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4 高林との接触
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新学年が始まってあっという間に二週間が過ぎた。そわついた空気は無くなり、俺含め周囲は新しい環境に馴染んできた。
颯太との会話でツッコミの腕を上げつつ、たまにこっちのクラスに遊びにくる北斗と義和とふざけたり、新しく知り合った奴らと笑いあったり、予想していた通りの楽しい日々を送っている。
ちなみに、高林に一方的に仲間意識みたいなものを持ちつつも、特に自分から関わるようなことはしていない。
というか、休み時間になるたび高林は教室を出て行ってしまうので、そもそも話しかけるタイミングがない。
わかる、わかるぞ高林。賑やかなクラスに一人でいるの、いたたまれないよな。周りは楽しそうにしているのに、そこに自分は加わることができず、羨ましいやら悲しいやらで惨めな気持ちになるよな。
前世の俺も同じだった。授業が終わるたびにそそくさと教室から出て、人がいないところでじっと時間が過ぎるのを待っていた。春はいいよな、暖かいし、花が咲いているから少しは気持ちが癒されるよな。冬はきついよな。寒いし虫すらいねぇんだ。ぼっちを痛感してまじで生きてる意味を見失うくらい辛いよな。
「おい、何むずかしい顔して頷いてんだよ裕也」
「いやだから、宇宙の真理について考えてたんだよ」
「いつまでそれ引っ張るんだよ。引っ張ってもつまんねぇのは変わんねぇぞ」
またやってしまった。高林のことを考えるとついついトリップしてしまう。今の自分とは全然違うけれど、俺は前世の辛さも自分で体験したみたいに知っている。
だから、どうしても高林が気になってしまうのだ。この前もクラスの委員長に声をかけられているのに何も返事ができていないところを見た。反応のない高林にイラついた様子だった委員長。俺はそれを見ながらハラハラしていた。
そうだよな、急に話しかけられて驚いてフリーズしてるんだよな。頭が真っ白で口も動かないよな。そんでそうしているうちに時間が経って、相手がイライラしている感じはなんとなく伝わってきて、更にフリーズするんだよな。
でも、俺はそこに割って入ったりはしなかった。
フォローしたところで、きっと高林はそれに反応することもできないだろう。そうしたら、今度はフォローされているのにそれすら無視するのか、と思われること必至。なんでわかるかって、経験者だからだ、前世の俺が。
せっかく優しい人が気を使ってくれてもお礼すらまともに言えないんだ。陰キャだけじゃなく、失礼なやつ、という称号まで得てしまう。下手に口を出すのは逆効果なのだ。
だから、気にはしつつも、高林と積極的に関わろうとはしていなかった。それに、前世の俺って、多分今の俺みたいなタイプは苦手だろうしな。
「あ、そーだ、裕也午後イチ体育だろ? 辞書貸してくんね?」
「ん? ああいいけど。変な検索履歴残すなよ」
北斗に電子辞書を貸しながら、そういや今日の体育はなんだっけか、と考える。ちょうどこの前体力測定が終わったんだよな。
「そんじゃ、出席番号前後でペアになってキャッチボール始めてくれ」
教師のその言葉に、俺はひゅっと息を飲む。こんなことがあろうとは。
出席確認のために出席番号順に並べさせられたと思ったら、今日からソフトボールだと言われ、続いてさっきの発言だ。
出席番号順に数えると、俺とペアになるのは……。
「高林がペアか。よろしくな」
俺はなんでもない顔を心がけて挨拶をしたが、やっぱり高林からは返事がない。
キョドキョドとした様子で、浅くペコペコとお辞儀をしている。
ああ、そうだよな、それが精一杯なんだよな。
俺はそんな高林を気にした風もなく、じゃあやるか、と言ってから距離をとってボールを投げた。
「あ」
まあ、取れないよな。
取りやすいところに投げたつもりだが、見事に落とす高林。
運動神経が繋がってないとこまで前世の俺と一緒だなあと感動すら覚えた。
申し訳ないと思ったのか、更にキョドキョドし始めた高林に気にすんなー、と声をかける。
「次はもうちょいゆっくり投げるなー」
そう言うと、少しホッとしたような空気を感じた。
そうだよ、お前のペースでいいんだ高林。俺は、お前にイラついたりしねぇからな。
もはや父性のようなものが芽生えているなと思いながら、ゆったりと高林のペースに合わせてキャッチボールをした。
