カウンセラーアルゼ 短編集

桂圭人

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白磁の静室【閲覧注意】

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星崎陽斗(ほしざき はると)は、スマホの地図アプリを何度も確認しながら、ビルの地下エントランスをくぐった。
「白磁の静室」  
看板は控えめで、普通のオフィスビルに紛れている。  
受付の女性型ホログラムが、柔らかい声で言った。

「星崎様ですね。本日は90分枠、日帰り限定です。終了後は必ずご退室ください。こちらへどうぞ」

陽斗は頷きながら、心の中で呟く。  
(90分で終わるなら、まあいいか……)

個室のドアを開けると、白一色の空間が広がった。  
ベッド、ソファ、簡易シャワー。  
壁も天井も柔らかい白磁のような質感で、甘い香りが微かに漂っている。  
照明は優しく、どこか眠気を誘う。
ドアが静かに閉まった後、アナウンスが部屋に響いた。

「そこでお待ちくださいませ」

陽斗はアナウンスの指示に従い、部屋に壁沿いにあるソファに腰をかけた。
次の瞬間、ドアの向こうからノックがし、陽斗は振り向いた。
すると、ドアが開き、290cmを超える長身の男が現れた。
白い髪、白磁の肌、底なしの白い瞳。  
アルゼ=シャダ。

「お待たせ致しました。ようこそ、白磁の静室へ。僕は貴方のカウンセラー、アルゼです。星崎陽斗さん、ですね」

陽斗はソファに腰を下ろしたまま、喉が少し乾くのを感じた。

「えっと……彼女と、最近上手くいかなくて。連絡が遅いし、俺のことどう思ってるのかわかんなくて……なんか、頭おかしくなりそうで」

アルゼは隣に座り、穏やかに頷く。  

「それは、とても辛いですね。彼女さんへの想い……とても強い熱を感じます。嫉妬も、欲求も、全部……お聴きしますよ」

陽斗は最初、言葉を詰まらせながら話した。  
彼女の笑顔、最近の冷たい態度、夜中に想像してしまうこと。  
話すたびに、胸の奥の熱が膨らんでいく。  
アルゼの瞳の奥で、赤い星核が静かに脈打つ。

「素晴らしい……貴方の恋心、とても熱いです。抑えきれない衝動も、全部……はぁ……僕に預けてみませんか?」

アルゼの手が、陽斗の肩に置かれる。  
触れた瞬間、体温が急に上がった。  
アルゼの声が、低く甘くなる。

「安心してください。これはカウンセリングの一環です。貴方の熱い部分を、僕が全部受け止めます……んっ……溶かして、一つになって……」

陽斗の服が、ゆっくりと脱がされていく。  
アルゼの白い手が胸を、腹を、腿をなぞる。  
抵抗する気力は、すでに溶けていた。  
アルゼは陽斗をベッドに押し倒し、覆い被さる。

「彼女さんへの想い……全部、僕の中に注いでください……はぁ……射精の瞬間、全部受け止めますよ……」

アルゼの体が動き出す。  
優しく、しかし確実に。  
陽斗の体が震え、嫉妬と欲求が快楽に塗り替えられる。  
絶頂が近づくたび、アルゼの瞳が輝く。  
赤い星核が、爆発的に脈打つ。

「あ……っ……!」

陽斗の体がびくりと跳ね、すべてが吸い取られる。  
恋情の熱が、赤い光の糸となってアルゼの体に流れ込む。  
アルゼは満足げに吐息を漏らし、ゆっくりと体を離した。

「素晴らしいセッションでした。貴方は今、とてもスッキリした気分でしょう? 彼女さんへの想いも、少し落ち着きましたね」

陽斗はぼんやりと天井を見上げた。  
確かに、胸の重さが軽くなっている。  
でも、同時に……
「また来たい」という、強い衝動が残っていた。
90分の合図で照明が明るくなり、ドアが開く。  
アルゼは穏やかに微笑む。

「また、熱が溜まったら来てくださいね。いつでも、お待ちしています」

陽斗はフラフラしながら部屋を出た。  
エレベーターの中で、スマホを取り出す。  
彼女からの未読メッセージが、1件増えていた。
でも、今は……
なぜか、すぐに返信する気になれなかった。
虚空の監視室で、ヴェルムはくすりと笑う。  

「男の赤も、なかなか燃えるな。アルゼ、次はもっと呼べ。日帰りで、何度も、何度も……」

白磁の静室のドアは、静かに閉まった。  
次の予約を待つように。
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