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オルフェウスVSコンデムネイション
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金将の間へ続く螺旋階段を、白徽警衛団の護衛官オルフェウス=マクレインは駆け上がっていた。
背後の大理石の壁が、爆発のたびに崩れ落ちる。純白の外套は、すでに煤と硝煙でまだらに汚れていた。
最上階。最後の扉の前で、それは待っていた。
高さ三メートルを超える巨躯。
白金鉄と、血のように濃い金色の結晶で構成された異形。
全身には無数の眼球が埋め込まれ、それらが蠢きながら赤い光を明滅させている。
「断罪スキャナー」が、オルフェウスを捕捉した。
コンデムネイション=ジャッジサーキット。
「――検知。対象物『金将を絶対に守る』という理想を保持。誤りだ。理想は現実の障害。削除対象」
冷たく澄んだ機械音声が、金属質な残響を引き連れて響き渡る。
次の瞬間、スキャナーの中心から、金色の破壊光が迸った。
ズドン――
オルフェウスは咄嗟に左腕の重盾を掲げた。
白銀の盾型紋章が眩く輝き、光線を真正面から受け止める。
直撃の衝撃で床が砕け、膝が一瞬沈む。
「金将は、僕が守る!」
盾に刻まれた聖句が眩い光を放ち、衝撃を四方へ拡散させる。
爆風が背後へ抜ける中、ジャッジサーキットの金血レンズは、すでに次の「誤り」を探し始めていた。
「再スキャン。『忠義は美徳である』という価値観を検出。無駄な感情。修正しろ」
今度は、無数の細い光線が四方八方から降り注いだ。
理想や希望、信念といった名の「誤り」を、一点の残滓もなく焼き払うための、精密で冷酷な死の雨。
オルフェウスは盾を軸に身体を回転させながら突進する。
光線が盾に当たるたび火花が散り、空気が焼ける匂いが鼻を刺した。
だが、すべては防ぎきれない。肩、脇腹、太腿――掠めた光が肉を抉り、焼けた血が飛び散る。
「ぐっ……!」
痛みを噛み殺しながら、距離を詰める。残り、およそ十メートル。
「三回目のスキャン。『自分より主を優先する』という自己犠牲の概念を検出、最大級の誤り。完全削除を開始」
ジャッジサーキットの胸部装甲が、鈍い音を立てて開く。
その奥から姿を現したのは、ひときわ巨大な金血レンズ。
そこに蓄積されているのは、これまで焼き払ってきた、無数の「理想」の残骸だ。
それらを凝縮し、純粋な否定だけを抽出した、致死の光。
――これを受ければ、盾ごと消し飛ぶ。
オルフェウスは歯を食いしばる。
「誤っているのは、君の方だ!」
残り五メートル。
彼は、盾を捨てた。
きしむ音と共に左腕から外された重盾が、床に激突して転がる。
同時に、彼は両手でその中心、白徽の紋章を掴み、力任せに引き抜いた。
重厚な金属の盾が、空気を切り裂く音と共に形を変える。
折り畳まれ、伸張し、光の刃を形成していく。
純白の外装が剥がれ、その内側から、眩い聖剣が姿を現した。
「白徽警衛団近衛、オルフェウス・マクレイン。金将の名の下に――君を討つ!」
彼は聖剣を振りかぶる。
全身を巡っていた守護の魔力が、一点、刃へと集中した。
同時に、ジャッジサーキットの金血レンズが、最大出力で輝ききる。
「――断罪完了」
宣告と同時に、金色の破壊光が放たれた。
オルフェウスの剣が、同じ瞬間に閃く。
純白の剣閃が、正面から金色の光線へと突き刺さる。
光と光がぶつかり合い、激しく軋み――次の瞬間、剣閃が破壊光を両断した。
切り裂かれた金光が爆ぜた。
暴風のような衝撃波が中央塔を揺さぶり、周囲のガラスが一斉に砕け散る。
破片が雨のように降り注ぎ、床を叩く甲高い音が、遅れて耳に届いた。
視界を覆っていた煙と光の残滓が、徐々に薄れていく。
そこに立っていたのは――
左腕を肩口から失い、全身血まみれになりながらも、なお聖剣を構えるオルフェウス。
そしてその正面で、胸部を真っ二つに斬り裂かれたジャッジサーキットが、金血の結晶を撒き散らしながら崩れ落ちていた。
「誤り……訂正……不能……理想は……不要……だった……はず……」
最後まで執拗に瞬いていた眼球群が、ひとつ、またひとつと光を失っていく。
オルフェウスは、そこでようやく膝をついた。
