前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

文字の大きさ
4 / 38

4 高林との接触

しおりを挟む
 新学年が始まってあっという間に二週間が過ぎた。そわついた空気は無くなり、俺含め周囲は新しい環境に馴染んできた。
 颯太との会話でツッコミの腕を上げつつ、たまにこっちのクラスに遊びにくる北斗と義和とふざけたり、新しく知り合った奴らと笑いあったり、予想していた通りの楽しい日々を送っている。
 
 ちなみに、高林に一方的に仲間意識みたいなものを持ちつつも、特に自分から関わるようなことはしていない。
 というか、休み時間になるたび高林は教室を出て行ってしまうので、そもそも話しかけるタイミングがない。

 わかる、わかるぞ高林。賑やかなクラスに一人でいるの、いたたまれないよな。周りは楽しそうにしているのに、そこに自分は加わることができず、羨ましいやら悲しいやらで惨めな気持ちになるよな。
 前世の俺も同じだった。授業が終わるたびにそそくさと教室から出て、人がいないところでじっと時間が過ぎるのを待っていた。春はいいよな、暖かいし、花が咲いているから少しは気持ちが癒されるよな。冬はきついよな。寒いし虫すらいねぇんだ。ぼっちを痛感してまじで生きてる意味を見失うくらい辛いよな。

「おい、何むずかしい顔して頷いてんだよ裕也」

「いやだから、宇宙の真理について考えてたんだよ」

「いつまでそれ引っ張るんだよ。引っ張ってもつまんねぇのは変わんねぇぞ」

 またやってしまった。高林のことを考えるとついついトリップしてしまう。今の自分とは全然違うけれど、俺は前世の辛さも自分で体験したみたいに知っている。
 だから、どうしても高林が気になってしまうのだ。この前もクラスの委員長に声をかけられているのに何も返事ができていないところを見た。反応のない高林にイラついた様子だった委員長。俺はそれを見ながらハラハラしていた。
 そうだよな、急に話しかけられて驚いてフリーズしてるんだよな。頭が真っ白で口も動かないよな。そんでそうしているうちに時間が経って、相手がイライラしている感じはなんとなく伝わってきて、更にフリーズするんだよな。

 でも、俺はそこに割って入ったりはしなかった。
 フォローしたところで、きっと高林はそれに反応することもできないだろう。そうしたら、今度はフォローされているのにそれすら無視するのか、と思われること必至。なんでわかるかって、経験者だからだ、前世の俺が。
 せっかく優しい人が気を使ってくれてもお礼すらまともに言えないんだ。陰キャだけじゃなく、失礼なやつ、という称号まで得てしまう。下手に口を出すのは逆効果なのだ。

 だから、気にはしつつも、高林と積極的に関わろうとはしていなかった。それに、前世の俺って、多分今の俺みたいなタイプは苦手だろうしな。

「あ、そーだ、裕也午後イチ体育だろ? 辞書貸してくんね?」

「ん? ああいいけど。変な検索履歴残すなよ」

 北斗に電子辞書を貸しながら、そういや今日の体育はなんだっけか、と考える。ちょうどこの前体力測定が終わったんだよな。



「そんじゃ、出席番号前後でペアになってキャッチボール始めてくれ」

 教師のその言葉に、俺はひゅっと息を飲む。こんなことがあろうとは。
 出席確認のために出席番号順に並べさせられたと思ったら、今日からソフトボールだと言われ、続いてさっきの発言だ。
 出席番号順に数えると、俺とペアになるのは……。

「高林がペアか。よろしくな」

 俺はなんでもない顔を心がけて挨拶をしたが、やっぱり高林からは返事がない。
 キョドキョドとした様子で、浅くペコペコとお辞儀をしている。
 ああ、そうだよな、それが精一杯なんだよな。

 俺はそんな高林を気にした風もなく、じゃあやるか、と言ってから距離をとってボールを投げた。

「あ」

 まあ、取れないよな。
 取りやすいところに投げたつもりだが、見事に落とす高林。
 運動神経が繋がってないとこまで前世の俺と一緒だなあと感動すら覚えた。

 申し訳ないと思ったのか、更にキョドキョドし始めた高林に気にすんなー、と声をかける。

「次はもうちょいゆっくり投げるなー」

 そう言うと、少しホッとしたような空気を感じた。
 そうだよ、お前のペースでいいんだ高林。俺は、お前にイラついたりしねぇからな。

 もはや父性のようなものが芽生えているなと思いながら、ゆったりと高林のペースに合わせてキャッチボールをした。

 最後まで会話はなかったが、心なしか高林の俺に対する空気が柔らかくなったような気がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第22話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ※第25話を少し修正しました。 ※第26話を少し修正しました。 ※第31話を少し修正しました。 ※第32話を少し修正しました。 ──────────── ※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!! ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った

しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー? という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡  短編コメディです

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない

綿毛ぽぽ
BL
 アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。 ━━━━━━━━━━━ 現役人気アイドル×脱落モブ男 表紙はくま様からお借りしました https://www.pixiv.net/artworks/84182395

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

処理中です...