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ケプラーVS白眼班
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星理王国の遺跡深部。
崩れかけた天文台のドームの下、月光が差し込む円形の大広間で、ケプラーは静かに立っていた。白い髪は星屑のように淡く輝き、瞳の奥では無数の銀河が緩やかに回転している。彼の周囲を淡い光の《軌道環》が浮遊し、床に刻まれた古の星図を幽かに照らし出していた。
「うわ、出たわ……マジでおった。UMA」(想像を絶する程の気持ちの悪さに脱帽ですわぁ……)
冷たい声が、空間を切り裂く。
入口から三つの影が現れた。特務情報部《白眼班》――規則違反者を狩る、組織最恐の執行部隊。
先頭に立つのは班長アルジーヌ。黒い制服のコートを翻し、腰に下げたチェーンソー型白銀太刀《アラゴン》を軽く鳴らしながら歩み寄る。表情は氷のように硬く、瞳には一切の感情がない。
「ケプラー。君が《星の盟約》を破ろうとしているのは確認済みだ。十二宮体制を崩壊させ、人間の自由意志を星の軌道に固定する……そんな重大な規則違反を、見過ごすわけにはいかない」
アルジーヌの背後で、ユディットが無表情に端末を操作する。
画面にはケプラーの行動履歴と、複雑に分岐する予測軌道。
「解析完了。対象の行動は99.8%の確率で《永遠の天球儀》起動に収束。感情変動ゼロ。抵抗予測値――極めて高い」(未確認生物を発見…マジでいたわ……)
最後に、ラハイア=シャルルが一歩前へ出た。
巨躯に似合わぬ静かな足取り。チェーンソー型白銀大剣《エティエンヌ》を肩に担ぎ、短く言い切る。
「尋問は不要だ。始末する」(まず、話出来ないから殺す)
ケプラーはゆっくりと振り返った。
声は低く、静かで、遠い星のささやきのように響く。
「君たちは……秩序の執行者か。しかし、君たちが守るその『自由』こそが、宇宙最大のノイズだ」
腕の《軌道環》が輝きを増す。
大広間が微かに震え、床の星図が光の線となって浮かび上がった。
「人間の感情、偶然、選択――それらはすべて、完璧な天球の運行を乱す不確定性だ。僕はそれを排除する。すべてを、決定された軌道に戻すだけだ」
アルジーヌが薄く笑う。
獲物を追い詰めた捕食者の、冷酷で愉しげな笑み。
「綺麗な理想だ。でも残念だよ、ケプラー。君の計画は、組織の規則に違反している。だから――僕たちは違反者を、許さない」
一瞬の静寂。
最初に動いたのはラハイアだった。
《エティエンヌ》が唸りを上げ、白銀の軌跡を描いてケプラーへ振り下ろされる。
だが、刃は空を切った。
ケプラーの身体が、わずかに歪むように位置を変えていた。
最初から、そうなると知っていたかのように。
《軌道の強制》
低い呟きと同時に、大剣の軌跡が強引に曲げられる。ラハイアは体勢を崩し、次の瞬間、床から噴き出した星光が彼の足を絡め取った。
《楕円の呪縛》
「ぐっ……!」
ユディットが即座に叫ぶ。
「班長! 対象、法則系拘束術を使用! 脱出確率12%!」
アルジーヌは眉一つ動かさない。
護身用の白銀ナイフ《アンジュ》を抜き、淡々と前進する。
「十分だ。道は僕が切り開く」
《アラゴン》が起動する。
チェーンソーの咆哮が大広間を震わせ、白銀の刃が星光を裂きながらケプラーに迫った。
ケプラーの瞳が、星のように輝く。
「星位予測――最も秩序的な未来を選択」
無数の光の軌道が周囲に展開され、アルジーヌの斬撃はすべて、わずかに外れる。刃は法衣をかすめるのみ。最初から、当たる運命ではなかったかのように。