最後まで会話はなかったが、心なしか高林の俺に対する空気が柔らかくなったような気がした。
颯太との会話でツッコミの腕を上げつつ、たまにこっちのクラスに遊びにくる北斗と義和とふざけたり、新しく知り合った奴らと笑いあったり、予想していた通りの楽しい日々を送っている。
ちなみに、高林に一方的に仲間意識みたいなものを持ちつつも、特に自分から関わるようなことはしていない。
というか、休み時間になるたび高林は教室を出て行ってしまうので、そもそも話しかけるタイミングがない。
わかる、わかるぞ高林。賑やかなクラスに一人でいるの、いたたまれないよな。周りは楽しそうにしているのに、そこに自分は加わることができず、羨ましいやら悲しいやらで惨めな気持ちになるよな。
前世の俺も同じだった。授業が終わるたびにそそくさと教室から出て、人がいないところでじっと時間が過ぎるのを待っていた。春はいいよな、暖かいし、花が咲いているから少しは気持ちが癒されるよな。冬はきついよな。寒いし虫すらいねぇんだ。ぼっちを痛感してまじで生きてる意味を見失うくらい辛いよな。
「おい、何むずかしい顔して頷いてんだよ裕也」
「いやだから、宇宙の真理について考えてたんだよ」
「いつまでそれ引っ張るんだよ。引っ張ってもつまんねぇのは変わんねぇぞ」
またやってしまった。高林のことを考えるとついついトリップしてしまう。今の自分とは全然違うけれど、俺は前世の辛さも自分で体験したみたいに知っている。
だから、どうしても高林が気になってしまうのだ。この前もクラスの委員長に声をかけられているのに何も返事ができていないところを見た。反応のない高林にイラついた様子だった委員長。俺はそれを見ながらハラハラしていた。
そうだよな、急に話しかけられて驚いてフリーズしてるんだよな。頭が真っ白で口も動かないよな。そんでそうしているうちに時間が経って、相手がイライラしている感じはなんとなく伝わってきて、更にフリーズするんだよな。
でも、俺はそこに割って入ったりはしなかった。
フォローしたところで、きっと高林はそれに反応することもできないだろう。そうしたら、今度はフォローされているのにそれすら無視するのか、と思われること必至。なんでわかるかって、経験者だからだ、前世の俺が。
せっかく優しい人が気を使ってくれてもお礼すらまともに言えないんだ。陰キャだけじゃなく、失礼なやつ、という称号まで得てしまう。下手に口を出すのは逆効果なのだ。
だから、気にはしつつも、高林と積極的に関わろうとはしていなかった。それに、前世の俺って、多分今の俺みたいなタイプは苦手だろうしな。
「あ、そーだ、裕也午後イチ体育だろ? 辞書貸してくんね?」
「ん? ああいいけど。変な検索履歴残すなよ」
北斗に電子辞書を貸しながら、そういや今日の体育はなんだっけか、と考える。ちょうどこの前体力測定が終わったんだよな。
「そんじゃ、出席番号前後でペアになってキャッチボール始めてくれ」
教師のその言葉に、俺はひゅっと息を飲む。こんなことがあろうとは。
出席確認のために出席番号順に並べさせられたと思ったら、今日からソフトボールだと言われ、続いてさっきの発言だ。
出席番号順に数えると、俺とペアになるのは……。
「高林がペアか。よろしくな」
俺はなんでもない顔を心がけて挨拶をしたが、やっぱり高林からは返事がない。
キョドキョドとした様子で、浅くペコペコとお辞儀をしている。
ああ、そうだよな、それが精一杯なんだよな。
俺はそんな高林を気にした風もなく、じゃあやるか、と言ってから距離をとってボールを投げた。
「あ」
まあ、取れないよな。
取りやすいところに投げたつもりだが、見事に落とす高林。
運動神経が繋がってないとこまで前世の俺と一緒だなあと感動すら覚えた。
申し訳ないと思ったのか、更にキョドキョドし始めた高林に気にすんなー、と声をかける。
「次はもうちょいゆっくり投げるなー」
そう言うと、少しホッとしたような空気を感じた。
そうだよ、お前のペースでいいんだ高林。俺は、お前にイラついたりしねぇからな。
もはや父性のようなものが芽生えているなと思いながら、ゆったりと高林のペースに合わせてキャッチボールをした。
最後まで会話はなかったが、心なしか高林の俺に対する空気が柔らかくなったような気がした。
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