荒く乱れた息が、血の味を伴って喉を焼く。
「……ッ……」
左腕の喪失による眩暈に抗いながら、彼は血塗れの聖剣を杖代わりにして立ち上がる。
ふらつく足を叱咤し、一歩、また一歩と前へ進んだ。
背後の大理石の壁が、爆発のたびに崩れ落ちる。純白の外套は、すでに煤と硝煙でまだらに汚れていた。
最上階。最後の扉の前で、それは待っていた。
高さ三メートルを超える巨躯。
白金鉄と、血のように濃い金色の結晶で構成された異形。
全身には無数の眼球が埋め込まれ、それらが蠢きながら赤い光を明滅させている。
「断罪スキャナー」が、オルフェウスを捕捉した。
コンデムネイション=ジャッジサーキット。
「――検知。対象物『金将を絶対に守る』という理想を保持。誤りだ。理想は現実の障害。削除対象」
冷たく澄んだ機械音声が、金属質な残響を引き連れて響き渡る。
次の瞬間、スキャナーの中心から、金色の破壊光が迸った。
ズドン――
オルフェウスは咄嗟に左腕の重盾を掲げた。
白銀の盾型紋章が眩く輝き、光線を真正面から受け止める。
直撃の衝撃で床が砕け、膝が一瞬沈む。
「金将は、僕が守る!」
盾に刻まれた聖句が眩い光を放ち、衝撃を四方へ拡散させる。
爆風が背後へ抜ける中、ジャッジサーキットの金血レンズは、すでに次の「誤り」を探し始めていた。
「再スキャン。『忠義は美徳である』という価値観を検出。無駄な感情。修正しろ」
今度は、無数の細い光線が四方八方から降り注いだ。
理想や希望、信念といった名の「誤り」を、一点の残滓もなく焼き払うための、精密で冷酷な死の雨。
オルフェウスは盾を軸に身体を回転させながら突進する。
光線が盾に当たるたび火花が散り、空気が焼ける匂いが鼻を刺した。
だが、すべては防ぎきれない。肩、脇腹、太腿――掠めた光が肉を抉り、焼けた血が飛び散る。
「ぐっ……!」
痛みを噛み殺しながら、距離を詰める。残り、およそ十メートル。
「三回目のスキャン。『自分より主を優先する』という自己犠牲の概念を検出、最大級の誤り。完全削除を開始」
ジャッジサーキットの胸部装甲が、鈍い音を立てて開く。
その奥から姿を現したのは、ひときわ巨大な金血レンズ。
そこに蓄積されているのは、これまで焼き払ってきた、無数の「理想」の残骸だ。
それらを凝縮し、純粋な否定だけを抽出した、致死の光。
――これを受ければ、盾ごと消し飛ぶ。
オルフェウスは歯を食いしばる。
「誤っているのは、君の方だ!」
残り五メートル。
彼は、盾を捨てた。
きしむ音と共に左腕から外された重盾が、床に激突して転がる。
同時に、彼は両手でその中心、白徽の紋章を掴み、力任せに引き抜いた。
重厚な金属の盾が、空気を切り裂く音と共に形を変える。
折り畳まれ、伸張し、光の刃を形成していく。
純白の外装が剥がれ、その内側から、眩い聖剣が姿を現した。
「白徽警衛団近衛、オルフェウス・マクレイン。金将の名の下に――君を討つ!」
彼は聖剣を振りかぶる。
全身を巡っていた守護の魔力が、一点、刃へと集中した。
同時に、ジャッジサーキットの金血レンズが、最大出力で輝ききる。
「――断罪完了」
宣告と同時に、金色の破壊光が放たれた。
オルフェウスの剣が、同じ瞬間に閃く。
純白の剣閃が、正面から金色の光線へと突き刺さる。
光と光がぶつかり合い、激しく軋み――次の瞬間、剣閃が破壊光を両断した。
切り裂かれた金光が爆ぜた。
暴風のような衝撃波が中央塔を揺さぶり、周囲のガラスが一斉に砕け散る。
破片が雨のように降り注ぎ、床を叩く甲高い音が、遅れて耳に届いた。
視界を覆っていた煙と光の残滓が、徐々に薄れていく。
そこに立っていたのは――
左腕を肩口から失い、全身血まみれになりながらも、なお聖剣を構えるオルフェウス。
そしてその正面で、胸部を真っ二つに斬り裂かれたジャッジサーキットが、金血の結晶を撒き散らしながら崩れ落ちていた。
「誤り……訂正……不能……理想は……不要……だった……はず……」
最後まで執拗に瞬いていた眼球群が、ひとつ、またひとつと光を失っていく。
オルフェウスは、そこでようやく膝をついた。
荒く乱れた息が、血の味を伴って喉を焼く。
「……ッ……」
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