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第五章 崩壊の残響、その先に
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カナタは研究部門への異動を断った。代わりに、ガルマの正式なアシスタントとなった。
組織は反発したが、ガルマが「誅罰の輪」をちらつかせれば、誰も逆らえなかった。かつては支配の道具だった力が、今は彼女を守る盾となった。
そして三月後のある夜──
地下書庫で、二人は中世の星図を分析していた。カナタが難しいラテン語の一節を読み上げ、ガルマがそれに補足を加える。かつてなら考えられないほど平和な時間が流れていた。
「ガルマさん」
突然、カナタが声をひそめた。
「なんだい?」
「ずっと気になってたんですが……」
彼女はそっと立ち上がり、彼のデスクの向こう側に回り込んだ。ガルマは警戒して身を引こうとしたが、彼女の手が彼の頬に触れた。
「この白色の瞳、本当に見えてるんですか?」
「…馬鹿な質問をするな」
「だって、今、私がこうしても」
彼女の顔が急に近づいた。
「反応が薄いから」
次の瞬間、彼女の唇が彼の唇に触れた。
ガルマ=ガレクトの世界が、文字通り崩壊した。
ドキドキする
彼の胸の中で、未知の臓器が暴れ始めた。
キュンキュンする
指先のリングが、初めて制御不能に震えた。
苦しい
息ができない。酸素が肺に入ってこない。
息が出来ないほど苦しい
彼は長年、感情を嗤い、支配を純粋な理解の形態と信じてきた。だがこの感覚は、すべての理論を粉砕する。
甘くて
彼女の唇の感触が、彼の唇に残る。
ほろ苦い
これが、自分が十年間否定し続けてきた「人間」の感覚か。
好きだ
大好きだ
彼は思わず彼女を引き寄せ、二度目、三度目のキスを求めた。かつて「誅罰の輪」で世界を歪めていた手が、今は彼女の背中を優しく撫でている。
「ガルマ…さん……?」
離れた唇から、カナタが驚いたように息を弾ませた。
彼は自分の耳から、常備していた「崩壊の残響を思わせるイヤホン」を外し、床に落とした。金属音が空洞に響く。
「…もう、いらない」
彼は嗄れた声で言った。
「君の声が、それ以上に美しいから」
組織は反発したが、ガルマが「誅罰の輪」をちらつかせれば、誰も逆らえなかった。かつては支配の道具だった力が、今は彼女を守る盾となった。
そして三月後のある夜──
地下書庫で、二人は中世の星図を分析していた。カナタが難しいラテン語の一節を読み上げ、ガルマがそれに補足を加える。かつてなら考えられないほど平和な時間が流れていた。
「ガルマさん」
突然、カナタが声をひそめた。
「なんだい?」
「ずっと気になってたんですが……」
彼女はそっと立ち上がり、彼のデスクの向こう側に回り込んだ。ガルマは警戒して身を引こうとしたが、彼女の手が彼の頬に触れた。
「この白色の瞳、本当に見えてるんですか?」
「…馬鹿な質問をするな」
「だって、今、私がこうしても」
彼女の顔が急に近づいた。
「反応が薄いから」
次の瞬間、彼女の唇が彼の唇に触れた。
ガルマ=ガレクトの世界が、文字通り崩壊した。
ドキドキする
彼の胸の中で、未知の臓器が暴れ始めた。
キュンキュンする
指先のリングが、初めて制御不能に震えた。
苦しい
息ができない。酸素が肺に入ってこない。
息が出来ないほど苦しい
彼は長年、感情を嗤い、支配を純粋な理解の形態と信じてきた。だがこの感覚は、すべての理論を粉砕する。
甘くて
彼女の唇の感触が、彼の唇に残る。
ほろ苦い
これが、自分が十年間否定し続けてきた「人間」の感覚か。
好きだ
大好きだ
彼は思わず彼女を引き寄せ、二度目、三度目のキスを求めた。かつて「誅罰の輪」で世界を歪めていた手が、今は彼女の背中を優しく撫でている。
「ガルマ…さん……?」
離れた唇から、カナタが驚いたように息を弾ませた。
彼は自分の耳から、常備していた「崩壊の残響を思わせるイヤホン」を外し、床に落とした。金属音が空洞に響く。
「…もう、いらない」
彼は嗄れた声で言った。
「君の声が、それ以上に美しいから」
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