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ケプラーVSシェリダー
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雪原の果てに、崩れかけた古い天文台が佇んでいた。
吹き荒れる風が雪を巻き上げ、世界は次第に純白へと塗り潰されていく。
その中心に立つのは、銀の鎧を纏った男――シェリダー。
純白秩序局の銀警官。腰に帯びた聖剣《セラフィエル》が、冷えた空気の中で低く鳴った。
対するは、金血白者の古き支配者、ケプラー。
深紺の法衣を翻し、腕に浮かぶ軌道環が淡く輝く。白い髪が雪と同化し、瞳の奥では無数の星が静かに巡っていた。
「異端者よ」
シェリダーの声は氷のように澄み、感情を完全に遮断している。
「君の存在そのものが汚れだ。白ならざるものは、この世界に在る資格を持たぬ」
ケプラーはわずかに首を傾げた。
星を観測するかのように、淡々と。
「汚れ、か。興味深い概念だ。だが君の言う『白』とは何だ? 色彩の欠如か――それとも、感情の欠如か」
シェリダーの眉が微かに動く。
「白とは純粋。秩序。揺らぎなき絶対だ。君の星図のような不確定性こそが、汚染の源」
一歩、踏み出した瞬間。
雪原がさらに白く輝き、ケプラーの法衣の深紺がわずかに色褪せた。
純白秩序――
領域内において「白以外」を排除する絶対的な権能が、静かに起動していた。
ケプラーは動じない。
軌道環が回転を速め、星光が防壁のように渦を巻く。
「純粋とは停滞だ。宇宙は動き、変化し、軌道を描く。君の白は――死に近い」
「黙れ」
シェリダーが剣を抜いた。
《セラフィエル》が聖光を放ち、雪を切り裂く。一直線の剣閃が、ケプラーへと迫る。
だが――刃は途中で不自然に曲がった。
ケプラーが手を上げていた。
「軌道の強制」。あらゆる事象を、定められた未来へ引き戻す力。
剣は湾曲し、主であるシェリダーの胸元へと戻ってくる。
彼は咄嗟に身を捻り、白銀の鎧に浅い傷を刻まれながらも回避した。
「……貴様」
声に、初めて怒りが滲む。
純白の領域がさらに拡張し、雪も空も廃墟も、完全な白へと染まり始めた。星の輝きは弱まり、軌道環の回転が鈍る。
その中で、ケプラーが静かに告げる。
「君は知っているはずだ。自分の血が、純白ではないことを」
その一言が、シェリダーの動きを止めた。
胸の奥に封じていた真実。
――銀警官は、異端の血を引いている。
一瞬の沈黙。
次の瞬間、シェリダーは叫んだ。
「汚ぇから――消えやがれええええええええええええええええええええええ!!」
理性ではなく、本能と怒り。
純白秩序が限界を超えて解放される。
世界は完全な白に沈み、星の文様は消え、軌道環が停止する。
ケプラーの姿は、雪と光の中に溶けていった。
「……秩序とは、哀しみをも――」
最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。
純白の光が、星そのものを塗り潰す。
やがて、吹雪が収まる。
そこには、剣を地に突き立て、荒く息を吐くシェリダーだけが立っていた。
天文台の廃墟は、完全な白に覆われ、星の痕跡はどこにも残っていない。
純白の剣は、星の法則を断ち切った。
雪は降り続ける。
すべてを隠し、すべてを清めるかのように――。
翌日、ケプラーの遺体が純白秩序局専属の不純物回収車に回収されました。
吹き荒れる風が雪を巻き上げ、世界は次第に純白へと塗り潰されていく。
その中心に立つのは、銀の鎧を纏った男――シェリダー。
純白秩序局の銀警官。腰に帯びた聖剣《セラフィエル》が、冷えた空気の中で低く鳴った。
対するは、金血白者の古き支配者、ケプラー。
深紺の法衣を翻し、腕に浮かぶ軌道環が淡く輝く。白い髪が雪と同化し、瞳の奥では無数の星が静かに巡っていた。
「異端者よ」
シェリダーの声は氷のように澄み、感情を完全に遮断している。
「君の存在そのものが汚れだ。白ならざるものは、この世界に在る資格を持たぬ」
ケプラーはわずかに首を傾げた。
星を観測するかのように、淡々と。
「汚れ、か。興味深い概念だ。だが君の言う『白』とは何だ? 色彩の欠如か――それとも、感情の欠如か」
シェリダーの眉が微かに動く。
「白とは純粋。秩序。揺らぎなき絶対だ。君の星図のような不確定性こそが、汚染の源」
一歩、踏み出した瞬間。
雪原がさらに白く輝き、ケプラーの法衣の深紺がわずかに色褪せた。
純白秩序――
領域内において「白以外」を排除する絶対的な権能が、静かに起動していた。
ケプラーは動じない。
軌道環が回転を速め、星光が防壁のように渦を巻く。
「純粋とは停滞だ。宇宙は動き、変化し、軌道を描く。君の白は――死に近い」
「黙れ」
シェリダーが剣を抜いた。
《セラフィエル》が聖光を放ち、雪を切り裂く。一直線の剣閃が、ケプラーへと迫る。
だが――刃は途中で不自然に曲がった。
ケプラーが手を上げていた。
「軌道の強制」。あらゆる事象を、定められた未来へ引き戻す力。
剣は湾曲し、主であるシェリダーの胸元へと戻ってくる。
彼は咄嗟に身を捻り、白銀の鎧に浅い傷を刻まれながらも回避した。
「……貴様」
声に、初めて怒りが滲む。
純白の領域がさらに拡張し、雪も空も廃墟も、完全な白へと染まり始めた。星の輝きは弱まり、軌道環の回転が鈍る。
その中で、ケプラーが静かに告げる。
「君は知っているはずだ。自分の血が、純白ではないことを」
その一言が、シェリダーの動きを止めた。
胸の奥に封じていた真実。
――銀警官は、異端の血を引いている。
一瞬の沈黙。
次の瞬間、シェリダーは叫んだ。
「汚ぇから――消えやがれええええええええええええええええええええええ!!」
理性ではなく、本能と怒り。
純白秩序が限界を超えて解放される。
世界は完全な白に沈み、星の文様は消え、軌道環が停止する。
ケプラーの姿は、雪と光の中に溶けていった。
「……秩序とは、哀しみをも――」
最後まで言葉を紡ぐことはできなかった。
純白の光が、星そのものを塗り潰す。
やがて、吹雪が収まる。
そこには、剣を地に突き立て、荒く息を吐くシェリダーだけが立っていた。
天文台の廃墟は、完全な白に覆われ、星の痕跡はどこにも残っていない。
純白の剣は、星の法則を断ち切った。
雪は降り続ける。
すべてを隠し、すべてを清めるかのように――。
翌日、ケプラーの遺体が純白秩序局専属の不純物回収車に回収されました。
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