「無駄だ。君たちの行動は、すでに僕の天球儀に記録されている」
ケプラーが手を掲げる。
天井が軋みながら開き、巨大な《運命の天球儀》が実体化した。無数の星図が回転し、白眼班の三人を包む光の網が降り注ぐ。
「これで終わりだ。君たちの生涯も、星の軌道に従うがいい」
――だが。
アルジーヌが、初めてはっきりと笑った。
冷酷で、残酷で、どこか楽しげに。
「悪いね、ケプラー。君の計算には、致命的な誤算がある」
懐から取り出されたのは、小型の密告端末。
白眼班が独自に設計した、規則違反者を即時通報し、位置と存在を固定する魔導具だ。
「僕たちは違反者狩りの専門家だ。君みたいな“予測不能”は、最初から想定済みなんだよ」
端末が起動する。
ケプラーの周囲に組織の転送陣が強制展開され、星の光が歪む。天球儀の回転が、ほんのわずかに乱れた。
ユディットが冷然と告げる。
「内部統制完了。対象の魔力流出経路を遮断。残り稼働時間――三分」
ラハイアが呪縛を力ずくで引きちぎり、大剣を振り上げる。
「終わりだ」
ケプラーの表情が、初めて揺れた。
感情のない瞳に、微かな――驚嘆。
「なるほど……君たちは、僕の秩序を、秩序で狩るのか」
アルジーヌの《アラゴン》が、ついにケプラーの軌道を捉える。
白銀のチェーンソーが星の法衣を切り裂き、血のような星屑が舞った。
「秩序とは、哀しみをも計算することだったな」
アルジーヌが囁く。
「でも僕たちは違う。哀しみすら計算しない。ただ――規則を守るだけだ」
大広間に、白銀の刃と星の光が交錯する。
永遠の天球は、今日も《白眼》によって監視される。
乱れぬ秩序は、また別の形で――静かに、続いていく。
翌日、ケプラーは処刑されました。
「ヒトパピローマウイルス似」――アルジーヌ
「キモイ=ワ=シンデ似」――ユディット
「キモイ」――ラハイア
「全員、オジェのあだ名言ってる」――ダビデ
崩れかけた天文台のドームの下、月光が差し込む円形の大広間で、ケプラーは静かに立っていた。白い髪は星屑のように淡く輝き、瞳の奥では無数の銀河が緩やかに回転している。彼の周囲を淡い光の《軌道環》が浮遊し、床に刻まれた古の星図を幽かに照らし出していた。
「うわ、出たわ……マジでおった。UMA」(想像を絶する程の気持ちの悪さに脱帽ですわぁ……)
冷たい声が、空間を切り裂く。
入口から三つの影が現れた。特務情報部《白眼班》――規則違反者を狩る、組織最恐の執行部隊。
先頭に立つのは班長アルジーヌ。黒い制服のコートを翻し、腰に下げたチェーンソー型白銀太刀《アラゴン》を軽く鳴らしながら歩み寄る。表情は氷のように硬く、瞳には一切の感情がない。
「ケプラー。君が《星の盟約》を破ろうとしているのは確認済みだ。十二宮体制を崩壊させ、人間の自由意志を星の軌道に固定する……そんな重大な規則違反を、見過ごすわけにはいかない」
アルジーヌの背後で、ユディットが無表情に端末を操作する。
画面にはケプラーの行動履歴と、複雑に分岐する予測軌道。
「解析完了。対象の行動は99.8%の確率で《永遠の天球儀》起動に収束。感情変動ゼロ。抵抗予測値――極めて高い」(未確認生物を発見…マジでいたわ……)
最後に、ラハイア=シャルルが一歩前へ出た。
巨躯に似合わぬ静かな足取り。チェーンソー型白銀大剣《エティエンヌ》を肩に担ぎ、短く言い切る。
「尋問は不要だ。始末する」(まず、話出来ないから殺す)
ケプラーはゆっくりと振り返った。
声は低く、静かで、遠い星のささやきのように響く。
「君たちは……秩序の執行者か。しかし、君たちが守るその『自由』こそが、宇宙最大のノイズだ」
腕の《軌道環》が輝きを増す。
大広間が微かに震え、床の星図が光の線となって浮かび上がった。
