ケプラー特集

桂圭人

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ケプラーVSガーレブ

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荒野の戦場は、夕暮れの陽光に血のような赤で染まっていた。風が砂塵を巻き上げる中、巨大な斧を肩に担いだ男が立つ。ガーレブだ。
乱れた白い短髪が風に踊り、白眼は剥き出しの闘志で燃えている。腰に巻いたジャケットが激しくはためき、胸の金の紋章からは眩い光と煙が噴き上がっていた。

「出やがったな……金玉の支配者なぁ!!!!」

怒声が荒野を震わせる。その先に立つのは、長身の男――ケプラー。白い髪は無風の中でも微動だにせず、瞳の奥には無数の星々が静かに瞬いていた。肌に刻まれた金の星図が淡く輝き、深紺の法衣は夜空そのもののように揺らぐ。両腕に浮かぶ軌道環が、ゆっくりと回転を始めた。

ケプラーは淡々とガーレブを見据える。感情を排した低い声が、冷えた空気のように響いた。

「ガーレブか。総司令官と呼ばれる者よ。君の軌道は既に計算済みだ。力こそすべて――そう信じる魂もまた、星の運行から逃れられぬ」

「ふざけんなぁ!!!! 訳わかんねぇこと言うなぁ!!!!!」

ガーレブは大斧を地面に叩きつける。衝撃で土が爆ぜ、砂塵が舞い上がった。

「力こそ正義だ! テメェの冷たい理屈なんざ、僕の斧でぶち壊してやる! 僕らは自由に生きて、自由に戦うんだよ! 『完璧な秩序』? クソくらえだ!」

ケプラーの瞳で星々が明滅する。彼は静かに手を上げた。虚空に巨大な天球儀の幻影が現れ、無数の光の軌跡がガーレブを包み込む。

「愚かだ。人間の感情はノイズに過ぎぬ。偶然、自由、激情――それらは宇宙の法則を乱すだけだ。君の信じる『力』も、予測可能な軌道上の一点に過ぎない」

軌道の強制が発動する。ガーレブの身体が一瞬硬直し、足元に金色の楕円軌跡が浮かび上がった。惑星のように、彼の動きを円環へと閉じ込めようとする。

「がっ……クソッ……!」

筋肉が隆起し、紋章の光が爆発的に輝く。ガーレブは吼えた。

「うぜぇわぁ!!!!」

大斧を振り上げ、地面を蹴る。宙に舞ったガーレブは、斧で空気を踏み、さらに高く跳躍した。そして歌い出す。荒々しく、魂を叩きつける戦いの歌を。

「轟け雷よ! 裂け大地よ! 僕の力は誰にも止められねぇ!」

歌声が力へと変わり、大斧の一撃が軌道を粉砕する。金の楕円は砕け散り、ケプラーの法衣がわずかに揺れた。

ケプラーの表情は変わらない。だが声には、かすかな圧が宿る。

「興味深い。君は確かに予測を超える変数だ。だが、それすら秩序の一部。星位予測により、最も完全な結果を選択する。君はここで敗れ、運命の天球儀に記録される。それが宇宙の理だ」

「うるせぇ!!!! 黙れ!!!!」

ガーレブが怒号を叩きつける。

「僕は仲間と戦って、勝利を掴む男だ! 貴様の冷たい世界じゃ、誰も笑えねぇ! 誰も泣けねぇ! そんなもんが正しいわけねぇだろ!」

ガーレブは大突進する。大斧が唸りを上げ、ケプラーへと振り下ろされる。ケプラーは指先をわずかに動かし、運命の天球儀を展開。斧の軌道はわずかに逸れ、地面を深く抉った。

「秩序とは、哀しみすら計算することだ。ガーレブ。君の激情も、いずれ星の軌道に収まる」

「くたばれ!!!! クソ野郎ォ!!!!」

戦いは激しさを増す。一方は剥き出しの力と熱い魂、もう一方は冷徹な法則と永遠の計算。荒野には斧の咆哮と星の沈黙が交錯し、決着はまだ見えない。
それでも、ガーレブの白眼が揺らぐことはなかった。
力こそすべて――その信条が、彼を前へ、前へと突き動かす。

「とっととあの世へ行けやゴラァ!!!!!!」

一世一代の怒号が、赤い空へと突き抜けた。

――翌日、ゴミ収集車がケプラーの遺体を回収していた。
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