冷たかったしね。
でも、今の問題はそれじゃない。構ってもらえなかったのは問題だけど……
「……さて、帰れと言われたものの僕には家がないんだけど、どうしようか」
そう、帰る場所がない、それが問題なのだ。
前も言った通り、僕村長の家のベッドで寝たせいでこれまで使っていたゴミ捨て場で寝ることに拒否感が生まれている。というかまともな人間ならみんなそういうと思うけど、アレは普通の人間が寝る……寝れる場所ではないのだ。
あの快適な環境に慣れちゃった僕からすれば、あんな腐臭漂うとこで寝たくないというのが本音である。近づきたくもないしね。
「でもなあ……森は危険だし、結局寝るなら村の中が1番なんだよなあ……」
塀に囲われているというだけはあり、魔物が入ってくることはないし、常時警備というか門番というか、街で雇ったらしい傭兵さんが見張り台で待機はしているため、魔物が来たら多分わかる。
……あれ? それじゃあなんで僕は前魔物を死ぬ気で討伐する必要があったんだ…?
こっちに魔物が来たらわかるだろうし……僕も逃げれば解決だったのでは……?
もしかしたら、僕の努力は無駄だったのかもしれない。嫌だなぁ、それは。
せっかく僕が善意で動いたんだから、それだけはないと願いたい。
とまぁ、そんなことより本題だ。
僕の家、どうしようかなぁ……親が残してくれてれば僕が住めたというのに、もう家は無くなっちゃってるからなぁ……。
「いっそのこと、自分で家つくっちゃう?」
いいかもしれない。
最初の炎の狼の魔物を倒したので一回。
そしてさっきの狼の魔物の大群を倒した……誰かに僕の体で倒してもらったおかげで、僕はものすごいパワーアップを果たしている。
狼の魔物の一匹や二匹は多分倒せるだろうし、木を殴って折ることも、手刀で切ることもできる。……あ、いや嘘。切るのは無理かもしれない。
いやまあ、それでも頑張れば家を作るくらいはいけるだろうし、試す価値はあるだろう。
よし、そうと決まれば素材集めだ。
村にスペースはないし、どうせなら地下に作ろう。必要なのは……木材の柱かな。
ということで、僕は再びならぬみたたび森へ向かうのだった。
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