「人間の感情、偶然、選択――それらはすべて、完璧な天球の運行を乱す不確定性だ。僕はそれを排除する。すべてを、決定された軌道に戻すだけだ」
アルジーヌが薄く笑う。
獲物を追い詰めた捕食者の、冷酷で愉しげな笑み。
「綺麗な理想だ。でも残念だよ、ケプラー。君の計画は、組織の規則に違反している。だから――僕たちは違反者を、許さない」
一瞬の静寂。
最初に動いたのはラハイアだった。
《エティエンヌ》が唸りを上げ、白銀の軌跡を描いてケプラーへ振り下ろされる。
だが、刃は空を切った。
ケプラーの身体が、わずかに歪むように位置を変えていた。
最初から、そうなると知っていたかのように。
《軌道の強制》
低い呟きと同時に、大剣の軌跡が強引に曲げられる。ラハイアは体勢を崩し、次の瞬間、床から噴き出した星光が彼の足を絡め取った。
《楕円の呪縛》
「ぐっ……!」
ユディットが即座に叫ぶ。
「班長! 対象、法則系拘束術を使用! 脱出確率12%!」
アルジーヌは眉一つ動かさない。
護身用の白銀ナイフ《アンジュ》を抜き、淡々と前進する。
「十分だ。道は僕が切り開く」
《アラゴン》が起動する。
チェーンソーの咆哮が大広間を震わせ、白銀の刃が星光を裂きながらケプラーに迫った。
ケプラーの瞳が、星のように輝く。
「星位予測――最も秩序的な未来を選択」
無数の光の軌道が周囲に展開され、アルジーヌの斬撃はすべて、わずかに外れる。刃は法衣をかすめるのみ。最初から、当たる運命ではなかったかのように。
「無駄だ。君たちの行動は、すでに僕の天球儀に記録されている」
ケプラーが手を掲げる。
天井が軋みながら開き、巨大な《運命の天球儀》が実体化した。無数の星図が回転し、白眼班の三人を包む光の網が降り注ぐ。
「これで終わりだ。君たちの生涯も、星の軌道に従うがいい」
――だが。
アルジーヌが、初めてはっきりと笑った。
冷酷で、残酷で、どこか楽しげに。
「悪いね、ケプラー。君の計算には、致命的な誤算がある」
懐から取り出されたのは、小型の密告端末。
白眼班が独自に設計した、規則違反者を即時通報し、位置と存在を固定する魔導具だ。
「僕たちは違反者狩りの専門家だ。君みたいな“予測不能”は、最初から想定済みなんだよ」
端末が起動する。
ケプラーの周囲に組織の転送陣が強制展開され、星の光が歪む。天球儀の回転が、ほんのわずかに乱れた。
ユディットが冷然と告げる。
「内部統制完了。対象の魔力流出経路を遮断。残り稼働時間――三分」
ラハイアが呪縛を力ずくで引きちぎり、大剣を振り上げる。
「終わりだ」
ケプラーの表情が、初めて揺れた。
感情のない瞳に、微かな――驚嘆。
「なるほど……君たちは、僕の秩序を、秩序で狩るのか」
アルジーヌの《アラゴン》が、ついにケプラーの軌道を捉える。
白銀のチェーンソーが星の法衣を切り裂き、血のような星屑が舞った。
「秩序とは、哀しみをも計算することだったな」
アルジーヌが囁く。
「でも僕たちは違う。哀しみすら計算しない。ただ――規則を守るだけだ」
大広間に、白銀の刃と星の光が交錯する。
永遠の天球は、今日も《白眼》によって監視される。
乱れぬ秩序は、また別の形で――静かに、続いていく。
翌日、ケプラーは処刑されました。
「ヒトパピローマウイルス似」――アルジーヌ
「キモイ=ワ=シンデ似」――ユディット
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「全員、オジェのあだ名言ってる」――ダビデ
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